魔法先生ネギま!~闇の剣と星の剣   作:路地裏の作者

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レーカ無双回!


098 その名は≪魔導杖≫

 

 その瞬間が訪れた時、全ての人間の視線が、一つの方向へと集中した。発着場周辺で状況の打破に向け忙しく動いていた警備員が、王子一行を守るため油断なく周囲を睨みつける護衛が、はたまた結界を張り続ける符術士が、同様に同じ方向を向いていた。

 

「…………冗談やろ?」

 

 見ていた。視ていた。観ていた。まるで磁石に引き寄せられるように、周辺から集まり続ける魔力の流れを。地面から、建物から、草木から、蛍のように儚く燈る光が、星屑のように集うところを。そして、それらあらゆる光を、力を、渦を巻く一振りの三叉槍が呑み込んでいく様を。

 

 そうして、それら全てを見守る者の中には、この異常現象に心当たりのある者もいた。例えば、異常事態を聞きつけてきた現オスティアの総督など。

 

(この現象……もしや幻想世界の魔力を喰らっている?)

 

 そう思い当たり、この現象を引き起こす元凶への警戒心が最大まで高まる。魔法世界は、一見旧世界(ムンドゥス・ウェトゥス)と変わらない世界のように見えるが、その実は全く違う。草木も、建物も、生物も、大地すらも火星という不毛の大地に合わせ鏡のように付随した幻想の世界に過ぎない。魔法世界の全てが魔法で出来ていると言っても過言ではないのだ。

 

 だと言うのに、今目の前で起こっていることは、単なる魔力の制御や収束には決して収まらない。人造異界を作り上げたかつての先祖たちの魔法を一瞬で無に帰す術法。これはもはや、万物に存在する魔力の『隷属』に近い現象だ。

 

 そんな現象を起こしているレーカは、静かに、ただ静かに瞑目していた瞳を開けた。

 

「ユニークスキル――――――≪魔導杖≫」

 

 その宣言と共に、槍を回す動きが終わる。それと同時に彼女の背中に、大きく花開くものが現れた。それは、『翼』だった。全体を水で形作られ、氷の風切り羽を備えてはいたが、確かに翼だった。そして、彼女の頭頂部に、同じく水と氷で構成されたリング状の物体が浮かび上がる。

 

 水と氷の大天使。それが今の彼女の姿だった。その余りの変貌に、神々しさに、呆けていたオベイロンは、その焦燥を隠すかのように大声で嘲った。

 

「…………は、ははは! 何が起きるかと思って見ていたが! そんなちゃちな変身で僕が倒せるとでも思っているのかい?! 全く愚かだよ、ははははは!!」

 

「………………」

 

 その言葉には答えず、レーカはただゆっくりと槍を持ち上げ、その切っ先でオベイロンの右腕辺りを指し示した。

 

 次の瞬間、オベイロンの右肩から先が、押しつぶされるようにひしゃげ、引き千切れた。

 

「あ……? がぁぁぁあああああああああああぁぁぁあああああぁ?!」

 

 汚らしい悲鳴を上げ、オベイロンが地面をのたうち回る。そのたびに傷口から零れる血液が、地面をしとどに濡らした。

 

(なんだ!? 一体、何をされた!!)

 

 地面を転がりながら、痛みに苦しむふりをするオベイロン。一体何をされたのか、その人よりは若干優れた頭脳で必死に答えを見つけようとしていた。もっとも目の前の相手は、そんな偽装など決して許さない相手だった。

 

 前へと向けていた切っ先を横へと向ける。そのまま軽く、本当に軽く槍を横に薙いだ。一拍遅れて、膨大とも言える波濤が沸き起こり、オベイロンを横殴りに吹き飛ばした。

 

「がっ……?!」

 

 突然の衝撃に呼吸が詰まり、咽頭を水が蹂躙する。水の奔流の前に成すすべなく流されながら、それでも力を振り絞って激流から逃れた。

 

「ゲホッ……ゴホゴホッ!!」

 

 ようやく這い上がると、オベイロンの姿は哀れを誘う姿となっていた。右腕と右の翼は引き千切れ、魔力で再生しようとしているのか、傷口で黒い瘴気のような魔力が蠢いている。文字通り作り物のように美しかった金髪や白い肌は余すところなく濡れそぼり見る影もない。

 

 それでも最後に残ったプライドか、強引に俯いていた視線を全力で押し上げ、目の前の相手へと問いを投げつけた。

 

「なん、だ…………貴様のユニークスキルは、一体なんだ!?」

 

 その問いに対し、レーカはすぐには答えない。その面にも、仕草にも、感情が見られない。その人間らしくない様子に、まるでここにいるのは、人間以上の超越存在であるかのように感じた。

 

「…………私のユニークスキルは、アインクラッド唯一の『魔法』を使用できるスキルです」

 

 それは、かつてこのスキルを渡してきたヒースクリフから聞いたこと。ユニークスキル≪魔導杖≫は、アインクラッドの中において、現実での魔法習得・魔力使用を目指した実験的なスキルなのだと言う。

 

 ヒースクリフ曰く、本来現実での魔法使用には、どうしようもない程『才能』の有無が関わって来る。本人が生まれ持つ『魔力タンク』が小さければ大きな魔力は扱えないし、大規模な魔法も撃てなくなる。そして、そうしたタンクの大きな人間は、やんごとない血脈や名家に生まれやすく、突然変異か特殊な実験でも起こさなければ覆すことは出来ない。

 

 そこでヒースクリフは、人体に『外付け』の魔力タンクを取り付けることを思いついた。具体的には、このユニークスキルによって周囲の大気・大地・生物など、魔力を含むありとあらゆる事象から魔力を徴収する道筋を作り上げる。最初に行った渦のような舞踊は、そのための動きだったのだ。事前準備は終わり、彼女の背中に全てを超越する魔力の大翼が花開いた。今の彼女は、僅かな動きでも魔法現象を引き起こす、膨大な魔力の塊なのだ。

 

「…………ば、ばかな…………身体から漏れ出た余波(・・)だけであんな現象を起こすなど……いったいどれほど高密度の…………」

 

 今まで彼女はソードスキルも、ALOの魔法も使用していない。では、彼女が本気(・・)で魔力を使用すれば……

 

「そうですね……………………近衛家の才能を完全に開花させた、このか十人分(・・・・・・)くらいでしょうか?」

 

 絶望的な現実を告げ、レーカが長大な詠唱を紡ぎあげる。その澄んだ歌声に応じるように、傅くように、周囲の水分が集まり、渦巻き、やがて水だけで出来た球体を四つ作り上げる。

 

 ことここに至って、オベイロンは悟った。目の前の相手は、決して侮れない怪物だと。しかしそれを素直に出すには、赦しを乞うには、彼は傲慢にあり過ぎた。

 

「ふ…………ふざけるな…………貴様なんかに…………貴様ナンゾニィィィィィッ!!」

 

 言葉の途中で、オベイロンの身体の輪郭が膨大に膨らんでいく。自身に取り込んだリョウメンスクナノカミと、爵位級悪魔ヘルマンの力を完全に解放したのだ。二面四臂に、悪魔の顔と翼を備えたソレは、正しく『怪物』だった。

 

 人間であることを自ら捨ててしまった愚者に、人間のまま人間の領域を超えようとする戦乙女は、最期の宣告を為す。

 

 

「≪ノアズ・アーク――――――――アーマゲドン≫」

 




レーカ無双終了!

彼女のユニークスキルは、現実での魔法練習用の実験スキル。アインクラッドでは魔法的スキルは無いという話ですが、理不尽な性能のユニークならあってもおかしくないので。ホントは杖のソードスキルを繰り出すと、それに魔力が乗って射程と範囲と威力アップというスキルです。でもレーカはALO最強の水メイジだから……。

技の発想自体は、ド○ゴンボールの元気玉やBLEA○Hの滅却師・最終形態です。魔力タンクの大きさが生まれつきで成長しないなら、他から持って来ればいいじゃないという単純思考。おかげでオベイロンは犠牲になったのだ……!
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