Color!! ~ゲーム『こみっくパーティー二次創作』 : いろどり溢れる長谷部彩の物語~ 作:拓田しろう
『以上を持ちまして、こみっくパーティーを終了します』
5月のこみパが終了し、館内は拍手の音で包まれた。
いつものように売り上げはなく、自ブースの机には開場の時と同じ量の同人誌が積まれている。
――わかっていたことだけど、現実を目の当たりにすると、心に来るものがある。
片付けを始めながら先ほど話した人のブースを見ると、開場時に積み重ねられていた本が一冊もなかった。
午前中にやらかしてしまった後、席に戻ってからは恥ずかしくてなるべく隣を見ないようにしていたが、思った以上に人が来ていたようだ。
――結局、あれから紅潮した顔は戻らなかった。
いつまでも席を離れているわけにもいかず、俯きがちに席に戻り、その人には頭を下げただけで、言葉は交わさなかった。
その人も何かを察してくれたようで、軽く笑い返してくれた。それを見て、やっぱり変な子だと思われた、と感じて更に顔を赤らめた。
しかし、それからはいつも通り。
お客様は1人も来ず、最後まで座って過ごすこととなった。
片づけをしていると隣のブースに人がきた。
「和樹はん! どや! 初のこみパは? 同人誌売れた~? って完売しとるやん!?」
「由宇か、サンキュな。おかげさまで完売だよ。良い滑り出し」
「すごいやん! 初参加で創作で完売って、どんな売り込みしたん?」
「完売っても50部だよ。全然まだまだ」
「いーや! 全然知名度もお客の信頼も築いてない状態で50部売り切ることって、相当難しいねんで? もっと誇りぃやぁ!」
「そうだぞ、マイブラザー! 初参加でこの売り上げは大したものだ! そなたに『駆け出し同人作家』の称号を与えよう」
「あ、大志テメェ! 店番手伝うとか言っておいて結局来なかったじゃねぇか!」
「フッ、そう言うなブラザー。吾輩には重要な任務があったのだ。それに初回は参加者に顔を知ってもらうチャンスでもあるのだ。その機会を奪っては忍びない」
「オマエ、テキトウなこと言いやがって!」
「はーい、そこの方々、終わったからと言って、騒いではいけませんよ~」
「お、牧やんも来たんかいな!」
隣のブースには次々と人が集まってきて談笑している。
――初参加だというのに、私とは大違いだ。
今朝交換したその人の同人誌を見てみる。紙の質感からして、オフセット印刷だろう。しかも50部を売り切るなんて。やはり他でマンガを描いていた人なんだろうか。
そう考えると今の交友関係もわからないでもない。
「あれ? 隣の子? 和樹はんの同人誌持ってるやん? 交換したん?」
「ああ、今日隣のブースの人でさ。今朝お互いのやつを交換したんだよ」
突然話題を向けられて、その人を見る。隣で話していた全員が今は私を見ていた。
「あ、そうなんや。あんた、どんな同人誌描いてるん?」
いきなり振られて、言葉が出なかった。
どう答えればいいのか分からない。
「由宇、これだよ。午前中しばらく彼女の同人誌の話をしてたんだ」
「ほぉ~、それは興味深いなマイブラザー」
その話を聞いて
褒められたことは嬉しかったが、それ以上に羞恥心が勝り、また顔が赤くなってくる。
「……あ、あの。今朝はすみませんでした……後、これ大切にします」
「いや大丈夫だよ。こっちもいろいろ聞いちゃって悪かったね」
優しく返してくれる姿を見て、そんなことないとフルフルと顔を左右にふった。
「なんやぁ~、意味深やん。和樹はん何聞いたん?」
「いいんだよ、聞かないで!」
「あの……私、
「そういや、自己紹介してなかったな。俺、
「ちなみに! ウチは
「そして吾輩はマイブラザーの親友、
「あら、自己紹介の流れ? じゃあ私も。私は
「あ……ありがとうございます。それでは私はこれで……」
頭を下げて、その場を後にする。
背後から猪名川さんや九品仏さんの笑い声が聞こえる。
――あの輪の中に入れないことを少し寂しく感じながら、帰路についた。
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お風呂から上がって、トリートメントをして櫛で髪を
今日のこみパで千堂さんからもらった同人誌を手にして内容を確認した。
一度全ページ流し読みしてみたが、絵のクオリティが高いことに驚いた。こみパ会場では表紙を見ただけだったが、改めて内容を見てみると、とても初参加とは思えないほどの出来だった。
おそらくちゃんと絵を勉強しているんだろう。
キャラクターは立体的に描かれており、背景の奥行や影のつけ方、またちょっとした1コマのデッサンのような描き方にはこだわりが感じられる。中堅どころのサークルにも引けを取らないほどの出来栄えだった。
唯一難点があるとすれば、コマ割りに違和を感じるところだろうか? 私だったらこうするかも、と思う箇所がいくつか存在した。
ストーリーは最初こそ勢いがあった分、ページ数が足りずにやや書き足りていない印象もあるが、それでもよくまとまっていた。また天使に家族を殺された兄妹が漂白した世界で生き残り、復讐の旅に出るという、なんとも斬新な物語は、読者の興味をそそる魅力が感じられた。
読み終えて、ため息が出た。
なるほど、これは確かに50部売れたといっても納得してしまう。
またコピー本じゃなく、オフセットにしたのも良い点かもしれない。表紙の絵と相まって高級感がある。
私は予算的にとてもオフセットなんて手は出せないが、せっかくお金を出すのだから良いものを買いたい、という参加者のニーズを掴んでいるように感じる。
考えてみたら、私は他人の同人誌をあまり読んでいなかったかもしれない。
今日、自分の同人誌を読んで感想をもらえたのは、本当に嬉しかった。
――今度会った時に、感想を伝えよう。
そうしたらまた意見交換ができるかもしれない。
本日の売り上げは、いつもの通りゼロだった。
ただ心の充足感があり、気分が良かった。
――6月のこみパも頑張ろう。
そんな、ここ最近一度もなかった想いを抱いて、気持ちよく床についた。
最後まで読んでくれてありがとう。
彩の物語を最後まで楽しんでみてね☆
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