Color!! ~ゲーム『こみっくパーティー二次創作』 : いろどり溢れる長谷部彩の物語~   作:拓田しろう

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27話 新調の靴とハプニング

 

「ねぇ、彩ちゃん。一緒に館内まわってみない?」

 

 12時をまわり、少し人の流れが落ち着いてきた頃、和樹さんがそう言ってきた。

 

「館内ですか?」

「うん、いつも売り子やってるからさ。あんまこみパ内をまわる機会ってなかったんだよ。良ければ一緒にまわってみない?」

「……でも、ブースが……」

「あ、彩ちゃん、私が店番やっておくから気にしないで。しっかり売り子しておくから」

 

 瑞希さんがすかさずフォローしてくれる。今日はなんだか助けてもらいっぱなしなので、少し申し訳ない気がする。

 とはいえ、期待もあった。今日は新調した靴を履いてきているから、和樹さんに気付いてもらいたかった。

 ……意識すると少し緊張してきた。デートに赴くような気持ちでドキドキする。

 そう思うと、あれだけいろいろしてもらった瑞希さんに対しても後ろめたい気持ちが出てくる。最近は気にならなかったけど、和樹さんと瑞希さんの関係性がまだはっきりしていないのに、こんな下心を抱えて和樹さんと一緒に行っていいものだろうか?

 自分ではそう思いつつも、和樹さんは何も気にせず、瑞希さんに依頼して、館内を一緒にまわることとなった。

 

「それでは……瑞希さん、お願いします」

「30分くらいしたら戻るよ」

「はーい、ちゃ~んと彩ちゃんをエスコートしてあげるのよ」

 

 そう言いながら、和樹さんと一緒に移動し始めた。

 

 ---

 

 移動してすぐに、しまった、と思った。

 今日この日のために新調したお気に入りの靴。それゆえにかかとが当たり、靴擦れしてしまっている。

 最近新しい靴を買っていなかったことが災いした。和樹さんと楽しく歩くために買ったというのに、それが原因で一緒に館内をまわれないなんて、なんて皮肉だろう。

 歩く度にかかとが痛む。せっかく和樹さんとデート気分を味わっているというのに、こんなことで止まりたくない。

 しずしずと歩いている内に、距離が離れて和樹さんも違和感に気付いたのだろう。振り向いて近づいてきた。

 

「彩ちゃん、どうしたんだ? 歩き方変だぞ?」

「……それが、靴擦れをしてしまって、痛くて歩けなくて……」

「靴擦れ? どうして靴擦れなんか……ああ、なるほど。新しい靴を買ってたのか」

 

 和樹さんが新調した靴に気付いてくれる。でも全然喜べない状況だった。

 幸いにも、ブースからそう離れてない。和樹さんに手を貸してもらいながら、戻っていった。

 

「あら、和樹。早いわね」

「瑞希、ちょっと彩ちゃんお願いできるか? 靴擦れで足を痛めてる。俺、南さんから救急箱を借りてくる」

「す……すみません……」

「彩ちゃん、大丈夫? 靴脱げる?」

 

 瑞希さんに促されて、そっと靴を脱ぐが、傷口に擦れて激痛が走った。

 

「痛そう。彩ちゃん、ずっと我慢してたのね。新調したての靴って案外固いからこうなっちゃうのよね」

「おーい、救急箱借りてきたぞ。消毒しちゃうから見せてくれるか?」

「え、か、和樹さん。じ、自分でやります」

「いいって、自分でやるにしてもちょっと大変な位置だろ? やってあげるから少し見せてくれるか?」

 

 事もなげに和樹さんは言う。ただそれはいけない。いくらなんでも素足を触らせるなんて抵抗がある。

 瑞希さんに助けを求めようとするが、タイミング悪く私のブースにお客様が来る。

 本が売れて嬉しい反面、いつもあんな暇なのになんだってこんな時ばかり人が来るんだ、と複雑な気持ちになった。

 

「ほら、消毒しちゃうから、少し足触るな」

「あ、あの和樹さん……んっ……」

 

 和樹さんはそっと優しく、そして必要以上に足を撫でてくる。

 ガサツに触れず、指先でソフトタッチするように、足のくるぶしを、ふくらはぎを、ゆっくり触れる。

 ……これはいけない。和樹さんは意識してないけど、和樹さんの手から受ける刺激によって、()()()()()()()()()

 足なんか普段人に触られることがないから気が付かなかった。どうやら私は、足を触られるのに弱いらしい。

 

「んっ……はぁ……あ……」

「痛いか? すぐに消毒するからな」

 

 そう言いながらも、消毒までの時間が長い。そんな少し吹きかけるだけなのに、なぜそんなに足を触る必要があるのだろう。

 薄目を開けて和樹さんを見ると、片手で足を触りながら、もう片手で救急箱を開けて消毒液を探している。

 要領が悪い! まだ準備ができていないなら触らないでほしい。だけど、足から伝わる刺激はなんとも気持ちよく、癖になってしまいそうで……。

 

「はぁ……はぁ……あっ……は……はやく……お願い……します」

「ああ、今準備できたから吹きかけるな」

「ツッ……!」

 

 不意に、傷口に消毒液がかけられ、刺激的な痛みが走る。痛みが引くと、今度はガーゼを添えられ、簡単な包帯をしてくれる。

 ただこれもいけない。ガーゼと包帯の柔らかさが、快楽的な刺激となって私を襲う。「キャウ!」と、変な声を出しそうになってしまう。

 こんな公衆の面前で、痴態を晒してはお嫁に行けなくなる。内頬を噛んで、なんとか声が出ないよう必死に耐えた。

 

「よし、できた。これで靴を履いても大丈夫なはずだよ」

「はぁ……はぁ……あ、ありがとうございます……」

「よし、じゃあもう片方いこうか」

 

 もう片方いこうか、だと?

 それはダメ。片足だけでもあんな思いをしたのだ。もう一度あんなことをされたら耐えられなくなる。

 なんとか抗議しようと和樹さんに声をかけるも、善意で動いている和樹さんには全然届かない。

 それどころか、ふくらはぎを揉みだした。

 

「ひぃ……う……!」

「だいぶ無理させちゃったんだな。ふくらはぎパンパンだ。少し揉んでやるよ。気持ちいいだろ?」

 

 気持ちいい!? 気持ちいいんです……! だから、和樹さん、やめて、やめてください! 私、変な声出しちゃうぅ!

 そんなことをしていたところ、和樹さんの後ろからツカツカと近づいてきた瑞希さんは、スパンッと和樹さんの頭を引っ叩(ひっぱた)いた。

 

「和樹っ! 公衆の面前でなにやってんの? さっきからずっと彩ちゃんの足揉んで! 嫌がってるでしょ!」

「瑞希!? いきなり叩くな! 治療してたんだよ!」

「嘘言わないの! 包帯巻いた後、ふくらはぎ触ってたじゃない。ちょっと売り子代わりなさい。こんなところで年下の女の子の足なんか触ってるんじゃないのよ! あっちいって!」

 

 そう言われると、和樹さんは売り子に戻っていった。

 

「……み、瑞希さん、ありがとうございます……」

「いいのよ、彩ちゃん……もう、和樹ったら!」

 

 いろいろ事情を察してくれた瑞希さんは、手早く治療してくれた。

 ……オシャレな靴を新調したばかりに、大変な思いをした出来事だった……。

 




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