魔法先生ネギま!~闇の剣と星の剣   作:路地裏の作者

106 / 130
本当に、「一時」です。



101 一時の幕引き

 発着場に未だ残っていたすべての人間の視線が、一点に集まっていた。その中心で行われていたのは、原初の人間の闘争の姿。銃など用いず、魔法など介さず、ただただ単純で純粋で、ありとあらゆる虚飾を廃した人と人との意地のぶつかり合い。剣士の語らい。お互いを食い破らんとする凶器のせめぎ合いは、絶対の必殺空間(キル・ゾーン)を作りながらも留まるところを知らず高まり続けていた。

 

「シィィイイイイイイッ!!」

 

「でぇ――――――いっ!!」

 

 ザザの持つ刺剣(エストック)から幾筋もの閃光が奔り、背後の建造物を砕いていく。ユニークスキル≪無限槍≫で極大化した刺突は、それ一つだけでも必殺の一撃となる。その圧倒的な光景に、過去の大戦を知るもの達は皆、≪紅き翼≫に所属したある達人の音すら置き去りにする無音の拳を思い浮かべた。

 

 それに対して、黒紫の髪を持つ少女の武器は、余りに簡素。黒曜石特有の深みのある黒い光沢を発しているものの、きらびやかな装飾も、見る者を惹き付ける魔の光も秘めてはいない。

 

 それでも、誰一人、彼女から視線を逸らせない。彼女が魅せるのは、類まれな『剣舞』。鋭い切っ先が円を描き、螺旋を描き、迫りくる閃光を彼方へと弾き飛ばす。黒曜石の片手直剣≪マクアフィテル≫が死の閃光を逸らす度、辺りに涼やかな音が響いた。その音は死を運ぶ凶器から響いたとは思えぬほど心地よく、戦場から穢れを祓うかのようだった。

 

「っ、はっ………………く、は、ははははは…………!」

 

 何時しかザザは笑っていた。これまでのように誰かの死を嘲笑うのではなく、心から晴れやかに、気持ちよさそうに。そうだ、これだ!これこそが自分の求めたものだと、ザザは心の底から確信出来た。余りに笑いすぎて、腹を抱えて転げまわりたかった。思わず吸い込んだ吸気が気道に入り込み、少しばかりむせた。それすらも今の彼には可笑しさを助長する要素でしかなかった。

 

「ふぅ――――……少しは満足出来た?」

 

 ユウキと名乗った少女が、お道化るようにこちらの内心を聞いてくる。どこか見透かしたような問いではあったが、気にもならない。何故なら、問いも答えも、分かりきって(・・・・・・)いることだから。

 

「く、くく…………これ、しきで、満、足できる、わけもないだろう……?」

 

 あくまで、本当に可笑しくて咳き込んだように、口元の手を握り込む。ゼイゼイという呼吸も、ただの戦疲れで呼吸を整えているように装う。どんなことがあろうと、決してこの相手にだけは悟らせたくなかった。その拳の内側が、咳と一緒に飛び出た『喀血』で汚れているところだけは。

 

「………………そっか。じゃあ、ボクも容赦はしないよ。ここからは、本気で貴方を仕留めに行くから」

 

「望、むところだ……!」

 

 そして、再び互いの武器を手に、戦いを再開しようとした時だった。高く響く銃声とともに、二人の間の石畳に、数発の銃痕が刻み込まれた。同時に視線を上げると、そこに一挺の拳銃を構えた青年が立っていた。肩には気絶したジョニー・ブラックが担がれている。

 

「……兄さん、一度退こう。そろそろ『時間』だしね」

 

「恭、二……! な、んのマネだ。コイツと、は、ここで決着を――」

 

「それは、またの機会にしよう。どうせ最終決戦の舞台には、彼女らも参加するだろうし……………………それに、ね」

 

 恭二(シュピーゲル)の言葉の意味はユウキにもほとんど分からなかった。そして、恭二は声を潜めると、ザザにだけ聞こえる声で最後の言葉を紡ぎ出した。

 

「兄さん……………………そろそろ『薬』の時間でしょ?」

 

 呟かれた微かな言葉に、ザザはしばらくの間歯を軋らせていた……。しかし不意に戦意を収めると、その剣を鞘へと仕舞い、恭二の横へと並んだ。

 

「まあ、いきなり攻めてきていい迷惑だろうけど……ここは退かせてもらうよ」

 

「オイオイ、何言ってんだよ、恭二サン。こっちは色々事情を知りたいんだ。是が非でも鉄格子付きのスイートルームでお話聞かせて貰うぜ」

 

「うん、その対応は正しいよ。でも今日の所はそっちも『忙し過ぎて』無理じゃないかな?」

 

 そう何気なく言われ訝しんだが、唐突に恭二が虚空に向かって指を指す。視界から彼らを外さないよう気を付けながら、眼の端でその指の先を追って――――――――目を疑った。

 

 発着場から離れた街中心部の空中に、いくつもの黒曜石の石柱が発生していた。

 

「――――あ?」

 

「ウチの依頼人(クライアント)の大質量での中規模攻撃呪文――≪冥府の(ホ・モノリートス・)石柱(キオーン・トゥ・ハイドゥ)≫だよ」

 

 恭二の言葉と共に、黒曜の石柱は重力に引かれて降り注ぎ、街の中心へと落ちていった。衝撃が轟音が此処まで響いてくるように錯覚した。

 

「アンタら、まさか……!」

 

「そう。僕らの目的は、元々ここで魔法世界の小国の要人を害することでもなければ、君たちと雌雄を決することでもない。――――単なる『陽動』なんだよ」

 

 つまり街の中心で今起こっている闘争こそ、すべての『本命』。その場から不確定要素(イレギュラー)になり得るVR組を引き離し、かつ時間稼ぎをすることこそが敵の思惑だった。要人に暗殺未遂がかかった以上、直接の関係者ではないとは言え日本の関係者は確実に捜査当局によって足止めされる。国を背負っているためにすぐには動けない状況に陥った。

 

「くそっ……!」

 

 身軽に動けない自分たちを嘆き、口悪く吐き捨てるが全ては手遅れ。せめて目の前の三人だけでも捕縛することを考えるが、既に恭二とザザの手には転移魔法符が握られていた。

 

「じゃあね、チウちゃん、みんな」

 

「ユウキ、という、女……お前、は、この俺が必、ず殺してやる……!」

 

 魔法陣が展開され、三人の姿は光の中へとかき消えた。

 ……その後、≪笑う棺桶(ラフィン・コフィン)≫の首領であるPoHもまた、戦闘のどさくさに紛れて転移していた。犯人グループが逃走してからようやく突入したオスティアの捜査当局に説明を出来る限り最短で済ませ、実働部隊であるコウやチウたちが街に戻った時にはすべてが終わっていた。街での戦闘はネギ先生とフェイトの交渉決裂から勃発し、表面上は(・・・・)撃退して相手の情報を得ることが出来たと喜んでいた。

 

 しかし、この時既に、フェイト一派は最重要目標である『黄昏の姫御子』を連れ去っていた事実が後に判明する。魔法世界での戦いは、確実に終わりへ向けて動き始めていた。

 




と、いう訳で、アスナ誘拐終了……。原作での栞のキスシーンも、ラカンさんの流石の『無音めくり術』も、全カットです!とりあえず環さん、パンツは履きましょう。

現場にいなければ、誰一人として防げない。しかも日本政府の肝入りで来てると、しがらみも多くなる、と。

クルトたちオスティア政府やメガロは、原作でもいいように『完全なる世界』に動かされてた節がありますので、この作品でも操られ体質です。原作でコイツラがネギたちの邪魔しなければ、どれだけ楽に最終決戦が出来たことか。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。