いよいよ『吸血鬼編』開幕です!
014 吸血鬼
SIDE:チウ
中学三年、春。エスカレーター式とはいえ、高校への進学を控えた年である…のだが。
「「「3ねーーーん、Aぐみーーーーっ!! ネギ先生ーーーーーーーッ☆!!!」」」
目の前で馬鹿騒ぎをしている少女達には、そんなセンチメンタルな年頃など関係ない様子で。
(マジ、ウゼェ……)
(アホばっかです……)
どちらかといえば、静かな時間を好む長谷川千雨と、その隣の席に座る綾瀬夕映がほぼ同一の感想を抱いてしまったのも、無理は無かった。
(にしても……平和だねえ)
長谷川千雨は、思考する。『魔法』という埒外のチカラの存在を知って以来、万に一つ、目の前の『日常』が壊されないようにと鍛錬を積んできたが、ここ半年起きたことといえば、先日の学園長の悪ふざけくらい。ヒースクリフ曰く、時折この麻帆良を狙って別勢力の式神やら召還獣やらが襲ってきているらしいが、そちらは志願制の警備員によって守られているとのことなのだ。
(本当に戦いが起きているのか……疑いたくなってくるな)
そう思うほどに、目の前の光景は争乱とはかけ離れていた。まるで戦いそのものを知らず、平和を謳歌する。ある意味『別世界』のようだと千雨は感じていた。
――だからこそ、気が緩んでいたともいえるだろう。
「せんせーーーッ! まき絵が、まき絵がっ!!」
…その知らせが、入るまでは。
SIDE OUT
≪桜通りの吸血鬼≫。いつの頃からか生徒の間で流れ始めた怪談の類で、満月の夜、桜通りを歩くと、吸血鬼に襲われるというものだ。普通の学校、普通の街であれば、取るに足らないウワサ、怪談か都市伝説の一種でしかない。……のだが。
ココは、魔法使いが蠢く都市、『麻帆良』。
「ウワサの≪吸血鬼≫は、実は魔法使いだった――ということだよな? チウ」
「ああ、その通りだ。佐々木の体から微量な魔力を感じたから、それは確かだ…ただ」
「
現在時刻は、既に日も暮れ、人だかりも絶えた頃。場所としては、桜通りではなく、通り全体を一望できる300mほど離れた建物の屋上。
「しかし何が目的なんだろうな? ネギ先生自体が目的なのは分かったが……方法がな」
「まあな。あの先生は、危機感がなさ過ぎる――それこそ佐々木を襲わなくても、不意を突けばいつでも『殺せる』くらいにな」
それが今現在二人が抱く疑問だった。こんな面倒な手順を踏むくらいなら、夜道で後ろから襲い掛かるなりすれば、殺すことも攫うことも自由に出来たはずなのだ。
「チウのクラスメートを襲ったことで、ネギ先生は危機感が増した。――いや、それこそが目的なのか?」
「危機感を持たせて、戦闘を行う―――腕試しか、ほかの目的があるのか。まあ恐らくは心情的な理由だろうな」
あれだけ無防備な相手に、わざわざ敵の襲来を教える理由など、他に考えられない。それゆえに――いきなり初撃で殺すことはないだろうと考えている。
「やり口が何処となく『甘い』……単なる犯罪者(オレンジ)や、殺人者(レッド)とも違うな」
「なんでこんなメンドくさいことすんだか……まさか痴情のもつれじゃねえだろうな?」
そんなことを何の気なしに言ったチウだったが……実は『彼女』の動機が、そのものズバリだったことを知るのはもうしばらく先の話だ。
「「……来た」」
視線の先、桜通りの街灯の上に、三角帽を被った小柄な人影が現れた。その人影が見下ろす先…恐らくは女子生徒と思しき人影が見えた。
「…ん? ありゃ、宮崎の奴か?」
「知ってるのか、チウ?」
「クラスメートだよ。惚れ薬の時もそうだったが、アイツも災難だな」
既に襲われた佐々木とか言うバカレンジャーの一人は、一日寝れば元に戻るし、
身体的被害は貧血程度というヒースクリフのお墨付きにより、彼女のことは半ば放置となる。そして、そんな視界の先では状況が動いていた。
「ネギ先生と……神楽坂に近衛、か。犯人は逃げたみたいだな」
「ああ。それにしてもあの吸血鬼、魔力がヘンに弱いし、発動に使い捨ての魔法薬使ってたぞ?」
その点が妙だった。戦闘能力は極端に低いとはいえ、ネギ先生の魔力は膨大。扱う技術はそれに追いついていないとはいえ、初級呪文でも膨大な数を発射することが十分可能であり、その威力も一際デカイ。そんな
正直余りに差がありすぎて、腕試しという線も消えた。魔法薬という使い捨ての触媒を使って、ようやく初級呪文を撃てるような状態では、勝負にならないのは明白なのだから。
「ん? ……! オイ、コウ! あのガキ、一人で犯人追いかけだしたぞ!?」
「な?! 仲間がいたり、罠が仕掛けられている可能性を考えなかったのか!?」
信じられない行動だった。相手の吸血鬼は余りにもあっさり退いていたし、あれは絶対に深追いすべきではない。
「ああ、もう! 行くぞ、コウ!!」
「了解!!」
傍観を決め込んでいた屋上から、≪影の衣≫で翅を作り、一気に飛び降りる。≪光の翼≫で滑空するチウとともに、吸血鬼とネギ先生が向かった方角へと一気に加速した。
「にしても、やはり妙だな……」
「あんな魔力の弱い、しかも一般生徒に被害を与えている存在が放置され続けている……だよな?」
「ああ。正直あの程度なら、半年前の魔法生徒とかいう奴等でも、人数次第で捕まえられるはずだ。それなのに、ウワサがある程度拡散するほどの間、あの吸血鬼は逃げ遂せているわけだからな」
ここまで来ると……警備を行っているハズの学園側が、何らかの理由であの吸血鬼を放置し続けていると考えるのが妥当か。
「他人様の≪日常≫を簡単に侵しやがって……ロクでもない理由で放置してるんだとしたら、あの正義気取り、本気で叩き潰すぞ」
「チウ……一応此方にも『準備』はあるんだからな? 今はまだ…」
「分かってるよ! 準備終わるまで、完全対立は避ける!だろ?!」
そのために
「……! いた! 教会の屋根の上!!」
「やっぱり罠か! 吸血鬼のほかにもう一人!」
目を向けると、明らかに先ほどはいなかった長身の女性がネギ先生を羽交い絞めにしていた。恐らくは吸血鬼の仲間か、話に聞く≪魔法使いの従者≫だろう。
「リンク・スタート 世界を照らす暖かな光 我が手に宿りて剣と変ぜよ―――≪光の剣≫! 私はネギ先生を助け出す。お前は――」
「吸血鬼の相手だな。了解!」
飛行しながら互いの役割を決め、加速する。その手には既に……赤いライトエフェクトを纏ったブロードソード。
『ラァッ!!』
「何ッ!? ぐあぁっ!!」
片手用直剣の単発重攻撃ソードスキル≪ヴォーパル・ストライク≫。本来は確実に倒すために身体の中心に向けて放つところだが、先ほどの魔力の低さ、体格の幼さを鑑みて、右の肩口に打ち込んだ。思いのほか軽い衝撃とともに、吸血鬼らしき人物は後ろへと吹き飛ぶ。
「マスター!」
長身の人物が、オレの横を通り抜け吸血鬼のほうへ向かう。しかし、『
『オイオイ、嘘だろ……』
『ん? チウ、知り合い?』
既にこちらの顔には先日の狐面が貼り付き、変声呪文も発動済み。先日も学園長相手にバレなかったため、今回も安心して同じ魔法を使用している。
『ウチのクラスのマクダウェルと、絡操じゃねえか……お前らが犯人だったのか』
『へ……? ああ、ホントだ。絡操さん、お久しぶり』
再度目を向けると、そこには以前とある案件で関わった超一味の一人、絡操茶々丸さんがいた。礼儀正しいヒト?だったため、他二名と比べて好印象だった人物だ。
「? 失礼ですが、どちら様でしょうか」
…あ。顔隠してたの忘れてた。
「キ、キサマラ……」
そうこうするうちに、吹き飛ばされた吸血鬼――チウ曰くマクダウェルさんが復活した。まあ、かなり威力を抑えたし、オマケにブロードソードも刃を落としてあるから、復活は出来るか。
「今の技……どういうことだ」
…? 刃を潰して、殺さないように加減したことだろうか? まあ今回の目的はあくまで犯人との接触で――――そう思っていた内心は、彼女の次の言葉で打ち消された。
「――――なぜ、キサマラが、≪茅場 晶彦≫の≪ソードスキル≫を使える!!」
……運命は、この瞬間から、動き始める。≪茅場 晶彦≫、≪魔法≫、≪ソードスキル≫……オレとチウを取り巻いていた多くの謎は、徐々に、徐々に、立ち込めた霧の向こうから姿を現し始めていた。
吸血鬼編、第一話終了!
最後に、意味ありげなフラグを入れてみました。ここら辺から、完全クロスを生かした設定を増やしていきます!当然SAO設定もネギま世界で生きてきますよ!
詳しいことは、また次回♪