魔法先生ネギま!~闇の剣と星の剣   作:路地裏の作者

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123 神話の終わり

 

 見ていた。見ていた。見ていた。魔法世界の全ての人が、その光景を見ていた。世界を包んだ大異変が終息していく様を、ずっと見ていた。世界の異変が、水平線の彼方へと消えていくのを見ていた。そして、水平線の向こうで――――

 

 

 ――――天を衝く巨神が、ゆっくりとその身を起き上がらせるのを、見ていた。

 

 

『■■■■■■■■――■■■■――――――――――――――――――――――――!!!!』

 

 それが上げた産声は、世界を震わせた。

 

「うるせ――――――ッ!!」

 

「あらー♡ ずいぶんおっきくなってしまいましたなぁ?」

 

「ひゃー……フロアボスの百倍くらいあるんじゃない?」

 

 チウたちが言い募るのも無理はない。ヒースクリフの身体に取り憑いた造物主は、地面に足を付けている(・・・・・・・・・・)というのに、天を衝くほどの大きさなのだ。フロアボスの百倍なんて大きさでは収まるはずもない。浮遊している墓守人の宮殿の最上階でも、腰位の高さといえばわかりやすいだろうか。

 

「……つまり、これを倒せと」

 

「無理じゃないかな……ヒースクリフは、こんな規模の戦いになるって想定してたのかな?」

 

「どうなんだろうねー? ニヒヒ、少し燃えてきたかな?」

 

 なんとも緊張感に欠ける会話だが、そんな中でもそれぞれの武器を構え、目の前の大敵を攻め崩す準備を進めていく。誰一人、この期に及んで逃げ出そうとする者はいなかった。

 

「――フム、とんでもないことになったのぉ」

 

「ええ、お義父さん……これが暴れるなど、ぞっとしませんね」

 

「これは……二十年前の大戦を超える魔力量ですね」

 

 そんな彼らの元に、続々と戦士たちが集い出す。まずは麻帆良から駆け付けた近衛翁、詠春、クウネルら三人。

 

「このかさん……父さんと、母さんは?」

 

「焦らんといてー、ネギ君。ヒースクリフはんの指示通りやってるからなー」

 

「ああ、もう! 私のハマノツルギで、封印壊しちゃ駄目なの?」

 

「……そうしたら、アリカの生命が危ない。地道に解くしかない」

 

「こうしてお二人が並ぶと、かなり印象が違いますね……」

 

 ネギやこのか、刹那。そして二人のアスナ。その周りを囲むのは、ネギの元に集ったネギの教え子たち。

 

『なんじゃ、あのデカブツはー!!』

 

「……以前現れたのは、通常サイズだったと聞いています。恐らく、イメージや精神体が直接影響する身体に入ったことで、肥大化したのでしょう」

 

「……正直、鬼神兵が可愛く見えてくるよ」

 

 帝国保有の軍艦から通信映像を飛ばしてくるテオドラ。事態の変化を察知し、直接軍艦から転移してきたクルト、タカミチ。

 

 そして。

 

「って、ちょお?! 動いたらアカンて! 今治療するから、大人しくしてて!」

 

「…………あー、クソ。こっちは、もう大丈夫だ。アリカのこと頼んだぜ」

 

 そう言いながら、封印され続けて強張った肩をコキコキと鳴らす男がいた。今も心臓の辺りからドクドクと出血しているのだが、口元に不敵な笑みを浮かべている。

 

 ふと、彼の視線が、傍らに膝をつき、今にも泣きそうに表情を歪めている少年を捉えた。ふっ、と口元を緩ませ、その頭を撫でるかのように手を伸ばし――

 

「ふんッ!!」

 

 ――ゴキィンッ!!と、かなりいい音を立てるゲンコツを落とした。

 

「ふぇっ!?」

 

「あー、あー。なっさけねえな、息子よ。なーに親父と再会したくらいで泣きそうになってんだ」

 

「ぅぇ、っ、なっ……! こ、こんなの泣くに決まってるじゃないですか!!」

 

「男なら、泣くな。何があっても涙なんか見せんじゃねえ」

 

 そう言いながら、ふらつく脚を気合で抑え、しっかりと大地に立つ。その傍らには、あの日息子へと譲り渡した一振りの杖が浮かんでいた。

 

 そんな彼の元へと、傲岸不遜な表情を浮かべながら、齢600歳の少女が歩み寄る。

 

「ハッ、その身体で戦う気か? やめとけ、やめとけ。病み上がりには荷が重い相手だ。何なら、私が変わってやってもいいぞ? 対価は貰うがな」

 

「へっ、そういう訳にもいかねえんだ。良い様に取りつかれて、十年単位で後輩やら息子やらに迷惑かけちまったからな。こんな時ぐらい親父のいいトコ見せねえとよ」

 

 軽口を叩きながらも、身体に魔力を巡らせていく。そんな彼を見て、ほんの少し赤みのさした頬を緩ませたエヴァもまた、肥大化した造物主へと向き直る。

 

 そんな彼らの元に、一片の花弁が舞い降りた。

 

「――――へっ。俺もロリババアに賛成だな。封印から解放されても寝ぼけてやがる、ロートルは下がってな。なーに、俺様がいれば万事解決よ」

 

「面白れぇ冗談言うじゃねえか、筋肉達磨。十年間ギャグのセンスでも磨いてやがったのか? テメェこそ下がってやがれ」

 

「生憎俺様は、生涯現役なんでな。あんな幽霊のできそこないみたいなのに取りつかれてやがった、病み上がりよりは百倍マシだ。テメェこそ下がれ」

 

「「…………」」

 

「「やるか、コラァッ!!」」

 

 どっちも復活したてだというのに、割と全力で喧嘩するナギとラカンの姿があった。

 

『■■■■■■――――――――■■■■――――――――――――――――――――――――』

 

「おい、バカども。どうやら向こうは待ちきれんようだぞ。喧嘩は後にしろ」

 

「へっ、いいぜ。決着(ケリ)はまた今度にしてやらぁ。まあ、どうせオレが勝つがな」

 

「おー、おー。病み上がりが強がっちゃって、まぁ。勝つのは俺様に決まってんだろ」

 

「あ、あの、父さんもラカンさんも、それ位で……」

 

「もー、ほっときなさいよ、ネギ。そいつらの喧嘩腰は、昔っからなんだから」

 

「ん。ナギもラカンも変わらなくて安心した」

 

 そんなどこかほのぼのとした空気が漂う最前線。世界の命運をかけた最終決戦の舞台。そんなあれこれを見て、コウは一つだけ溜息を漏らした。それを見て、傍らにいたチウが尋ねる。

 

「どうした?」

 

「ん? あー、下手したらSAOのボス戦よりヤバイっていうのに、あれだけ緩い空気を出せるって言うのは、やっぱりあの人たちが『英雄』だからなのかな、って」

 

「いや、そりゃ違うだろ。単にアイツらが底抜けのバカなだけだ。それにお前だってSAOの中じゃ英雄の一人なんだからな」

 

「でもなー。正直俺にあそこまでの空気は出せないよ。やっぱり余裕がなかったせいもあるけど」

 

 そんなことを宣うコウに、レーカやキッドが苦笑する。

 

「……コウは十分英雄だよ? 私たちにとっては、特に」

 

「ニヒヒ、そうだよね~? 死銃の時なんて、『私だけの英雄!』って感じだったんだよ? あー、もっかいあんなに格好いいコウが見たいな~」

 

「へー、その辺り聞いてみたいなー」

 

「そうですなー? ウチも新入りやから、どんな風に皆さん惚れていったのか、興味ありますわー♡」

 

 そして、一頻りコウを皆が弄る中、ついに造物主が動いた。その巨体を揺らし、神に楯突こうとする愚か者たちを誅殺すべく、ゆっくりと向き直る。そのころには、全員から緩い空気は吹き飛び、代わりに見る者を圧倒させる闘志が目に見えた。

 

「――――いくぞっ!!!」

 

『オオッ!!』

 

 そうして巻き起こる、天地を揺るがす一大決戦。後の世において、この戦いは『オスティア神滅戦争・最終決戦』と呼ばれ、現代に語られる最後の神話の物語とされる。この戦いこそ、人類が真の意味で神々の手を離れた証明であったと語られている……。

 




一日遅れですが、お待たせしました!この話を以て、長かった戦いは終わりです。正直決戦を詳細に書いてもいいんですが、他の身体に移れない造物主には、万に一つも勝ち目ありません。他への憑依可能ならワンチャンあったのですが……ラカンインパクトでボコられ、千の雷で焼かれ、ソードスキルで削られていくワンサイドゲームは、書いても作業になりそうで。

そして、次回からはエピローグ。長かったこの物語も、ようやく終わりです。一回か二回くらいで終わらせようと思ってます。全員のエンディングと、そして、数十年後の『彼』や、百年後の『彼女』の物語へと!ご期待ください。
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