Color!! ~ゲーム『こみっくパーティー二次創作』 : いろどり溢れる長谷部彩の物語~   作:拓田しろう

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61話 親友を得た日

 

 そして今度は詠美さんへの謝罪が始まった。どちらかというと3人よりこちらの方がずっと大変だった。

 ただ謝罪を始める前に、どうしても和樹さんに電話がしたい旨を伝え、お店の公衆電話から和樹さんに電話をかけた。

 

『あれ、どうしたんだ彩。忘れ物か?』

「いえ、そうじゃなくて、これから瑞希さんと由宇さんと南さんがそちらに向かうと思います」

『え? 瑞希はともかく、なんで由宇と南さんが?』

「それは……えっと……た、多分大変なことになると思いますが……その……が、頑張ってくださいっ!」

『なんだそれ? 意味わからないぞ。ちゃんと事情を……あ、なんかチャイム鳴ったわ。瑞希たちかな?』

 

 そんな! いくらなんでも早すぎじゃないだろうか!?

 『と、とにかく頑張ってくださいっ!』と伝えて、電話を切り、詠美さんの元に戻った。

 

「……今の電話、和樹(あいつ)のとこ?」

「……はい」

「ちょっと話が違うんじゃない? 確かにさっきの話じゃ事情を話して和解したって言ってたけど、この2カ月ずっと会ってなくて、しかも昨日あんなことがあったってのに、もう気軽に電話できるほど仲直りしたなんて早すぎると思うんだけど」

「……それは……」

「彩、まだなにか隠してるわね? ちゃんと話なさいよ。じゃないとぜ~~~ったいに許さないんだから」

 

 詠美さんの目は怒り心頭といった感じで、終始こちらを睨んでいる。

 無理もない。私も逆の立場だったら同じように怒っていると思う。本当に迷惑をかけてしまった。

 

「わかりました。このことは……さすがに3人には言いづらかったので……」

「やっぱりなにか隠してたのね。で、あにがあったっていうのよ」

「……実をいうと、昨晩和樹さんの部屋にいたんです……」

「うん、でもそれさっき言ってたことでしょ?」

「ですからそうじゃなくて……その……和樹さんの部屋に……泊まってたんです……」

「…………うん?」

 

 店内のBGMが鳴り響く。早朝でまだお客様がまばらな店内は静かなものである。

 だが、周回遅れの詠美さんの思考が追いつき、1つの解答に至った詠美さんは店内を揺るがすほどの大声をあげた。

 

「え~~~~~~~~~~っ! つまり、彩は昨日まさか和樹(あいつ)とシテ……!!」

「ちょっと! 詠美さんっ!!」

 

 慌てて詠美さんの口を両手で塞ぐ。詠美さんはモゴモゴしながらも慌てふためいている様子で、なにか言おうとする。が、言われたら困るのでなんとか抑え込んだ。

 

「ちょ! 苦しいわよっ!」

「だって、こんな場所で叫ばれたらたまったもんじゃないですよ。周りを見てくださいっ!」

 

 まばらではあるものの、店内中の視線が私たちに集まっている。

 騒々しいと迷惑そうな顔をする人、きょとんとこちらを見る子供など様々で、とりあえず軽く謝罪の意味を込めた会釈をして、席に座り直した。

 そして向き合いながら、ひそひそと話し始めた。

 

「つまり、彩ってば昨日私たちが散々大変な思いをしていたってのに和樹(あいつ)とシテたわけ?」

「……えっと、つまりその……そういうことです……」

 

 顔から火が吹き出そうな思いをしながら、事実を明かした。

 詠美さんは天井を仰いで、顔を両手で覆い、笑い出した。

 怒っているような笑っているような不思議な顔を浮かべている。人間、処理できない感情を抱えるとこうなるのか、と変なところで感心してしまった。

 

「まったくもう、なんか怒ってたけど、おかげでなんかどっかいっちゃったわよ。ふみゅうん、南さんや由宇にも怒られるし、散々だったわ……」

「本当に申し訳ありません。これだけはどうしても話すわけにはいかなかったので……」

「ええ! ほんと言わなくてよかったわよ。大変なことになるところだったわっ! 本当昨日は大変だったんだから。あの瑞希って人にすごい助けられちゃった!」

「そういえば、なんで瑞希さんがスタッフやってたんですか? ずっと疑問だったんですけど……」

「知らない、あの人とはほとんど初対面だし。今回で2回目って言ってたわ。私が泣いた時もすごい親身に寄り添ってくれて、パンダも『そんなやつ放っておけー』って言ってきたんだけど、あの人が怒って説得して私を自宅まで送ってくれたの」

 

 その話を聞いて驚いた。

 由宇さんと因縁がある初対面の相手が泣いているから、という理由で自宅まで寄り添って送ってあげるなんて、なんとも瑞希さんらしいと思った。

 

「ねぇ、あの人何者なの? 南さんからも信頼置かれているみたいだったし、スタッフの仕事をしてるところ見たけど、とても2回目とは思えなかったわよ」

「和樹さんの幼馴染です。私もすごい親切にしてもらってて。最初は和樹さんの彼女かと思ってたんですけど、単に世話好きな人みたいなんです」

「ふ~ん、由宇に向かって怒ってるとき、カッコよかったなぁ。『過去にいろいろあったとはいえ、泣いてる年下の子になんてこと言うんですか!』って由宇がたじろいでたもの」

「……そんなことがあったんですね……」

 

 瑞希さんがなぜスタッフになっていたかについては、また今度確認するとして、以降も詠美さんの小言は続いた。

 定期的に私が昨日シタことについて言及してきたが、それについては頑なに言わないようにした。

 

「なによっ! ちょっとくらい教えてくれてもいいじゃないっ! ほら、絶対服従!」

「プライベートな話に絶対服従はなしですっ! それに今こんなところで言えませんって!」

 

 という具合に、この件だけで小一時間やりとりが続いた後、ようやく詠美さんの気が済んだのかお叱りタイムは終わった。

 

「もういいわ。私も昨日の今日で疲れてるし、帰って寝たい」

「……重ね重ね本当にすみませんでした」

「でもよかったわね、彩」

「え……」

「また寄りを戻せたんでしょ? そしてなにより彩の本が好きで組んだって言われてよかったじゃない」

「あ……」

「ちょっと紆余曲折あったかもしれないけど、『売れる同人誌』を描けるようになって、寄りを戻せたんだから目的達成じゃない。おめでとっ! 彩!」

 

 そういうと、詠美さんはニコッと笑って見せた。

 

「そうですね……でも他にももっと良いことがありました」

「ん? あによ」

「詠美さんと友達になれました。これからも仲良くしてくださいね」

「……ッ! べ、べべべ別にそんなんじゃないわよ!? 天才は、こどくを愛してるのっ!」

「……私と友達じゃイヤですか?」

 

 そういっていたずらっぽく肩を(すく)めてみせると、詠美さんは慌てて訂正した。

 

「あ~、うそうそっ! 友達っ! 友達だってば! あたしも彩と仲良くしてたい~」

「よかったっ! これからもよろしくお願いしますね。詠美さんっ!」

 

 そう言ってお互い笑いあった。

 

 ――きっとどこから見ても、ファミレスで仲の良い女子高生同士がおしゃべりしているように見えるだろう。

 

 詠美さんの言う通り、本当に紆余曲折あった日々だった。

 一時は本当にダメかと思った。私のこの2カ月間の努力は無意味だったと絶望しかけたこともあった。

 

 ――でも、全然無駄じゃなかった。

 

 父が亡くなってから、心から笑えることが少なくなっていた。

 でもなんだかこれからは笑えるような気がする。そう思いながら、詠美さんとファミレスを後にするのであった。

 




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