Color!! ~ゲーム『こみっくパーティー二次創作』 : いろどり溢れる長谷部彩の物語~ 作:拓田しろう
「さっきはごめんなさい。将来の有望株くらいに思っていたら怪物級の作品だったから気が動転してしまって……」
「いえ、まぁ……大丈夫です」
「素晴らしいマンガだったわ。昔大物マンガ家がお忍びで同人誌を描いていて、なにも知らずに読んだときと同じくらいの衝撃」
「そ、そうなんですね……」
とてもわかりにくい例だけど、とにかく気が動転するくらい素晴らしい出来だったみたいだ。
ただ、先ほどの澤田編集長の豹変っぷりを思い出すと素直に喜びにくい。
「先輩、話が脱線していますよ」
「あ、ごめんなさい。でも素晴らしい出来ね。感動したわ」
「あ、ありがとうございます」
「そこで改めてだけど、プロのマンガ家になってみない?」
改めて言われても、内容が内容だけに即答できない。
第一来月から大学生なのだ。大学生活を送りながらマンガ家ができるかわからないし、なるとしても何からしていけばいいのかもわからない。
あまりにも唐突な話で判断材料がなかった。
素直に今の気持ちを伝えると、「まぁそうよね」と言って引き下がってくれた。
「それじゃあ連絡先を教えてもらえる? できれば一度出版社で説明する機会をもらえないかしら。おそらく親御さんもいた方がいいし、色々疑問点も解消できると思うの」
そう言われても、どう反応すればいいかわからなかった。
まさか和樹さん、詠美さんに続いてスカウトされるなんて思ってもみないし、少ない部数とはいえ、今日初めて完売できたばかりなのだ。
とはいえ、なにも返事をしないこともできないので、ここは応じるしかないだろう。
「わかりました。それでは母とも相談して、今度お話を伺わせていただければと」
「うん、ありがとう。お話しできるの楽しみにしてるわね」
そういうと、改めて名刺をもらい、連絡する際の電話番号と部署名を教えてもらう。
こちらも自宅の電話番号を伝え、この話はいったん完了した。
「すごいじゃない彩! いきなりデビューだなんて! 澤ちゃんがあんな風にスカウトすることなんてないんだから」
「わ! 詠美さん!? そ、そうなんですか?」
「そーよ! あたしもここに来るまでにどれだけネチネチ細かい指摘受けたかわからないんだから! ホント、性格ねじ曲がってるんじゃないのってくらい言われるのが普通なんだからっ!」
「大庭さーん、聞こえてるわよ~」
「ふみゅん! ご、ごめんなさ~いっ!」
「でも本当すごいですよっ! 私も長い付き合いですけど、先輩があんな風にスカウトするところは初めて見たんですから!」
「そやでっ! ウチもびくったわ~。鼻から飲み物吹き出しそうになったくらいやで!」
「すごいすごいとは思ってたけど完全に予想外っ! マンガ家デビューだなんてすごいわっ!」
「みんな……ありがとう、ございますっ!」
「彩っ!」
和樹さんに呼ばれて、振り向いた。
満ち足りた笑みを浮かべながらも、今にも涙が零れそうなほど揺らぐ表情をしている。
歓喜と安堵、でもめいっぱいの優しさを携えた瞳が、真っ直ぐに私だけを見つめていた。
「言っただろ? 邪魔とか迷惑なんかじゃないって。彩と組んだ方が学びが多いと思ったって。こんな素敵な場面に立ち会わせてもらえたんだ。彩は、最高だよ」
「――――――ッ!」
そうだ。和樹さんは最初から、ずっと私を信じてくれていた。
こみパの女王と呼ばれる人にユニットを誘われた時も、戸惑って別れを切り出そうとした時も、2カ月間も勝手に離れて活動した時も。
――いつも『迷惑なんかじゃない』と私と一緒にいてくれた。
途端、にわかに両瞼が熱くなった。ボロボロと涙が溢れだし、そのまま和樹さんの胸に飛び込んでいた。
「……ぅ……ううぅ……ありがとう、ございます……!」
「ああ、おめでとう彩……。彩の才能を、可能性を、ずっと信じてた」
「……ッ! はい、はいっ……! 私も、和樹さんとユニットを組めてよかったです……」
「ああ、俺もだよ」
瞬間、周囲から歓声めいたざわめきが湧き起こる。
詠美さんの驚きの声。由宇さんの冷やかし交じりの声。南さんと瑞希さんの笑い声。そして澤田編集長の若いっていいわねといった呆れ声が聞こえる。
その全てが、私たちを祝福してくれてるように感じ、人生で最高に幸せな瞬間に思えたのだった。
最後まで読んでくれてありがとう。
彩の物語を最後まで楽しんでみてね☆
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