――『最強の剣士』とは、果たして誰か?
この問いをSAO
――しかし、ALOを経験した者たちにとっては、そうではない。
こと剣技の一点に絞るならば、ALOのプレイヤー達は、『最強の剣士』と聞けば正しくたった一人を思い浮かべる。それは、彼女が余りに鮮烈に生き、そして駆け抜けていったから。彼女の神がかった剣技の前には、かの≪黒の剣士≫ですら敵わない。フロアボスですらワンパーティーで打倒する、問答無用の『最強』だったから。
誰もが認める『最強の剣士』。その者の名は――――。
「――――≪システム・コール≫」
チウがそう呟くと同時、彼女の握る≪心意結晶≫が輝き、光を周囲に溢れさせる。しかし、その光の色は、普段チウが発している金色の魔力光ではなかった。
光の色は、スミレ色。その光が、結晶だけではなく、チウが持つ一本のスクロールからも漏れ出していた。
「な、ん、だ……ソ、レは……」
対峙するザザにとって、目の前の現象は初めて見るもの。現象としては、仲間の一人であったオベイロンが行っていた結晶を媒介とする使役術にも似ているが、それとはどこか異なる。基点となっているのは、何の変哲もないスクロールであるところにも違和感を感じた。
「私の切り札、≪心意結晶≫だよ……もっとも本当は京都の時みたいに、仮想空間での自分を現実に写し出すのが本来の使い方だけどな」
≪心意結晶≫は、その名の通り想いを現実に写しだすためのもの。今まではチウやコウのように仮想世界での思い出が詰まった自分自身を具現化するのに一役買っていた。
だが、それだけではないと気付いたのは、アスナから貸し出されたALO最強剣士の
その仮説に至ったチウは修行期間を利用し、アスナから受け取ったスクロールの中に遺された魂の残響を汲み取る作業に没頭した。スクロールに遺されていたそれらしい反応を観測し、そこから生前の人物を再現する気の遠くなるような工程。そうして魔法世界への出発間際、ついに≪心意結晶≫による『死者の具現化』に成功したのだ。
ただ瞑目し、己が中へと埋没し、朗々と詠い、世界の条理を崩していく。
「『
電子精霊に呼びかけ、スクロールを形作る零と壱の情報を分解し、解析し、その中に込められた想いを読み取っていく。一片の欠片も逃さず、一分の隙も無い程完璧に、彼女の想いを、『魂』を蘇らせる。術式の進行に伴い、最初は仄かな魔力光が徐々に徐々に輝きを増し、世界を照らす明星となっていく。
その工程は、決して困難なものではない。ましてや不可能なことでもない。今の
「――――――――≪リンク・スタート≫」
漂っていた魔力が一点へと殺到する。集中した魔力によって霧が発生し、果たしてどうなったのかは分からない。
それでも、対峙するザザだけは感じ取った。先程からの詠唱、術式の完成に近づくにつれ、彼の心中に沸き起こった不可思議な感覚が、今ようやくその形をはっきりと明確にしたから。目の前の水煙の向こう、自分にその想いを抱かせた『強者』は確実にそこにいたから。
――――これは、『歓喜』だ。
詠唱の終結に向け、術式の完成に向け、ザザは足音高く近づいてくる『強者』の存在に歓喜していた。いまだ正体も分からぬ相手は、確実に強い。ことによるとあの≪閃光≫より、いや≪黒の剣士≫より強いかもしれない。
ザザは、胸の裡に籠る熱のままに飛び出した。
「シィィィィィッ!!」
その手に握った
その絶対の運命を覆したのは、黒曜石で出来た片手直剣≪マクアフィテル≫。ギャリィッと甲高い音を立てて、刀身の全てを使って、光の槍を後方へと逸らしていく。その絶技に、その実力に、知らずザザの口元に獰猛な笑みが浮かんだ。
その剣で絶対の運命すらも覆したのは、紫がかった黒髪の剣士。黒と紫を基調とする銅鎧に身を包んだ彼女は、剣という凶器を持っているにも関わらず、まるで舞うように優雅に地面へと降り立った。その内の情熱を、天真爛漫な魅力を、全て内包したくりっとした瞳が、ザザを見据える。
「…………名乗れ、女剣士」
この時だけは、ザザは決して詰まることなく言葉を口に出来た。眼前の相手に、最大の敬意と最大の畏怖を抱いていたから。ザザの問いに、彼女の花弁のような唇から言葉がこぼれた。
「ボクは、ユウキ!! チウを守る剣士だよ!」
かつてALOの伝説となった最強の剣士、≪絶剣≫ユウキ。彼女は今また不死鳥のように蘇り、魔法世界で再びその手の剣を握った。
ユウキ復活回、終了です!彼女はチウからの魔力供給で現界しており、ほとんど彼女のサーヴァント状態です。
ユウキの復活は賛否両論あると思いますが、原作では彼女を救いようがなかったため、なんとか登場させたいと思ったのが事の始まりです。しかし彼女の病気を魔法で治すのは余りにSAOにもネギまにも失礼と思い、魔力で身体を作られた擬似サーヴァントとしての登場となりました。
ちなみに決戦後の彼女についてですが……本人死んでるので、後で偽名作って麻帆良に来る予定です。実はバレンタイン話にも、少し登場してます。