魔法先生ネギま!~闇の剣と星の剣   作:路地裏の作者

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GGOのアニメ化でテンション上がってたが、こっちの新年一発目は、コレ……

でもこれで絶望編は終了。次回、新展開です!



048 絶望の終焉

 

SIDE:裕奈

 

 ――これ(・・)が、コウが抱えていた闇……

 

 俯瞰するように見下ろす風景の中、たくさんの人の中で、一匹の獣が産声を上げていた。

 

「お――オぉぉォおオ■■■オオオ■■■■■オオお■■おおお――――ッ!!!」

 

「オイオイ、いきなり叫んでどうしたよ? やっぱ、自分の大~事なお仲間を殺したら――」

 

 叫び声をあげるコウに話しかけた男の声が、不自然に途切れた。代わりにドスン、という重いものが落ちる音と、ゴロゴロと転がる音。

 

 音の源は、話しかけた黒ひげサンタの()だった。

 

「あ………………? こ、このガキ!?」

 

「オイ! 人質がどうなっても――」

 

 また不自然に声が途切れる。声の方を見ると、そこには曲刀と西洋剣を振り切ったコウの姿と、チウを捕まえていた両手と、首から上が根こそぎ消失している男の姿。

 

「く……くそがアッ!」

 

「殺せエッ!」

 

「ラアッ!」

 

 二人も殺されたことに逆上した他のサンタが、それぞれの武器でソードスキルを発動させ、コウの背後から襲い掛かった。それに対して、コウは振り向きもしない。

 

 ガギッ!という音を立てて、サンタたちの武器が全て弾かれた。弾いたのは、コウの身体を取り巻いている漆黒のライトエフェクト。

 

「なんだッ!?」

 

「こ、攻撃が効かね――」

 

 口上の途中で、そいつの首も落とされた。後はもう――逃げようとするものと、戦おうとするものの、地獄絵図。

 

「ひ、ひいッ! こんなの、こんなの聞いてね――」

 

「やめ、やめてくれ!! あ――母さ――」

 

 だけど今のコウは、容赦がなかった。筋力重視のステータス補正で実現した≪瞬動≫で、逃げようとする人間の前に回り込み、何の躊躇いもなく、その身体を斬り砕いていた。

 

「せ、せっちゃん……」

 

「お嬢様、お気を確かに」

 

 こういった場面に耐性のないこのかの顔色は、蒼白。他のメンバーでは、図書館組の二人も顔色が悪い。特にのどかは泣きじゃくりながら、顔を両手で覆ってしまっている。

 

「オイ――、オイ! アンタ等、何とかしてくれよ!」

 

 その声に目を向けると、≪黒ひげサンタ≫のリーダー格が、包丁を持ったサンタに怒鳴りつけていた。その後ろには、刺剣(エストック)と、曲がりくねった毒ナイフを持った二人のサンタ。

 

「これは、アンタ達のギルドに入るための入団テストだったはずだろ?! こんなバケモンが出てくるなんて聞いてなかった! アンタら責任取って、アイツを何とかしてくれよ!!」

 

「Wow……そうだな。お前らにとっちゃ予想外だったかも知れないな――――――けど、こっちにとっちゃ『予定通り(・・・・)』なんだよ」

 

「え?」

 

 呆けたサンタを尻目に、目の前の三人がその扮装を解く……そしてその身に纏うのは、漆黒の雨合羽(ポンチョ)、赤眼に髑髏を模したマスク、最後の一人は頭陀袋。

 

 

『≪笑う棺桶(ラフィン・コフィン)≫……!』

 

 

 最悪の殺人(レッド)ギルド、その三幹部がそこにいた。

 

「な、なんだよ、『予定通り』って……こんなのが暴れるのが予定通りだってのか!?」

 

Exactly(その通り)…! 元々今回仲間にする予定なのは、ここで生き残れた奴らと、あそこで暴れてる≪狂乱剣≫の発現者だけの予定なんでな」

 

「なッ?!!」

 

 PoHの視線の先には、今も周りの全てを破壊しているコウの姿。コウを、仲間に?

 

「ど、どういう事だよッ! アレを仲間にって、アレが何なのか、アンタ等知ってるのか!?」

 

Of course(もちろん)……あれは、≪狂乱剣≫。中層で噂になってた、『呪われたユニークスキル』さ」

 

「あんなクールな奴が仲間になるとか、最ッ高にイカしてますね、頭目(ヘッド)!」

 

「――確か、にな……」

 

 PoHの後ろで嘲り笑う、XaXa(ザザ)とジョニー・ブラック。コイツら……!本当に、最悪だ!

 

「元々この計画は、俺達があのスキルの発動を目の当たりにしたところから始まっていてな……検証の結果、どうもあのスキルは、本人の心理状態が発現に関係すると判明した」

 

「いやあ、長かったスねえ! どんな条件で発現すんのか試すために、何人か浚って『色々』実験して! ようやく条件が、スキルの発現者がいない時に『絶望』を抱いたヤツだと分かったときは、涙出そうになったぜ!」

 

「――クク、それ、が分かるまでに、『壊れた』奴らはご愁傷様、だがな……」

 

 こんなことのために……何人もの命を、弄んだって言うの!?

 

「……で、でも一体どうやって仲間に…………」

 

「んー? そんなの簡単だろ。あいつに仲間をもう一度殺させて(・・・・・・・・)、ショックで正気を取り戻させればいいじゃん?」

 

「……ポリゴンと、なって、崩れる仲間。そこ、に、差し伸べる、『たまたま』通りかかった、悪魔(おれたち)の、手」

 

「なかなかdramatic(劇的)だろう?」

 

 コイツら、チウが狙いなんだ!でも、チウは、コウの巻き起こす惨劇の中、放心したように地面に座り込んでいた。

 

「オラ、助かりたかったら、そろそろ行きな。扮装解いて、アイツにあのメスガキ殺させれば止まるからよ」

 

「生きて帰れば、お前は栄えある殺人(レッド)ギルドのメンバーだ。入りたかったんだろう?」

 

「……っ、畜生…………」

 

 言われたリーダー格のサンタはその場で扮装を解き、無精ひげの目立つ顔を晒したあと、チウの後ろへと注意深く近づいていく。万が一にもそれまでに、コウの注意が向かないように。

 

「……だが、当初の予定、では、発現者はあの、サクヤという女、のはずだった。なかなか上手く、いかないな」

 

「何、問題ないさ。どちらにせよこれで、ユニークスキルの一つが、俺達の配下に加わることには変わりない」

 

「でもあのサンタの生き残り、マジでウチに加えるんすか? なーんか、度胸が足りねえような……」

 

「……ああ、加えるとも。そして、早速最初の仕事を与える」

 

 そう言って雨合羽(ポンチョ)の中、PoHが口元だけで笑みを作る。

 

「『≪狂乱剣≫の発現者を味方につけるため、目の前で死んでもらう』――――どうだ、ジョニー?」

 

「ヒャッハ! さっすが、頭目(ヘッド)!」

 

「クク……楽しみ、だな」

 

 そんな会話を知らず、サンタのリーダーはついにチウの真後ろにたどり着き、その身体を持ち上げた。

 

「あっ!?」

 

「オラアッ! 止まりやがれ、化け物ォッ!」

 

「!」

 

 その声に反応し、コウの標的がチウとその男に移った。もっとも周りのサンタを全滅させてしまったので、ただ振り向いただけかも知れないけど。

 

「あ■■ああ■■■あぁぁぁっ!!」

 

「ヒ、ヒイッ!!」

 

 その男はチウを盾にしてるけど、今のコウがそれくらいで止まらない。明らかにチウごと串刺しにするために、左手の直剣を引き絞り――――全力で放たれた。

 

 とんでもない音を立てて、コウの身体が向かっていく。きっと、止まらない。チウが、死ぬ。そう誰もが思ったとき――

 

 

 ――――――声が、聞こえた。

 

 

「ばか、やろう………………『守りたい』んじゃ、なかったのかよ……」

 

 

「!!!」

 

 チウのその言葉が聞こえた途端、コウの身体が硬直し、そのままもんどりうって地面を転がった。剣の切っ先は、危ないところでチウをかすめていった。

 

「――ア?」

 

「………?」

 

「何……?」

 

 これには≪笑う棺桶(ラフィン・コフィン)≫の幹部達も、呆然。視線の先で再び立ち上がったコウを、注意深く眺めている。

 

「マモ■……マ…もる■■■………やクソク……………」

 

 コウは頭を振り、何かを思い出そうとしているかのようだった。だけど、そんな中状況が動いた。

 

「な、何だよ……コイツが死ねば元に戻るんじゃねえのかよ…………何で、テメエ、死んでねえんだよ!?」

 

「! あっ……」

 

 サンタのリーダーに抱えられていたチウが突き飛ばされ、そこにそいつの両手剣が向いた。

 

「死ぃねぇえええぇぇぇぇ!!」

 

「!! うあ■■■ぁぁぁっ!」

 

 今にも振り下ろされそうだったそいつの剣を防いだのは、コウが投げつけた曲刀。コウはそれに怯んだ一瞬を見逃さず、地面に突き刺さっていたサクヤさんの愛刀≪ヒガンバナ≫を抜き放つ。

 

「も…■■■……う…………『オレ゛』が、誰も゛、死なせない!!」

 

 漆黒のライトエフェクトを纏ったまま、右手のカタナと、左手の片手剣が炸裂し、≪黒ひげサンタ≫のリーダーは、その場でバラバラになった。最後まで、自分の『死』を、信じられないような表情のまま。

 

「Oh……オイオイ。自力で戻りやがったぞ、コイツ」

 

「――お前らが、『黒幕』だな」

 

 そう告げるコウの身体には、未だ黒いライトエフェクトが纏わりついたまま……え?何、この状態?≪狂乱剣≫を維持したまま、正気を保っている?

 

「オマケに、こっちの計画も把握済み、か……まさかあの状態で、こっちの話もしっかり聞いてやがったとはなあ…………」

 

「――ク、クク、どう、する? 頭目(ヘッド)

 

「さすがにアレ相手にするには、分が悪いっすよー」

 

「……そうだな。出直すとしよう」

 

 そう言うが早いか、PoHは煙を発生させ続けるガラスの小瓶を投げつけ……って、煙幕!?

 

 煙が晴れたとき、三人の姿はどこにもなかった。そんな中、チウが黒いライトエフェクトが治まったコウへと近づく。

 

「コウ――――」

 

「来るなッ!!」

 

 その声にビクリとなり、チウの足が止まる。その間に、コウが足元のサクヤさんのドロップアイテムから、この森の地図を拾い上げる。

 

「これから、あの三人を追う……『仇』は、必ず討つ。だから、来るな」

 

「コ、コウ……何、言ってんだよ……それより、一度帰ろう。サーシャさんなら分かってくれるさ、だから――」

 

「『オレ』はッ!」

 

 コウは泣いていた。目から流れる涙を、ぬぐうこともせずに。その張り裂けそうな胸を押さえ。

 

「『オレ』は、サクヤ師匠を殺した……『オレ』は、もう、生きてちゃいけない奴なんだッ!!」

 

「! っ、コウ、お前……」

 

「だけど、最期に『仇』だけは討つ……だから、さ」

 

 そう言ってコウは、一瞬でワープゾーンへと飛びのき、

 

 

「さよなら、チウ」

 

 

 その渦の中へと、姿を消した。

 

 ◇ ◇ ◇

 

『……それから、私は丸一日、≪迷いの森≫を彷徨った。師匠が持ってた地図は、コウの奴が持って行っちまったからな。――で、知り合いに出会ったわけだ』

 

 記憶の中のチウはふらふらとした足取りで、森の中を歩き、歩き……ある集団と一人のプレイヤーが話をしている場面に、たどり着いていた。これは私も知ってる。キリトさんに、クラインさん率いる≪風林火山≫だ。

 そして、キリトさんが、クラインさんに、何か宝玉のようなアイテムを投げ渡していた。

 

「……クライン。それが、≪蘇生(・・)≫アイテムだ。オレの探してたものじゃ――――」

 

「――――ッ!!」

 

 その言葉を聞いた途端、チウがワープゾーン近くの茂みから飛び出し、宝玉を持つクラインさんに剣を振るった。

 

「うあああああッ!!」

 

「チ、チウの嬢ちゃ――うおっと!」

 

 いつもなら鋭い筈のその斬撃は、武器を持たない片手で簡単にいなされ、チウは地べたに倒れこんだ。

 

「お、おい、大丈夫か、嬢ちゃん? いったい、何が……」

 

「……くれよ」

 

 助け起こそうとしたクラインさんの手には目もくれず、チウが震える手で剣の切っ先を、クラインさんに向けた。

 

「その≪蘇生≫アイテム…………私に、くれよ。それさえあれば、みんな元に戻るんだ……師匠も、コウも、みんな元通りなんだ……だから、くれよ」

 

 向けている切っ先は、どうしようもないほど震えていた。その切っ先と、クラインさんの間に、キリトさんが割り込む。

 

「……誰か、死んだのか?」

 

 その言葉に、チウが足からへたり込み、しゃくりあげ始める。

 

「っ、ぐ、う、う゛う…………師匠が」

 

「サクヤの姐さんが……!?」

 

「……っ。コウの奴は、どうしたんだ……?」

 

 もうチウは、ボロボロだった。涙と鼻水で顔はぐちゃぐちゃ。切っ先は絶え間なく震えていた。

 

「師匠を死なせた犯罪者(オレンジ)プレイヤーを……っ、ほとんど皆殺しにじで、残りを追って行っちまっだ……ぞれが、あ゛れば、まだ戻るかも知れないんだ……だから! っ! ……う゛う゛」

 

「…………」

 

 その姿にキリトさんは決心したのか、クラインさんから宝玉を奪い取り、チウへと投げてよこした。チウは震える指先で、そのアイテムをタップし、効果を確かめる。

 

「――アイテム名、≪還魂の聖晶石≫。ポリゴンが砕け切る前、死亡後『十秒』以内なら、プレイヤーを蘇生可能――――『十秒』?!」

 

「……そうだ。そのアイテムじゃ、過去に死んだ人達は、生き返らない」

 

「あ…………あ゛あ゛あ゛ああああぁぁぁぁッ!!」

 

 チウはもう剣も投げ出して、宝玉を雪の積もる地面へと叩きつけ続けた。その内握力のゆるんだ手から宝玉が抜け落ち、キリトさん達の足元に転がる。

 

「チウ……」

 

「何っ、で、だよ……」

 

 チウがふらつく足取りでキリトさんに近づき、弱弱しい力で、その胸を打った。

 

「何で、駄目なんだよ……師匠が、何したって言うんだよ……私が、私達が……何したって、言うんだよ……」

 

 途切れ途切れに胸を打つ。とてもダメージなど入らない弱弱しい力で。

 

「………………」

 

「嬢ちゃん……」

 

「何で……こんな、ことに……」

 

 その言葉を最後に、チウはその場にへたり込んでしまった。その手に、肩に、雪は静かに降り積もっていった……。

 

SIDE OUT

 




絶望編、終了!

まー、総評としては、コウはラフコフによって実験的に作られた、≪狂乱剣≫の使い手だったと……その上、手を差し伸べるフリして引き込むつもりだったから、まさに外道!段々PoHが、どっかのアイゼンさんに見えてくる不思議……!

次回は、少し時間が飛びます。さて、ここで問題です♪『次』にラフコフが、キリトたちの前に現れるのは、何という話のときでしょう?
……そう!そこまで飛びます!
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