SIDE:朝倉
――――うっひゃーーーっ。これはホントにやばいわー。
私が、目の前の光景に抱いた感想はソレだった。目の前では、新撰組の羽織を着たクラスメートの桜咲さんと、謎の大正浪漫風の令嬢コスをした眼鏡の剣士が戦っている。その剣の速さは、とてもじゃないけど私の目に映らないほどのものだった。
あれから、隠れて桜咲さんとこのかを見張っていたら、あの女がやって来て決闘を申し込んでいた。それを一緒に見ていたいいんちょ達が悪ノリして、今に至る、というわけだ。
(一応、ギャラリーは集めておいたけど……ラフコフが本気になったらヤバイよね……)
取材で集めた情報によれば、ラフコフは殺人のためならいかなる労力を払おうとも成し遂げようとする、暗い情熱を秘めた奴等だったと聞く。SAO後半に行われた掃討作戦でも、討伐隊の情報を事前に掴み、逆に罠にはめて皆殺しにしようとしたと、私の報道活動の『師匠』で、今はフリーのルポライターとして世界を回っている『女性』に聞いた。
(そーいえば、『師匠』も、あの二人にちゃんと名乗ればいいのにねえ……)
何でも『師匠』は、攻略組を影から支えた『情報屋』を営んでいたとかで、そのあたりのノウハウで、現実でも文筆活動を始めたのだとか。私に色々指導してくれる中で、あの二人の存在にも気がついたが、自分の存在の口止めを約束するだけで、色々事情も教えてくれた。
(ラフコフはその気になれば、大量殺人も厭わない……だけど、その依頼人は、そうじゃない……)
そう考えた上での、時代村での『突発イベント』に見せかけた『宣伝活動』だったわけだが、それでも強行してくる可能性はある。危険度がどの程度減ったかは未知数だ。未だに姿を見せていないのが気になるし。
それに……。
「ざーんくーせーん☆」
「くっ!」
さっきから、視界の先の桜咲さんが、段々と劣勢になっていってる。桜咲さんの刀は、長くて重そうな一本。対して相手は短くて小回りの利きそうな二本。どうしても手数で押されてしまっているみたいだ。
(長谷川、早く来て。このままじゃ本気でヤバイよ……)
SIDE OUT
――――ヤバイな、コレは……。
時代村のとある路地裏。視界の先には、黒ずくめの服装を纏った殺人狂が三人。
「Wow……そんなに急いで、何処行くんだ?」
「今回は殺してもいいって許可もらってるし……楽しもーぜ?」
「ク――あ、あ。楽しみ、だな」
こっちは全然楽しくなどない。目の前の障害を乗り越えないと、最終的にチウのクラスの近衛さんを誘拐されては終わりなのだから。薬を使っての洗脳など企むような奴らには絶対に渡せない。
「(仕方ないね……チウ)」
「(分かってる……どうせ『切り札』を切るなら、ここで決着をつけるぞ!)」
小声で確認し、≪影の衣≫を展開し、刀剣を作り出す。もっともうかつには攻めず、あくまでチウを護る防御の姿勢。
「Oh……珍しいな。俺達を見たら途端に斬りかかってくるばかりだったお前が、防御とは」
「ホントッスねー?」
「ビビッて、いるの、か」
そんな言葉に不敵な笑みを浮かべる。そして、そんな後ろではチウが≪仮契約カード≫を取り出す。
「
言葉とともに、彼女の前に現れる一本の杖と電子精霊。紛れも無い『電子の王』の証。
「全員、即座に準備にかかれ!
「「「「「「「イエッサーーーー!!」」」」」」」
そうして電子精霊達は周囲を飛び回り、様々なウインドウを開く。そんな中、そのうちの二体が、その手に結晶を持った状態で降りてきた。
「「よく見て置けよ、コレが―――ー」」
彼女と視線を交わし、言葉を紡ぐ。ここから、ここからが大逆転だ!
「「俺(私)たちの切り札だ!!」」
言葉とともに、それぞれの≪心意結晶≫を掴む。その途端、チウの結晶は緑掛かった金色、オレの結晶は漆黒へと変化した。
「「ちう様、こう様! 簡易的では在りますが、≪ザ・シード≫ネットワークへの接続を確認! 『呼び出し』準備整いました!!」」
「「≪システム・コール≫!!」」
――紡がれるのは、この世界の魔法の言葉ではない。かと言って、妖精郷の言葉でもない。彼らは知らないが、ソレはかつて黒の剣士が訪れた、もう一つの世界に伝わる、魔法の言葉。≪神聖術≫と呼ばれる、その言葉こそ、茅場が指し示した結晶に働きかける言葉だった。
「オブジェクタイズ・ウェポンユニット・アクティベート! ≪グランシャリオ≫!」
「オブジェクタイズ・ウェポンユニット・アクティベート! ≪ドラゴンスレイヤー≫・≪
「「エンハンス・アーマメント!!」」
その言葉とともに、≪心意結晶≫が一際強く輝き、光の粒子で剣の輪郭を描き出す。常識を越えて――世界を越えて――あの世界で君臨した聖剣・魔剣・妖刀は、今それぞれの担い手の手の中へと顕れた。
「ホウ……愛用の武器を召還したってわけか? だが、その程度で勝てると思ってるのか?」
「「思ってるさ!!」」
言葉は短く、突っ込む。今までは武器の維持にも使っていた魔力の全てを、防御と身体強化に持っていく。コレだけでもかなりの強化になる。さらに三本の武器には、こいつ等が知らないエクストラ効果もある。
「セアアアアッ!」
掛け声とともに、チウは両手剣用水平三連撃ソードスキル≪ホリゾンタル・ダンス≫でジョニーに斬り込む。水色の剣閃が、ジョニーへと殺到する。
「っとと、あぶねッ!」
「オイオイ、油断しすぎだろ、ジョニー」
「そっちもな!」
明らかに余所見をしたPoHに向かって緑色に輝く、腰だめに構えたカタナを解き放つ。居合い系ソードスキル≪
――そう、確信した、
「がっ…………?!」
わき腹に、再び『穴』が開いた。視線を向ければ、またも先日と同じ赤黒いライトエフェクト…………いや、これは。
「
そのライトエフェクトは、ザザが手に持つ物
「全ての、ユニークスキルの、中で、『最長』の攻撃範囲を誇る、スキル――――≪無限槍≫だ」
≪無限槍≫。その特徴は、今しがた見た、圧倒的な攻撃範囲か。ライトエフェクト自体が伸びて攻撃になるなんて、成程『最長』と呼べるわけだ。
――――だけど……何故、コイツが≪ユニークスキル≫なんか持っている?!
「不思議そうな顔だな…クク、そんなにザザの奴が≪ユニークスキル≫を持っていたのが意外だったか?」
そこに割り込んできたのはPoH。見ると、チウと対峙していたジョニーの奴も手を止め、こちら側を眺めていた。まるで今から楽しいShowが始まるといわんばかりに。
「いいぜ、答えてやるよ」
相変わらずどこか芝居じみた、魅き寄せられるような口調だった。
「アインクラッドから解放されたあの日……データ消去に集中していたカーディナル・サーバーに、大規模なハッキングを仕掛けた。その結果として、この俺はカーディナルの中で封印されていたデータの一部を手に入れたのさ」
ニヤニヤと笑いながら、奴は告げる。それを知られても、大した痛手ではない、と言わんばかりに。
「その中に、ゲームクリアまで解放されなかった『四種類』の≪ユニークスキル≫も存在していた。当初は魔法も認知してなかったし、利用価値も知らなかったがな……だが、結果として魔法を知り、スキルのうちの一つを試してみたところ、一定の条件のもとに発動が可能と判明した。そこで、ほかの三種を使えそうな人材として、SAOで部下だったコイツラを脱獄させてみたのさ」
そこで一つ、PoHの奴はため息をついた。
「ザザの奴の弟は、中々見所があったが、オマケで脱獄させたオベイロンの奴は、茅場の作ったものなど反吐が出ると言って、受け取らなかったがな。――――もう、わかったろ?」
ここまで来れば、この話の帰結は分かる。理解したくない現実だということを。
「オベイロンを除く、
絶望が、その口を開けていた。
はい、主人公勢にはほんの少しの希望と、強大な敵という絶望を。
今回で魔改造ラフコフの正体が明らかに。オベイロン以外全員ユニークスキル持ちという圧倒的な戦力差です。果たして主人公勢は覆せるのか!?
無限槍……槍の最大の特徴は、その『射程』と、攻撃箇所が予測できない『突き』の強力さです。なので、その二つを最大に活かすスキルにしてみました。ちなみに、もしSAOの世界でこの使い手が現れたら、遠距離戦ならキリトすら負ける……
何でザザが持ってるかと言うと、ザザの持つエストックって、槍と完全に同じ種類の、『貫通属性カテゴリ』の武器なんですよ。そのため、貫通属性『最速』のエストックで出させたらどうなるかと……
ところで、作者は作品の設定上、ユニークスキルは全てのスキルで最も優れた面を持った、各カテゴリに一種類ずつのスキルとして設定しています。従って、今まで出てきたスキルの特徴と、該当武器カテゴリは、こうなります。
神聖剣 → 盾(GM)【最高(硬)のユニークスキル】:圧倒的防御力
二刀流 → 片手剣(反射速度)【最強のユニークスキル】:瞬間火力
無限槍 → 槍(条件不明)【最長のユニークスキル】:圧倒的射程
七星剣 → 両手剣(電子精霊への親和性)【最優のユニークスキル】:???
狂乱剣 → ???(???)【最狂のユニークスキル】:???
()内は取得条件ですが、主人公のスキルはいまだ一切が不明。残りは作品で出てくるたびに追加します。
朝倉の『師匠』…もう、言うまでもありませんね。そう!おヒゲのあの人です!作者の朝倉の解釈と、彼女の解釈に共通点がやたら多かったので、師弟関係にしてみました☆