Color!! ~ゲーム『こみっくパーティー二次創作』 : いろどり溢れる長谷部彩の物語~   作:拓田しろう

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42話 描き続ける日々

 

 ハラ、ハラ、ハラ。ヒラ、ヒラ、ヒラ――。

 

 ここは夢の中で繰り広げられる大劇場。

 

 暗黒なユメセカイをイロドる舞台裏。

 

 小人さんたちはくるくるまわり、世界(ものがたり)をつくる。

 

 ――ああ、知ってる。これから劇が始まるんだ。

 

 小人たちは、えっちらおっちら、舞台に必要な道具を用意する。

 

 地面を作り、空を携え、景色を瞬き、役者を統べる。

 

 観客席には、いつも私は1人。

 

 小人が紡ぐ劇を見て、それをそのままマンガにする。

 

 今日の劇は特別すごい。

 

 小人たちが作り上げる劇場は、ユメセカイを沸かした。

 

 ――けど、ごめんなさい。こんなに楽しい劇なのに、今の私は同人誌(まんが)にできないの――。

 

 消え入りそうに、静かに伝えたはずなのに、小人さんたちはいっせいにこちらを凝視する。

 

 ――ボクたちが必死に作った話が、世の中に出回らないんですか――。

 

 見たこともない小人たちの表情に、息をのむ。

 

 ――ごめんなさい。今の私では、あなたたちの話を書いたところで、たくさんの人たちに届けることができないの――。

 

 落胆した表情。崩れていく地面、落ちる空、はじける景色と霧散する役者。

 

 暗黒のユメセカイをイロドっていた劇は、不吉な赤の色に染めあがる。

 

 ――じゃあ、しょうがないです。またこんど――。

 

 突如として観客席も消え、私は奈落に落ちていく――。

 

 ――小人たちの劇場が赤に染まった瞬間、意識が反転する――。

 

 「っ……!」

 

 ハッと目を覚ますと、自宅の机にうつ伏せていた。

 腕にはインクの跡がべったりとついている。どうやら原稿を描きながら眠っていたらしい。目の前には、描き途中の原稿用紙と握りしめたペン。

 窓の外を見ると、いつの間にか夜が明けていて、淡い青白い空が広がっている。

 部屋は暖房を効かせていたおかげで、そこまで寒くなかった。が、さすがに冬の朝ということもあり、なにか羽織りたい気分だった。

 

 席を立ち、窓を開け放つ。

 冬の朝の冷気が肌を突き刺し、思わず肩を震わせた。

 

 ――なんだか、嫌な夢を見た気がする。

 

 吐き出した息が白く散り、夜明けの空に溶けていく。

 そうしてまた、原稿を描き続ける1日が始まるのだ。

 

 ---

 

「ん、最初のころより随分マシになったわね。頑張ったじゃない? 彩」

 

 どうやら及第点は達したのだろう。詠美さんの一言を聞いて、ほっと胸を撫でおろす。

 机の上には、模写を繰り返した原稿用紙が積み上げられている。目標の600枚を描き終え、詠美さんの辛辣な物言いも、少し緩和されてきた。同時に、私の画力も向上した。

 

「正直、最後まで描きあげられるとは思わなかったわ。すごい地味な作業だもん。でもね、最初の頃は、とにかくこういう〝報復練習〟って重要なのよ」

「……えっと、〝反復練習〟ですかね……?」

「……ッ! そう、それよ! 知っててわざといったんだからっ!」

 

 当然、わざとじゃなく、単純に間違えただけだということはわかっているが、そこは突っ込まないようにする。

 詠美さんは、とにかく言葉をよく間違える。同人誌のセリフは問題ないけど、私生活の言葉は、時々どうかしているのではないか、と思うほど間違うことがある。

 

「ま、2週間でこれほど描けるようになればなかなかのもんよね。元々、背景とかは上手かったし、あとはマンガに落とし込めればいいと思うわ」

「……あの、次はどうすれば……?」

「次はこのゲームをやって」

 

 詠美さんからゲームソフトを手渡されて、内容を確認してみる。こみパで、何度か見かけたことがある絵柄だった。

 

「そのゲームの緑の髪の子いるでしょ? そう、その子。サブヒロインなんだけどちょー人気があるの。彩には2月のこみパでその子の同人誌を描いてもらうわ」

「でも私、ゲーム機が……」

「あー、そっか。彩ってゲームあんまりやらなそうだもんね。あたしの貸してあげるわ。一度プレイしないと話も考えられないでしょ?」

「……わかりました」

「とりあえずネームを10本考えてみて。その中からいいのを選んで、あたしが手直ししていくから。あとゲームやネームが中心になるとはいえ、絵を描く練習は忘れないで。いざという時に(なま)って描けなくなった、じゃおはなしにならないんだから」

 

 今回も今回とて、注文が多いが、以前よりも驚かなくなってきた。

 この2週間、詠美さんと一緒に作業していて気付いたが、作業量がとんでもなかった。

 600枚模写しろ、だなんて、最初はただの嫌がらせか、私が追い出すための口実なのかと思った程だ。

 

 しかし詠美さん自身、原稿をしっかりやるし、人気のアニメやゲームもリサーチし、雑誌などのキャラクター人気ランキングを見て、どの子が人気なのかをしっかり把握している。

 各アニメやゲームの世界観も把握しているし、絵柄が違う作品なら、自分流にどう描けばいいかの練習も余念がなかった。

 私に指示した量くらい、この人は平然とこなして、その上で更に私の指導までしてくれているのだ。

 『こみパの女王』なんて言われているから、才能だけでのし上がったのかと思ったが、地道な努力で成功を掴んだ人なんだ、と認識せざるを得なかった。

 

「ほら、彩。そこのゲーム機使っていいから、さっさとゲームやってみて」

「……え、でも少しうるさくなってしまいますよ?」

「そんくらいどうってことないわよ。ほら、さっさとはじめてはじめて」

 

 手をパンパンッと叩いて、行動を促してくる。

 言われるがまま、私はゲームをセットして、実際にプレイし始めるのだった。

 




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