Color!! ~ゲーム『こみっくパーティー二次創作』 : いろどり溢れる長谷部彩の物語~ 作:拓田しろう
――最悪な気分で、目を覚ました。
階段を降りて洗面所の前に立つ。鏡を見ると泣き腫らした目にクマができていた。
「酷い顔……」
昨日の感情がまだ目元に残っているようで、見ているだけで胸が重くなる。こんな見た目では外を歩くのも
顔を洗えば少しはマシになるかと思いきや、全然変わらない。
今日はやめておこうか、とも思った。ただ先送りにしたらした分だけ、決意が鈍るような気がした。出来れば早めに行動したかった。
リビングのソファーに座り、冷やしたハンドタオルを目の上に置いた。それを何度か繰り返し、目元の腫れが引くのを待った。
少しはマシになったのを確認し、母親のメイクを借りて、目元に化粧をした。普段からお化粧をする年ごろではないが、今日ばかりはしょうがないだろう。
やる事は大きく分けて2つある。
1つ目は、和樹さんに12月のこみパの参加申し込みをしないことを伝えることだ。
今の私では一緒にいても迷惑をかけてしまう。悔しいけど、今はそうするしかなかった。
『申し込みに間に合わなかった』って言えば、どうしようもないはずだ。そう和樹さんに伝えよう。
2つ目は――もっと切実な問題だった。
今からでも会いに行きたいけど、どこに住んでいるのか、連絡先も知らないのだ。正直こみパで本当に会えるかどうか、今から不安でならない。
――考えてみても、本当に他人任せな方法だ。
それでも、なんとか今持っている情報だけで、行動してみないといけない。
心臓がドクドクなっている。緊張して手に汗がにじむ。普段からこんなに追い込まれることはない。
――でも、やるしかない。
決意が揺らぎそうな心を抱えながら、まずは和樹さんの自宅を目指した。
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ピンポーン。
和樹さんの自宅のチャイムを鳴らす。中から「開いてるぞー」と声がするが、中に入るわけにはいかない。そのまま待つことにした。
しばらく待っていると、玄関を開けて和樹さんが顔を覗かせた。
「どうしたんだ? 鍵開いてるぞ」
「あ……あの……今日は……用事が……あるから……」
緊張で声が震える。喉が張り付いて一瞬声が出なかった。足がガクガク震えているが、悟られてはいけない。
勇気を振り絞って、声を出した。
「私……次のこみっくパーティーは……やめます……」
「……えっ?」
和樹さんの表情が変わる。
怪訝な顔を浮かべて、真意を探ろうとしている。
「彩、その、やめるってどうして?」
「その……申し込みを……出すのが遅れて……だから」
「まさか、この間の大志の話を気にしているのか? あれは彩のせいじゃない。だから、気にしなくていいんだ」
「それは……関係ないんです……単純に出さなかった……だけですし」
「そうだ! だったら委託って形にして、俺のところで売ればいいんだ」
「えっ……」
「うん、そうだ。それがいい」
――委託? そんな言葉が和樹さんの口から出るなんて、想像すらしていなかった。
なんでその手段を考えなかったんだろう。そんな方法があるだなんて、ちょっと考えればわかったのに。
考えが至らなかったのは、私と和樹さんのサークルの売り上げが違いすぎるからだ。しかし、ほとんど売れていない弱小サークルの本を、壁サークルに置こうなんて考えなしにも程がある。
また、もしそんなことをしたら私はもっと居づらくなる。和樹さんは私と一緒にやることを優先して、そこのところにはあまり気が回っていない節がある。
でも、ここで引き受けたら元も子もない。全部台無しだ。
頭をフル回転させる。和樹さんが引き下がってくれる方法を、なんとしてでもひねり出さないといけない。
「あ……でも……その……今度……テストがあるから……」
「えっ……テスト?」
「私……受験が……あるから……だから……ごめんなさい……」
「そっか、考えてみたら受験生だもんな。残念だけど、仕方ないか」
なんとか和樹さんが引き下がってくれて、一安心する。
ただ、同時に嘘をついて強引に断ってしまったことへの、深い罪悪感が沸いてきた。
――本当は受験などない。もう大学は推薦で決まっているから。だから受験のために、というのは真っ赤な嘘だった。
「ごめん……なさい……」
「いや、いいって。仕方ないし」
和樹さんが首を振る。それでも言葉は止まらなかった。
「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」
「そんなに、謝らないでも……」
罪悪感が止まらない。昨夜の気持ちと一緒になって、謝罪の言葉が溢れ出してきた。
私は今、目的のためとはいえ、和樹さんを裏切ったのだ。
和樹さんは困った顔を浮かべている。きっと、私の言葉の真意など届かない。
それでも今は、ただただ申し訳なく、謝罪の言葉を並べるしかできなかった。
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次回のこみっくパーティーを断る旨を伝えて、帰宅するところだった。
和樹さんのアパートから、駅までの道のり。もう何度も通った道をトボトボと力なく歩いた。
距離がいつもより遠く感じる。足に力が入らない。このまま
でもこんなところで泣いてなんかいられない。泣きたくなる気持ちを抑えて、足を引きずるような思いをして、自宅まで帰った。
自宅について、ベッドに寝転がる。
自然とまた涙が流れてきて、昨日のようにまた枕に顔をうずめて泣きじゃくった。
軽く考えていたわけではない。ただ、好きな人に嘘をつくことがこんなに辛いとは思わなかった。
目的はどうあれ、私がやったことは完全な裏切り行為だ。和樹さんが私の指導をしてくれていたのに、私は結果のために、別の人に師事を求める。
――本当のことを明かした時、和樹さんは私を許してくれるだろうか?
考えなかったわけではないが、いざ行動を開始すると、そんな不安まで付きまとう。
でも、負けていられない。ようやく最初の一歩を踏み出したばかりなのだ。いつまでも泣きじゃくってなんかいられなかった。
重い身体を起き上がらせ、机の前に座る。12月のこみパまでは、まだ時間がある。
それまでにやれることは全部やっておかなければならない。
そう思い、また机に向かって、改めてやる事の整理をした。
最後まで読んでくれてありがとう。
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