魔法先生ネギま!~闇の剣と星の剣   作:路地裏の作者

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レーカ、チウのバトルも決着です!



116 戦乙女と星の騎士

 キッドとユウキがそれぞれの相手と死闘を繰り広げていたころ、そこからフロア一つ分下の階層では、人知を超えた光景が繰り広げられていた。

 

「クソ……! クソクソクソがっ!!」

 

 悪態をつきながら、その両手に持った投げナイフに光を宿し、一斉に発射する。ジョニー・ブラックのユニークスキル≪手裏剣術≫。ソードスキルを纏った多数の投剣により生み出される、本来であれば対処も難しい圧倒的な飽和攻撃。

 

 しかし、目の前にいる少女は、それ以上の規模を持った理不尽だった。

 

「――≪エンシェント・ヒドラ≫」

 

 一つ一つの直径が、人間の身長くらいある巨大な水の蛇が九体。辺りの瓦礫を砕き、ねじ伏せ、飛来した投剣も一緒くたに呑み込んで、衝突した。とっさにジョニーは横へと飛んでいたが、それでも衝撃の余波で息が詰まり、周りに飛び散った水しぶきで身体中が水浸しになった。

 

「ゲボッ……! クソアマがぁっ!!」

 

「…………」

 

 さっきから、これの繰り返し。だと言うのに、目の前の相手はがむしゃらに向かってくるだけ。正直、早く終わらせて他の援護に行きたい。そう思い、彼女がふと横の窓へと視線を移した時。

 

 

 胸に自らの刺剣(エストック)を刺して、雲海へと落ちていくザザの姿が映った。

 

 

「え?!」

 

「お?」

 

 レーカの驚愕の声に視線を移したジョニーも、視線の端で確かに捉えた。落ちていく仲間の最期の姿を。そして、そのまま、彼の姿を再び捉えることは無く、永久に消えていった。 

 

 そこまでを見届け、敵とは言え人の死を見たことでやり切れない思いとなるレーカ。しかし、次の瞬間、そんな気分を正面から笑い飛ばす男がいた。

 

「はぁ~、あぁ~、あーー……偉そうにしてたのに、さっさとくたばりやがったのかよ、ザザの奴! ぎゃはは!」

 

 ジョニーだった。げらげらと笑うその笑いには、一切の温かみが無く、ただ亡くなった相手を貶め、冒涜しているだけだと見て取れた。そのまま腹を抱え、ただただザザの事を笑い続ける。

 

 みしり、とレーカの手の中で槍の柄が悲鳴を上げた。

 

「……仲間、だったんじゃないの?」

 

「けけけけけ、あー? 仲間? あー、仲間だったぜ? ギルド時代から『剣士』とやらにヘンに誇り持ってる奴で、俺らとおんなじ人殺しなのに、どっか一線引いてるヤツ! 何回後ろから刺し殺してやろうとしたか分からねえくらいのな!」

 

 再び笑いの波が起こったのか、また一頻り腹を抱える。

 

「けど、見てみろよ! 散々『剣士』とやらにこだわってたくせに、ビョーキで身体が壊れて、最期はこんなどこだかもわからねえ空の上でお陀仏だ! くだらねえ! ぎゃはは――――」

 

「――もう、いいよ」

 

 ジョニーが発した死者への度重なる冒涜の返答は、その右腕をぐちゃぐちゃの挽き肉(ミンチ)に変える水弾だった。

 

「――へ? あ、ああ、ああああああああああああぁぁぁぁっ?!!」

 

 ぶしゅっ、と血が噴き出す傷口を押さえ、ジョニーがのたうち回る。その光景を、空気を一変させたレーカが、路傍の石を見るような目で見ていた。

 

「……いい加減、貴方のつまらない話は聞き飽きたし、皆の助けに行かないといけないし…………すぐにでも決着を付けさせてもらうよ」

 

 言うと同時、彼女の周囲に半月型の水の刃が浮かぶ。その数は、三。それら全てが生き物のように舞い踊り、ジョニーに残った左腕と両脚を半ばから斬り落とした。

 

「あああぁっ!? クソ、クソが! 楽しいか、オイ? 死にそうな相手いたぶるのは、さぞかし楽しいんだろ、オォイッ!!」

 

「……楽しくないよ」

 

 レーカの表情は変わらない。全く感情が顕れない、完全無欠の無表情。一切の感情を乗せず、ただ義務的に魔法を紡ぐ。

 

「――――≪プリズン・オブ・コキュートス≫」

 

 その魔法が完成した時、フロアの真ん中には10m四方の巨大な氷塊が鎮座していた。その内部に映し出されているのは、生きたまま凍らされる恐怖に、醜く顔を歪めたジョニー・ブラック。

 

「……本当に、こんなこと、全然楽しくない」

 

 ついに分かり合うことが出来なかった殺人者を見て、悲しそうに顔を歪めたレーカは、やがて踵を返し、それから一度も振り返ることなくフロアを出て行った。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 そして、彼女らが戦っていたフロアの外、周辺に点在する浮遊島の上では。

 

「アハハ、アハハハハハハハ!!」

 

「くそぉっ! 正気に戻りやがれぇっ!!」

 

 目の色が完全に反転し、一体の剣鬼と化した月詠と、それを戻そうとするチウが戦っていた。

 

「こんのぉおおおおおっ!!」

 

 チウが、その手に持つ全長2m半はある巨大な両手剣を叩きつける。その剣の名は、大剣≪インパルス・ブレード≫。≪七星剣≫『天枢』を司る大剣。単純な威力ならば、並ぶもの無き豪剣だ。

 

「アハハ、ヒィーッハハ!!」

 

 その大剣を、神鳴流≪斬岩剣≫であっさりと弾き、そのまま空中で独楽のように回転し、後ろ回し蹴りがチウの腹に突き刺さった。

 

「ゲホッ!?」

 

「ヒヒヒ!」

 

 吹き飛んだチウを追って、野太刀を後ろに尻尾のように引きずったまま月詠が追いかけてくる。ちょうど追いつく手前で、刀を持った右側にくるりと回転し、そのままバットのスイングのように、右肩を後ろに溜めて振りかぶった。

 

「――! ≪ディスティニー・シェル≫!!」

 

「キャハハハハハハ!!」

 

 神鳴流≪百烈桜花斬≫。すんでのところで展開が間に合った『開陽』の全身鎧≪ディスティニー・シェル≫で防御したものの、それでも衝撃を殺せず、無様にぶっ飛ばされる結果となった。

 

「あー、もう、勘弁してくれよ……」

 

 所詮は神鳴流の見習い剣士レベルの自分が、青山宗家の人間であるらしい彼女に勝てるわけがないのだ。それが身に染みて分かっているからこそ、チウは月詠を外へと誘い出し、空中戦に持ち込んだのだ。翅が生えた自分の有利を活かすために。そのはずだったと言うのに、目の前の相手は簡単にそれに対応し、反撃も全て的確。世の不条理を嘆きたい気分だった。

 

 ソードスキルは目で視認して回避され、盾は斬り裂き、抜刀はそれより早く動いて潰される。

かつて師匠で身に染みて分かっていたが、動き一つとっても軽く人間やめている。師匠に刻み込まれたトラウマが、チウの背後で「呼んだ?」とすり寄ってきているのが分かる。

 

「こーなると、後は……」

 

 はああああ、と重苦しい溜息を漏らし、埋もれていた瓦礫をどかす。見上げると、彼女はけらけらと楽しそうに笑いながら、肉食獣のようにじりじりと間合いを狭めていた。

 

「あー、もう! 師匠の妹だ! 玉砕覚悟で助けてやらあっ!!」

 

 やけになったように叫ぶと、そのまま瓦礫を蹴立てて空高くへと舞い上がる。それを眺めて、月詠も周囲の岩へと飛び移りながら追って来た。

 

 ちらりと肩越しに見ると、月詠の位置はほぼ真下。足場となる岩が少なく、彼女の経路も当然限られたものとなっていた。それを確認し、完全に相手の頭上を押さえると――。

 

「≪ストライフ・イージス≫――――!」

 

 全身鎧を、一瞬で大盾へと変化。そのまま翅を止め、真下の月詠目掛けて急降下を開始した。

 

「ぶっ潰れろーーッ!!」

 

 空気を引き裂きながら、チウが落ちる。大盾の重量を利用した特攻。それを見て、月詠が壊れた笑みを浮かべたまま、その手の野太刀を右肩へと担ぐ。

 

 空気が、放電する。ありとあらゆるところで紫電が舞い、月詠の刀へと集約していく。そうして溜まり、集い、遥かに高まっていく雷撃が、やがて巨大な球体を描いた。

 

「アーッ、ハハハハハハ!!!」

 

 神鳴流奥義、≪真・雷光剣≫。ありとあらゆる魔を、細胞レベルで焼き尽くす神鳴流の奥義が、大盾へと炸裂し、その分厚い装甲を粉微塵に砕き散らせ――。

 

「――――ヒ?」

 

 ――その向こうに、敵である彼女の姿が無いことに気が付いた。

 

「――賭けは、私の勝ちだ」

 

 声に視線を上げると、チウがいたのははるか上空。盾を目隠しにし、寸前で離脱していたのだと、ようやく悟った。

 

「輝け、『天璇(てんせん)』の星よ――――≪テンペスト・メイス≫」

 

 チウの声に反応し、砕けた大盾が新たな形に生まれ変わる。新しい姿は、錫杖。その錫杖の名は、≪テンペスト・メイス≫。その能力は、ありとあらゆる放出系攻撃の吸収・威力極大化。

 

「!?」

 

 未だに空中に留まっていた雷光剣の雷球が、錫杖に一気に吸収されていく。その勢いに呑まれ、身動きの取れない空中にいた月詠の体勢が大きく崩れた。

 

「おおおおおおおおおっ!!」

 

「?! !! アアッ!!?」

 

 翅を自在に動かし、空中で錫杖を回収したチウが、強力な突きを月詠の胸へと繰り出す。同時に錫杖が吸収したすべての雷撃を解放した。

 

「ア、アア、アアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!?」

 

 轟音が鳴り響き、雷撃を受けた月詠の身体が終始痙攣を続ける。やがて、衣服を全て黒焦げにされた月詠の口からぽふっ、と黒煙が一塊吐き出されると、そのまま意識を失って落ちていった。

 

「あー……はー、クソッ。しんどい、本気でしんどい」

 

 月詠を回収し、近くの浮遊岩へと着地した後、彼女の口をついて出たのは愚痴。ぶつくさ言いながら、手元の錫杖を新たな姿へと変える。今回選ばれたのは、宝冠≪ルミナリー・クラウン≫。能力は、精神干渉。『心意』の存在を知り、魔法の存在を知った彼女が、今後出現する可能性のある精神系能力者に対抗するために、夏休み前の修行で改造し、身に着けた≪七星剣≫の一つ。彼女に施された精神支配を解く為、早速役立てることにした。

 

「さっさと戻らねえとな……コウの所へ……」

 

 振り返り、見上げる迷宮の荘厳な姿。一見静かに見えるその姿が、今は彼女の不安を駆り立てるものにしか見えなかった。

 




レーカ、チウのバトルも決着!次回からようやくPohとのバトルです!

新川兄弟と違って、あっさりと終わったジョニー、そして月詠。やっぱり心の底からゲスな敵と、洗脳された意志無き相手だと話が膨らみません。特にジョニーは、書いてても不快感しか抱かなかったし。

チウの七星剣、ようやく全て出すことが出来ました。結局学園祭編でもやる暇が無かったのですが、アクセルワールドに出てくる七つの神器は、あのゲームの製作者が、チウの知り合いだったためにモデルにしたという裏設定まで作っていました……まあ、キリト製作者説が濃厚なのでの付け足しですがw

さて、次回の投稿。来週・再来週とお盆のため、帰省する可能性があります。そのためどちらかの日程で投稿できるか、あるいは出来ないのかも不明です。最長で二週間空いて、次は8月28日の投稿という事も有り得ますので、ご了承下さい。
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