魔法先生ネギま!~闇の剣と星の剣   作:路地裏の作者

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長期休みの復帰第二弾です!


117 骸の頂

 

 それぞれがそれぞれの相手と死闘を繰り広げる中、コウもまた目の前の相手と殺気に満ちた剣戟の応酬を行っていた。

 

「ガァアアアアアアアアアアアア!!」

 

「A――――ha――――――――!」

 

 片手剣が周囲の大気を暴力的に引き裂き、その斬撃をするりと避けた相手が肉厚の包丁で首を薙ぎに行く。それをさらに野太刀で受けた少年が、心臓狙いの突きを繰り出す。三つの武器が入り乱れる戦場において、その攻撃の一撃一撃が必殺狙い。明らかに互いの存在を許さず、その生命を刈り取らんとするもっとも原始的な戦闘のカタチがここにあった。

 

「ヒュ――――!! ≪黒の剣士≫もそうだが、狂ってるときのお前も、愛おし過ぎるな! そんなに『あの女』が死んだのが悔しかったか!?」

 

 PoHの言葉に視界が真っ赤に染まる。……忘れる訳が無いだろう。

 

「ガァアアアアアアアアッ!!」

 

「イヤ――ハ――――――!!」

 

 互いに駆け出し、ちょうど中間点で激突しようと互いの武器を振りかぶる。コウの武器と全身には、漆黒のライトエフェクトが纏わりつき、まるで獣のような咆哮を上げている。対するPoHはその手に持つ包丁から、血のような赤が混じった『黒』が噴き出していた。激突は必至、ゆえに結果は相打ちに終わるはずだった。

 

 ――覚えている。どんなに時が経とうと、その瞬間を覚えている。自分の剣によって貫かれた絶対に生きて欲しかった師匠の最期と――――

 

 

 ――――自分を人間に引き留めると誓ってくれた、少女たちを覚えている。

 

 

「――――――あ?」

 

 目の前にあったはずの獣のような狂気が、一瞬で消え失せる。同時に、繰り出した包丁の横薙ぎは、もはや誰もいない空間を通過するだけに終わった。その結果に、目を見開いたのは、PoH。どこへ行った?目の前にいたはずの、あの狂獣と呼べるほど愛おしい剣士はどこに行った?そう考え視線を巡らせ――

 

 すぐ近くの足元から迫る二本の剣閃を目にし、驚愕した。

 

「グゥ!?」

 

「はぁっ!」

 

 防御も回避も間に合わず、PoHの両足は脛の辺りから泣き別れとなった。それを成したのは、漆黒の光を刀身全体に纏わせた二本の刀剣。先程までその身体を包み苛んでいた≪狂乱剣≫は、完全にその手の武器に押し戻されているように見えた。

 

手前(テメエ)……とうの昔に、その力を制御できるようになってやがったのか……!」

 

「……この間までは、出来なかったさ。出来るようになったのは、本当につい最近だ」

 

 そう、本当に出来なかった。目の前の相手を、命に代えても倒そうと考えているうちは。あの時、彼の周りにいる三人の少女が、終わりじゃないと誓ってくれるまでは。彼と共に歩んでくれると告げるまでは。

 

 彼女らの言葉を聞き、命を懸けると誓った誓いが変化した時、唐突に出来るようになったのだ。≪狂乱剣≫の完全制御が。覗き込めば引きずり込まれそうな暗闇を、今ははっきりと拒絶出来ている。飲み込まれ、帰れなくなることだけはあってはならないと決意し、ぎりぎりで踏ん張れるようになった。そうして初めて制御ができる。このユニークスキルは、そういうものだったのだ。

 

「Oh......こいつは危機(ピンチ)だ。本当に最悪の窮地ってやつだな」

 

「……そういう割には、まだまだ余裕そうだな」

 

 依然として余裕を保ったままのPoHに、一層警戒心が増す。既に奴の両脚から先は無くなっている。だというのに、目の前の相手は、一切慌てていないのだから当然だ。

 

「ククク…………まあ、慌てる必要もないのさ、なにせ――」

 

 そう嘯くPoHの足元で、地面に映った黒く濃い影が不意に揺らめいた。そして、次の瞬間。

 

こういう奥の手(・・・・・・・)があるんで、なァ!!」

 

 PoHの影が爆発し、辺り一面へと一気に膨れ上がった。

 

「何!?」

 

 慌てて飛び退るも、PoHの影だったものは、あっという間に床一面を侵し、そこにあった瓦礫を飲み込んだ。変化は、それだけにとどまらない。

 

『オ――――――――――――――オォ――――――――――――――――ア――――――』

 

 広がり続ける影から、まるで沸き立つように髑髏が、骸骨が浮かび上がった。カチカチと、キチキチと、それらは歯を鳴らし、骨を鳴らしながら、一定の声を上げ続ける。

 

 それは、怨嗟。なぜだ。何故殺されなければならなかったんだと、辺り一面に恨みつらみをぶつけながら、まるで底なし沼のようにすべてを飲み込んでいく。死にたくない。生きたい。何故自分が。憎い。許さない。死ね。そんなありとあらゆる負の感情が、影から湧き出て、骸たちを動かしている。死から逃げ、死者を否定し、生者を憎み、生を恨む。無限の連鎖のような負のループが、PoHの影の中で繰り広げられていた。

 

「なんっ、だよ、こりゃあ……!」

 

「A――ha――n――? 中々に幻想的(Fantastic)な光景だろ? 今まで俺様が殺してきて(・・・・・・・・・・・)暗黒剣にくべてやった(・・・・・・・・・・)死人どもの魂なんだからなぁ?」

 

「なに?!」

 

 言われて改めて死者たちを見る。既に肉は落ち、骨だけが残る姿ではあったが、その中に何人か武装を持ったままの者たちがいた。ショートソード、スピア、ファルシオン、バックラー。この魔法世界のそれである可能性も確かに有ったが、それらはあまり品質も高い様に見えない。あえて言うなら、そう。あのアインクラッドで、初心者や中級者が好んで使っていた装備に見えた。

 

「コイツらは……!」

 

「アインクラッド、アンダーワールド、そして現実と魔法世界……。俺が巻き起こした戦乱で命を落とした奴らの成れの果てだよ」

 

 ボコボコと沸き立つ闇の中で、PoHだけが変わらずに佇んでいた。いや、違う。わずかだが、その表情も、その雰囲気も、より深く、より昏い空気を纏わせたかのようだった。

 

「俺が保有してた魔剣≪友切包丁(メイトチョッパー)≫の能力は、PKを繰り返すごとにその性能が跳ね上がるというものだった。オマケに俺が覚えた≪暗黒剣≫もまた、PKに関する代物でな? 今まで殺した人間の数量をカウントし、『生贄』として捧げることで威力を跳ね上げるというものだった――――つまりは」

 

 死が迫る。それは、大河。それは、瀑布。それは、津波。それは逃れ得ない暴虐の塊となって――――

 

 

「現実・非現実・魔法のありとあらゆる世界で、俺が巻き込み、殺し尽くした数万人(・・・)の人間たちが、俺様の力となる。さあ、跪け。首を垂れろ。お前の目の前にいるのは――――骸の城で玉座に座る、亡者の王(ノーライフキング)だ」

 

 




PoH本気モード発現の回終了。次回で決着かな?

PoH本気モードのイメージは、ヘルシングのアーカード……なんだけど、大分落ちるんだよなぁ。やっぱりヒラコー先生が書いた、悲しき鬼は偉大です!そうなると、コウが神父様か?

因縁の決着だというのに、どんなに長く見積もっても次回決着つきそう……。なんか厚みを作れないボスなので。
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