そして! いつの間にか『阿修羅』のお気に入りが100件超え、『闇の剣と星の剣』が90件超えてました! 読んでいただいている皆さんには、本当にありがとうございます!
学園の謎を追う内に体験した、不可思議なチカラ。それの情報を求めて、怪しさ満載のメッセージに応じてみたはいいが―――、
「できれば、そのツラは二度と見たくなかったぜ……」
「フ、まあ気にせず、そこにかけたまえ」
さっきまでは殺風景だったワイヤーフレームの部屋中央に、今はクリスタル状の素材で出来たテーブルとイスが配置されている。ご丁寧にテーブルの中央に同じく水晶で出来た花まで生けてあった。どうにも、この男のこういう細かな設定好きなところは好きになれない。
(―――まぁ、当たり前か)
相手は自分達を閉じ込め、多くの命を奪った男…。無理に好きになる必要もないだろう。
「で、話ってのはなんだ?」
「フム……先に結論から言うと、君達は≪魔法使い≫になった」
「「…………は?」」
………え~~~と、これは予想外の展開だな。さっきまでの人外身体能力が、いわゆる≪気≫とか≪魔力≫とかが関わってるんじゃないかとは考えてたけど、これはそれより斜め上だ。……魔法使いに『なった』?
「そもそもこの空間は、かつてSAOに接続していた人間で、なおかつ魔力に目覚めた人間でなければ来れないように作られている…まあそんな人間でも、再びナーヴギアを被るかどうかは賭けだが」
「いや、それ随分勝率の低い賭けだろ……実際知り合いには、ナーヴギアどころか、VR環境に拒否感持ってるのもいるし」
チウの言うとおり、あの事件以降VRどころか3D映像にすら拒絶反応を示すものもいるのに、そんな賭けにBETしたのか?
「かまわんよ。そもそも魔法は、一般には秘匿されているものでな。そんなに言いふらすものでもない、というのが実際のところだ」
「……マイノリティは迫害される、か…………」
「…………」
実際オレもチウも、あの学園では明らかに少数派……最初に世界樹を指摘したときは、周りがおかしな目で見てきたものだ。
「だが、君達はこうして魔力に目覚め、この空間に来た―――恐らく、何らかの魔法に関わる事件に巻き込まれたと推察できるが、一体何があったのかね? 良ければ、教えてもらえないだろうか」
「……アンタに話すようなことでもないと思うが?」
「フム、確かにそうだろうが……君達は魔法に関する事情や、情報が知りたいのだろう? 秘匿が原則とされている魔法使いから、聞き出すのは苦労するだろうな…………」
「つまり、こっちの事情との情報交換かよ……アンタ、性質(タチ)の悪さは作りモンでも変わらないな」
チウの揶揄にも、苦笑のみで返す……ああ、やっぱりコイツは好きになれない。
◇ ◇ ◇
「なるほどなるほど、君達はあの『麻帆良』の人間だったのか……」
結局街のおかしな現状やら、鬼と戦闘を繰り広げた経緯やら全部を話した。その間コイツはずっと感心したような笑みを浮かべてるんだが、一向に情報を話さない………………一発くらい、殴ってもいいよな?
「オイ、ヒースクリフ。いいからさっさと情報をよこしやがれ。私らは、テメエと長話する趣味はねえんだよ」
「フ、随分嫌われたものだ」
……そろそろ本気で殴りたい。
「まあもっとも、君達があの街に住み続けるというのなら、遅かれ早かれ魔法には関わっていたことだろうな」
「? どういうことだよ?」
そうして告げられた言葉は、オレたち二人には少しばかり衝撃的な言葉だった。
「よりにもよって、『麻帆良学園都市』―――≪関東魔法協会≫によって支配された街の出身ではな」
詳細に告げられたのは、この街の現状。魔法使いが支配する街であり、魔法教師と魔法生徒が存在すること。それ以外にも≪気≫を使って身体能力を引き上げることの出来るものも多く存在すること。――――――そして。
「ヒトの認識を阻害する、大規模結界………?!」
「フザけんなっ!! 何だよそりゃあ!!」
この街で、常識が大きく乖離している原因。それは何と魔法使い達が、自分達の魔法がそう簡単にばれないようにするために張った結界のせいだと言うのだ。自分達の都合で、ヒトの心をいじるなんて……!
「誤解のないように言っておくが、彼らは何も自分達のことだけ考えているわけでは無い。魔法という技術は、今現在裏社会で行使されることの多い技術であるため、一般人が不用意に近付かないようにするための―――」
「それでもヒトの心を、いいように変えてることに代わり無えだろうがっ!」
チウが怒るのも、無理は無い……というか、学校でマイノリティ扱いされてる自分も、今すぐその魔法使い共をぶん殴りたい。
「その点については、同意見だ。これについては、魔法使いの驕りと、先ほど述べた称号のせいとしか言いようが無いな」
「「≪立派な魔法使い≫……」」
魔法は、弱者のために使うべし―――字面はご立派だけど、今さっきの洗脳じみた結界を聞いた後だと、その呼び名もブラックユーモアにしか聞こえない。大体、『守るべきもの、力弱きもの』だあ? そんなもの……
「周りを見下してる、裏返しにしか聞こえねえな……」
「……その方針を打ち出しているのは、魔法使いの総本山、≪魔法世界≫の政治組織でね。此方に派遣されてくる者は、あくまで向こうの方針に従っている面もある。ただ、全体の風潮もまた、それに従うべきというのが多数意見だな」
……正直、この街を牛耳っている魔法使い達には、敵意と
「事情を話してくれたのは、正直ありがたい。だけど、あんたがわざわざAIもどきまで作って、魔法に目覚め、なおかつSAOを経験したものを待っていた理由は何だ?」
そう、ここまでオレたちは現状の把握こそ出来たが、コイツがこんなところで待っていた理由を聞いていないのだ。SAO開始のときや、あの最後の戦いのときを考えても、コイツが慈善事業でこんな真似をするとは思えない。
「………≪立派な魔法使い≫を含め、私も彼らとは少しばかり因縁があるのだよ」
「……因縁?」
それきりヒースクリフは理由を口にしない。
「まあ、私の理由が知りたければ、急ぐことは無い。どの道、君達が魔法使いに対し、どう接するかで決まるのだから」
「……さっき言った『秘匿』ってやつか」
オレにもここまで聞けば分かる。十中八九、目の前のヒースクリフも、魔法という埒外のチカラを持っている。そして『秘匿』と言ったからには。
「記憶の消去。もしくは、殺害」
そう考えるのが自然だろう?
「いや、そこまではせんよ。そもそも本国の魔法使い達も、『相手に秘匿を約束させる』か『記憶を勝手に消す』かのどちらかを取るはずだ」
「「…………あ?」」
ヲイ、ちょっと待て。約束って何だ、約束って。まさか口約束か? それに記憶の消去も『勝手に』やってるのか?!
「「………………ちなみに、ダメだったときのペナルティは?」」
「……魔法でオコジョにされて、数年収容所入りだな。」
………………それ、絶対秘匿守る気ねえだろ。しかも記憶も、本人の許可とらねえって、後遺症でも残ったらどうする気なんだ?
「何で、そんな、ことに、なってるん、ですか……?」
「……コウ君、キミに丁寧語で話されると、非常に怖いのだが。まあ推測になるが、恐らくはなし崩しに巻き込むことで、従者を選びやすくする意図も在るかも知れんな」
「≪魔法使いの従者≫……また魔法使いの都合かよ…………」
反吐が出そうだ。結局、自分の都合しか考えていないように聞こえる。
「話を戻すが……私が君達に与える選択肢は、二つ。一つは今日のことは悪い夢だったと考えて、今後一切『街の裏側』に関わらないと約束すること。もう一つが」
「これから先も記憶を保持したまま、関わり続けること…………」
そうなるだろうな。でも、関わり続けるにしても。
「オレたちには、チカラがない……」
悔しいが、現状のチカラではあんな
「その点は、心配要らない。君達がチカラを欲するというのなら、私がこの空間で、君達に魔法の使い方をレクチャーしよう」
「……何?」
それは、確かに魅力的な提案だ。魔法の使用方法が分かれば、
……しかし、コイツの意図が見えない。
「フフ、そう睨まなくとも、君達が関わり続けるというのなら、私と彼らとの因縁も、目的もいずれ分かる話だよ」
決定。やっぱり、こいつはいけ好かない。
「……では、答えを聞こう」
その質問に、オレたちは。
「「――――――」」
◇ ◇ ◇
誰もいなくなった空間で、ヒースクリフは瞑目しながら呟いた。
「――――別に勝率の低い賭けに出たわけではないのだよ、コウ君、チウ君……そもそもナーヴギアも、SAOも、作られた目的の一つは、
そう、この男にとって、意味の無い行為など無い。この男にとって、結果を出すための過程は十分に踏んでおり、ありとあらゆる行為が、自身の目的の為にあったといっても過言ではないのだ。
「しかし…………あの日、キリト君やアスナ君と共に、最後まで私に抗ったあの二人が選ばれるとは、こればかりは、運命の悪戯とやらを信じたくなってくるな」
そうして、ヒースクリフは、椅子から一人立ち上がる。
「≪狂乱剣≫と≪七星剣≫に選ばれし者―――システムという≪神≫にすら逆らった反逆児たちよ…………出来得るなら、
その言葉は、誰にも届くことなく、静かにその空間に溶けていった……。
第三話終了でした。これでようやく『はじまりの日』も終了。次回から新章に入ります! …もっとも投稿は不定期になりますが。
話の中で、コウとチウが魔法使いに敵意をむき出しにしていましたが、本作品はアンチ・ヘイトの類にする予定は(いまのところ)ありません。まあ、絶対にウマが合うことはないでしょうが……
しかし今回ヒースクリフのせいで、かなりヤヴァイフラグが立っています。…わかるかな?