Color!! ~ゲーム『こみっくパーティー二次創作』 : いろどり溢れる長谷部彩の物語~   作:拓田しろう

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19話 初めてのユニット参加

 

 今日は8月の半ば。

 東京ビッグサイトでこみっくパーティーが開催される日だ。

 

 本日は快晴そのもので、朝から日差しが強い。空が青く、入道雲が沸いている。

 まさに夏真っ盛りの状態で、立っているだけでも汗がにじんでくる。

 それだというのに、会場を眺めると既に長蛇の列が並んでおり、首にタオルを巻いてうちわを振る人、頭から冷却スプレーをかけている人、みんなが思い思いの方法で暑さに抗っていた。

 

「彩ちゃん、おはよう! 待った?」

「いえ、今来たところです。おはようございます」

 

 初めてのユニット参加が嬉しくて、30分前には到着していたとは言えない。

 この夏の日差しの中、待つことになるのは計算に入れていなかった。

 日傘をさしていたとはいえ、既に汗びっしょりの状態である。

 

「今日も暑いな。ほい、これあげる」

 

 そういうと和樹さんはビニール袋の中からスポーツドリンクを取り出して手渡してくれた。

 

「あ……ありがとうございます」

「その様子だと、結構早く着いちゃったんだろ? さ、早く中入ろうぜ」

 

 和樹さんにはお見通しだったようだ。

 軽く照れ笑いしながら、和樹さんと一緒に会場の中に入っていった。

 

 ---

 

 会場内で私たちのブースを確認する。

 『ブラザー2』と『Jamming Book Store』の机が隣同士に並んでいることを確認し、頬が緩んだ。

 サークル参加応募時に、ユニット参加であることを記載すると、隣同士になる。

 

 5月の時は偶然和樹さんと隣同士のブースだったが、それ以降は近場の配置だった。

 こうやって一緒に配置されているところを見ると、なんだか嬉しい気持ちになった。

 

「和樹さん、彩ちゃん。おはようございます」

「南さん……おはようございます」

「カタログ見たわよ。もしかして、ユニット組んだの?」

「そうです。先月のこみパの時に、一緒に描かないかって誘って」

「あらあら、和樹さん。由宇ちゃんと詠美ちゃんから申し込まれたって聞いてたけど、彩ちゃんと一緒にユニットを組んだのね。彩ちゃんは罪な女ね」

「いえ……その、告白とかじゃないんで……」

「ですよ、南さん」

 

 南さんは口元に手を当てながらコロコロと笑う。

 冗談だとはわかっているけど、改めて言われると恥ずかしく俯いてしまう。

 

「ごめんね、ちょっと揶揄(からか)ってみたくて。でもあの2人の誘いを断るなんて、和樹さんもなかなかね。見本誌チェックしちゃうわね」

 

 そう言いながら、南さんにお互いの同人誌を見せる。

 滞りなく確認は終わり、激励の言葉と共に南さんは戻っていった。

 

 いつものように長机にテーブルクロスを敷き、その上に新刊と旧刊を並べる。

 今回もコピー本だが、いつもよりも表紙が見やすいように感じる。

 長机の上に並べると、参加者が通る通路に立って、自分の本がどういう風に見えるかをチェックした。

 

 和樹さんが言ったとおりだ。

 旧刊は線が多く、パッと見なにを書いているかがわからない。目を凝らせば読めなくないが、絵柄も渋めなせいで、どんな同人誌なのかは判断しづらいだろう。

 逆に、新刊を見ると比較的見やすくて、表紙に『美少年』が描かれていることを確認できる。

 

 ――こんなに違いがあるものか。

 

 さらに隣にある和樹さんの同人誌を見るとフルカラーなので、一目でどんな本なのか、ぱっと目に飛び込んでくる。

 

 なるほど。

 お金がないからオフセットはできない、と思っていたけど、見栄えを良くすれば当然売り上げも伸びやすいので、結果的に利益が上がるのかもしれない。

 今のアルバイト料だととてもお金は足りないけど、買ってもらえれば口コミで広まる可能性もあるのだから、宣伝費も兼ねている、と考えれば相対的に安くなるのかもしれない。

 

「通路側でなにしてんだ?」

「いえ……和樹さんから教えてもらった、線を減らして見やすくした方がいいって話を思い出して、見てみたんです」

「ああ、なるほどね。勉強熱心だな」

「和樹さんのおっしゃる通り、新刊と旧刊を並べると一目瞭然でした。あと和樹さんの本は一目でわかりやすく描いているんですね」

「ああ、詠美とか大手サークルの表紙を見ると、みんなここら辺こだわってるんだよな。中には表紙はすごいけど、中身はボロボロってところもあったけど、こんな広い会場で何冊も本があるんだから、とりあえず表紙で選ぶって人は結構多いんだよ」

 

 俗に言う『表紙買い』というやつだろう。

 なんとなく変な意地があって、表紙買いされるような同人誌は邪道だ、と思って表紙にこだわりすぎないようしていた時期が私にもあったが、やはり大事な要素であると再認識させられた。

 

 今回、和樹さんのアドバイスを盛り込んで、自分なりに努力したつもりだった。

 自分の本がどこまで売れるだろう。隣にいる和樹さんの本と比べられることもあるかもしれない――そんな不安が、ふっと胸をかすめた。

 

 和樹さんの位置まで歩いていると、開場の放送が流れた。

 

『これより、こみっくパーティーを開催します。』

 

 溢れる拍手と、流れ込む参加者。そしてスタッフの人たちの制止の声が聞こえてくる。

 ユニットを組んで初めて迎えるこみパが、ついに幕を開けた。

 




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