今回は過程回。つまりあまり話が進まない……
「全く面倒な……」
「まあ、そう言うなよ。情報交換の絶好の機会なんだから」
「に、してもよ…何が悲しくて、吸血鬼の自宅でお茶しなきゃならねえんだ? しかもクラスメートだし……」
文句たらたら、と言った具合のチウと一緒に、オレ達は昨晩知り合った吸血鬼とそのロボ従者だった二人の自宅へと向かっている。罠の可能性は十分あるが、チウがクラスで見た感じ、吸血鬼のほうは昼間は大した魔力は感じなかったそうだ。活動を満月近くのみに抑えていた事からも、伝説や伝承どおり月齢に関係してチカラを発揮するタイプである可能性が高い。
魔力が弱まった状態ならば十分対処可能という判断は、昨晩の顛末にさかのぼる。
◇ ◇ ◇
「――――なぜ、キサマラが、≪茅場 晶彦≫の≪ソードスキル≫を使える!!」
問われた言葉は、衝撃だった。何故魔法関係者が、≪ソードスキル≫を知っている? そんな戸惑いが、互いの間に一瞬の停止をもたらした。そんなところに、遠くから声が響いた。
「コラーッ! ウチの居候に何してんのよーッ、アンタラーッ!!」
「っ、チッ! 神楽坂明日菜か。茶々丸、いったん退くぞ!」
「了解しました、マスター」
『『待て!』』
マクダウェルという少女のいたところに慌ててカタナを振り下ろしたが、寸でのところで絡操さんが彼女を抱えて、バーニアで空に飛び上がった。
「あーっ! アンタ達はこの間の! アンタ達が、吸血鬼だったの!?」
『違う! 神楽坂、空見てみろ! 真犯人が逃げる!!』
『チウ、説明してる場合じゃない! 追いかけるぞ!』
そう言って、背中の翅を広げる。この神楽坂さんに魔法がバレてるのは、チウの情報で確認済みだ。そのため遠慮なく魔法を行使できる。
「って、何なのよ、そのハネ! アンタ達も魔法使いだったの!?」
『ああ、もう! 今度会ったときにでも説明してやっから、テメエはネギ先生の具合でも見てろ!!』
『チウ、行くぞ!!』
合図とともに飛び立つ。視線を前に向けると、既に犯人二人はかなり上空にいた。
『にしても、マクダウェルのやつ…』
『≪ソードスキル≫を知っていた……でも、あんな小さな外見の子がSAOの中にいたなんて聞いたことがない』
実際には、チウの親友のユイという名の少女が一人と、自分達という例外もいたにはいたが、それは相当の例外。シリカさんだってその外見からかなり有名なプレイヤーだったのだ。あんな目立つ容姿のプレイヤーがいたら絶対に話題になる。
『ALOプレイヤーと考えられなくもねえが……茅場晶彦とつなげてソードスキルを言ったからな』
『…………』
最近のALOプレイヤーの中には、≪ソードスキル≫が元々SAOのシステムだということすら、知らないプレイヤーも出てきている。それを考えれば、連想するならALOの運営だろう。
『……なあ、チウ…』
『…分かってる』
『…………』
『そもそも――――『何故ソードスキルは現実で出せるのか』だろう?』
そう、それが一番の疑問。現実では魔力の消費が起こったり、威力が低くなったりするが……そもそも『何故』出せるのか?
…………いや。もしかしたら、発想が逆なんじゃないか?
『もしかしたら、茅場は
『SAOに移植したってことか。考えられないことじゃねえな』
もし茅場が、現実で出すことが出来たソードスキルをゲームに移植したんだとすれば、知っている人間がいてもおかしくない。あの茅場の膨大な知識量から考えても、確実に茅場もまた魔法関係者なのだから。
『――追いついたっ!』
『悪いが、少し話を聞かせてもらおうか!』
そう言って、再び両手に野太刀とブロードソードを作り出す。ある程度熟練の魔法使いなら牽制に≪魔法の射手≫でも撃つんだろうが、こっちはまだ半年の初心者以下。慣れない武器が頼りにならないのは、身にしみて分かっている。
……が。
光が集まったと思ったら、絡繰さんが目からビームを撃って来た?! 流石にノーモーション・ノーアクションで攻撃が飛んできたのは予想外で、両手の武器でガードしても弾き飛ばされてしまった。
『コウッ! 絡繰、テメェッ!!』
「くっ――」
チウが≪光の剣≫を振りかざし一気に襲い掛かるが、絡繰さんは空中で叩き落とされながら、それでも胸の中に抱え込んだマクダウェルさんをかばっている。……ある意味従者の鑑だな。
「――申し訳ありませんが、排除させていただきます」
ボシュッという音とともに、絡繰さんの右手が飛来し……って、ロケットパンチ!? 誰だ、あんな浪漫装備をつけたのは。流石にあの攻撃は、チウも予想外だったようで。
「がっ!? …チィッ!!」
下からのストレートで顔に貼り付いていた狐のお面を弾き飛ばされてしまった。
「キサマは…?」
「…長谷川さん?」
「……バレちまったか」
――チウの正体を知られたか。これで吸血鬼が学園の手先だったら、この先の学園との『交渉』に、影響が出てくるな。
「――キサマ、『魔法生徒』だったのか? だが、キサマが『そう』だなどと聞いたことがないが…」
「私のデータベースにも存在しません。長谷川さんは『一般生徒』として登録されています」
……いろいろ情報は、持っていそうではあるな。となると、交渉の場(テーブル)に着くのが一番か。
『――――二人とも、一時休戦にしない?』
◇ ◇ ◇
そこで戦いを切り上げ、翌日の放課後に改めて様々な交渉を行うことにした。最低限、自分達の存在を学園に知らせないように頼んだところ、逆に此方にも口止めを行ってきた。おかげで学園側とはそれほど強いつながりはないことも解った。
「お、ここだここだ」
「…ログハウス? てっきり、おどろおどろしい古城にでも住んでると思ってたよ」
「そりゃいくらなんでも目立つだろうが……」
そんな事を言いつつ、ドアを叩く。数分も経たず、中から応答があった。
「ようこそお越し下さいました、長谷川さん、水原さん」
「オウ、お邪魔するぜ、絡操」
「お邪魔します」
一歩中に入ってみると、そこは吸血鬼のイメージとはかけ離れた部屋だった。
「――人形?」
「それにやたらファンシーな印象の部屋だな。チウの部屋とは大違いで――――」
「オイ、そりゃどういう意味だ、コウ」
こちらの失言に、一瞬で首を締め上げられる。……正直、≪瞬動≫と敏捷性の無駄遣いだと思った。
「……キサマラ、他人の家に来て何をしている」
そんなところにかかったのは涼しげな声。だがそれは、同時に氷の冷たさを奥に秘めた威厳のあふれる声でもあった。
「これは失礼。≪
「…ホウ? 昨日の対応の仕方から、その異名は知らないものと思っていたが……。あれから調べたのだとすれば、中々優秀な
「まあ、優秀ではあるかもな……情報は出し惜しみするけど」
あの
「――――では、交渉を始めようか」
というわけで交渉回終了!
腹の探りあいを読ませてもいいんですが、それだと長くなりそうなのでここで切ります。要所については、次回に少し抜き出す予定。
……さて、そろそろ女性の敵の登場か。あのオコジョは本当に余計なことしかしませんね。
ここで一つお知らせ。ストックが既に切れているのと、最近仕事が立て込んだ影響で、来週の投稿は休むかも知れません。もし投稿されなければ、間に合わなかったんだな…と考えてください。よろしくお願いします。