う~ん、アキラやゆーなは、この先どうしようかなあ……
SIDE:ネギ
……僕は、弱かった。
本山で、このかさんを浚われてしまった。刹那さんは、目の前の白髪の少年に一度はやられたし、アスナさんだってやられた。魔法学校では優秀だなんて褒められたけど、そんなものは何の役にも立たなかった。
だけど、だからこそ!どんなにみっともなくても、皆を守るために、自分に出来る精一杯をしたいんだ!!
「そろそろ、いいんじゃないかな?」
「ガッ!?」
その声と共にアゴを衝撃が突き抜け、力が抜ける。その一瞬で、コイツは抜け出していた。
「あ、ぐ……?」
「悪いけど、僕にも都合があってね、
そう言って向けられた指先。そこには、先ほど右腕に喰らったのと同じ、『石化』の光が宿っていた。
「神楽坂!」
「分かってる!」
その光が放たれるより早く、僕の前に長谷川さんと、アスナさんが割り込んだ。
「ラアッ!」
「?! ≪
まるでレーザーのような光を、長谷川さんの両手剣が斬り裂き、霧散させた。そこに殺到するのは、ハリセンを大上段に構えたアスナさん。
「ならば――≪
灰色の石化の霧が、目の前を覆い、アスナさんの姿を覆い隠す。それを目の当たりにして、僕もまた両足に精一杯の力を込めて駆け出した。
「これ以上の遅れは、こちらの計画に支障をきたすからね。悪いけど――
「――させないわ」
――!!?」
未だに空中に漂う、霧の中から響いた声。その声に元気を取り戻し、今出来る全力で相手へと突撃する。
「悪いことばっかする
「やはり――――『
―――おしおきよッ!!」
石となって砕けた服を撒き散らせながら、アスナさんがハリセンを叩き込んだ。途端に、常に張られていた魔法障壁が、全て解除される。
「くっ、だけどこの程度じゃ――」
「うわああああああっ!!」
その隙を逃さず、石化した右腕を、勢いに任せて相手の顔面に叩き込んだ!
静寂。停滞は、ほんの一瞬。それが僕に出来た精一杯だった。
「顔面に拳を叩き込まれたのは……初めてだよ。ネギ・スプリングフィールド」
膨れ上がる殺気。だけど僕にはもう、手足を動かす力すら残っていなかった。いっそゆっくりと近付いてくるアイツを見ても、何も…………。
「オオオオオオオッ!!!」
そのとき、横の森から、黒装束の男たちを吹き飛ばしながら、一体の『獣』が突っ込んできた。
SIDE OUT
ころすコロス殺す!
少し前までなら理性が抑えていたであろう、そうした黒い衝動に、何の疑問も湧かなかった。今はただ、目の前の三人をこの世界から完全に排除することしか頭に無い。
そうして威力を増した剣で、周りの樹木ごとラフコフを吹き飛ばしてやると、大きな湖の上へと出た。
「グラアッ!」
刀と剣を逆手持ちにした拳で、三人を吹き飛ばす。威力を殺しきれなかったラフコフは、そのまま湖に墜落した。
「グルルルルルッ…………」
唸り声を上げながら、湖の中央に架けられた桟橋へと着地する。着地の衝撃で桟橋が少し弾けたが、気にならない。横にいる赤毛や白髪の少年が、
「彼らの援軍かい? 悪いが、たった一人じゃ――(ガシィッ)――?!」
近付いてきた白髪の少年の頭を、口上の途中で鷲づかみにする。驚愕する少年の前にあるのは、満身のチカラを込めた鉄の拳。
「な――――――」
驚愕を顔に貼り付けたまま、少年は湖の岸まで吹き飛ばされた。拳自体は障壁で減殺されたが、障壁ごと殴り飛ばす勢いまでは止まらない。岸から掘り起こされるまではそのままだろう。
「み、水原さん、なんですか? あ、ありがとうござ――」
そう言い募る少年の、右肩をつかむ。だって、そうしないと…………
「なにを!?」
「ダメエッ!」
すぐ近くで言われたその言葉も、聞こえているのに、全く頭に意味が届かない。そうして振りかぶった右腕が、不意に空中で静止した。
目を向けると腕はひとりでに止まったわけではなく、銀色の手甲に抑え付けられていた。
「…………なに、やってんだよ、お前は」
その言葉と共に、頬に走る衝撃。ダメージもないのに、妙に心に響く。
「……あのとき、約束、しただろ。『私はお前がどんなになっても、引き戻してみせる』って。だからお前は、『たとえ自分がどんな風になっても、
そうして、抱きしめられる。目の前の彼女を破壊してしまいたくなる衝動と、絶対に駄目だと叫ぶ心が衝突し…………やがて、勝敗が決する。
「…………ご、ゴメン……心配、かけたね」
「――へっ、心配なんてしてねえよ」
ようやくのことで理性を取り戻したが、ソレと同時に身体中をとんでもない疲労感と激痛が襲う。まあ、あのユニークスキルは身体にかなりの無理を強いるため、当たり前だが。
「ぐっ…それじゃあ、オレも加わるから、今は召還されていたデカブツの排除を――」
「――もう遅いわ、バカタレ」
その声に顔を上げると、何故かやたら不機嫌な顔をした金髪の吸血鬼と、やたらゴツイライフルを構えた絡操さん、そして、氷柱に下半分を閉じ込められた巨大な鬼神がいた。……しかし、何故、不機嫌。
「なんなんだ、キサマラは! 最強無敵の悪の魔法使いたるこの私が、久しぶりに本気で暴れていたというのに、横合いからいきなり現れるわ、無視してラブシーン始めるわ! おかげでこの私の折角の見せ場が台無しではないか!!」
……いや、理性を失ってましたし。そんな事を言われても。
「申し訳ありません、水原さん、長谷川さん。つまりマスターは、放って置かれて拗ねているのです」
「だああああっ! 茶々丸! その方面のボケはやめろと、何度言ったら!!」
そんな感じで漫才を始める主従。あの、ところで人質になっていた近衛さんは、何処に?
「あん? 私の魔法の前に、桜咲刹那の奴が急行してかっさらった。上空に見えるだろ、アレだ」
その言葉に上空を見上げると、月の光の中に確かに人を抱えた華奢な人影と――――――
――――そのかなり下に、何かを手に掲げる小柄な少年の人影が見えた。
「…………はじめようか」
そうして少年が投げ落としたのは、赤みがかった奇妙な水晶柱。その水晶は、上空から凍りついた鬼神へと向かい……鬼神を吸い込み始めた。
「な、なんの真似やッ! 新入り!!」
まるで台風のような風に耐えながら、猿女が吠える。どうやらこんな事態は想定していなかったらしい。
「このままだと、彼らにスクナが倒されるだけだろう? だから僕が、『偶然』持っていたパワーアップアイテムでスクナを強くするだけさ」
「そないな偶然が、あるかいッ! 何を企んどるんや!」
「何、本当にただのパワーアップさ……もっとも、もしスクナが倒された場合、さっきの『結晶』に封印されることになるから、その場合は僕が『目的』のために利用させてもらうけどね」
……成程。あの白髪の少年の目的は、封印したスクナの回収か。十数年前の記録が正しければ、スクナはかのサウザンドマスターでも封印するしかなかった大鬼神。戦略兵器としての価値は、計り知れないだろうしな。
「チィッ! 『
呪文の完成とともに、最初のスクナの身体は砕け散ったが、その上空に禍々しい漆黒の肌を持つ新たな鬼神の身体が形作られつつあった。その肩には舌打ちしながらも、自分の最後の砦としてスクナを頼る猿女。
「フンッ……あの程度、再度の実体化を待つまでも無い。この私が叩き潰して――――」
「「待った」」
スクナに向かおうとする彼女に声をかけ、必死に自分の両足で立ち上がる。激痛が走ろうが、そんなものは今は関係ない。
「アレは、オレ達がやるよ」
「あの結晶の出所を、聞き出さなきゃならないからな」
その言葉に、目の前の600年の時を生きる吸血鬼は、殺気に満ちた視線を向けてくるが……やがて嘆息した。
「ハアッ……まあ、いいだろう。ただし! それならば、『ハデに倒せ!!』 さっきの私の
「「……了解」」
そうしてオレ一人翅を羽ばたかせ、両手に刀と剣を携えて浮かび上がる。SAOからの掛け替えの無い相棒は、既に腰に
「派手で、この騒動を終わらせる技ってなると……やっぱり、アレか、なっ!!」
方針を決め、空中から一気にスクナへと突っ込む。それに向かってスクナの拳が繰り出される。
「こっ、のおおおおっ!!」
翅を操って、空中で急旋回。さらには両手の刀剣を使って拳を跳ね上げ、一気に隙の出来た懐へと飛び込む。
「受けてみなよ――――――本物の『勇者』から受け継いだ剣を」
――それは、かつて、多くの人を救った輝き。
「≪
――『魔王』自身が生み出した、最強の切り札。
「
――仮想世界において、『魔王』を倒した『勇者』の輝き。
「
十六にもおよぶ『流星』の輝きだった。
『グオオオオオオオッ!!?』
殺到する星々に、鬼神の苦悶が響き渡る。切り上げ、振り下ろし、薙ぎ、とあらゆる斬撃が、スクナの巨体に突き刺さる。
そのOSSを、僕は唯一『継承』した。SAOの友人の中で、最も幼く、罪を重ねすぎた僕を、せめて自分の技が護ってくれることを信じて、キリトさんが譲ってくれた。今まで誰も受け継がなかった技を、世界でただ一人、受け継ぐものはここにいた。
「な、なにしとるんや! きばらんかい、スクナ!!」
『グ……ガアアアッ!』
その叱咤とともに、スクナが、かろうじて残っていた右側の腕二本を、コウへと伸ばした。その手には妖力が篭り、確実に致命傷となり得る威力を感じさせた……。
……もっとも、
「――――『
場に静かな声が響き、次の瞬間には腕どころか、スクナの右半身がずり落ちた。
「あ、あほな……」
「……北斗七星の
「ひッ?!」
そのチウの声に顔を上げた女が見たのは、十五回の攻撃を終え、空中で左半身を後ろへと引き絞り、今か今かと解放の時を待つ僕の姿。
そして、その時は、来た。
「オオオオオオオオッ!!!」
最後の一撃は、さながら『彗星』のようだった。翅も全開で使い、空中を突進し、左手の≪ドラゴンスレイヤー≫を深々と鬼神の胸板へと突き刺した。その余りの威力に、止まることなくスクナの身体の中を、ドリルのように突き進む。
「――――これで京都の騒動も終わりだ……お前には、もう会いたくないな」
突き進んだ先、胸に大穴を空けた鬼神を背に、呟く。下ではチウが、不敵な笑みを浮かべ、周りにネギ先生と神楽坂さんが呆然としていた。
そして、僕等の上空、雲ひとつ無い空に輝く月光を
その顔は、決して月光にも負けない、輝くような笑顔だった。
と、いうわけで、炸裂しました、≪スターバースト・ストリーム≫!!
いや、ALOにオリジナル・ソードスキルの『継承システム』があったので、コウにどうしても使わせてみたかったんですよ。SAOの代名詞みたいな技ですから。この技や、≪剣技連携(スキル・コネクト)≫を受け継ぐコウは、紛れも無くキリトの『一番弟子』といえる関係です。この先、その辺りももう少し掘り下げようかとも思っています。
そして……圧倒的ヒロイン力を見せ付けたチウ。まあSAOから続くパートナーなので、この辺り安定してるんですよね。アキラもゆーなも、その辺りある程度覚悟した上で、向かって行っています。ただ、恋愛群像って描写が結構難しいんだよなあ……。
ここで一つお知らせ。ようやく山場を越えた京都編ではありますが、来週所用で休日返上のため、投稿することが出来ません。そのため、次の投稿は10月になります……応援してくれる皆さん、本ッ当に、スイマセン!!