Color!! ~ゲーム『こみっくパーティー二次創作』 : いろどり溢れる長谷部彩の物語~   作:拓田しろう

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58話 結ばれる2人

 

「バカッ!」

「……ッ!」

「なんでもいうこと聞きますなんて、そんなこと言うな! 言っただろ、彩がいても迷惑じゃないって! それにまだわからないのか!? 俺は……俺は彩のことが――」

 

 和樹さんの怒号が、全てを吹き飛ばした。

 怒号は続く。もうなにを言っているのかわからない。少しも認識することができなかった。

 体中に電撃が走ったように戦慄(わなな)いた。それを聞いて、直感した。

 

 ――ああ、もうダメなんだな、と。

 

 もう、立っていられない。これから、どうしていいかわからない。

 視力を失い、先が見えない。もう涙も流れず、ただ倒れていくしかできない。

 筋肉は弛緩し、和樹さんにもたれかかる。なけなしの力をふり絞って立っていたが、糸が切れたマリオネットのように力なく崩れ落ちる。

 地面に叩きつけられてしまえば、私の心は、ガラス細工のように砕け散るだけだ。

 重力に従って急速に地面に落ちようとしているところを――。

 

 ――崩れ落ちさせまいと、急速に阻まれた。

 

 いつまで経っても地面への激突はなく、代わりに力強く抱き留める力によって、倒れることは許されなかった。

 

「えっ……」

「もう一度言うぞ……俺は……長谷部彩のことが好きなんだ」

「……ッ!」

「ごめんな、俺が焦らせたばかりに辛い思いをさせて、寒かったろ?」

 

 雨に濡れたことなどお構いなく、強く抱きしめられる。

 包み込むように、慈しむように、愛おしいように。寄り添った体は私を凍えさせぬように、頭に添えられた手は優しく私の頭を撫でてくれた。

 瞬間、枯れたと思っていた涙が、ボロボロと両瞼から溢れだしてきた。

 

「あ……う……あ……うぅ……」

 

 嗚咽が止まらない。

 

「あああああ! 和樹さんっ! 和樹さんっ!!」

 

 和樹さんの胸の中で、むせび泣く。

 もうダメかと思ってた。二度と一緒にいられなくなると思ってた。

 なのに――こんな素敵なことが起こるなんて。

 

「うん、寂しかったろ? 俺も、彩がいなくて寂しかった。これからはずっと一緒だ……」

「……はい……はい……」

「彩。顔をあげて」

「えっ……?」

 

 顔をあげると、和樹さんは唇を重ねてきた。

 もう泣かぬよう、優しく温かくゆっくりと。そう感じて、和樹さんの顔を抱えて応じた。

 キスは続き、息次ぐ暇を与えてくれない。それでも和樹さんの体温を感じ取るように激しく続いた。

 

「彩……こっちに」

「あ……」

 

 ベッドに移動し、座らせられる。

 再度口づけされ、ゆっくりと衣服に手をかけられる――これから始まる秘め事に、胸が高まった。

 瞬間、あることを思い出し、俄かに慌てて和樹さんに話しかけた。

 

「か、和樹さんっ……」

「どうした?」

「これから……その……私たち……」

「うん、シタい」

 

 真っ直ぐに見つめてくる和樹さん。私も同じ気持ちだ。

 それについては望むところなのだが、1つ大きな問題があった。

 

「そ、それはいいんですけど……その……」

「嫌なのか……?」

「嫌なわけじゃなくて……その……最近……マンガばかり描いてたから……食べてばかりいて……」

「うん?」

「……太っちゃって……」

 

 その一言で完全に和樹さんの心に、火をつけてしまったらしい。

 猛獣のように猛った和樹さんを止める術はなく、あれよあれよという間に自分と私の服を脱がし始めた。

 生まれたままの姿を晒した羞恥心と、これから行われるコトへの期待感に大きく胸を膨らませ、感情はもう収集がつかない。

 後はもう流されるまま行為に及ぶのであった。

 

 ---

 

 夢見心地のまま目を覚ました。

 まだ外は暗く、部屋の中も冷たい空気に包まれていた。

 しかし、隣で寝ている和樹さんから伝わる体温のぬくもりが、私の体を温めてくれていた。

 

 和樹さんはまだ隣で寝ている。

 寝顔を見つめながら、昨日までの2か月間が嘘だったんじゃないかと思ってしまう。

 その光景があまりにも当たり前のように感じ、まるでずっと以前からこういう関係だったんじゃないかと錯覚するほどだった。

 ただ布団を捲ってベッドのシーツについた生々しい赤い染みが、その錯覚を否定した。

 

 ――本当に、しちゃったんだ。

 

 昨晩のコトは、あまり覚えていない。

 とにかく和樹さんと思いを通じ合わせたことが幸せで、全身を貫くような快感だけが記憶に残っていた。

 そこまで考えて、ボンッと顔が紅潮するのを感じた。

 

 ――勢いで変なこと口走っちゃったかもしれない……。

 

 頭をぶんぶんと振りながら、ベッドから降りて服を拾う。

 昨夜なにもせずに服を脱ぎ棄ててしまったため、まだ雨で濡れているのがわかる。

 ハンガーを借りて服をかけ、浴室に干して乾燥モードで乾かし始める。

 

 母が出張で自宅にいないのが幸いだった。

 さすがに朝帰りした上で男性(かずきさん)の服を着て帰ったら、いくら大らかな母とはいえ卒倒するだろう。

 とはいえ、本当に服を借りて外に出る訳にもいかない。

 和樹さんの洋服で着られそうな服はないかと探してみたらワイシャツがあったので、一時的に拝借して服を着る。そして暖房をつけさせてもらった。

 

 ベッドに戻ると、和樹さんは幸せそうな顔で寝ている。

 あまりにも愛おしかったので、そっと唇にキスをした。

 

「……彩?」

 

 どうやらキスで起こしてしまったらしい。童話のような展開で、なんだか素敵だと思った。

 

「起こしてしまってすみません。おはようございます」

「まさか、ずっと起きてたのか?」

「いえ、さっき起きたところです。あとすみません、服がまだ濡れてたから、ハンガーとお風呂場で借りてます。乾かしたくて……」

「ああ、いいよ。そういや昨日ほったらかしにしちゃったもんな」

 

 和樹さんも体を起こして話始める。

 つい最近まで一緒にいられなかったのに、今はこんなに近くにいる。

 先ほどまでの夢見心地の心境を思い出すが、間違いなく現実だと実感する。

 

「なぁ彩、順序が逆になっちまったけどさ……」

「えっ……」

「俺とまた、ユニット組んでくれるか?」

「……はいっ!」

 

 以前は理由がわからなかった。でも今回は違う。

 満面の笑みで、返事をした。

 

「……ところで彩、その恰好は?」

「その……服が渇いてなかったので、これ、借りてます」

 

 そう言ってワイシャツ姿を見せると、和樹さんは全身をくまなく見回した後、抱き着いてきた。

 

「彩、ごめん。もう一回していい?」

「えっ……和樹さん?」

「その姿は、反則だ」

「え……え……?」

 

 そうして和樹さんの和樹さんを見てみると、すっかり元気に目覚めてしまっている。

 それからはまた流されるまま、行為に及ぶのであった。

 




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