発着場に未だ残っていたすべての人間の視線が、一点に集まっていた。その中心で行われていたのは、原初の人間の闘争の姿。銃など用いず、魔法など介さず、ただただ単純で純粋で、ありとあらゆる虚飾を廃した人と人との意地のぶつかり合い。剣士の語らい。お互いを食い破らんとする凶器のせめぎ合いは、絶対の
「シィィイイイイイイッ!!」
「でぇ――――――いっ!!」
ザザの持つ
それに対して、黒紫の髪を持つ少女の武器は、余りに簡素。黒曜石特有の深みのある黒い光沢を発しているものの、きらびやかな装飾も、見る者を惹き付ける魔の光も秘めてはいない。
それでも、誰一人、彼女から視線を逸らせない。彼女が魅せるのは、類まれな『剣舞』。鋭い切っ先が円を描き、螺旋を描き、迫りくる閃光を彼方へと弾き飛ばす。黒曜石の片手直剣≪マクアフィテル≫が死の閃光を逸らす度、辺りに涼やかな音が響いた。その音は死を運ぶ凶器から響いたとは思えぬほど心地よく、戦場から穢れを祓うかのようだった。
「っ、はっ………………く、は、ははははは…………!」
何時しかザザは笑っていた。これまでのように誰かの死を嘲笑うのではなく、心から晴れやかに、気持ちよさそうに。そうだ、これだ!これこそが自分の求めたものだと、ザザは心の底から確信出来た。余りに笑いすぎて、腹を抱えて転げまわりたかった。思わず吸い込んだ吸気が気道に入り込み、少しばかりむせた。それすらも今の彼には可笑しさを助長する要素でしかなかった。
「ふぅ――――……少しは満足出来た?」
ユウキと名乗った少女が、お道化るようにこちらの内心を聞いてくる。どこか見透かしたような問いではあったが、気にもならない。何故なら、問いも答えも、
「く、くく…………これ、しきで、満、足できる、わけもないだろう……?」
あくまで、本当に可笑しくて咳き込んだように、口元の手を握り込む。ゼイゼイという呼吸も、ただの戦疲れで呼吸を整えているように装う。どんなことがあろうと、決してこの相手にだけは悟らせたくなかった。その拳の内側が、咳と一緒に飛び出た『喀血』で汚れているところだけは。
「………………そっか。じゃあ、ボクも容赦はしないよ。ここからは、本気で貴方を仕留めに行くから」
「望、むところだ……!」
そして、再び互いの武器を手に、戦いを再開しようとした時だった。高く響く銃声とともに、二人の間の石畳に、数発の銃痕が刻み込まれた。同時に視線を上げると、そこに一挺の拳銃を構えた青年が立っていた。肩には気絶したジョニー・ブラックが担がれている。
「……兄さん、一度退こう。そろそろ『時間』だしね」
「恭、二……! な、んのマネだ。コイツと、は、ここで決着を――」
「それは、またの機会にしよう。どうせ最終決戦の舞台には、彼女らも参加するだろうし……………………それに、ね」
「兄さん……………………そろそろ『薬』の時間でしょ?」
呟かれた微かな言葉に、ザザはしばらくの間歯を軋らせていた……。しかし不意に戦意を収めると、その剣を鞘へと仕舞い、恭二の横へと並んだ。
「まあ、いきなり攻めてきていい迷惑だろうけど……ここは退かせてもらうよ」
「オイオイ、何言ってんだよ、恭二サン。こっちは色々事情を知りたいんだ。是が非でも鉄格子付きのスイートルームでお話聞かせて貰うぜ」
「うん、その対応は正しいよ。でも今日の所はそっちも『忙し過ぎて』無理じゃないかな?」
そう何気なく言われ訝しんだが、唐突に恭二が虚空に向かって指を指す。視界から彼らを外さないよう気を付けながら、眼の端でその指の先を追って――――――――目を疑った。
発着場から離れた街中心部の空中に、いくつもの黒曜石の石柱が発生していた。
「――――あ?」
「ウチの
恭二の言葉と共に、黒曜の石柱は重力に引かれて降り注ぎ、街の中心へと落ちていった。衝撃が轟音が此処まで響いてくるように錯覚した。
「アンタら、まさか……!」
「そう。僕らの目的は、元々ここで魔法世界の小国の要人を害することでもなければ、君たちと雌雄を決することでもない。――――単なる『陽動』なんだよ」
つまり街の中心で今起こっている闘争こそ、すべての『本命』。その場から
「くそっ……!」
身軽に動けない自分たちを嘆き、口悪く吐き捨てるが全ては手遅れ。せめて目の前の三人だけでも捕縛することを考えるが、既に恭二とザザの手には転移魔法符が握られていた。
「じゃあね、チウちゃん、みんな」
「ユウキ、という、女……お前、は、この俺が必、ず殺してやる……!」
魔法陣が展開され、三人の姿は光の中へとかき消えた。
……その後、≪
しかし、この時既に、フェイト一派は最重要目標である『黄昏の姫御子』を連れ去っていた事実が後に判明する。魔法世界での戦いは、確実に終わりへ向けて動き始めていた。
と、いう訳で、アスナ誘拐終了……。原作での栞のキスシーンも、ラカンさんの流石の『無音めくり術』も、全カットです!とりあえず環さん、パンツは履きましょう。
現場にいなければ、誰一人として防げない。しかも日本政府の肝入りで来てると、しがらみも多くなる、と。
クルトたちオスティア政府やメガロは、原作でもいいように『完全なる世界』に動かされてた節がありますので、この作品でも操られ体質です。原作でコイツラがネギたちの邪魔しなければ、どれだけ楽に最終決戦が出来たことか。