Color!! ~ゲーム『こみっくパーティー二次創作』 : いろどり溢れる長谷部彩の物語~ 作:拓田しろう
ここは商店街にあるファミリーレストラン。
名前こそ家族向けであるが、その用途は多岐に渡る。
ファミリーと言いつつ1人で来店するお客様であったり、学校帰りにおしゃべりする女子高生だったり、仕事の合間に羽を休める営業マンであったりと、様々な客層が利用する。
そんな多種多様な客層が利用しているくらいなので、複数人の女性だけの来店など決して珍しくない。
ましやて女子高生から大学生、社会人までの若干幅広な年齢層が集まって利用していたところで、まるで問題ない。
問題は、来店して1時間近く経つけどメンバーの中の年配2人が怒った表情で黙っていて、家族で楽しく食事を楽しむ雰囲気ではなくなっていることだ。
「……」
「……」
「……」
詠美さんに呼び出されて遅れて来店すること1時間弱。由宇さんと南さんは怒り心頭といった表情でなにも話さない。
瑞希さんは困ったような呆れたような顔を浮かべながら黙って見守り、そして私と詠美さんは針の筵に立たされた心境で過ごすことになっている。
一体なぜこんな事態になっているのか。それは数時間前に遡る。
服が渇いたことを確認して、自宅に帰宅した途端、家の電話が鳴った。
時刻は朝7時ほど。こんな朝から誰だろうと受話器を取ったところ、
『彩っ! 自宅にいるの!? よかった、無事なのね!』
という詠美さんの声が聞こえた。
その後すぐに詠美さんは背後にいる誰かに『彩が電話に出たわ! 無事みたいっ!』という声が聞こえ、背後から少し歓声が上がった後、怒声が響き渡った。
『こんの、よう呑気に電話でおったな! こっちがどれだけ心配してたっちゅうねんダアホッ!』
『由宇ちゃん、言いたいことはわかっているけど、ここで言っていてもダメよ。あとでじっくり徹底的に事情を聞き出さないと』
『お、お二人とも冷静に……!』
『冷静でいられるかっちゅうねんコンチクショー!』
と、なんとも物騒な声が響き渡った。
詠美さんも『ふみゅうううん!』と叫んでおり、声の力のなさからよほど追い詰められていることがわかった。
事情を聞くと、こういうことらしい。
昨日私を椅子に座らせられた後、自分一人の手に余ると詠美さんは人を呼びに行った。そして呼びに行った先が、由宇さんと南さんだった。
最初は先月のことがあって相手にされなかったようだが、普段の詠美さんの鬼気迫るほど慌てた様子から、ただならぬ事態が起こっていると思った2人はブースに駆けつけてくれた。
が、その時既に私は和樹さんの元に向かっていなくなっていたため、行方不明になったと言って大騒ぎになったらしい。
ちょうど一緒にスタッフ参加していた瑞希さんも加わり、4人で近場を探し出したが一向に見当たらず、一時は館内放送を流すかどうかの検討までしていたらしい。
どんなに探してもおらず、目撃情報から1人で会場から出ていった可能性が高い、とまでは突き止めたが、じゃあどこに行ったのだろうという話になった。
考えても答えは出ず、しかし詠美さんは慌て続けて落ち着かず、ついにはその場で泣き出してしまった。見るに見かねた由宇さん、南さん、そして瑞希さんは詠美さん宅に送っていって、一晩中行方を調べていたという話だった。
話を聞いて愕然とした。
まさかそんな大騒動に発展しているとは露知らず、私も大いに慌てた。和樹さんと寄りを戻していたところ、裏ではこんな大変なことになっているなんて夢にも思わなかった。
気分はまさしく天国から足蹴されて地獄に叩き落されて唾を吐かれたに等しく、昨夜の素敵な気持ちから一瞬で憂鬱な気持ちに逆戻りした。
電話で事情を聞いて、とりあえず商店街のファミレスに集まることになり、現在に至る。
ファミレスに入って、すぐに詠美さんと一緒に頭を下げるが、由宇さんも南さんも視線を合わせず一向に口を開かない。
これでは話にならないと思いつつも、しかしどう考えても私が悪く、弁解の余地もない。
黙って受け入れるしかなかった。
「はいはい、もうこの辺にしましょ」
パンパンッと手を叩いて仲裁する瑞希さん。
「2人とも事情は分かっていますけど、これじゃあ話が進まないです。一旦彩ちゃんにちゃんと事情を説明してもらいます。沙汰はその後でもいいですよね?」
「……」
「……」
由宇さんはともかく、いつも温和な南さんがこうなるのは大変珍しい。
よほど怒らせてしまったと見えて、罪悪感で気持ちが押し潰されそうだった。
「もう2人して……。もういいです。彩ちゃん、今回の件、ちゃんと事情を話してくれる? まずは昨日どこ行っていたの? そして先月どうして2人に失礼な物言いをしたのか。その辺りまで全部ね」
瑞希さんが『先月』と言ったということは、由宇さんか南さんからか、或いは昨日の夜にでも詠美さんから話を聞いたのだろう。
なんだか自分の悪事を広められたようで、胸が苦しくなった。
しかし全て自分が招いたことだ。事情を説明しないと、納得してもらえないだろう。
とはいえ、まさか由宇さんたちが一晩中苦労していた裏で、私は和樹さんと良いコトしてました、なんて口が裂けても言えない。
そこだけは隠しつつ、今までの事情を口にするのであった。
最後まで読んでくれてありがとう。
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