Color!! ~ゲーム『こみっくパーティー二次創作』 : いろどり溢れる長谷部彩の物語~ 作:拓田しろう
――2月こみパ当日。
この日は朝から調子が悪かった。連日売り上げが心配で、眠れない日々が続いたからだ。
原稿の不安はなくなったものの、手持ち無沙汰になってしまったため、やることがなく暇を持て余した。
また模写でもしようかと思って机に向かってみたけど、気持ちが落ち着かず、何も描く気になれなかった。
何をするにしてもこみパのことが頭から離れず、おかしを食べて気を紛らわす、という日々を過ごした。
そしてようやくこの日を迎えた。
あまり眠れず、朝5時に目が覚めてしまったため、朝風呂に入って目を覚ます。
――今日が運命の日。
そんな言葉を浮かび、頭が冴え渡った。
体は怠いものの、頭はハッキリとしてる。待ち合わせには時間があるが、サークル参加用の入場口は早い時間から空いている。
準備をして、いち早く自宅を後にした。
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東京ビッグサイトに到着すると、既に長蛇の列が並んでいた。
今の気温はわずか1℃。空を見上げるとどんよりとした雲が広がっている。
こんな寒空の中、よく並んでいると思う。参加者の人たちの熱意には本当に感心させられる。
詠美さんも大手サークルのため多くの人がブースに並ぶが、あの長蛇の列のほんの一部でしかないと思うと、こみパの規模の大きさに改めて驚かされた。
驚きの念を抱えつつ、サークル参加用の入り口から入場していくのであった。
「あれ、彩?」
「……え、詠美さん?」
詠美さんのブースに到着すると、既に詠美さんがいた。
「……おはようございます。早いですね」
「おはよ! 彩。なんか早く目が覚めちゃってね。早めに会場入りしたの。ねぇ、見て彩。あの段ボールが彩の本よ」
指を指した方向を見ると、5つの大きな段ボールが積まれていた。その横にさらに10倍近い段ボールが積まれているが、それが詠美さんの本だろう。
近づいて中を開けると、見栄えよい表紙が目に映る。1カ月間、苦労して描いた原稿の集大成だった。
それを見て感動で瞼が熱くなる。
オフセット印刷は試したことなかったが、こんなに綺麗に仕上がるんだ、と心が震えた。
今朝の今朝まで不安だったが、これだったら売れるのではないか、と期待で胸が膨らんだ。
「うん、いい出来ね。本にしてみるとさらにいい感じ」
「……はいっ! はいっ!」
「あはは、彩嬉しそう!」
「いえ、オフセットって初めてで、こんなに綺麗に仕上がるなんて思ってなかったので……」
「そうよね。あたしも初めてオフセットにした時は感動したなぁ」
2人で見合って笑い合う。今朝までの不安が吹き飛び、急に元気が出てきた。
詠美さんの同人誌を見てみると、詠美さんの本も素敵な仕上がりだった。試しにテーブルに並べてみると、壁サークルに恥じない見栄えで、思わず頬が緩んだ。
そうして詠美さんと過ごしていると、いつもの販売スタッフが揃いだしてミーティングを始める。
私は前回と同じで、見本誌チェックのスタッフに同人誌を提示した。ふと、南さんが来ないかと懸念したが、今回来たのは別のスタッフだった。
滞りなくチェックを済ませたら、いよいよ会場の時間帯になる。
今か今かと開場の放送を待ち構えていると、ついにその時が来た。
『これより、こみっくパーティーを開始します』
館内放送が流れると、会場は、膨らんだ風船が割れたような一瞬の静寂と、歓喜に包まれた。
遠くに見える参加者の列が、スタッフの誘導されながら前進するのが見える。そして外に出ると一気に早歩きになり、多くの参加者がこちらに向かってくるのが見えた。
詠美さんのブースには一瞬で列が出来上がり、売り子スタッフが購入者を捌いていった。
「はい! 本日新刊が2冊! 1冊は限定500部です! ご興味があればいかがですかー!」
販売スタッフのその一言で参加者の目つきが変わった。
500部と言えば一般サークルとしては膨大な部数だが、壁サークルとしては少ない。Cat or Fish!?の新刊であれば見逃すまい、と一気に注文が殺到した。
来る人は全員、購入できる分だけ購入し、私が描いた同人誌は飛ぶように売れた。
その後も注文は途絶えることがなく、始まって2時間もしないうちに、私の本は完売してしまった。
電光石火、とはまさにこのことだと思った。
夢のような現実に、目を瞬かせながら呆然としていた。
後ろから近づいてきた詠美さんが、ポンポンと肩を叩く。
「ね、売れるって言ったでしょ?」
歯茎を見せながらそう言って笑うと、急に売れた実感を得られて気分が高揚してきた。
「……はいっ! 詠美さん、私、本が売れるようになりました!」
「やったね、彩!」
そう言って、ひと際強く肩を叩かれた。
最後まで読んでくれてありがとう。
彩の物語を最後まで楽しんでみてね☆
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