Color!! ~ゲーム『こみっくパーティー二次創作』 : いろどり溢れる長谷部彩の物語~ 作:拓田しろう
――その日は、唐突に来た。
「『なんのことだ』ではない! なんだ、今回のこの出来は!」
ペデストリアンデッキに怒号が突き刺さる。
その瞬間、足音がピタリと止まり、通行人のざわめきが薄れていく。
風が吹き抜ける音だけがやけに耳に残り、息苦しいほどの張り詰めた空気が漂った。
いつもは軽快なはずの聞き知った声が、今までとは想像もできないほど怒気を帯びていた。
周囲の視線が一斉に集まり、その重さが肌を刺すように感じられる。
「なにが、いつも通りだこんなもの!!」
そう吐き捨てるや否や、大志さんは手にしていた同人誌を指の力で無理やりねじ曲げ、紙の裂ける音が乾いた空気に響いた。
表紙がぐしゃりと歪み、背表紙が折れた瞬間、そのままアスファルトに叩きつけられる。
ぱさり、とページが開き、風にあおられて無様にめくれる。
受けた側も思わず声を荒げたが、大志さんは一瞥もせず、なおも言葉を重ねた。
「なぜその先を……頂点を目指さん! いいか、確かに最初の頃に比べれば、お前の技術は格段に上がった。そして壁サークルにもなり、1000部売り上げたことも誉めてやろう。しかし――そこに満足し、慢心しているのが、今のお前だ」
吐き出す言葉は1つ1つが鋭く、矢のように突き刺さる。相手が返す間も与えない。
圧し掛かるような威圧感に、周囲の空気がぴんと張り詰めるのがわかった。
「ユニットを組んでからも、お前は成長を続けていた。だからあの子とのことは不問にしていた。しかし、最近のお前はどうだ? あの子に付きっきりになり、多くの時間を使って、自分の同人誌に時間をかけないでいる。ここ数か月、新しい挑戦を何1つしていないではないか! そのままでどうやって先へ行く? 半人前が、人を導くなど――笑止千万!」
鋭い叱責に込められた怒気は、ただの感情ではない。的を射た指摘だからこそ、反論できない。
返す言葉を探しても、その迫力に呑まれて喉が塞がってしまう。
「しかもだ――お前はその女に心を奪われている。それでどうして魂を込められる? それでも言い逃れをするなら、止めはせん。こんなことで腑抜けるようなら、この先の覇業など夢のまた夢だ――」
「……吾輩はな、口では否定しても、心の奥底でお前が共感していると信じていた……いや、そう信じている」
言葉を打ち切ると、大志さんはこちらに歩みを進めてきた。
隠れなければ――そう思った瞬間にはもう遅く、曲がり角の向こうから私の姿を見つけられてしまった。
彼はバツの悪そうな素振りを一切見せず、ただ真っ直ぐな視線を向けてくる。私も、視線を逸らすことができなかった。
「マイシスターよ。君と同志の気持ちは理解しているつもりだ。ただな、
背を向け、足音を響かせて立ち去る背中。
残された私は、その言葉の意味を噛みしめる間もなく、胸の奥がざわついていく。
どうしてこうなってしまったのだろう。和樹さんは、なぜあんなことを言われたのだろう。
――決まってる。
足元から震えが這い上がり、喉が渇き、視界がじりじりと揺れる。
「……彩?」
声のする方を振り向けば、驚いた表情の和樹さんが立っていた。
動揺した顔が映る。なんて言っていいかわからず、ただただ狼狽していた。
「彩、まさか、今の話聞いて……」
「あ、あ……ごめんなさいっ!」
それだけ言って、私は逃げ出すように、走り去ってしまった。
最後まで読んでくれてありがとう。
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