魔法先生ネギま!~闇の剣と星の剣   作:路地裏の作者

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やっちまった感のある今回です!


102 大問題発生!

 

 オスティアの発着場と街の中心部で同時に起きたテロ。その犯人は未だ捜索中であるものの、オスティアを統括するクルト・ゲーデル総督が主導となり、再度のテロに備える警備態勢はおおよそ整いつつあった。以降は問題となるテロリストを一刻も早く捕縛すると宣言し、総督自ら今回の都市規模の記念祭も予定通り執り行うと世界に発信した。

 

 それに伴い、オスティアの飛行場で犯人グループと接触した日本の使節団も、メガロメセンブリアから疑いの目を向けられることとなり、オスティア総督が率いる警備隊に捜査協力という形で取り調べを受けることになった。

 

「あ~~……やっと、終わった……」

 

「確かに、疲れたな……」

 

「…………うん」

 

「うにゃ~~、グロッキ~~」

 

 再三の事情聴取を終え、ようやく街中に繰り出すことが出来た≪世界の種子(ザ・シード)≫の面々。しかしこの数日で、彼ら麻帆良出身者を取り巻く環境は大幅に変わっていた。

 

 最初にそれに気付いたのは、初めて見る街並みに大はしゃぎしている新メンバー、ユウキだった。

 

「あ! 見てよ、みんな!! 伝説の拳闘士の復活だって!」

 

 ユウキが指さしたのは、現在街でもっとも話題に上っている『ナギ・スプリングフィールド杯』の投影ビジョン。拳闘士団の奴隷になっているまき絵・亜子・夏美の三人を救うため、ネギ先生が優勝を目指している大会だった。全員がその画面へと視線を移動させると――。

 

『元≪紅き翼≫所属! 伝説の拳闘士!! ジャック・ラカン、参加決定!!』

 

「「「「……………………ん?」」」」

 

 そんな大文字がデカデカと表示されていた。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 ジャック・ラカン。元≪紅き翼≫のナンバーツーの実力者であり、戦士系の癖して大戦時にリーダーのナギすら越える戦艦撃墜数を誇る猛者。使用武器は戦艦すら叩き斬る巨剣から、様々な片手剣・両手剣、斧や槍まで使いこなすオールラウンダー。その癖、本人が一番強いと豪語するのが『素手』だという色々間違った存在。付いた二つ名も数知れず、代表的な『千の刃』の他、『死なない男』、『不死身バカ』、『つかあのおっさん剣が刺さんねーんだけどマジで』等々。つまり一般の評価は、ナギと並んで一種の『バグキャラ』・『チート』の類だとするのが大多数である……。

 

「……それと、戦うことになったとか…………馬鹿なの? 死ぬの?」

 

「……無理だね」

 

「うわ~……よし。まき絵たちは他の方法で助け出そう!」

 

 あまりの事態に拳闘士ナギの控室に駆け込んだチウ・レーカ・キッドの口からは、既に諦めムードが滲みだしていた。当たり前である。半ばエキシビジョンみたいになった一回戦の映像を見たが、適当に手抜きした拳が、拳圧だけでクレーターを作っていた。コウたちも思いっ切り全開で技を出せば出来なくはないだろうが、アレはもはや爆撃機かミサイルのような破壊兵器のレベルだ。本人曰くイージス艦八隻分の実力というのもあながち嘘ではないかもしれない。

 

「あはは……そうかも知れないですね……」

 

 だと言うのに、目の前の変装済みのネギ先生は、退こうとはしない。本人としても実力差は弁えているとのことだが、どうしても退けないのだとか。

 

「……正直、自分でもバカなことをしてるって思ってます……けど、ラカンさんも言ってました。自分と戦って勝つのが、父さんや師匠(マスター)のいるところにたどり着く『扉』だって」

 

 そう言って、彼は迷いを振り切るように、前を見据えて言い放つ。

 

「だから、退けません」

 

 ……正直な話、今回ばかりは止めるべきだと全員が思っていた。だが、これでは止まらない。ネギ先生は麻帆良にいる時から、いやもっとずっと前から『父さん』の後を必死になって歩いている。その先に何があるのか、自分がどうなるのかなど考えもしないで、ただひたすらに。そのままでいれば、まず間違いなく自分の身の破滅を導くと分かったからこそ、コウたちは過去の記憶を見せたし、出来れば改めて欲しかった。

 

 だと言うのに、ネギ先生の行動原理は、今度の同時多発テロで定まってしまった。迷いが一切ないのがその証拠だ。

 

(くそ…………)

 

 目の前の少年をこう(・・)育ててしまった周りの大人たちに、内心毒づく。そして、自分も矯正しようとして失敗したことに嫌悪が募った。

 

 ネギ先生は、『英雄』の資質だ。それは間違いない。けれど、それは確実に作られた資質であり、本人の幸福など一切考えられてはいないのだ。災害や戦争といった個人がどうしようもないはずの代物を、超絶な能力で退けることは出来ても、絶対に小市民的な暮らしなど営めないだろう。

 

 目の前の『英雄』候補をどう説得するかと考えていると、部屋に新たな闖入者が現れた。

 

「おお、なんだなんだ? しばらく見ない内に、随分メンバーが増えたじゃねえか!」

 

 入って来たのは、勝ち残っていけばネギ先生が決勝戦で当たる相手、ジャック・ラカン。2m近い体躯に、みっちりと筋肉が詰まった男だった。とぼけた笑顔で雰囲気を和ませてはいるものの、修行を終えたコウたちにすれば、その内に秘める研ぎ澄まされた『気』に気圧されて思わず後退った。

 

「……初めまして、だな。日本の使節の護衛をしている、水原光だ」

 

「同じく、長谷川千雨だ……」

 

「……大河内アキラです」

 

「明石裕奈、です……」

 

「…………」

 

 どうにもぎこちない挨拶となったが、最後に挨拶をしなかった者がいた。そのことに気付いて全員が振り返ると、ユウキにしては珍しく、険しい表情を浮かべ、眉を寄せていた。

 

「ん――――…………あのさぁ、ジャックさん」

 

「ん? なんだ、嬢ちゃん」

 

「どういうつもりで、ネギ先生と大会で戦おうって、喧嘩売ったの?」

 

 その質問は、あくまで真っ直ぐ。ユウキらしいシンプルで真っ直ぐな質問だった。

 

 しかしあくまでラカンは、口元に笑みを浮かべつつ答える。

 

「あ~~ん? そんなのネギ(・・)に言った通りだ。コイツの実力が俺も気になってきてたからな。第一、コイツは『最強』を目指すって話だからな。俺とある程度も戦えねえようじゃ、とても無理だって引導も渡してやろうと思ってだ」

 

「…………そっか」

 

 その言葉を聞いて、不意にユウキが腰に括り付けた片手直剣に手をかける。そのゆったりとした抜刀に、ラカンに同行していたカゲタロウが身構える。そのパートナーの動きを、ラカンが手をかざし制した。

 

 そして、告げられた言葉は、その場にいる全ての人間の度肝を抜いた。

 

「だったらさ――――ボクとも手合せ願えないかな? ボクも色々納得いってないし、それに、ぶつかってみないと分からないこともあるだろうしね」

 

「…………へえ」

 

 ユウキの堂々たる宣戦布告に、ラカンの笑みが獰猛なものへと変わる。それに伴いビリビリとした圧力が部屋中に高まっていく。

 

「え、ちょ、ちょっと?! 長谷川さん、大河内さん、明石さん、彼女を止めて下さい! っていうか、誰なんですか、彼女!?」

 

 突然の臨戦態勢に、部屋の主であったはずのネギ先生が一番ついていけていない。名前を呼ばれたチウたちやコウに至っては、ユウキの性格を知る故に、既に諦めムードだった。

 

「――来な」

 

「いくよ!」

 

 今ここに、魔法世界の頂点と妖精世界の頂点の戦いが始まった。

 




なんと、ユウキVSラカンの夢の対決カード開始回!次回は対決の内容ですね。

ネギ先生は当初迷いの多い『子供』だったのに、超との対決から迷いを振り切ったように行動していきますからね。でも、そう育て上げた環境の影響が一番大きいように思えます。

物理(対決)で語る少女、ユウキ。御託やごまかしが出たら、まっすぐ突っ切るのが彼女の魅力です。おかげで拳闘士ナギの控室は全壊が確定(笑)
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