魔法先生ネギま!~闇の剣と星の剣   作:路地裏の作者

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124 かくも騒がしき日常への回帰

 

 魔法世界の存亡をかけた騒動から季節は巡り、秋に差し掛かった頃――。

 

「――――だりぃ」

 

 最近めっきり涼しくなった教室で、頬杖を突きながらぼーっと窓の外を見ているチウの姿があった。

 

 あの天地を揺るがす一大決戦――オスティア総督府とヘラス帝国から正式に『オスティア神滅戦争・最終決戦』と命名された戦いからかれこれ一か月は経過していた。結局ヒースクリフに取り憑いた造物主は想像以上にしぶとく、短期決戦は不可能であることが判明。オスティア総督のクルトやヘラス帝国側の配慮で、≪紅き翼≫、≪白き翼≫、≪世界の種子≫の三勢力を中心とした少数精鋭が断続的に攻撃。彼らの魔力や気といったスタミナ回復時間を他の軍事勢力が艦砲などで攻撃。休憩が終了し次第、再度の攻撃という順序を繰り返すことになった。その間オスティアのゲートは開きっぱなしで、旧世界と魔法世界の時間軸にリンクが発生。決戦開始の翌日には、既に麻帆良で新学期が始まっていたが、学園長自ら、その場にいるメンバーは学園長主催の課外活動中であると明言。おかげで大っぴらに休んで戦い続けることが可能になった。

 

 そうして、決戦開始から実に七日目の朝。朝日の中に崩れていく造物主を見届け、ついに戦闘は終了した。

 

 ……そう、そこまでで騒動は終了のはずだった。しかし、本当の大騒動は、その後にやって来たのだ。

 

「……出席番号25番、長谷川千雨。何か授業に不明な点でもあるかい?」

 

「…………敢えて言うなら、アンタが何食わぬ顔でそこにいることが一番不明だけどな。『フェイト先生』」

 

 目の前で感情が希薄な白髪の子供が首を傾げる。この少年の名前は、フェイト・アーウェルンクス。晴れてこの二学期から我が3-Aの『副担任』に収まった魔法世界有数の実力者で、あの時思いっ切りネギ先生とバトった宿敵である……この説明だけでも、訳が分からない。

 

 実はあの日、造物主の消滅と共に、茅場が最後に仕組んだらしき遅延術式が発動。魔法世界全土の空に、三本の記憶映像が投影された。一本目は以前ラカンのおっさんが見せてくれた戦争終結までの記録フィルム。そしてもう一本は、なんとクルトと同じメガロメセンブリア元老院の暴露映像を、茅場の記憶を元に編集した代物だった。当然その内容は、戦争責任をアリカ女王一人に押し付け、しかもオスティア難民を元老院主導で見捨てたことが分かる内容。当時難民として奴隷に落ちざるを得なかった人々は、これを見て憤慨した。

 

「……ッ! クソ議員どもがッ!!」

 

 復活したてで静養してたトサカさんなんかも完全にブチ切れ、近くの壁に当たり散らしていた。同じくオスティア出身であるクママ奴隷長(チーフ)なんかも、歯をむき出していた。

 

 さらに、それだけで事態は終わらない。よりにもよって三本目に流された映像は、『英雄』ナギ・スプリングフィールドの息子であるネギの住んでいる村を、悪魔に襲撃させるよう元老院の老害が打ち合わせている映像。どうやら元老院議会場内の監視カメラをハッキングした映像のようで、音声も盗聴で確保。極めて詳細な計画と、それに参加した議員の名前や個人情報が明らかにされた。

 

 その上追い打ちとして、ネギがナギとアリカの間に生まれた子供であることも明らかにされ、今回の騒動終結に親子二代に渡って尽力してくれたことも暴露。「まさに、次なる英雄とするに相応しい!!」という茅場の嘘臭いナレーションで締めくくられていた。

 

 この三本の映像を受けて、新旧全世界からメガロメセンブリア元老院への追及が殺到した。元々メガロは魔法世界側の一大勢力として黒い噂も絶えない存在ではあったのだが、もう一方の大勢力であるヘラス帝国は、戦争終結以降内政干渉の恐れがあることから、差し出口は避ける傾向にあった。そのため、第三王女の個人的友人であるアリカの擁護を行うことも出来なかったのだ。

 

 しかし、例の映像で元老院の暗躍が全て明るみに出たことにより、大手を振ってメガロに介入することが可能となった。そして、民衆にとっての英雄だったナギと、新たな英雄となったネギ、真に民を想っていたアリカの親子三人への非道な行いにより、メセンブリーナ連合そのものが民衆からの求心力を失い、早晩解体の憂き目にあった。

 

 ……影響を受けたのは、連合の直轄組織だった関東魔法協会である。学園長であり協会の長でもある近衛翁の方針により、魔法世界本国からの干渉は最低限にとどめていたが、それでも親組織と言える連合が消滅して、影響を受けない訳が無い。これからの組織運営について話し合い、魔法先生たちは連日徹夜の日々が続いた。

 

 そんな不安定な組織へと滑り込んだのが、我らが依頼人(クライアント)、『先端技術対策管理室』の長、菊岡である。魔法世界本国という後ろ盾を失った魔法協会に対し、これ幸いと援助を申し入れたのである。当然、日本政府の下部組織へと取り込むために。長い話し合いの結果、関東魔法協会は一定の自治こそ認められたものの、半ば日本政府機関の一組織へと変貌することとなった。

 

 ……ここまででも、麻帆良という街を揺るがす大問題なのだが、3-Aにはさらに固有の問題が発生。魔法世界側で現在起きている各地の暴動やら、魔法世界の今後の維持に関する問題やらで、担任だったネギ先生が二つの世界を飛び回ることになってしまったのだ。まあ、暴動については帝国国境やオスティア付近で起きているもののみに出動し、帝国やオスティアに迷惑をかけないよう説得して回っているらしいが、とにかく時間がかかる。その上、魔法世界の維持には、触媒となっている火星表面で自然界から魔力を発生させるのが一番で、そのためのテラフォーミング計画に出資してくれる企業のお偉方と会合を開いているのだが、こちらも時間がかかる。とてもではないが、ネギ先生が教職を行う時間など無くなってしまった。

 

 そこに、自ら志願して3-Aの副担任を引き受けたのが、目の前のフェイト先生なのである。

 

「フェイト様に文句つけるとか、どーいうつもりですか!」

 

「貴様、フェイト様の授業に不満でもあるのか!」

 

「……意見、許さない」

 

「その通りですね――」

 

「あ、あの、みんな落ち着いて下さい」

 

 さらに一緒に付いて来たのが、目の前のフェイトの従者五人衆。連日紛糾する会議で疲労困憊の学園長がここぞとばかり、3-Aに押し付けてきた。ちなみに彼女らの身体は、ヘラス帝国が魔法世界消滅の危機に当たって、秘密裏に進めていた『帝国移民計画実験体』とか言う擬似的素体の類で形作られており、特徴的だったネコミミやらツノやらも普段は隠せる優れもの。そのため外見的な問題はないのだが、全体的にフェイト至上主義と魔法世界の常識で動くため、こちら側の常識を教えるよう打診されたチウ・レーカ・キッドの三人は、日夜胃に穴が空きそうになっていた。

 

「あはははは、チウ随分グロッキーだね。そういう時は気分転換に外を走ったり、剣を振ったらどうかな?」

 

「そ―言えば、ユウキはんは陸上部だったことがあったんでしたなぁ。今度の体育でちょっと競走してみましょか?」

 

「…………お前らも、原因の一端だけどな」

 

 屈託なく笑う黒い長髪の少女と、顔を若干赤らめた眼鏡の少女。フェイトの従者たち(ガールズ)と同時期に編入してきた、ユウキ・(コンノ)・ロザリオと、祝月詠。片方は元死人で、もう片方は実母にバレないように。それぞれの理由で偽名を名乗ることになった二人の少女もまた、3-Aへと編入してきていた。

 

 この二人については、碌に学校生活を営んでいなかったことと、色々な裏事情を考え、≪世界の種子≫メンバーがいるクラスへの編入は可能か否か学園側に打診してみた。結果、暦らのフォローを依頼されたものの、編入を認められ現在に至るのである。なお、ユウキの身体については、暦らと同じ『帝国移民計画実験体』の使い回しである。

 

 ……ここまでで既に、一学期までの3-Aと比べても新顔が七人も加わっている。普通の学校生活ではまず起こり得ない異常事態と言えるだろう。しかし、極め付けは彼女らではない。

 

 

「――――ん。チウは色々溜まってる?」

 

()げぇ。違うから、その方向性はやめろ、姫さん」

 

 

 一番の、異常事態。神楽坂明日菜の元主人格にして、現在別の肉体を得た、アスナ・(ウェスペリーナ)(テオタナシア)(エンテオフュシア)・ヴァンデンバーグは、静謐な表情で鋭いボケをかましていた。

 




日常への回帰、終了。……日常?まあ、麻帆良であれば、あれくらいの騒ぎは日常かw

魔法先生たちは今もなお修羅場です。そして、メガロザマァ(笑)

フェイトガールズ、ユウキ、月詠は学校まともに行っていないので、これがかなりのハッピーエンド。やっぱり同年代の友人との時間は貴重ですよ。同じことが、姫子モードのアスナにも言えます。

恐らく、次回本当の最終回。本編125話、番外含めた全話数130話で終わりとなりそうです。長かったなあ……!
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