そしてようやく『あの人』の正体が明かされる……!
SIDE:桜咲
――まさか、これほどまでの手練れとは。
先ほどから剣を交える、目の前の強敵を思い、歯噛みした。最初に遭ったのは敵方の逃走の直前であり、次はこの街中で死角からの攻撃。恐らく自分の剣に自信がないのだろうと考えていたが、そんなことはない。この剣士は、対人戦なら私よりも上の使い手だ。
「にとーれんげき、ざーんてーつせーん☆」
「くあっ!」
一撃必殺の威力を秘めた≪神鳴流≫の剣を、小回りの利く二刀で放つ。それだけでこれほどやり辛い相手になるとは、思ってもいなかった。
お嬢様は、私の式神を使って応援に来たネギ先生に任せたが、今のネギ先生はただの分身。何の力も持たない存在だが、人目のあるところに紛れるくらいはしてくれるだろう。
「こない楽しい戦いの最中に、考え事ですかー? もっと楽しみましょー?」
目の前の月詠とかいう剣士が殺気をまとい、目の色が変わる。≪神鳴流≫剣士に時折いる、
「私は楽しむつもりはない。他を当たれ」
「そないにお嬢様のことが大切ですかー? 何や妬けますわー♪」
そう言って向けてくる剣筋は、苛烈。私もまた早くお嬢様の元へ向かおうと、激情のままに剣を振るっていると、
「そこまでや、神鳴流のひよっこ!!」
城の頂上で、ネギ先生とお嬢様に弓を向ける、猿女の声が響き渡った。
SIDE OUT
「何やってんだ、あのガキは……!」
チウが悪態をつくが、オレも内心は忸怩たる思いだ。視線の先では、ネギ先生と近衛さんが城の頂上で追い詰められ完全に人質となっている。
「オイオイオイ! バカじゃねえの、あのガキ?! 人ごみに紛れてガタガタ震えてりゃ良かったのに、わざわざあんなところまで逃げて、しかも追い込まれるって! ドツボにハマって面白いわ、ホント!」
「クッ、全く、だな……」
ジョニーとザザが此方を挑発しようとそんな言葉を向けてくるが、その思いはオレ達にもある。恐らく人のいない路地裏に行って、あんな状況になったのだろう。逃げるにしても、状況を見てからにして欲しかった。
「まあ、向こうはこっちに気づいていないみたいだし……精々楽しもうぜ?
そう言って短剣を構えるPoHの手に、『黒いライトエフェクト』が宿る。あの異常な光が、アイツの……!
「それがお前の……!」
「クク……その通り…『最悪』のユニークスキル、≪暗黒剣≫さ」
こうやって向き合うだけでも、あの光からとんでもない禍々しさと、威圧感を感じている。だが、『最悪』っていうのはどういう意味だ?その疑問には目の前の奴が答えてくれた。
「コイツは、あのデスゲームで『最もプレイヤーを殺した者』に与えられるはずだったユニークでな。だったら、俺が持つに相応しいと考えて習得した。本当に素晴らしいぜ、コイツは?」
「「な!?」」
茅場の奴、何考えてんだ!?そんなスキルを生み出したら、間違いなくPKに絶対的な力を与えることになる。『血盟騎士団』にとっても障害になるだろうプレイヤーを、自ら生み出すなんて、意図が全く分からなかった。
そんなふうに戸惑っている中、視界の向こう側、城の方角から突然の閃光が瞬いた。
見ると、城の周りの堀の上、桜咲さんを前に浮かべた近衛さんが、とんでもない魔力を放っていた。オイオイ、今の漏れ出しただけの魔力で、既にオレとチウの魔力を併せた分を大幅に超えてるぞ?!
「……とんでも無いな、あの嬢ちゃん」
驚きは此方だけではなかったらしく、ラフコフのヤツ等も振り返って硬直していた。
――――今が、好機!
「あ! テメ!」
「ちっ……!」
「……!」
ラフコフの横をすり抜け、桜咲さんたちと合流するため、全力で走る。横にはすでに、オレの意図を読み取ったチウがいた。
「いかせませんえ~」
全力で向かう中、目の前にこの間の二刀流剣士と、大量の鬼が立ちふさがる。邪魔だ!
「――≪神鳴流≫『もどき』――――」
「――はい?」
輝くのは野太刀と西洋剣。その刀身に込められたのは、気ではなく『魔力』。その様子に、こちらを見ていた桜咲さんが、素っ頓狂な声を上げた。
「≪二刀連撃・斬鉄閃≫――――!!」
「な!?」
繰り出されるソレは、奇しくも月詠と名乗る少女が出した技と同一。≪神鳴流≫の門下でもない者が、その技を使ったことに桜咲は戦慄した。
「はわ?!」
とはいえ、流石は本家。不意打ちに近かったその斬撃を二刀で受けきって見せた。しかし重い野太刀と西洋剣の渾身の一撃によって、その手の華奢な二刀は、破片となって降り注いだ。
『行かすかい!』
味方の剣士が劣勢と見て取るや、一斉に鬼どもが群がる。それに対するのは、西洋の大剣を構えるチウ。
「『見様見真似』≪神鳴流≫――――」
「そんな!?」
彼女が取ったのは、桜咲さんも時折構える八双の構え。そこから繰り出されるのは――――!
「≪百烈桜花斬≫――――!!」
名前のとおり、百を数える連続斬撃。ソレが周囲に群がる式神を一掃し、さらには追い縋って来ていたジョニーが持つ短剣を、根元から砕いていた。
「ヒュー! 魔力込めると、そのお得意の連撃もここまで怖くなんのかよ! ヤバイっすね、ヘッド!」
「Wow……そうだな。
そう言って、ラフコフは身を翻す。正直追いたかったが、ここで大規模な戦闘に入れば、一般人やチウのクラスメートに確実に被害が出る。それだけは避けたい。
「…………あんた等、何モンや?」
そこに疑問を投げかけてきたのは、月詠と呼ばれた少女。その手に折れた二刀を持ち、こちらを睨んできていた。
「へえ、そんな目も出来るんだな……私はてっきり、ただの狂人の類だと思ってたぜ」
「まあ、人の間に生きられぬ身や、ゆう認識ならありますえ? ……それより、あんた等の剣筋に、見覚えがあるんやけどな」
視線に、より一層力がこもる。まあ、同門のようだし、『師匠』のことも知ってるかもな。
「ある人に教わったんだよ。ほんの一年ほどだけどな」
「……その人の名は?」
それは決して忘れられない名前。一度だけ現実での名前を聞いたきりだが、心に刻まれた名前。現実での本名をキャラネームに選ぶというあまりにもあまりな行動をしていた女性。
「「『青山』
その名前に、相手が浮かべた表情は、驚愕だった。
「は……あは、ははははは! こんなことがあるんやなぁ……こないなところで、こないなときに、こんな出会いがあるやなんてな」
その顔が浮かべていた笑みにはいろんなものが混じり、こちらからはうかがい知れなかった。けれどどこか……懐かしむような?
「どうやら知り合いだったみたいだな。どんな関係だったか知らないが……」
「何や、聞いてないんか、ウチのこと? ある程度親しくなったら、家族関係くらい話すやろ?」
「……何?」
そういえば……一度だけ
「ウチの本名は、『青山』
「「マジか……」」
奇縁にもほどがある。でもだとすると……。
「だったら、今すぐそいつ等から離れろ……アンタの横のラフコフは、サクヤ師匠を罠に嵌めて、死ぬ原因を作ったヤツラだぞ」
「……へえ?」
その言葉とともに、殺気がラフコフ達に向く。その殺気にジョニーとザザは身構えるが、それをPoHの奴が制した。
「Hey……この仕事が終わるまでは、一応は同僚なんだ。そういうのは後にしないか」
「…………まあ、ウチも千草はんに迷惑かけるわけにはいかんからなあ……」
渋々といった具合に、殺気が引っ込む。とはいえ、もし隙あらば襲い掛かるだろう。それが分かっているのか、ジョニーとザザは警戒したままだ。
「今のところは、ここまでだ……だがいずれその命はもらうぜ、≪獣騎士≫?」
「ウチも、ここまでやわー。先輩とはもっと思い切り斬り合ってみたかったわー☆」
本当に、この
最後に、去っていく、その背中に。
「「師匠……」」
大切な恩師を思い出していた。
はい、時代村バトル終~了~。原作そのまんまのところはすっ飛ばして結構駆け足になりましたが、いかがだったでしょうか?
ようやく出てきた、コウとチウの『師匠』。この人の関係もあって、多重クロスタグは入れましたwだってこの人の母で、東京で『弁護士』やってる≪神鳴流≫師範って、赤松作品では一人しかいませんし……その人が『母』と聞いて非難轟轟かも知れませんが、こうでもしないと後の月詠のパワーアップフラグが立たないし。まあ『父』は謎のままにしてありますから、まだ大丈夫かな……?
さて、今回のバトルではラフコフのユニークスキルに押された形になりましたが、≪心意結晶≫の本領はこれからです!むしろ今回の『ゲームのアイテムを現実に召還した』という行為は盛大なるフラグです。
コレが出来るなら、当然『アレ』もできるよなあ……