このアイテムは、SAOクロスキャラのためだけに考え出したアイテム……つまりは、そういうことです。
SIDE:チウ
「――つまり、絶賛大ピンチだと」
先ほど長瀬のもとに来た電話の相手は、バカブラックこと綾瀬からだった。それによると関西呪術協会の本山では、人を石にする正体不明の存在が暴れまわっており、図書館組は残らず石にされたとのことだった。おまけにそこから森を抜けるまでの間、そこかしこに恐らく本山で働いていた使用人と思しき石像が転がっているのだそうだ。
「結界内に気づかれずに侵入、オマケに石に変える……≪転移魔法≫と≪石化魔法≫だろうな。どちらも高等技術だよ」
「だろうな……龍宮、悪いが少し付き合ってもらっていいか?」
「一旦、明石と大河内の警護を解除すると言う意味だな? いいだろう。私もクラスメートを見捨てるのは寝覚めが悪いしね」
龍宮の戦闘能力・対応能力の高さは、既に立証済みだ。コイツなら生き残りを連れて、本山を離れることは十分可能だろう。
「長谷川ー、龍宮ー、『まほー』って何アルカ~?」
「フム、詳しい事情を教えてもらいたいでござるな」
……そういや、近衛の家が京都の名家で、その権力に絡んだ襲撃がある可能性は話したが、『魔法』については話してなかったな。まあ、どうせ今日バレるからいいか。
「向こうに向かいながら、話してやるよ。それより今は、コウの到着を待って――」
「――待って、長谷川」
長瀬と古と話していたところ、横合いから大河内の声がかかった。
「場所は、このかの実家で、相当離れてるんだよね? 私のアーティファクト≪
「ダメだ!」
敵の目の前でアーティファクトなんて使えば、もう後戻りは出来ない。魔法勢力から狙われる可能性だってある。自分はともかく、大河内と明石にそんな道は歩ませたくは無かった。
「いいじゃないか、長谷川」
「龍宮!?」
「昼間の護衛でも、魔法のことやアーティファクトの使い方を聞かれていたし、大河内のアーティファクトは、上手く使えば狙った方角への転移も可能だそうだ。正直、今は時間がなさ過ぎる」
「くっ……」
頭では、分かってるんだよ。それでも感情が納得しねえんだ!
「長谷川。心配してくれてるのは、分かってる。けど私は、皆に関わるのをやめないよ」
「私もそーだね☆」
「……あー、くそ」
私がついに根負けしたとき、ロビーのドアからコウが走ってきていた。ここからは、決戦だ。
SIDE OUT
京都、関西呪術協会本山近くの水辺。そこでは百を軽く超える異形の存在に囲まれた三人の子供達がいた。3-Aの担任、ネギ・スプリングフィールド、その教え子の神楽坂明日菜、桜咲刹那だ。
「――とりあえず、風で障壁を作ったけど……どうしようか」
「……私が、ここに残ります。お二人はお嬢様を助けに――」
「だ、ダメよ、刹那さん! さっきの見たでしょ!? 鬼だけじゃなく、あのラフコフとかいう殺人鬼までいるのよ! いくら刹那さんでも、殺されちゃうわよ!」
そんなことを言い、口論になりかけていた三人の足元、水面から大量の人間が出現した。
「ぷはー、着いたアルカー?」
「ほほう、あっという間に戦場とは便利なものでござるな」
「やあ、助けに来たよ刹那。まあ御代はツケにしてあげよう」
「……状況がわからないね」
「そーだね。皆、説明してくれる?」
「全くだな。まずはどうしてこうなったか、説明してもらおうじゃねえか、桜咲」
「今は何より戦況の確認だな。勝利条件次第では大逆転もありうる」
目の前の三人は、突然の闖入者に、しばし呆然としていた。
◇ ◇ ◇
「……そうか。とにかく近衛を奪い返せたらこっちの勝利か」
「いや、それはどうだろうな? 敵に転移の使い手がいる以上、その場合は奪い返した後の防衛戦が重要となる。朝まで護れる保証は無い」
「ここで敵の目的である召還系の術者を、再起不能にするのが一番手っ取り早いかな、龍宮さん」
現在、近衛さんは敵の手に落ち、恐らくは召還系統の儀式場に連れて行かれた。そこはおそらく≪転移≫と≪石化≫の使い手が護っており、この風の防壁の外では、百を超える鬼達と、ラフコフの奴等が囲んでいる状態だそうだ。
「……よし、ここはオレ達が受け持つよ」
「そうだな。私とコウでここを受け持ち、ネギ先生を大河内のアーティファクトで一気に転移。術者を撃退し近衛を奪い返して、どこかに拠点を作って、防衛するのが一番いいな。…で、お前等は」
「私も残るアルヨ~♪ 強い奴いっぱいアル!」
「……フ、それじゃ私も残ろうか」
「拙者は、この山のどこかにいる綾瀬殿を探すでござる」
「私も残るよ、長谷川。銃さえあれば、どうとでもなるしね☆」
これで、方針が決まった。よし後は……
「オーッシ! そいじゃ連絡用に、ネギの兄貴とここにいる姐さん方で一発ブチューッといっとくか!?」
……害獣の始末が、先か。
「……オイ、そこな害獣。皆を助けるために戦場に赴いてくれた長瀬さんや古さんを、死地に追いやろうっていうなら、血見るぞ」
「す、スンマセンでしたーッ! さっき了承してくれた、刹那の姐さんだけで我慢しときやす! だからそれ以上切っ先を押し込まないでーーッ!!」
ふーん、桜咲さんがね。まあ、桜咲さんについてはいいか。元々魔法使い側の人間だし。
「まあ、余計な欲は身を滅ぼすよ。――――それで、チウ。準備は出来た?」
目を向けた方向には、チウと電子精霊が総出で描いた魔法陣が存在していた。その中心には、チウと俺達が持ってきていた≪ナーヴギア≫と≪アミュスフィア≫。そして俺達の手に、≪心意結晶≫が渡される。
「バッチリだ。これさえ出来れば、大河内や明石も最前線で戦えるようになる」
「ホ、ホントに?」
「……よかった。流石に、魔法も武器も無しは不安だったんだ」
そして、彼女らにも≪心意結晶≫が渡される。この場でこの結晶が扱えるのは、オレ達四人だけだからな。
「それじゃあ……いくぜ、オメーラ!」
「「「「「「「イエッサー、ちう様!!」」」」」」」
そうして朗々と、彼女は謳う。現実と仮想を隔てる、全ての壁を壊す魔法を。
「『
チウの呪文の完成とともに、電子精霊が作り上げた魔法陣が輝きだす。その光と共に、全員が自分の≪心意結晶≫を握り締める。そこから漏れ出す光は、金色、漆黒、黒鉄、藍。それぞれの魂を表す光と共に、紡ぐ。
『≪リリース・リコレクション≫!!』
その言葉こそ、この≪心意結晶≫に秘められた、『真の力』を発揮するための魔法の呪文。絶望を覆す希望を生み出す言葉。
すなわち、結晶に詰まった、『あの世界で過ごした
それぞれの結晶から、半透明の
「「「「≪リンク・スタート≫!!!!」」」」
その言葉は、反撃への狼煙だった。
◇ ◇ ◇
暴風の外側、天ヶ崎によって呼び出された鬼達は、警戒しながらも、どこかやる気を感じさせなかった。
『召還された言うても、あんなおぼこい嬢ちゃんたちじゃ、やる気おきんわなぁ……』
一体の鬼が、自嘲したように呟いたが、つまりはそういうことだった。鬼と言っても、種族がそれと言うだけで当然個性がある。好戦的な種族というのは否めないが、年を経た強力な個体ほど、より強い相手を求める武人肌の性格が強くなる。ここにいるのは、世界でも有数の近衛家の魔力で呼び出された者たちであり、強力ゆえに、武人に近いのだ。
「Wow……どうした? あんな小さな獲物を狩れるって言うのに、やる気が失せるなんて」
「そーっスネ、ヘッド! あいつ等をなぶり殺せるなんて、サイッコーなのによ!」
「ク、クク。全く、だ」
さらにいけ好かないのが、横にいるコイツラだ。こいつ等からは鬼よりも邪悪な、殺人狂の匂いがする。仕事や目的のためでなく、『ただ殺すために殺す』、最悪の部類の匂いが。
(ホンマ、ムカつく仕事やで……)
『親分、どうやらあの子供の西洋魔法が、薄れてきているみたいやで』
『――――ほか、それなら殺さん程度に『無力化』や』
部下達に告げて、その後横の殺人狂どもと戦う可能性も考える。幸い召還主の命令は、『殺さん程度に』少女達を倒すこと。それなら『殺してしまう可能性を排除する』と言う理由で、殺人狂どもを排除しても問題ない。
――――そう考えていた鬼達の思考は、竜巻の中から襲い掛かった『津波』によって打ち消された。
『――――は?』
歴戦の勇士たる鬼達も、この事態に一瞬思考が停止してしまった。しかしそこは豊富な戦闘経験か、すぐさま回避行動へと移る。それでも仲間の半分が飲み込まれた。
『あ、阿呆な!?』
『陸地で津波やとぉっ!』
津波をモロに食らった者達は、その圧力で何体も還って行く。それは、ただの津波に可能なことではない。この津波自体に『魔力』がこもり、威力が底上げされている証拠だった。
『くそっ、一体なん――』
何とか津波から逃れ、思わず悪態をついた巨体の鬼が、
『な、ガアッ!』
『こ、これは、鉛弾か?! なんちゅういりょ――』
何体もの妖が弾丸をくらい、弾けて行く。しかも特殊な弾丸を使っているわけでもなく、単に威力を魔力で底上げしただけの代物で、当たった傍から還って行くのだ。
『さっきの嬢ちゃん達の仕業や! 今すぐ取り押さえるんや!!』
一体の鬼の号令とともに、速さに定評のある烏族が奔る。その手には人間の身の丈よりも大きな剣が握られ、ただの人間にはとても太刀打ち出来ない……
轟ッ!という一陣の暴風が吹き抜けたすぐ後、烏族たちの手が、足が、ありとあらゆる部位が、落ちた。
『な……』
ダメージで急速に還りながら、一体の烏族は見た。風が吹き抜けた先に、一人の『金髪』の騎士がいたことを。
『くそっ、西洋魔術師があっ!』
それまで指示を出していた一体の鬼が、金棒を持って金髪の騎士に迫る。速度はすさまじいが、膂力は大したことはないだろうと、渾身の力で金棒を振り下ろした。
――その金棒は、一瞬で巻き起こった圧倒的な斬撃と暴力で、ひしゃげ、へし折れ、腕もろとも細切れになった。
『があああっ!?』
腕を押さえ、攻撃の来た方向を睨む。そこには、一本の太刀と、一本の西洋剣を逆手に持った、黒い騎士が存在していた。その鎧は、黒鉄で出来ているようだったが、何らかの魔力によるものか、黒い『影』のような霧を纏わせていた。全身くまなく鎧で覆いつくされており、唯一窺えるのは、
『何モンや……!』
ここに至って、鬼達は眼前の相手への認識を改める。こいつ等は、庇護すべき子供などではない。自らの意志で戦場に向かう、立派な戦士なのだと。
「……オレ達か?」
声が答える。それは鬼達にとって、理解できない事実。だが、彼等にとっては何にも変えがたい絆を育んだ、真実。
「仮想世界――――≪
その宣言は、産声。後の歴史家たちが、魔法世界最強の三大ギルドとして語り継ぐことになる≪
はい、≪心意結晶≫の本当の効果は、『仮想世界の仮想体(アバター)を現実に呼び出し、本人のステータスを書き換える』でした。正確にはアバターの『記憶』ですが、それを憑依させて、自分のステータスを『上書き』してしまえば、ほぼアバターと同レベルで動かせます。暴風を纏って走り抜けたチウが『金髪』だったり、コウがフルプレートメイルを完全に纏っていたりしたのは、外見も一部『上書き』されたせいです。
元々SAOのクロスを考えた時点で一番のネックになったのは、『仮想世界でこそトップクラスのキャラたちを、どうやって現実で動かすか』でした。単に魔力で強化して同じ動きをさせるだけなら、クロスの意味が無いし、どうせなら現実にアバターを持ってきたほうが面白いと考えました。このために、アクセルワールドを読み漁り、アリシゼーション編で知識を仕入れ……ようやく考え付いたのが≪心意結晶≫でした。呼び出すだけでなく、ステータスの上書きも必要となるため、この名前になってます。
そして、余った三つの結晶は、この先持ち主が決まっています。もっともさらに隠し機能があるため、そっちで使うんですが。ヒントを出すと、『アバターを現実に呼び出す』ということは……?
次回はようやく明かされるチウ、コウ、レーカ、キッドの現実での戦闘能力!特にレーカとキッド……強いですよ?