Color!! ~ゲーム『こみっくパーティー二次創作』 : いろどり溢れる長谷部彩の物語~ 作:拓田しろう
その日は詠美さん宅には直接行かず、一旦自宅に帰った。
昨日のうちに仕込んでおいたバレンタインデー用のチョコを、冷蔵庫から取り出してラッピング作業をする。
メッセージカードに気持ちを書き込み、包装紙に挟んで袋に入れた。
――直接、渡したかったな……。
自分で選んだ状況だとはわかっている。でも、できれば直接渡して気持ちを伝えたかった。
ソファーに座って、一息つく。体が鉛のように重く、すぐには立ち上がれなかった。
2月のこみパで、ちゃんと結果が出せるだろうか?
そんな不安ばかり付きまとう。最近はよく眠れないし、疲れとストレスで間食が増えて、お腹に少しお肉がついた気がする。
入稿日まで後1週間もない。疲れはピークだが、結果を出すために、もう少し頑張らなければならない。
そのまま眠ってしまいたかったが、足に力を込めて立ち上がる。
和樹さんの家に寄って投函しよう。それからまた詠美さん宅に行って、原稿しなければならない。
少し遠回りする分、時間をロスしてしまう。でも、和樹さんとの関係が破綻してしまっては元も子もない。
疲れた体に鞭打ち、今日も出かけるのであった。
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――そして入稿日前日。
決死の勢いで原稿作業を続ける。
――あと、1ページ……。
目の奥がジンジンと痛む。肩も背中もガチガチで、鉛の板を背負っているみたいに重い。
「彩、大丈夫? 顔色ヤバいわよ」
「だ、大丈夫です……あとこれだけだから」
「……あんた、それで倒れたら本末転倒なんだから。少し休憩しなさいって」
詠美さんは近寄ってきてポンポンッと肩を叩かれる。
よっぽど酷い顔をしているのだろう。詠美さんも不安の表情を浮かべて、こちらを見ている。
「……じゃあ、10分だけ……」
「30分! タイマーセットしてあげる。少し横になって!」
言われた通り、少し横になる。目にタオルをかけて、少しでも疲れをとろうとする。
既に原稿を始めて4時間が経過する。いつもであればこれくらい集中し続けることはなんともないが、今はさすがに辛い。
昨夜も、いやここ連日、仕上がるか不安で眠れない夜が続いていた。睡眠不足、疲れ、ストレス、全てにおいてピークに達しており、まるで余裕がない。
瞼を閉じると、急速に眠気が出てきた。
不意に、詠美さんが部屋を出る音が聞こえたと思うと、しばらくすると戻ってきて、ドアが閉まる音が聞こえる。
部屋に甘い匂いが立ち込めてきて、テーブルの上になにかが置かれる音が聞こえると同時に、タイマーが鳴った。
「彩、時間よ。大丈夫?」
「……あ、ありがとうございます」
「はい、ココア入れてきたの。少し糖分補給してね」
先ほど、部屋を出ていったのはこのためかと思って、素直にココアを口にする。独特の甘みが口の中に広がって気持ちがホッとなるのを感じた。
「よし、あともう少しよ。頑張ろう」
「……はいっ!」
気合を入れ直して作業を再開させた。
このページを描けば、最後のトーンの貼り付け作業は詠美さんがやってくれる、とのことだった。
詠美さんはとっくに自分の原稿を終わらせており、全面的に私のバックアップをしてくれている。
作業をやらせてしまうのは大変申し訳ない気分だが、そんなことを言える余裕はとうの昔に過ぎさった。早く終わらせてバトンパスしてしまいたかった。
それでもなんとか気力を繋ぎとめながら、最後の最後まで必死に作業を続けた。
そして午後10時をまわろうとしたところ、ようやくペン入れが完了したのである。
「……お、終わりました……」
「彩、お疲れ様! あとは私に任せてね」
――ああ、ありがとうございます。詠美さん……。
あの日『あたしが協力してあげるわ』と言ってから、詠美さんは本当によくサポートしてくれた。
残りのトーン貼りは大した作業ではないとはいえ、あと1時間はかかるだろう。詠美さんの作業完了が11時過ぎになるのは、本当に申し訳なかった。
今はただ詠美さんに感謝しつつ、瞼を閉じるのであった。
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「彩、大丈夫?」
「……ん、詠美……さん」
「原稿、終わったよ」
詠美さんはそういうとニッコリ笑ってくれた。
テーブルの上を見ると出来上がった原稿が置いてある。表紙フルカラーで60ページ。見事にやり切ったのだ。
時計を見るとちょうど日が変わった頃だった。1時間くらいで終わる作業だと思っていたけど、2時間もかかったのか。
元気そうに振舞っていたけど、詠美さんも相当疲れていたんだろう。よく見れば目の下に隈が見えた。――本当に、感謝の念しか沸かない――。
「……あ、詠美さん、本当にありがとう……ございます」
「いいのよ。彩もよく頑張ったわね。さ、寝支度して、今日はもう寝ましょ。さすがの私も疲れちゃったわよ」
原稿が終わった達成感と疲労感でいっぱいだ。
今日は金曜日ということもあり、明日はゆっくり寝ていられる。午後2時までに原稿を持っていけばいいと言われたので、余裕はあるだろう。
既に恒例になった、詠美さんのパジャマを貸してもらい、布団の中に入る。
「よく頑張ったわね。彩」
「……詠美さんのおかげです」
「うん、明日はゆっくり起きましょ。おやすみ~……」
そういうとすぐに寝息が聞こえた。
最後に感謝の言葉を伝え、私も程なくして、深い眠りにつくのであった。
最後まで読んでくれてありがとう。
彩の物語を最後まで楽しんでみてね☆
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