ついに図書館島が終わります!
それは巨大な敵だった。3mは軽く超える、岩のカタマリ。普通の人間がそんなものと敵対しようものなら、逃げるしかないだろう。無様に命乞いをするだろう。あるいは神に祈るだろう。しかし―――
眼前の二人には、『大したことはない』という印象しか与えなかった。
『ハアッ!』
『ラアッ!』
短い掛け声と共に、石像に何度も振り下ろされる剣と刀、そして光の刃。それは、先ほどの石像を砕いた攻撃と遜色ない威力の連続だったが、石像は表面が傷つくだけで、内部に影響がない。
「先ほどの石像よりも、耐久力が高いようでござるな」
「つ、つまりは、倒せないということですか?」
甲賀の中忍・長瀬のその言葉に、綾瀬が聞き返す。彼らが負ければ、強制的にこの場で勉強合宿ということになるので、気が気ではない。いくら本が大量にあっても、親友を含めたクラスメートが心配していると言われては、やはり地上に戻りたいのだ。
「いや、そんなこともないアル……見事アルヨ」
「「「「え?」」」」
そんな
「ど、どうやって?」
「二人がかりで、同じ箇所に交互に攻撃を加え続けたアルヨ」
「それもどちらも寸分の狂いもなく……いやいや、見事な技量でござる」
「「「「「……」」」」」
巨体の敵を前にして、そんな精密な攻撃が出来る存在。しかも片方は、自分達のクラスメートだという。観戦している彼女達は、もはや声も出せなかった。
「しかも恐ろしいのは、その正確性ではござらんな……見るでござる」
視線の先では、二人の騎士が自分の武器を石像にぶつけ続けていた――――
「あ、あれ? 石像が攻撃してない?」
「いや、少し違うアル。アレは、二人が完全にお互いの隙を消し合って、自分達の攻撃のつなぎ目を極端に短くしているから、石像が攻撃できないだけアルヨ」
「「「「「……嘘ぉ」」」」」
「恐らくあの二人は、二人組で戦っている時が本領……お互いのクセや攻撃を知り尽くし、掛け声も目配せもせずに、互いの意図を読みあっているでござるよ」
合図も無しに、内心を読めるというのは、一体どんな境地なのか。武道四天王とも呼ばれる二人はともかく、他の面々は、その技量に呆然となることしかできなかった。
◇ ◇ ◇
『固すぎだろ、まったく』
『ホントだな、これじゃ時間がかかりすぎる』
そんな言葉と共に、二人は眼前の石像から距離をとった。最初の連撃で左腕は上手く破壊できたが、その後は警戒されてしまい、今に至るまで致命的なダメージを与えられない。負けはしないが、いささか手詰まりなのも事実だ。
『……ここは、一つ≪切り札≫を切ろうか』
『アレか。OK、分かった。前衛とけん制頼めるか』
『了解』
空気が、変わった。二人の空気が張り詰め、獲物の隙を伺う肉食獣のそれに変わった。
(何をする気じゃ)
対する学園長もまた、学園最高の魔法使いの名に恥じず、相手の出方を警戒していた。あえて自分から均衡を崩すのではなく、相手の攻撃に完全に対処し、二人を拘束するつもりであった。
獲物を打ち倒す意思を持つ者と、ただ拘束する意思を持つ者。結局は、それが勝負を分けた。
『フッ!』
短い呼気と共に、コウが先陣を切る。そのモーションの初動は、左手。先ほど見せた片手剣の重攻撃と全く同じもの。
(おろかな……)
対する学園長は、即座に大剣での防御に移った。流石は歴戦の魔法使いだけあって、その防御は絶妙であり、受け止めると同時にすぐさま迎撃に移れるタイミングだった。
―――だが。それに対して、コウは迷うことなく……
「っ?!」
防御に出ていた大剣は、予想だにしない下からの衝撃で大きく弾かれた。
……学園長の不幸は、目の前の相手が一刀流の剣士でも無ければ、ただ武器を二つ持っただけの戦士でも無いと知らなかったことだろう。目の前の相手は…二年に及ぶ過酷なデスゲームの中で、扱いの違う刀と剣をただひたすら振るい続けた剣士なのだから。SAO前期において、システム上の制約で同時に二刀を持つことは出来なかったが、彼はスキルMod≪クイックチェンジ≫を活用し、右手にカタナ、左手に片手剣を
それ故に彼は――――『スキル無しなら、キリトすら凌ぐ二刀流』とまで言われたのだ。
カタナで跳ね上げられた大剣は、すぐには戻らない。そして――それを待つほど、
『ハァーーーッ!』
両手剣を八双に構えたチウが、ゴーレムの右脇に突っ込んだ。両手剣用単発重攻撃ソードスキル≪ヴォーパル・インパクト≫。≪ヴォーパル・ストライク≫以上の威力を誇るそれは、突き刺さった右脇を中心に、石像全体に大きくヒビを入れた。
「ぬ、ぬうっ……」
しかしこれだけでは、まだ石像を倒すには至らない。全体にヒビが入っているが、両足も健在で追ってこられれば十分厄介だろう。
―――緑色のライトエフェクトを、腰だめに構えたカタナに纏わせる剣士がいなければ。
『……トドメだ』
その言葉と共に、緑色の光が宿ったカタナは、遠間から一瞬で石像を切り裂く断罪の刃となった。
「な……」
呆然としたその言葉と共に、学園長の操るゴーレムは、無数の破片となって、湖に降り注いだ。
カタナに存在する、居合い系ソードスキル≪
―――もっとも、
『やっぱ、威力低くなってるよなあ……』
威力に全然納得がいかない様子だった。それもそのはずで、彼らは今自分自身の魔力を使って、かつての技を現実で
『…ま、今のレベルでぼちぼちやるしかないんじゃないか?』
『そうだな。焦るんじゃなく、自分の手札でな』
そんなことを呟きながら、彼女のクラスメートの方へと歩を進めた。
◇ ◇ ◇
場面は変わって、ここは滝の裏の螺旋階段。
「「「「「う~ん、う~ん」」」」」
「が、頑張ってください、皆さん!」
「みんなー、頑張りやー」
「「「「「う~~ん」」」」」
『唸ってないで、早く解け』
「「「「「オニーーーー!」」」」」
道を塞ぐように点在する中学生のテスト問題を、バカレンジャーが解いていた……後ろから光の刃でつつかれながら。
『さっきから唸ってばっかじゃねえか。んなことだから、時間かかんだよ』
「てか、クラスメートなら、助けてくれてもいいじゃない?!」
「そうアル! さっきから剣でつついてばかりじゃないアルカ!」
『元々、テメェラの成績不振が全ての原因だろうが』
「「「「「うっ」」」」」
『だから、この機会に少しでも成績が良くなるように協力してやってんだ。早く解かねえと、お尻に剣がプスッといくぞ?』
「「「「「ひどいよ~~~」」」」」
……まあ自業自得だった。そんなところに上から舞い降りるのは。
『チウ』
『コウ。連絡ついたか?』
もう一人の救出部隊、≪獣騎士≫コウ。
『バッチリ。今夜のうちに必ず寮に戻るって伝えておいた。図書館探検部の子は、かなり心配してたよ』
『おし。後は帰るだけだな』
そう言って、問題を解く彼らに視線を移す。どうやらもうしばらくかかりそうだ。
『それと、明日一日で全教科のテスト範囲を網羅できる勉強会も準備してくれるって。よかったねえ、明日は寝ないで勉強できるよ☆』
『よくやった』
「「「「「ギャーーーーーーッ!!!!!」」」」」
◇ ◇ ◇
……その後、テスト前にバカレンジャーは急遽泊まりこみで勉強を詰め込み、何とか平均点をとることに成功した。但し、テスト中ずっと目がうつろで、テスト終了と同時に、全員机に突っ伏すように眠っていたが。
ネギ先生については担当教科の英語の勉強に付き合っていたが、他の教科となると手が出ず、精々戻った魔力でリラックスや眠気覚ましの魔法をかけるのが精一杯だったようだ。
「まったく、今回はとんだ災難だったぜ」
「おかげでチウの勉強も結構スケジュールが厳しくなったもんね」
「ああ、まったくだ。こんな騒動はもうしばらくの間御免蒙りたいぜ…」
チウはこんなことを言っているが…今回2-Aが最下位を脱出したことに伴い、ネギ先生の残留も決まった。恐らく3年に上がってからも、騒動に巻き込まれるだろうことは、容易に想像がついた……。
「あ、あー、それじゃリフレッシュのために、今度エギルさんの店に遊びに行こうか? 今回はかなりチウに負担かけちゃったし……」
「それはいいが……私のリフレッシュだって言うんなら、当然奢りだよな?」
「……善処します」
そんな風に、オレとチウの中学二年生は終わりを告げた。
――――そして。
――――運命の、中学三年が、始まる。
というわけで図書館島終了!
今回、コウが出したのは作者が考える≪クイックチェンジ≫の活用法です。本来は戦闘中に武器を切り替えて、フェイントにすることも出来たんじゃないか、と思うんですよ。難易度跳ね上がりますけどね……
そして、魔力不足による、威力不足。元々この二人は、千雨の才能ですら、電子精霊に特化したものですし、魔力足りないんですよ。これをどうにかするのが、今後の二人の課題です。正直『今』の戦闘スタイルだと、『敵』にやられます。完全敗北です。
……まあ、作者が千雨をヒロインに選んだ理由も、この『課題』に関する一つの『回答』にあったりしますが♪
さて、次回はネギまサイドではなく、SAOファンお待ちかね、SAOサイドの話になります! 正直この春休みに強引にでも挟まないと、次は何時出てこれるか分からないし……SAOの時系列では、アリシゼーションから約1年9ヶ月。成長した彼らをご期待下さい!