魔法先生ネギま!~闇の剣と星の剣   作:路地裏の作者

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今回は、第一戦終了。

そして、主人公の一面が明らかに……。



023 呪術の世界・第一夜・続

 

SIDE:刹那

 

 ――情けない。

 

 そんな想いが、自分の中を満たしていた。

 

 ――情け、ないッ!

 

 護るべき人を、大切だった人を、なすすべなく奪われた。

 

 ――本当に、情けない……

 

 追いすがる速度を速め、私はそんな想いに満たされていた。

 

 ◇ ◇ ◇

 

「――追いついたぞ、猿女。お嬢様を返してもらおうか」

 

 場所は、京都駅。大階段の下から、私はお嬢様を浚った犯人を睨みあげていた。

 

「おお、怖。けどな、そんなに簡単に返せるわけないやろ? 返して欲しかったら、奪い返してみたらどうや?」

 

「――そう、だな!」

 

 短い返答とともに、駆け出す。その眼前に、舞い降りる一枚の、符。

 

「『大文字焼き』!」

 

「くっ!」

 

 いきなり広がった炎を、とっさに飛びのくことでかわす。この火力……浴びれば、火傷ではすまない。

 

「ほななー、時代遅れの神鳴流剣士。あんさんらの、大事な大事なお嬢様はいただいていきますわ」

 

「逃がさん!」

 

 私は、目の前の炎を無視し、その中へと飛び込もうと――――

 

 

「……吹け(フレット・)一陣の風(ウヌス・ウェンテ)――『風花(フランス・)風塵乱舞(サルタティオ・プルウェレア)』!」

 

 

 突然の詠唱とともに、目の前の炎は荒れ狂う風に吹き飛ばされた。

 

「な、なんやーーッ!?」

 

「これは……!」

 

 そして階段の中心、風の中心に、あの少年と彼女がいた。

 

「ネギ先生! それにアスナさんも!」

 

「な、なんや、このガキども?! どーやってここまで来たんや!?」

 

 その質問に、いささか青い顔で答えがあった。

 

「……投げ落とされたのよ」

 

「杖が無かったら、死ぬとこでした……」

 

 ……『投げ落とされた』?

 

 

「――――スキ有りだ、猿女」

 

 

 そうして響いたのは、あの日森で会った少年の声。

 

「な?!」

 

 女が見上げたのは、(ソラ)。上空に向けた視界に、一瞬だけ写ったのは、左の剣を突き出して突っ込んでくる黒い影だった。

 

「ひっ、ヒイイイイイッ!?」

 

 女が助かったのは、ただの幸運に過ぎない。彼女がそれなりの呪符使いで、防御用の呪符を多く備えていたこと。人質を抱えていたため、万が一にも影響を及ぼさないよう、剣士が力を抑えたこと。それらが重なり、黒剣は彼女の右耳スレスレに突き刺さった。

 

「……ちっ」

 

「あ、あんさん、どっからわいたんや!? あんたらは、あの雇われモンが止めとるハズやろ?!」

 

「あいつらなら、ある程度足止めしたらさっさと退いたぞ」

 

「なっ!? これやから雇われモンは―――」

 

 女の声をさえぎったのは、

 

 

「Oh……オイオイ、ひどいじゃないか、依頼者(クライアント)」

 

 

 そう言いながら出てきた、黒装束の三人の男だった。

 

「アンタラ、どこ行っとったんや! 西洋魔術師どもの足止めを命令したはずやろ!」

 

「結界もまともに張ってないあそこで、アレ以上暴れるわけにもいかないだろ。一度退いて、ココにおびき寄せただけだ」

 

 そう言って男は、腰に挟んでいたナイフを取り出す。見ると横の覆面の男も、緑色の刀身でギザギザに曲がったナイフを取り出していた。

 

「ヘッドー、俺には向こうのツインテールの娘下さいよー。ああいう気の強そうな奴を『毒』に染めるのって、格別なんですから」

 

「オイオイ、一応殺しはご法度なんだ。遊びすぎるなよ?」

 

「萎えること、言わないでくれよー」

 

 そう言って近付いてくる男達の瞳にあるのは、ただ一色の色……狂気。

 

「くっ……神楽坂さん、ネギ先生下がってください! あの者達、尋常じゃありません!」

 

 肌で感じて分かった。コイツラは今までのどんな敵より危険だと。

 

「で、でも、向こうにはこのかがいるのよ!?」

 

「そうです、このかさんを取り返さないと!」

 

「……ッ」

 

 この二人は、本質的に善人だ。そして何より、友達思いだ。この状況では退けないのだろうが、それでも目の前の男達はまずい。

 

「長谷川さんはどうしたんです?! 彼女の加勢があれば――――」

 

 その声は、大階段のすぐ横のビルの屋上の爆発音にさえぎられた。

 

「なんだ!?」

 

「長谷川なら、敵の狙撃手を落とすって言って、向かっちゃったわ。多分あそこだと思う」

 

 その言葉にゾッとした。自分の仕事仲間もそうだが、狙撃手が加勢するだけで、戦況は大きく傾くこともある。それを真っ先に落としに行ったというのは、戦略的に見て正しい。

 

 そう思考していると、ビルのてっぺんから、ドクロの仮面をつけた男が降りてきた。

 

「ク、クク、随分、面白い、ことになっている、な」

 

 しゅうしゅうという呼吸音とともに、非常に聞き取りにくい声が響く。その視線を追うと、未だに猿女の顔の横に剣を突き立てたままの水原さんがいた。

 

(そうだ……!)

 

 彼らはあの女のことを依頼者(クライアント)と呼んでいた。ならば、あの女には人質としての価値がある。

 

 だが、次に響いたその『声』は、そんな思考を吹き飛ばすものだった。

 

 

「……女。今すぐ、横の女の子を置いて消えろ。さもなくば()を斬り落とす」

 

 

『――――ッ!!』

 

 息を呑んだのは、誰だったか。自分かも知れないし、横のネギ先生たちかもしれない。その『声』が含んでいたのは、目の前の黒装束どもなど及びもつかないほどの、濃密な狂気。そしてその声が孕んでいるのは、『殺意』そのもの。

 

(――――何なんだ、この人は!?)

 

 思えば水原さんと会ったのは先日の襲撃の折が初めてで、その前は長谷川さんの『恋人』だという触れ込みで、遠くからその姿を見たことがあるだけだった。人となりが分かっているわけでは決して、ない。

 

(彼の方が危険なのではないか……?)

 

 そんな事を思い、夕凪を持つ手に力がこもった。

 

 ……そう、そんな事を思っていたから――――反応が遅れてしまった。

 

「ざーんくーせ~ん」

 

 その場の誰でもない間延びした声とともに、自分にとって見慣れた技がお嬢様のいた場所へと炸裂した。

 

「――――ッ! 『このちゃん』!!」

 

 その余りの爆風に、最悪の事態を予想し、駆け出す。もはや、横の黒装束のことなど抜け落ちていた。

 

「――問題ない」

 

 その声とともに、水原さんが片手に『このちゃん』を抱えたまま、煙から抜け出てきた。そして、そのまま、このちゃんを投げつけ――――?

 

「え、ちょ、ちょおっ!?」

 

 慌てて刀を放り出し、空中で受け止める。このちゃんにケガが無いのが見て分かると、ようやくホッとした。

 

「……まだやるか?」

 

 一言。見ると水原さんは階段の上部に退いた猿女達を睨みつけていた……本物の『殺気』とともに。

 

「アハハ……ほんまにオイシソウやけど、どうします~、千草はん? やるんやったら、ウチがあのお兄さんもらいますえ~?」

 

「Wow……オイオイ、獲物を奪う気かよ?」

 

 その言葉で身構える私の横に、翅を広げた長谷川さんが降り立った。見たところ外傷もない。

 

「――いや、退くで。敵の戦力が予想以上になった。オマケにこの街中じゃ、これ以上『人払い』維持したまま戦うんは、キツイわ」

 

 そう言って猿女達が踵を返し、夜の街へと消えていった。その姿が豆粒よりも小さくなって、見えなくなってから、ようやく緊張が解けた。

 

(……これからが、大変ですね)

 

 このちゃんを抱きかかえたまま、思う。敵はとりあえず撃退できたが、恐らく準備を整えた上で、再度襲ってくるだろう。

 

(………………何よりも)

 

 視線の先、ネギ先生と神楽坂さんの青い顔。その恐怖の対象は、やはり……

 

(……水原さん、貴方は何者なんですか?)

 

 その問いに答えるものは、今はいなかった……。

 

SIDE OUT

 




はい、第一戦終了です。この後は状況説明ですね。ここで思い切りバトっても良かったんですが、そうなると、第三夜はどんだけ先かと……それにお互いが退いたのには実は裏事情もあるので、こんなところでまとめました。何と月詠VS刹那もなし……

説明回が終わったら第二夜。3-Aのおバカイベントですが、シリアスが続いたので、原作以上にカオスにしようかと考えてます。そのときにコウのクラスメートも何人か……どこかで見たことある人たちかもしれません♪
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