魔法先生ネギま!~闇の剣と星の剣   作:路地裏の作者

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SAO編、本格幕開け!
『彼女』も登場します!


042 桜花散る日の出会い

SIDE:ネギ

 

 ――顔を持たない、まるで『魔法使い』のような、真紅のローブの巨人が告げた言葉は、『絶望』でした。

 

 

『……私の名前は『茅場晶彦』。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ――』

 

 

 そうして告げられた内容は、余りにも荒唐無稽で信じられないような内容。

 

 今後、このゲームの中から自発的に出る方法は存在せず、また外部からゲームプレイヤーを救出する方法も存在しない。もしも外部で、無理矢理彼らを救出しようと、ナーヴギア(ゲーム機と思われる)を外そうとしたりすれば、高出力のマイクロウェーブが彼らの脳を破壊する……。

 

「な、何なんですか……これ…………」

 

 口の中が、カラカラに乾いていた。これでは、ゲームを利用した『監禁』じゃないか。

 

「そういう、ことかい……」

 

 そう近くで呟いたのは、このかさんに昼間呪術を教えていた天ヶ崎さん。その横では、師匠(マスター)も難しい表情をしている。そして周りを見回すと、綾瀬さんや宮崎さんも蒼白ではあるけれど、納得したような表情を浮かべているし、朝倉さんは毅然とした表情だ。

 

「皆さん、知ってるんですか!? この記憶が、何なのか?!」

 

 自分の周りの全員に問いかける。その質問に回答してくれたのは、一番近くにいた綾瀬さん。

 

 

「これは、恐らく――――≪SAO事件≫の記憶です……」

 

 

「え、SAO……?」

 

 それは、確か一度聞いたことがある。確か、京都の最初の夜に……

 

「≪SAO事件≫というのは、かつて日本で起こった狂気の事件です、ネギ先生」

 

「そうだね……SAOは、当時最先端の技術で作られた『仮想世界』を舞台に遊ぶロールプレイング・ゲームとして、テスト期間中から注目されてたゲームなんだけど、その正式サービスの日に、そのゲームの製作者である『茅場晶彦』が、ゲーム内からの脱出を出来なくしてしまった……。ゲームを楽しみにしていた参加者、実に一万人が巻き込まれた伝説的な事件だよ」

 

 綾瀬さんの言葉に、朝倉さんが詳細を教えてくれた。そうだ……長谷川さんが確か、説明してくれた事件。そんな中、顔無しローブは言葉を続ける。

 

『充分に留意してもらいたい――今後このゲームにおいて、あらゆる蘇生手段は機能しない。ヒットポイントがゼロになった瞬間――』

 

 そして告げられたのは、更なる絶望。

 

 

『諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される』

 

 

 記憶の中の人々が、へたり込む。HPがゼロになれば、死ぬ?こんなの…………こんなの、もう『ゲーム』じゃない!

 

「これ以降、SAOに巻き込まれた人たちは、実に二年もの間このゲームに囚われることになったんだよ……この史上最悪の≪デスゲーム≫にね」

 

「じゃ……じゃあ、どうやって解決したんですか……?」

 

「すぐに分かるよ……その手段を話すためのチュートリアルなんだから」

 

 そうして、朝倉さんは視線を顔無しローブへと向ける。つられて僕もそちらを向いた。

 

『諸君がこのゲームから解放される条件は、たった一つ――――アインクラッド最上部、第百層に辿り着き、そこで待つ最終ボスを倒してゲームをクリアすればよい』

 

「な……」

 

 記憶の中の誰かが声を上げる。ゲームを知らない僕には、それがどれだけ困難なのかが分からなかった。だがその答えは、意外にもすぐに分かった。

 

「ベータテストは、二ヶ月で、六層……三年もこの世界に……はは、ははは…………」

 

 乾いた笑いを浮かべているのは、この記憶の中心だった金髪の女性。一体誰なのか、その顔からは判別できない。

 

 と、その女性が、ローブの発した何事かに反応し、空中に半透明のウインドウを生じさせる。そこから取り出したのは――≪手鏡≫?

 

「え――――」

 

 次の瞬間、彼女の姿が光に包まれ、光が止んだ後に出てきたのは、全く違う姿だった。

 

 

「は、長谷川、さん?」

 

 

 出てきたのは、この記憶に入ることを進言した長谷川さん、その人。だけどその姿は面影こそあるものの随分幼く、僕とほとんど変わらないように思える。

 

「≪SAO事件≫が起こったのは、もう5年くらい前の話。私達は、まだ小学3年生だったころだからね」

 

「そんな……僕と同じくらいの頃に、こんな事件に巻き込まれたっていうんですか?!」

 

 僕の悲鳴のような言葉を無視し、顔無しローブは話を締めようとしていた。

 

『以上で≪ソードアート・オンライン≫正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の――健闘を祈る』

 

 そうして顔無しローブは、溶けるようにいなくなった。一瞬の静寂。そして、次に巻き起こったのは、空気を震わす振動だった。

 

 ――――アアアアアアアアアアアッ!!!

 

 悲鳴が起こり、怒号をあげ、懇願する。その場にいたほとんど全員が、声を限りに叫んでいた。そんな中、長谷川さんは、放心したように地面にへたり込んでいた。

 

「『これは、ゲームであっても遊びではない』――――ふざけるな、ふざけんなよ、茅場……」

 

 長谷川さんの、小さな呟き。やがて、ひとしきり咆哮した周りの人々も、一人、また一人とその場に座り込む。広場はまた、静寂に包まれていった。痛いほどの静寂に。

 そんな中、一人の男性が、いきなり声をあげた。

 

「――――そうだ……みんな、来い! ここから脱出できるぞ!!」

 

 そう言って叫び、騒ぐ男性。その声に長谷川さんを含めた何人かが顔をあげ、その後ろについていく。着いた先は……街の端の崖?

 

「いいか! みんな聞けよ! さっきのローブが言ってたことなんか信じるなよ! ゲームで俺達が死ぬなんてあり得ないんだから!」

 

 この男性……大丈夫だろうか?さっきから喋る言葉が全て叫び声だし、どこか瞳も虚ろなような……。

 

「仮に本当だとしてもよ、HPがなくならずに外に出ればいいんだからよ! ここから飛び降りれば(・・・・・・)万事大丈夫だ!!」

 

「え……?」

 

 長谷川さんが、その言葉にほんのわずかに反応する。というか、この男性は何を言った?ここから飛び降りると言ったのか?

 

「俺はここから脱出して、助けを呼んでくる! 外の奴等に掛け合えばすぐに解決できるさ! ははははは!」

 

「…あ……あ、あ………………」

 

 男性の妙に明るい声に対し、長谷川さんの顔色はどんどん青くなっていく。その表情にとんでもなく不吉な予感が走る。

 

「本当に、そんな方法で……?」

 

「出来ないよ」

 

 僕の疑問に答えたのは、僕の横で唇を噛んでいる朝倉さん。

 

「二年後の解放まで、このゲームから脱出できた人は、一人もいない(・・・・・・)

 

 その言葉と、その男性が柵を飛び越えたのは、同時だった。

 

「これで、自由だーーーーッ!」

 

「「ダメーーーーーーッ!!」」

 

 過去の長谷川さんの言葉と、僕の言葉が重なった。柵を飛び越えた男性は、雲の中を落ちて、堕ちて……まるでガラスのように細かい破片となって砕けた。

 

「これが、この世界での、『死』…………」

 

 僕はソレを見届け、柵にしがみついたままへたり込んだ。記憶の中であったとしても、人が死ぬのを見てしまったことが、僕の全身から力を奪っていた。長谷川さんも座り込んでいる。そんな中、誰かが言った。

 

 

「………………俺も、出たいぞ」

 

 

 その言葉に、それまで柵から下を覗き込んでいたほかの人々が同調する。

 

「お、俺だってそうだ!」

 

「私だって、そうよ! 彼氏が向こうで待ってるんだから!!」

 

「僕もです、両親が、兄弟が向こうで……」

 

 そう口々に叫び、その全員が柵に足をかけ、飛んだ。

 

「やめて……やめてえええええっ!!」

 

 記憶の中の長谷川さんの悲痛な叫びは、届かない。どんどんと周りの人々が飛んでいく。このアインクラッドからも……この世からも。

 

「この後、SAOで亡くなった人々は、どんどん増えて……最後には3000人以上の人が亡くなったんだよ…………」

 

「そんな……」

 

 あんな、脆いガラスが砕けるように、余りにも簡単に、生命が喪われた?そんなの、そんなの……

 

「――――もう、いや、もういやああっ!!」

 

 後ろで叫び声があがり、宮崎さんが顔を覆い涙を流している。近くにいた綾瀬さんが慰めているけど、効果はなさそうだった。

 

「…………ッ!!」

 

「は、長谷川さん!?」

 

 不意に、長谷川さんが走り出した。まるでその場から逃れるように。薄暗くなり始めた、街の外。森の中へと。

 

「だ、駄目ですよ、長谷川さん! 街の外は、モンスターで一杯だったじゃないですか!!」

 

「ネギ、忘れたの!? 私達の声は、記憶の中の人には届かないわよ!」

 

 アスナさんに言われたそれは、頭では分かっていた。それでも叫ばずにはいられなかっただけだ。走り続けるうちに、彼女は木の根に躓き、地面にその身を投げ出した。目の前でうずくまる、黒い獣の前に。

 

「う……うう……」

 

『グルルルル……』

 

「え……」

 

 顔を上げた先にいたのは、巨大な熊。昼間倒したモンスターと違い、現実でも出会えば致命的な獣。

 

「あ…ああ……あ………………」

 

 長谷川さんは腰でも抜けたのか、その場でへたり込み、ずるずると手で後ろへと後ずさった。

 

『グルオオオオッ!!』

 

「ひいっ!」

 

 熊が大きく爪を振り上げる。長谷川さんはそれに目を閉じ、身を縮ませた。

 

 

「早く、逃げて!!」

 

 

 突然横合いから、人間の頭くらいの岩が飛んできて、熊に当たった。それに少し怯んだのか、熊の爪が地面に突き刺さる。割り込んできたのは、長谷川さんと同じくらいの年恰好の少年。

 

 

「み、水原さん?」

 

 

 それは間違いなく、水原さんだった。装備はみすぼらしく、腰に何本か木の棒を挿しているが、間違いなかった。そうか、水原さんもここに。

 

ボク(・・)と同い年くらいのコが、目の前を通り過ぎていくから追いかけたんだけど……こんなことになるなんて、ね」

 

 そう話す水原さんの膝は、少し震えていた。それを見た長谷川さんにも、僕達にも、水原さんが恐怖を押し殺して、この場に立っていることが分かった。

 

「さあ、早く逃げて! 君がちゃんと逃げたら、ボクもここから逃げるから!」

 

「だ、ダメ……足が、動かない……」

 

「ええ!?」

 

 その言葉に思わず振り向いた水原さんの後ろで、熊が再び爪を振り上げた。

 

『グルオッ!』

 

「うわあっ!?」

 

 水原さんはかろうじて持っていた木の棒で防いだけど、一撃でその棒は粉々になり、その身体は長谷川さんのところまで吹き飛ばされた。

 

「お、おい! 大丈夫か、お前!」

 

「う、うん……」

 

そうして水原さんが身を起こすが、目の前には熊が迫っていた。

 

『グオオオオオオッ!!』

 

「「ッ!」」

 

 二人が身を寄せ合い、身体を硬くしたとき――――

 

 

「≪神鳴流≫奥義――――」

 

 

 ――――声が、響いた。

 

 

「≪百烈桜花斬≫――――!!」

 

 

 ソレは、幾百、幾千にも舞い散る桜の花びら。それに例えられるほどの、圧倒的な斬撃の奔流。圧倒的で、絶対的な剣の暴力。その激流に巻き込まれた熊は、断末魔の声をあげ――消えた。

 

「まったく、おぼこい嬢ちゃん、坊ちゃんが出るには、危ないで? この森」

 

 そう気軽に声をかけたのは、黒髪の美しい女性だった。恐らくまだ十代か二十代前半ではあるだろうけど、見るからに『大和撫子』と言った雰囲気を出す、少し長めのおかっぱ頭の女性。

 

 

「まあ、まずは自己紹介やな。プレイヤーネーム言うんは、あんまり慣れんけど――――ウチは、≪サクヤ≫。サクヤや、よろしゅうな」

 

「あ…………ボクは、≪コウ≫。コウと、いいます」

 

「…………私は、≪チウ≫……」

 

 

 これが、はじまり。これこそが、彼らの物語の幕開け。この後二年にも渡る、アインクラッドでの戦いのはじまりだった。

 

SIDE OUT

 




というわけで、チウ、コウ、サクヤ、全員登場!
SAO編はこの三人が主要人物、後のSAO原作キャラは、あくまでサブキャラ扱いです……まあ、ちゃんと出てきますがw

最初の茅場のチュートリアル、原作コピーに極力ならないように、要点以外は―(ダッシュ)で大幅に削ってみました。もしかしたら読みにくいかも知れませんが、これ以上のっけるのは、流石に怖いので……

プレイヤーの集団自殺……これは、原作に存在した、『SAO最初の死者は、自殺だった』という文章から大幅に広げてみた結果が、アレです……。集団パニック起こしてるときに、目の前で自殺者が出たら、ああなる可能性は大です。いきなり小学生がソレ見たら、ショックでかいですよ。

ここで一つお知らせ。来週またもや土日出勤となり、次回更新は再来週の予定となります。待ってくれてる読者の方々、本当にスイマセン……
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