Color!! ~ゲーム『こみっくパーティー二次創作』 : いろどり溢れる長谷部彩の物語~   作:拓田しろう

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29話 紅葉の中で

 

 秋も深まりを感じさせる10月の頃。

 紅葉の色づく葉が静かに風に揺れる。朝晩の冷え込みが身に染み、日差しが斜めに射し込む中で、木々の間に漂うひんやりとした空気が、季節の移ろいを感じさせる。

 枯れ葉が足元に舞い散り、空気は澄んで、秋の静寂さが一層深まったように感じられる。

 

 空が高い。季節はすっかり秋になった。

 街路樹の葉が落ちたいつもの道を、ゆっくりと踏みしめながら和樹さんの自宅に向かう。

 今日は早めに学校が終わったから、少し早めに到着しそうだ。いつかの夏の日は外で待つことは出来なかったけど、この季節は外で空を見上げているだけで気持ちがいい。

 秋の気候を楽しみながら歩いた。

 

 和樹さんの自宅のチャイムを鳴らすと、予想した通り、まだ帰っていない。

 アパートの前で空を見上げていると、すぐに和樹さんの声が聞こえてきた。

 

「あれ、彩ちゃん。今日は早いな」

「あ……そちらも早いですね」

「午後の講義が休講になったんだよ。ちょっと買い物もあったから、今買い物して帰ってきたところだったんだ」

 

 そういうと、手元にあったビニール袋を上げて見せる。

 

「でもまだだいぶ早いな。なぁちょっと荷物置いて散歩でも出かけないか? すぐそこに大きな公園あるだろ。今紅葉がすごくて綺麗なんだよ」

「いいですね。ずっと原稿しているのもなんですし」

「よし決まり。じゃあ荷物置いて出かけようぜ」

 

 一度和樹さんの部屋に荷物を置き、軽く肩をすくめるようにしてそのまま外へ出た。

 まだ肌に感じる寒さも暑さもなく、ただほんのりとひんやりとした風が頬を撫でる。その冷たさが心地よく、何とも言えない安堵感が広がる。

 二人で交わす他愛のない会話に笑顔を交えながら、足取り軽く公園へ向かって歩き出す。街の喧騒も、木々のざわめきも、どこか穏やかに感じた。

 

「うわぁ……」

 

 公園に足を踏み入れると、まるで色彩の海に飲み込まれたような光景が広がっていた。

 枝々が赤や黄色に染まり、まるで燃えるような火花が空に舞い上がるかのよう。風が吹くたびに、葉がひらひらと舞い落ち、まるで秋の音楽が奏でられているかのような、静かな美しさを放っていた。

 色とりどりの葉が重なり合い、まるで大地に描かれた絵画のようで、その鮮やかなコントラストに心を奪われて、思わず目を凝らす。

 目の前に広がる景色に、ただただ見入っていた。

 

「うわ、すごいなぁ」

「キレイ……」

「ちょっと園内を散歩しようか」

「はい……」

「おいおい、足元見ていないと、転ぶぞ」

 

 紅葉から目が離せない。あまりにも美しい光景に、心を奪われる。

 そうやって上ばかり見ていたのが災いした。

 視線を上に奪われたまま、足元の段差に気づかなかった――。

 

「キャッ!」

「……ッ! 彩ちゃん!」

 

 倒れそうになったその瞬間、和樹さんの腕が私をしっかりと抱き留めてくれた。

 予想もしなかった出来事に、思わず息を呑む。胸が早鐘のようにドキドキと鳴り響き、けれどそれ以上に、顔をうずめた先が和樹さんの胸元だと気づいたとき、心臓がさらに速く跳ね上がる。

 

「悪い! 咄嗟のことだったから……、彩ちゃん……?」

 

 和樹さんの胸で震える。目を閉じると、和樹さんの鼓動がはっきりと聞こえてきて、まるで自分の鼓動が2倍に速くなったかのように感じられた。

 

 ――トクン、トクン、トクン――。

 

 私の心臓と、和樹さんの心臓が一緒に早くなっていく。近すぎる距離で、互いの息づかいが絡み合うような感覚。胸の中で、『この瞬間、絶対に逃したくない』と強く願う気持ちが膨らむ。

 

「――彩ちゃん、顔を上げて」

「……あっ」

 

 その声に、何かに引き寄せられるように顔を上げると、目の前に和樹さんの顔があった。ほんの少しだけ、時間が止まったように感じる。

 和樹さんの瞳が私を見つめ、そのままゆっくりと瞳を閉じて、唇が私の唇に触れる。

 

「――――――」

「――――――」

 

 その瞬間、世界が静まりかえり、心の中で『この時を、ずっと続けていたい』と願うほど、全てが美しく輝いていた。

 息をするのも忘れそうなほど、二人だけの世界が広がっている。

 

 そっと、唇を離す。

 なんだか顔を合わすのも照れくさく、お互い、顔を伏せてしまう。

 

「帰ろうか」

「……はい」

 

 今だったら大丈夫だろう、と和樹さんの手を握る。

 すると和樹さんは、互いの指を、深く絡めるように握り返してくれた。

 

「行こうか、彩ちゃん」

「……彩って」

「えっ?」

「彩って、呼び捨てにしてください……」

 

 気持ちを伝えると、和樹さんは頬をかきながら言ってくれた。

 

「行こうか、彩」

「……はい」

 

 そうして、この日私たちは『恋人』関係になったのだった。

 




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