魔法先生ネギま!~闇の剣と星の剣   作:路地裏の作者

20 / 130
恒例の土曜更新です!

そして、『最悪』は舞い降りる――。



019 ≪笑う棺桶≫

 

SIDE:刹那

 

 それは、唐突に始まった。人質を取っている侵入者の名前と思しき単語を口にした次の瞬間、目の前にいたはずの黒い狐面の男が消え、黒装束の男の顔面に左手の西洋剣を突き刺そうとしていた。

 

「和泉さんッ?!」

 

 私の声より早く、西洋剣は突き刺さり、辺りに土ぼこりが舞い上がった。その余りの苛烈さに、人質となっていたクラスメートの身を案じた。

 

「Oh……オイオイ、≪獣騎士≫。人質まで殺す気か?」

 

 あの黒装束の妙に聞き惚れるような声が響き、土ぼこりも晴れ、剣は誰にも刺さらず男の後ろ、首の皮一枚のところを通って突き刺さっていた。……和泉さんは、無事か。

 

 だが、次の瞬間に聞いた言葉に、私は背筋を寒くさせた。

 

『…………人質? お前が何かする前に、お前を『殺せば』すむ話だろうが』

 

「――Suck(くそが)」

 

 その言葉に慌てたのか、黒装束の男が和泉さんを黒狐の男に向かって突き飛ばし、その影からナイフの斬撃を放つ。それは武器こそ違えど、十分に達人の域にあるものだった。

 

 だが、その見えないはずの斬撃は、和泉さんを武器の消えた左手で抱きとめた黒狐の男によって止められた。一体、どうやって?

 

「オイオイ、見えてないだろ?」

 

『お前の、その死角を狙う手口。似たような攻撃を、何回食らったと思ってるんだ』

 

「――『SAO』で余り見せるんじゃなかったな、こりゃあ」

 

 軽口を叩きながら黒狐の男は和泉さんを足元にそっと横たえ、その隙を黒装束の男は突こうとした。だがそれは左手に再び生じた西洋剣に防がれる。

 

 

 ――――そして、暴風は舞い降りた。

 

 

『ア――――アアアアアアアッ!!』

 

「ちっ……!」

 

 野太刀と西洋剣が舞い踊る。それは、触れるものを全て斬り裂く『殺意』の暴風。たちまち斬り裂かれた木々や、巻き込まれた石が舞い上がり、辺りは一種の災害の様相を呈した。

 

「くっ――――このままでは、和泉さんが」

 

 私はその余りの苛烈さに、彼女の身を案じ、暴風の中心へと飛び込もうとしたが……

 

『問題ねえよ』

 

 彼女の方が、早かった。視線を横に向けると、既に和泉さんは白狐の少女の足元に優しく横たえられていた。一体、何時の間に?

 

『気を失ってるだけだな。少しコブになってはいるが、この程度なら問題ないだろう』

 

「貴女方は、一体……」

 

『ん? んー、それについては、説明してもいいんだがな。PoHが出てきた以上、事情を話さないと納得しねえだろうし』

 

「PoH(プー)……それがあの黒装束の名前ですか」

 

『ああ……とある場所で、『殺人を犯す為の』集団、≪笑う棺桶(ラフィン・コフィン)≫と言う名のギルドを作り上げた、殺人鬼のカリスマさ』

 

「――――ッ!」

 

 その言葉の危険性に、私は身震いした。目の前であの暴風をひたすら避け続けている男は、そうした倫理感の欠如した者達を纏め上げるだけのリーダーシップを持っていることになる。最悪、そうした危険人物たちを率いて再び麻帆良を襲ってくる可能性まであるのだ。そんなことになれば、お嬢様が……!

 

『ちいッ、相変わらずの凄腕だな! 大人しく≪攻略組≫に入ればよかったものを!』

 

「オイオイ、それじゃ楽しめないだろ? 例えば――――こんな風に」

 

 次の瞬間、目の前で起こったことは、私には理解できなかった。

 

 一瞬、本当に一瞬、黒装束の右手のナイフが何か黒い(・・)光に包まれたかと思うと、次の瞬間、黒狐の男は左腕全体から鮮血を迸らせ、仮面を砕かれていた。

 

『ぐあああああッ!?』

 

「ここで殺しておきたいが――――今回の仕事は、そうしたら報酬が下がっちまう。悪いがここは退かせてもらうぜ」

 

「――ッ、逃がさんッ!」

 

 私はとっさに追いすがろうとしたが、男が懐から小型の金属球を出す方が早かった。安全ピンが抜け、今まさに発動寸前のソレ――――爆弾。

 

「くッ!」

 

 腕と刀でもって前面をガードしたが、その視界は突如として発生した白煙によってさえぎられた。

 

「煙幕か!?」

 

「――――――随分元気がイイ奴がいるみたいだが……それじゃあな、≪獣騎士≫。『京都』で待ってるぜ?」

 

「待てッ!」

 

 闇雲に刀を振るったが、もうそこには誰もいなかった。次第に辺りの視界が晴れてくる。

 

 

『桜咲、戻れ』

 

 

 端的に言われたその言葉に振り返ると、仮面が砕けた男と、白い狐面の少女が和泉さんや大河内さん達の周りを固め、身構えていた。……あの煙の中、彼女達を守ることを優先したのか?

 

「倒す気が強いのはいいけど……煙の中奇襲を仕掛ける可能性もある。ああなったら、まずは防衛だよ」

 

「……っ」

 

 私は、歯噛みした。今回の警備の目的は、街と一般人の防衛。だというのに、私は相手を倒すことに注視し、周りが見えていなかった。

 

(もっと、強くならなければ……)

 

 私が自身の不甲斐なさを悔やんでいると――

 

 

「「水原……君、だよね」」

 

 

 大河内さんと明石さんが、仮面の砕けた男に話しかけていた。…知り合いか?

 

「……って、ことは」

 

「そっちは……」

 

『まあ、お前らならわかるか』

 

 そう言って白い狐面を外した先に出てきたのは、

 

 

「は、長谷川さん?!」

 

 

 二年間同じクラスだったクラスメートの顔だった。

 

SIDE OUT

 

 ……どうして、こうなった。今日はエヴァンジェリン対ネギ先生の対決を影から見守り、どうしても危なくなったらほんの少し手助けしてもいいかな?位のつもりだったのに。

 

「学園長! 3-Aの修学旅行の行き先を、京都から変更出来ないっていうのは、どういうことだ!」

 

「私も納得いきません! あんな危険人物のいる京都に、お嬢様を赴かせるなど……!」

 

「フォフォ、まあ長谷川君も桜咲君も、少し落ち着かんか」

 

 ……なんでこんなところで、ぬらりひょんと化かしあいをしなきゃならないんだ?

 

「……今更、変更は出来んよ。実は修学旅行に付随して、ある人物に任務を言い渡す予定でな。その人物が京都に行くことは、日程まで含めて先方に伝達済みじゃ。今から変更すれば、今回結ばれる予定の≪関西呪術協会≫との和睦は、水泡に帰すことになる。それがどれほど重要なことか、桜咲君には解るはずじゃな?」

 

「――――っ、ですが!」

 

「それに必要なのは、大々的に和睦を結んだという事実なのじゃよ……今後東と西で争乱を起こさん為にもな」

 

 このぬらりひょん、相当タヌキだ。二年も数千人単位で騙し続けたヒースクリフも相当だが、コイツはそれ以上。大体――

 

「……その『任務』とやらと、今回の修学旅行の行き先が同じ理由が、どこにある? 分ければ済む話じゃないのか?」

 

 普通に考えれば学業の一環である修学旅行と、魔法使い側の仕事は直結しない。大方任務を請け負うのはネギ先生だろうが、それなら出張なり何なりで、別行動で渡しに行けばいいだけだ。

 

「……それは出来ん。これは彼の成長に必要なことじゃ」

 

 ……結局、それか。

 

 ◇ ◇ ◇

 

「最悪の事態、だな……」

 

「ああ。だがコウの修学旅行も、京都だったのは幸いだな。これで上手く連絡を取れば、向こうで落ち合える」

 

 結局あの後、修学旅行の行き先は変わらなかった。唯一良かったのは、大河内(レーカ)明石(キッド)への記憶消去が、本人達の強い希望もあって、行われなかったことだけだ。

 

「――――ところで、連絡は?」

 

「こんな時に言うなよ。もし今来たら、さらに最悪なニュースに――――」

 

 なりそうで怖い、と言おうとしたところで、チウの持っているバッグから着信の音が鳴り響く。慌てて取り出し、二言三言言葉を交わす。通話が終わった時、チウの顔は少し青褪めて見えた。

 

 

「…………およそ考え得る限り、最悪の事態だ。全員(・・)、脱獄してたそうだ」

 

 

 彼女はそう告げた。

 

SIDE:? ? ?

 

 そこは何処かもわからない、廃墟同然の建物。その中に、漆黒のポンチョを纏った男が戻ってきた。

 

「Hey――諸君。今日は最高に愉快なニュースがあるぜ?」

 

 彼は、その廃墟の片隅、暗闇の中へと呼びかける。すると、暗闇の中で身じろぎする者があった。

 

 その者たちは、すべてが黒い外套を纏っていた。だがその様相はかなり異なる。

 

 一人はその顔に、スカルフェイスのマスクと赤いゴーグルをつけ、ボロボロの外套を纏っていた。その腰には、まるで針のように細い剣を差していた。

 

「これ、で、退屈な、穴倉生活とも、おさらば、か?」

 

 奇妙な呼吸音とともに、言葉をぶつ切りにしながら話すスカルフェイスの男の隣で、いささか子供っぽい声が上がった。

 

「んーなこと言うなよ、≪XaXa(ザザ)≫? こっちの方が俺たちらしいだろ! まあ確かに退屈だったけどよ?」

 

 その男は顔に頭陀袋のような覆面を被り、腰には細身のナイフを挟んでいた。

 

「≪ジョニー≫さん……まずは頭目(ヘッド)の話を聞きませんか? 話の途中でしたし」

 

「お? そうだな! ワリーワリー、≪シュピーゲル≫」

 

 シュピーゲルと呼ばれた柔和な雰囲気の男は、その背中にアサルトライフルを提げていた。細身の身体と相まって、奇妙なバランスを作っていた。ちなみにジョニーと呼ばれた頭陀袋の男は、本来は≪ジョニー・ブラック≫というが、この仲間内ではファーストネームだけで通っていた。

 

「…………それで? 一体何が愉快だというんだ?」

 

 周りの空気に相反するように、いささか不機嫌そうな声が響いた。その男はマントこそ黒いが、内側は法衣(ローブ)状の奇妙な衣服を纏い、明らかにアンバランスだった。アンバランスといえば、顔だけは金髪と白い肌で西欧人風なのに、日本語が滑らかで手足が黄色人種特有の肌なのもそうだが。

 

「まあ、そう不愉快そうな顔をするな、≪オベイロン≫……実際お前にも興味深いニュースだぜ?」

 

「……?」

 

 そんな事をいいながら、ポンチョの男……PoHは聴衆を見回して、両手を広げる。

 

 

「今回の学園都市・麻帆良襲撃――――相手方に≪獣騎士≫と≪銀騎士≫がいた。恐らく、次の京都での仕事にも関わってくるはずだ」

 

 

 その言葉に、聴衆は反応を示す。ある者は愉快そうに、ある者は不機嫌そうに。

 

「ク、クク。確かに、愉快なニュースだ、な」

 

「だよなー、ザザ? 京都ってことは、俺たち二人はすぐにもカンドーの再会ってわけか!」

 

「っ、あの勇者気取りにくっついてきていたあのガキどもか……! メンバーに入っていれば、この手で引導を渡してやったものを……!」

 

 そんな中一人だけ、少し悲しい空気を纏う者がいた。

 

「コウ君、チウちゃん……」

 

 だが、そんな空気を押し流すように、聴衆を魅了する悪のカリスマは高らかに宣言する。

 

 

「京都で動くメンバーは、以前話したとおり、俺とザザとジョニーだ――――――新生≪笑う棺桶(ラフィン・コフィン)≫旗揚げの、派手なショウ・タイムといこうぜ」

 

 

 ――――最悪の殺人(レッド)ギルド、≪笑う棺桶≫が現実世界で産声を上げようとしていた。

 




はい、≪笑う棺桶≫、全員集合!

作者は物語を考える時、必ず敵味方のバランスを考えます。つまり、主人公二人がユニークスキルというチートを持った時点で、最悪の彼らの登場は決定してました。

今回の章のテーマは、『悪』。『誇り高き悪』のエヴァ、『正義』を名乗り悪を倒そうとする魔法使いたち、そして『絶対悪』のPoHと『最悪』の≪笑う棺桶≫!上手く対比になってれば嬉しいのですが……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。