魔法先生ネギま!~闇の剣と星の剣   作:路地裏の作者

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104 定められた道

 

『――さあ! いよいよやって参りました、『ナギ・スプリングフィールド杯』決勝戦ッ!! 多くの出場選手を退け、今日この日、この舞台に立ちますのは、伝説と因縁に彩られし者たち! 果たして勝利の女神はどちらに微笑むのか!?』

 

「……あー、うっせぇ」

 

 部屋の壁際に浮かんだ映像配信用の魔法道具に、椅子に腰かけて書物を読んでいたチウが思わず嘆息する。

 

 ここは、闘技場に併設された医療機関。彼女は今現在、この医療機関に担ぎ込まれたユウキの付き添いでこの場を訪れていた。コウやレーカなどは、ユウキ本人が固辞したため、闘技場で試合を直接観戦している頃だ。

 

 ……結局あの後、ユウキとラカンの戦いは、ラカンの勝利。ユウキが最後に放った渾身の≪マザーズ・ロザリオ≫を、ラカンが耐えきって、必殺のカウンターを入れて勝負がついた。

 

 とは言え、ラカン本人も決して無傷ではなく、≪マザーズ・ロザリオ≫の最後の一突きは、ラカンの気も肉体も貫き、その身体を背中まで貫通してみせた。その状態で、筋肉を固めて刃先を絡め取り、両手をガッシリと噛み合わせて強大なハンマーの一撃を振り落とすのだから、単にラカンが化け物過ぎたとも言えた。

 

 そして、負けたユウキはと言うと。

 

「う~~……く~や~し~いぃぃぃぃぃ…………」

 

 未だ寝台(ベッド)の上だと言うのに、無暗に元気だった。

 

「…………いや、いいから寝てろよ。お前結構な損傷だったんだぞ? アバラどころか背骨にも一部罅が入ってたし、内臓は破裂寸前。下手したらあのままお陀仏だったんだから」

 

「む~~……でもさ、それもおかしくない? ボクって、本質的にはさよさんとかと同じ幽霊に近いんだよ?」

 

 基本的にユウキの身体は、実体化の際に必要となる魔力を請け負ったチウの魔力で出来ている。そう言う意味ではこの身体にも余り頓着せず、むしろ一度崩して再構成すれば一瞬で治癒するハズでもあった。しかし、今はそれも出来ない。

 

「アインクラッドでもそうだったが……今のお前はどういう訳か、現実に極めて近い実体を持っちまってる。怪我をすれば手当が必要だし、食い物だって食えるし、生物特有の反応も、果ては生理現象まで――」

 

「チウ?! いきなり女の子に何言ってんの!?」

 

 ユウキが慌てて遮ったが、おおむねチウの言う通りでもあった。話が出来る。料理も食べられる。涙も流す。何より触れ合える。この特異な現象は、麻帆良にいた時、アインクラッド内で修行していた時もそうだった。これでは、まるで……

 

 ワァッ!!という大歓声が突如として響き渡り、チウの思考も遮られた。映像に再び眼を移すと、会場に入場していなかったネギ先生扮する『拳闘士ナギ』と『コジロー』が、会場全ての視線をくぎ付けにしつつ、闘技場へと入場してきたところだった。

 

「……それで結局、ラカンと戦った感想はどうだった?」

 

「えっとね――強かった!」

 

 ユウキの能天気な返答に、チウは部屋に置いてあった花瓶を両手で握った。すぐ様振り下ろそうとするチウと、その腕を押し留めようとするユウキとの鍔迫り合いとなる。

 

「嘘嘘嘘! えーっとね、何て言うのかな、ラカンさん自体に悪意とかはないよ。アレはやっぱり、弟子の成長を見守ろうって感じだね。実力を試したいって言うのが、主目的じゃないかな」

 

「……本人言ってた通りかよ」

 

 口で語らなくても、剣で分かりあえることもある。何とも脳筋な考えだが、ユウキの眼力と見立てにはチウもある一定の信頼を置いていた。恐らく間違ってはいないだろう。

 

「あ、それとね……」

 

 ユウキが言葉の途中で、映像を見上げる。そこには未知の技を発現しようとするナギと、それを静かに見守るラカンの姿があった。

 

「少しだけど――――後悔しているようにも感じた」

 

 ◇ ◇ ◇

 

『おぉーーっとぉっ!! ここで出ました、ナギ選手のナゾの変身技!! まるで雷の化身と化したかのように、ラカン選手に襲い掛かるぅーーーーッ!!』

 

「…………」

 

 薄暗い部屋の中、空中に浮かび上がったモニタの映像を見つめ、一つ嘆息する男がいた。

 

「……ネギ・スプリングフィールド。確かに君は、英雄の資質だろう。その魔力、その血筋、さらには自ら学び取った≪闇の魔法(マギア・エレベア)≫。成程、かつての英雄と同等の力量を思い起こさせる」

 

 一人、部屋の中で呟きながら、彼はその画面から視線をずらす。そうして空中で特定の操作を行い、一枚の古ぼけた写真を浮かび上がらせた。

 

 そこに写っていたのは、かつての彼の仲間。お調子者で、その実経験に裏打ちされた安心感を抱かせた筋肉達磨。真面目一徹かと思えば、女性に弱かった堅物のサムライ。いつでもゲスい笑みを絶やさなかったが、その叡智で何度もメンバーを助けた年齢不詳の古本。見た目一番若い癖に、一番ジジ臭かったショタジジイ。ハードボイルドを気取っていたが、その実重度のヘビースモーカーでもあったヤニ臭いダンディ。そして、彼らをまとめ上げた無軌道で、自信家で、その癖誰よりも頼りになった赤毛の鳥頭。

 

 彼の隣にもういないかつての仲間たちに、ふっと口元を緩ませると、もう一枚の写真を取り出した。そこに写っていたのは、大人組とは別にカウントされていた少年組。さっぱりと刈り上げた短い髪をまとめ、師匠の真似をしてズボンのポケットに手を突っ込んでいた少年。サムライマスターから受け取った野太刀を得意げに携えていた眼鏡の少年。そして、向こうで手に入れた中古品のスモールソードとスモールシールドで武装し、騎士を気取っていたかつての自分。

 

 彼ら三人が、かつて共にいた見た目年下の少女を、写真の中心にして一枚の中にいた。それは、二度とは戻らない、確かにあった輝く日々。

 

 そうして写真を眺めること暫し、再び顔を上げた彼――ヒースクリフは、その表情に剣のごとき鋭さを戻していた。

 

「……けれど、生まれや能力なんかでは、人間の進む道は決まらない」

 

 それこそが、彼の行動原理。かつて子供のお遊びであろうとなんであろうと、騎士として仕えると誓った少女のために。

 

「ああ、そうさ……」

 

 全ては、世界を離れても、地球に逃れても、未だ彼の星の(ことわり)に捕らわれ続ける彼女のために。

 

「…………決まって、たまるものか……!」

 

 そのためならば、あの世界の造物主(かみ)とすら戦うだろう。

 




ユウキVSラカン、ユウキの敗北で終了!むしろあの筋肉達磨は、正攻法で倒せる気がしません。

ユウキによるラカンの考察、若干作者なりの解釈も入ってます。ラカンにしてみれば、自分たちがやったことの尻拭いをネギにやらせてるとも言えるので、だからこそ原作でこのかの言葉に動いたと考えられます。これで一切後悔してなかったら、フェイトと直接戦いにも行かなかったでしょうし。

そして、この世界では騎士道まっしぐらのヒースクリフ。SAO原作にくらべ、書いてるうちにどんどんキャラが変わっていく……

ここで来週・再来週の投稿について。GWにつき、帰省する可能性が出てきました。そのため、最悪二週間も期間が空いての投稿になるかも知れません。もし投稿無ければ帰省しておりますので、ご了承ください。
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