Color!! ~ゲーム『こみっくパーティー二次創作』 : いろどり溢れる長谷部彩の物語~   作:拓田しろう

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4話 はじめての連絡先

 

 「よいしょ、と」

 

 段ボールを棚に積んで部屋を後にする。次は店内掃除と棚卸だ。

 店内の床をモップで拭き終えて、商品の補充と、お客様が手にした後の散らかってしまった商品を整理する。

 いつもの作業が全部終わり、手を洗った後、休憩に入る。

 

 ここは私がアルバイトしている画材屋である。

 初夏になり、少しずつ暑い日が多くなってきて、店外で少し作業をするだけでも汗が噴き出てくる。

 

 レジカウンター内の椅子に腰をかけ、涼みながら水分補給をする。

 あとはレジ打ちの仕事だけだが、画材屋にくるお客様は少ない。来たところで商品を見て、そのまま帰ってしまう人がほとんどだ。

 本格的な画材商品を売っているお店ではあるが、マンガを本格的に描いている人は少ないためか、繁盛してるとは言い難い。

 後はアルバイトの終了時間まで、定期的に店内を掃除しつつ、過ごしているだけである。

 定期的に入店してくるお客様の相手をしながら、いつも通り過ごしていた。

 

「和樹さん、このお店です」

「あ、ありがとうございます。南さん」

 

 出入り口から男女の声が聞こえて振り向くと、先日こみパで会った千堂さんと牧村さんの姿があった。

 

「あれ、長谷部さん?」

「あ……、いらっしゃいませ」

 

 向こうも呆気に取られたようで、私の顔を見つめてくる。

 

「長谷部さん、ここでバイトしてるの?」

「はい、原稿を書く道具とか勉強になるから……。おふたりは、その……どうしてここに?」

 

 私もここでのアルバイトは高校一年生の頃からやっているから、それなりに長い。しかし、2人がこの画材屋に来ることは初めてのような気がする。

 

「さっきまで一緒にお茶してたんです。そしたら和樹さんから、同人誌を書き始めたのはいいけど、画材がどこに売っているかわからない、って言っていたから案内したんです」

「そうそう、全然そういうお店わからなかったからさ。南さんに連れてきてもらったんだ」

「普段からよく2人で出かけるんですか?」

「いや、今日が初めてだよ。というより、さっきそこでバッタリ会ってせっかくだからってお茶してたんだ」

 

 話を聞いて驚いた。

 画材屋がわからない、ということはこの間のこみパの原稿はまともな画材がほとんどない状態で描いたのだろうか?

 それであのクオリティだとすると、相当実力があることになる。

 また2人の関係も気になった。聞いている感じだと、以前から知り合いみたいだけど、そんな一緒にお茶をするくらい仲が良いのか。

 

 軽く会釈すると、2人は店内の原稿用紙売り場に移動した。

 種類の違う原稿用紙を見ては、こっちがいい、そっちがいい、と話している。

 お互いに笑いながら商品を選ぶ姿は恋人同士のように見えた。

 

 ――付き合っているのかな?

 

 そんなことを考えていると、千堂さんは原稿用紙を持ってレジに向かってきた。どうやら一般的なものに決めたらしい。

 

「……あの、ここら辺にお住まいなんですか?」

「うん、駅前に大学があるだろ? あそこに通ってるんだ。アパートも大学近くで1人暮らししてるよ」

「そうだったんですか。こみパで会った人が近所に住んでいるなんて驚きました」

「長谷部さんもこの近く?」

「いえ、私は2駅先のところに住んでます。バイトでここまで通っていて……」

「へぇ~、結構近くだな」

「ええ……私も驚きました」

 

 会計を済ませて、商品を袋に包んで手渡す。

 

「あの、画材屋がわからないって言ってましたが、この間のこみパはどうしていたんですか?」

「ああ、友人が最低限用意してくれてね。初回はそれでなんとかなったんだけど、6月分の原稿用紙がなくて」

「もしよかったら、ペンとかも見ますか?」

「ありがとう。でも今は南さんいるし、また今度にさせてもらうよ」

「和樹さん、会計終わりました?」

「今終わりましたよ。それじゃあ帰りましょうか」

「あ、そうだ長谷部さん、これ」

 

 牧村さんはそう言うと、2つ折りにしたメモ用紙を渡してくれた。

 

「それ、私の電話番号です。近所に住んでいるみたいだし、なにかあれば電話してください」

「あ……ありがとうございます」

「それじゃあ、失礼しますね」

 

 そう言って、2人はお店の外に出ていった。

 

 手渡されたメモを開くと電話番号が記載されてある。番号の横には何かのマスコットだろうか? 可愛いネコが描かれていた。

 ――牧村さん、物腰が柔らかくて素敵な人だな。

 

 考えてみたら、同人関係の知り合いから連絡先をもらうのは初めてだ。

 しかも近くに住んでいるなら、また会えるかもしれない。

 

 そう思うとなんだか嬉しい気持ちになった。

 渡されたメモをなくさぬよう大切にしまい、再び仕事に戻った。




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