魔法先生ネギま!~闇の剣と星の剣   作:路地裏の作者

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第一夜、開始です!

いきなりとんでもないことに……



022 呪術の世界・第一夜

 

 ――マズった。

 

 その状況に出くわした、最初の意識はソレだった。男子中等部の宿が女子中等部の宿とそれなりに離れていたため、窓から抜け出し夜の街を一心不乱に駆け抜けて、ようやく着いたと思ったら宿の従業員を縛り上げて衣服を奪っている怪しい女を見つけた。

 

 とりあえず意識を奪おうと速度を上げた途端、横合いからいきなり斬りつけられたのだ。

 

「くっ、誰だ、アンタ……!」

 

「ど~も~、千草はんの護衛役の月詠いいます~」

 

 両手の剣でつばぜり合いをしながらかけた声は、何とものんびりした口調で返された。一方でそののんびりした口調とは裏腹に、手元の剣は押し切ろうと一層力を込めてきていた。

 

「千草はん~、今のうちに潜入を~」

 

「あ、ああ、そうやな。頼んだで、月詠!」

 

 見るとさっきの女がリネンの詰まったカートと一緒に、チウのいる宿へと走り去っていった。ヤバイ!

 

「……どいてくれないかな?」

 

「どかしてみては、どーでしょ~?」

 

「そう、だなッ!」

 

 言葉とともに、バックステップでつばぜり合いから脱出。片手剣用単発重攻撃ソードスキル≪ヴォーパル・ストライク≫で、再び一気に距離を詰める。だがその剣は彼女の持つ二刀流で横に逸らされた。

 

 その状態でスキルを使わない乱撃に移るが、右薙ぎ、左打ち下ろし、連続突き、足払いと、悉く防がれた。

 

「――強いな、アンタ」

 

「おにーさんも、随分強いですな~☆ ……女の子やないのが、ちょっと惜しいけど」

 

 そう言って少し俯いた顔の口元に、三日月の笑みが宿る。

 

 

「あんさん()――――オイシソウ(・・・・・)や」

 

 

 その笑みと、色が反転したように輝く瞳に、ギアを一段切り替える。目の前の少女は、ここで倒さなければ、明らかに危険だと。

 

 再度の激突に向け、走り出したその足。反対側から走り出した、少女の足とともに、止める者は誰一人いない――

 

 ――かに、思えた。

 

 かすかに遠くで聞こえた、ブシュッという空気が抜けるような音に反応できたのは、奇跡のような偶然だった。潜り抜けた経験が、思考よりも早く音のした方向に向け、両手の刀剣を掲げたのだ。刀剣に衝撃が飛来し、横合いから吹き飛ばされて地面を転がり、地面に這い蹲りながらも弾丸の飛んできた方向に防御姿勢をとった。

 

「今の衝撃……『338ラプア・マグナム』か」

 

 魔力で強化・防御しているはずの自分を吹っ飛ばすほどの高威力の弾丸など、そんなに存在しない。もっとも同じスコードロンのシノンさんが使う対物ライフル、≪ウルティマラティオ・へカートⅡ≫と『50BMG弾』なら、並みの魔法使いの障壁を貫通して胴体に大穴を空けることも可能だろうが。今の弾丸は、そこまでの威力は無かった。

 

 

 何より、撃った人間と、その銃に心当たりがあった。

 

『……久し、ぶりだな、≪獣騎士≫の、コウ』

 

 

 しゅうしゅうという独特の呼吸音とともに、場に響く声。目を向けると、音量を最大にした携帯電話を手に、さらに二人の男が森から現れた。

 

「≪PoH≫に、≪ジョニー≫……それにさっきの銃弾は、≪XaXa(ザザ)≫か」

 

 黒ずくめのポンチョの男と、黒い頭陀袋のような覆面を被った男が、目の前にいた。その上、弾丸の軌道の先に目を向けると、近隣で一番大きなホテルの屋上から、≪L115A3≫スナイパーライフル、通称『沈黙の暗殺者(サイレント・アサシン)』を構えたドクロ面が目に付いた。

 

「なんなんですか~? ウチの楽しみ邪魔するんですか~?」

 

 目の前の少女とPoHが、一見ニコニコと話しているように見えるが、目が笑っていない。あれはむしろ隙あらば斬りかかってやろうという、捕食者の目だった。

 

「Wow……オイオイ、殺りあうのはかまわないが、今は仕事中だろ? だったらもっといい方法があると思って――――なッ!」

 

 PoHの奴は、そう言ってこちらに何か投げてきた。それはモスグリーンで、映画などでもよく見たことがある金属球……パイナップルとも呼ばれる手榴弾だった。

 

「ちッ!」

 

 瞬動で一気に距離をつめ、左手の片手剣で手榴弾を思い切り近くの池に弾く。着水と同時に池の水が舞い上がり、辺りに盛大な爆音(・・)が響いた。

 

(何のつもりだ……?)

 

 今更爆弾程度でこちらが倒せるわけがない。だとしたら今の行動の目的は――――そんな考えは、いきなり響いた銃声(・・)にさえぎられた。

 

「ッ! ザザか!」

 

 すかさず射線上から退避したが、これもおかしい。そもそも『沈黙の暗殺者(サイレント・アサシン)』はその異名の通り、専用の減音器(サプレッサー)が付属している。文字通り静か(サイレント)に殺すことの出来るライフルで、銃声を響かせるなど本末転倒だ。

 

「一体何の真似だ、PoH?」

 

 先ほどからの、不可解な行動に対しての質問の答え。視線の先では、PoHとジョニーがただニヤニヤといやらしい笑みを浮かべていた。

 

「ククッ、いや、何……仕事(・・)をこなしているだけさ」

 

「仕事……?」

 

 その言葉に思考を加速させる。仕事――今回のコイツラの仕事は、明らかに先ほどの女からの依頼だ。じゃあその依頼内容はなんだ?いや、待て。そもそもその依頼主の女は、さっき何をしていて(・・・・・・・・・)どこに向かった(・・・・・・・)

 

「――ッ! お前ら、『陽動』かよ!」

 

「正確には、『足止め』もプラスだぜ? ≪獣騎士≫」

 

 だとしたら、マズイ。さっき思い切り、爆音(・・)銃声(・・)を響かせてしまった。『彼女』の速度なら、もうまもなく来るだろう。

 

 

「オーーーイッ、コウ!」

 

 

 声のしたほうに目を向けると、そこにはやはりというか何と言うか、もっとも信頼するパートナーが走ってきていた。その横に、今回のもう一人のターゲットであろうネギ先生と、神楽坂さんを連れて。

 

「ッ、三人とも来るな! コイツラは囮だ!!」

 

「え?」

 

 その言葉に戸惑ったように、速度を緩めてしまうネギ先生。そこに、黒覆面が襲い掛かる。

 

「ワーン、ダウーン!」

 

「ちぃっ……!」

 

 その間にとっさにチウが滑り込み、奇妙に緑色の刀身をしたナイフを≪光の剣≫ではじいた。

 

「PoHに、ジョニーか……! オイ、コウ! 今の話はどういうことだ!」

 

「油断するな、チウ! 近くにザザも潜んでる。狙撃があるから気をつけて!」

 

 そうして自分の中のギアを数段切り替えて、一気に倒すべく構える。こうなれば短時間で目の前の敵を倒して、彼女達の宿にもどるしかない、と。

 

 だがそんな考えは、またしても目の前の奴らに覆される。

 

「仕事はもう十分だ……殺り合いたいなら、追ってきな」

 

 そう言って目の前に投げられるのは、先ほどのものとも、麻帆良のときのものとも違う円筒状の金属。思わず注目してしまったソレから…………『閃光』と『爆音』が迸った。

 

「『閃光爆音弾(フラッシュグレネード)』か!」

 

『Ho-Ho-Ho-……それじゃあな、コウ。待ってるぜ?』

 

 ご丁寧に念話で捨て台詞を残して、PoHとジョニーは去っていった。

 

「ぐッ……あのヤロウ……」

 

「何だったのよ、今の……」

 

「すごい光でした……」

 

 まだチカチカする視界の中、こちらに走り寄ってきていた三人は全員地面に突っ伏していた。

 

「チウ……まだ目と耳が完全には回復していないだろうけど、とりあえず状況を報告しておくよ」

 

 報告を終えてすぐ宿に戻ってみると、学園長のお孫さんの近衛木乃香さんが浚われたことが判明。第一夜の舞台は、第二ラウンドへと移ってゆく……。

 




はい、PoHさんたちは『陽動』でした!
まあ優先すべき確保の対象はこのかですから……

そして皆さん、笑う棺桶は接近戦で来ると思ったかもしれませんが、ザザはGGOで有効射程2000メートルの狙撃銃を使えるトップクラスの狙撃手でもあります。他が近接なら、まず間違いなく遠距離狙撃に回った方がヤバイのです。

ここでお知らせです。来週所用で土日がつぶれるため、来週の更新はありません。次回投稿は再来週を予定しています。読んでくれている方々、本当に申し訳ありません!
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