だというのに、一日遅れてしまいました……
「えー、それでは、これから新幹線で京都へと向かいます――――」
担任教師の号令とともに、ブレザーの生徒達が電車へと向かう。麻帆良学園男子中等部の修学旅行はこうして始まった。
(とはいえ、こちらでは特に何も起きそうにないな……)
今回の騒動でのキーパーソンは、自分以外全員が女子の3-Aに集中している。此方を襲う必要性は余りないとも言える。
(チウのほうはどうしたかな……)
◇ ◇ ◇
SIDE:チウ
――――ふざけんじゃねぇーーーーッ!!
……冒頭からすまねえ。なんなんだよ、この妨害工作は!
新幹線の中では、カエルが異常発生するわ、音羽の滝に酒が混じってるわ、地主神社ではカエルが敷き詰められた落とし穴があるわ……
手口からして、話に聞いた『関西呪術協会』とか言うヤツラだとは思うが、この実行犯はカエルに何か思い入れでもあンのか!?
それともアレか!どっかの忍者マンガみたいに、口寄せでカエルしか呼べないやつが相手だとでも言いてえのか!何で私は京都に来てまで、魔法使いどものフォローをしなきゃならねえんだーーーーッ!!
はあ、はあ、はあ……
すまねえ、取り乱した。まあそんな感じで、宿に着くまではとりあえず人的被害も特に出ず、おおむね平和に過ごすことができた。クラスのほとんどがダウンしちゃいるが、んなもん許容範囲だ。
……だが、ここからはそうはいかねえだろう。
「――そういうわけだ。お前らは、部屋に戻れ」
対面に座る二人に、話しかける。そこに座っているのは、先日≪魔法≫を覚える宣言をした明石と大河内。
「ん~、でも長谷川はまだしばらく部屋に戻らないんだよね?」
「まあ、そうなるな。襲撃が起これば最悪戦闘になるし」
「……それなら、私達もまだ戻らないよ。もうしばらく
「……はあ」
――――結局、あの魔法を覚えるという宣言から、この二人の状況は進んでいない。それと言うのも、彼女らが魔法を覚えるための≪魔力発動体≫が手に入らなかったためだ。あの宣言の時点から一週間もせずにこの京都に来ているが、裏のツテがない私達では、とてもそんな短時間で発動体は用意できなかった。
それに、無理なら無理で、
魔法を覚えてしまえば、体内の魔力やら動きやらで、『使える』人間かどうかを判別されてしまう恐れがある。この二人は、部活動こそ運動部に所属しているものの、武術もかじったことのない一般人。動きは素人のソレだ。
(下手に狙われる可能性を増やすわけにもいかねえからな……)
ラフコフの奴らは確かに見境なしの殺人鬼だが、基本的には何らかの利益を求めることが多かった。SAOで攻略組と対立し、最終的に殲滅戦にまで発展したのも、彼らにとって、『デスゲームがより長く続くこと』が利益たり得たからだ。
(今回の京都にしたって、絶対にあいつらは何らかの『利益』のために動いている……)
「……sが…」
ここ京都で利益を得ると言えば、関西呪術協会がらみ。関西と関東は、今の長同士が縁戚だったり、さらに血縁に物を言わせた強引な和睦を結ぼうとしている。ここまでの事情を、先日学園長室で確認した。そこから導き出される答えは、唯一つ。
(過激派と組んでのテロ行為……。新幹線での妨害は、『雇い主』のほうだろうな)
「……っと。きいt……」
クライアントがいるのなら、正直ありがたい。魔法使い側の常識に囚われている奴なら、いくらなんでも魔法が使えない無関係の一般人を襲うのはためらうはずで――――
「「長谷川!!」」
「うお?! な、何だよ、いきなり」
気づいたら、正面に座っていた二人が身を乗り出していた。なんなんだ、一体?
「なんだよ、じゃないよ? 話しかけてるのに、気づかないし」
「え? あ、そうなのか、スマン」
「ぼーっとしてたけど…今回の騒動について考え事?」
「あ、ああ……」
――正直、こうやって話をするのも、狙われる可能性を高めているんじゃないか、とか、色々な……。
「……言っておくけど、私達は今回のことで、長谷川やコウとの付き合い方変えるつもりないよ?」
「…………え? あれ? 顔に出てたか?」
「私だって、そーだよ! だからウジウジ考えちゃ、ダメ!」
「はは……」
何気に明石も、ヒトの内心読んでるし。……本当に、まったく。
「……それに、私達はまだ諦めた訳じゃないし」
「そうそう! まだまだ、試合終了にはさせないよ~?」
「……結局、そこに行き着くのかよ」
実はこの二人も、かつてのALOやGGOでの騒動で、『コウに惚れてる』。その辺りはいずれ話す機会もあるだろうが、中学に入って同じクラスになった時に、正式にライバル認定までされた。こんな話は、コウの前では出来ねえけどな。
「――――長谷川さん」
「ん? おお、桜咲か。そっちはどうだ?」
そんな話をしているところに、ちょうど桜咲が通り掛った。どうやら見回りの途中らしい。
「各所に『式神返し』の符と、『転移封じ』の符を貼り終えました。これで敵も簡単には侵入できないでしょう」
「そうか。これで一番怖かったピンポイントの誘拐や襲撃は、ある程度対処できるな」
いわばこの宿は、擬似的な
……もっともこうしたところで、ラフコフの奴らなら、必ず抜いてくるだろうが。
「それで、あの……ご相談したいことが……」
「ん?」
今回の襲撃に関することか?
「実は……ネギ先生に、魔法関係者だとバレました……」
「………………は?」
そう言った桜咲の後方からは、子供先生と神楽坂が歩いてきていた……。
◇ ◇ ◇
「何よ、もー! 長谷川も『魔法使い』だったの!? だったら何で助けてくんなかったのよ!」
「私を、このガキと一緒にすんじゃねー!」
……結局その後、桜咲と話をしていた私まで、連鎖的にバレた。私を道連れにするとは、いい度胸じゃねえか……。
「大体、助ける云々だったら、もう助けてやっただろうが。図書館島のときに」
「へ? ……あーッ! じゃああの狐のお面つけた『チウ』ってヤツ?! だからなんで話してくれなかったのよ!!」
こうなりゃ、ヤケだ。ある程度バラすのは仕方ねえ。
「話せるわけねえだろうが。たった一日で、お前に魔法使いだってバレた秘匿意識ゼロのヘッポコ魔法使いに」
「い、一日、ですか……」
「う、ぐ……納得しちゃうわね……」
「アスナさーーーーんッ!?」
うるせえ、叫ぶな、ガキ。どうもこの意識を変えねえと、コイツはずっと今のままだろう。
「ネギ先生……アンタは、秘匿意識もそうだが、色々な意識が低過ぎんだ。もっとその辺りを自覚しろ」
「え? どういうことですか?」
このガキ……マジでわかってねえのか?
「魔法使い共が、魔法関係の話を一般に隠してるのは、何でだと思う」
「え? それは人知れず、皆の平和を守るためですよね?」
「そんな理由なら、隠す必要性は薄いだろうが。その辺りは考えたことはあるか?」
「あ……」
まあ、学校で習う『模範回答』ではあるだろうがな。文字通りの意味で、『教科書人間』か。
「魔法使いが魔法を隠す理由……それは、平和に暮らす一般人を、魔法が飛び交う危険な『裏』の世界から遠ざけるためだ」
「そんな! 魔法は危険な力なんかじゃ!」
……やっぱそのあたりも認識の違いがあんのか。
「アンタ、この間絡操のヤツを襲ってたよな。しかも闇討ちで」
「見てたんですか!?」
「まあな。そん時に撃ってた≪魔法の射手≫。神楽坂はどのくらい威力があると思う?」
「え? よく知らないけど」
「アレ一発で、大体軽自動車一台との正面衝突くらいだ」
「…………え?」
発射した数は、実に十一発。普通の人間なら即死は免れない。十一回も連続で車に当たったら、ライオンだって昇天するだろう。
「そんなモンを、まだ右も左も解らないお子様魔法使いが撃てるんだ。危険じゃないと思うか?」
「……思わないわね」
「だろ」
それが普通の認識だ。これで上位の魔法使いになったら、戦略兵器クラスが出てくるんだからな。
「――でも、でも! 魔法使いは、世のため、人のために!」
「全員が全員、そう思ってんならそもそもこんな事態にならねえだろ」
「っ、でも……」
「まあそこらへんは、価値観の違いっつーか、正義のとらえ方の違いとも言えるけどな」
「…? とらえ方ですか?」
そもそもこんなん、誰が正しいとか言えねえんだよ。
「そう、今回の和睦が『正しい』と思ってる奴もいれば、『間違ってる』と思ってる奴もいる。これだけで二種類の『正義』だろ?」
「で、でも、仲良くすることはいいことじゃ……」
まあ、普通はな。
「今回の和睦は、確かに和平に前向きに動くって内容だが、その実、指示を出してるのは関東側だ。オマケに使者に子供を出す始末。普通はナメられてると考えても仕方ないだろ」
むしろその日に全面戦争にならなかったのが、おかしい。どうせ上同士のしがらみだろうが。
そこで目を向けると、ネギ先生は俯いてしまっていた。……言い過ぎたか。
「とりあえず、こういう問題はどっちが正しいなんて決まらねえとだけ頭に置いとけ。それより今回出てくるヤツラは半端な覚悟で行けば、本当に死ぬぜ」
「え……? 敵の関西呪術協会は、そんなに強いんですか?」
……この発言で、私は自分の失策を知った。
「……伝わってない、のか?」
「え?」
「今回、敵として出てくるのは――――」
その声にまるでかぶさるように、ホテルに響く爆音、そして銃声。
「≪笑う棺桶≫って名前の、『殺人鬼』だ」
京都編START!
いきなりの『爆発』STARTです。SAOの売りの一つは緊迫感あふれる状況にもあると思いますので、第一戦の開始をほぼ無視して、こうしてみました。
途中の価値観の話。死の最前線で小学生時代過ごした彼女と、ネギでは余りにも違いすぎます。まあネギの下地もあるので、この辺りは追々ですね。
この文章を練りこんでたら遅れてしまいました……