SIDE:木乃香
――こんなん、ひどすぎる……
千雨ちゃんの記憶をここまで見てきて、ウチが抱いた感想はソレやった。千雨ちゃんも、水原くんも、二人ともほんまはすごくええ人や。それなのに、二人ともSAOに来て人生が狂ってしもた。目の前で大切な人を、亡くす羽目になってしもた。
なんでや?なんもしとらんやろ、二人とも。
あんまりにも、ひどい……
『――それから私は、クラインさんに連れられて、一度第一層のサーシャさんの教会に戻ってな。サクヤ師匠の死を、伝えた。……サーシャさんは、悲しみでいっぱいのはずなのに、私がしばらく攻略から外れて教会に滞在することを快く許してくれた。それからしばらくは、あの教会で過ごしたよ』
……サーシャさんも、親友やったんやよな。それやったら、悲しかったはずや。それでも千雨ちゃんを元気づけようと、気丈に振る舞うとる……。途切れ途切れの映像でも、それは十分伝わってきたわ。
『そして、年が明けてしばらくして、あの噂を耳にしたんだ…………』
それは、千雨ちゃんが教会の食糧の買い出しで、街に出かけたとき、不意に聞こえてきた≪軍≫の人達の会話やった。
「――なあ、知ってるか?」
「ああ、何でも『また』
その会話を耳にして、すぐに千雨ちゃんは物陰に隠れた。そうしてそのまま会話を盗み聞きした。
「
「ああ。現場には死んだ奴らのドロップアイテムがそのまま残されていたらしい。
「てことは――」
「ああ、
……なんや、胸騒ぎがした。記憶の中の千雨ちゃんも、おんなしみたいで、胸を抑えとった。
「
◇ ◇ ◇
『――その話を聞いてから、私はアインクラッド中を探し回った。噂の≪獣騎士≫は、コウの可能性が高いと思ってな。そして、同時に鈍ったカンを取り戻して、コウを止めるために、最前線にも復帰した』
……千雨ちゃんは、なんでもないことのように言うとる。けど、これ、何でもないなんてことないやろ。昼は水原くんの情報探し回って、夜は無理に時間作ってレベル上げて。ほとんど寝てへんやないか。
『……で、あの事件にあったんだ』
第57層主街区≪マーテン≫。その日、千雨ちゃんは最前線で情報を求めた後軽くレベル上げして、夜のレベル上げに向けて食事を摂るつもりやった。最前線近くのその街で食事をとっとったら、店の入り口がざわめいとった。
「? ……キリトさんか、あれ?」
そこにはクリスマスのときもおったキリトさんと、最初のボス戦のときに一緒のパーティーやったアスナさんがおった。記憶の中では攻略の方針とかでやりあっとる印象やったけど、付き
周りからも注目されとるキリトさん達のテーブルにしばらく目を向けた後、千雨ちゃんは興味なくしたんか、席を立ってそのまま出ていこうとした。
――悲鳴が聞こえたんは、そのときや。
それに反応し、千雨ちゃんがドアを押しのけて外に飛び出していく。後ろからキリトさんとアスナさんも続いた。そうしてたどり着いたのは、円形の広場とそこに隣接した教会らしき建物。
そこに――――一人の男の人が、槍に貫かれて、吊り下げられとった。
それを見た瞬間、千雨ちゃんとキリトさんが男の人を下ろそうとダッシュで近づき、アスナさんは男をぶら下げとるロープが出ている教会の中へと入っていった。
とんでもないダッシュで教会の壁に近づいた二人は、そのまま垂直の壁を駆け上がり、男の人へと手を伸ばした。
……せやけどその手は届かずに、男の人は粉々のポリゴンになって、空に溶けるみたいに消えてしもうた。
◇ ◇ ◇
「――なあ、チウ。本当に協力してくれるのか?」
「あ? 何だよ、協力しちゃ悪いってのか?」
今千雨ちゃんとキリトさん、アスナさんの三人はあの男の人を殺した槍を持って、エギルさんの店に向かっとる。三人とも安全な街の中で起きた『殺人』に、その方法を突き止めて対処方法を考えようと必死みたいや。
「そうじゃないけど……チウちゃん一時前線を離れてたじゃない? 捜査となると、時間だって取られるわよ? 後でレベル上げ大変なんじゃ……」
「一日二日なら大丈夫さ。あんなことがあったんじゃ、圏内でもおちおち寝られないし……――デートの邪魔して悪いけどな」
「デッ……!?」
その言葉に、アスナさんが顔を真っ赤にしとった。それに対してキリトさんは、ほとんど反応なし。……あ~、そういう関係やったか。
「まあ、デートじゃないけど……協力してくれるなら、ありがたいよ、チウ」
「……(もう少し、動揺してくれたっていいじゃない……!)そ、そうね。私からもお願いするわ」
「……おし、それじゃしばらくよろしくな」
こうして三人は、≪圏内事件≫と呼ばれるその事件を追うことになった。……けどな、千雨ちゃん。千雨ちゃんが気にしとるんは、この事件の犯人でも、その方法でもないんやない?――もしかして、現れるかもしれんいう『可能性』を――
「よし、着いた。それじゃ行こうぜ」
エギルさんのお店に入り、≪圏内事件≫の本格的な捜査は始まった。
≪圏内事件≫は、それにまつわる過去の事件からもつれた因縁の事件やった。過去に解散してしもうたギルド≪黄金林檎≫。そこのリーダーの女の人が殺され、全員が全員を疑った。そうして解散したギルドのメンバーが今回殺されとった。
そうして調べていくと、事件も進む。三人の目の前で、元≪黄金林檎≫のヨルコさんが殺され、事件は連続殺人の様相を呈してきとった。
けれども、一連の凶器を作成した『鍛冶屋』グリムロックさんを張り込みで待ち伏せしとったとき、事件が動いた。この一連の事件は、過去の殺人事件の犯人をあぶりだすための狂言殺人やと。そしてさらにその狂言殺人を利用して、過去の事件の真犯人であるグリムロックさんが、今回の関係者全員を殺すつもりやと。
その結論に至ったとき、千雨ちゃんは飛び出しとった。事件の終結地点である、≪黄金林檎≫の元リーダー、グリセルダさんのお墓の場所へ。
「コウ――――!」
彼がいるかも知れない、その場所へ。
◇ ◇ ◇
19層の、小さな丘。そこに立つ一本の樹木と、その根元の小さな苔むした石。そこがグリセルダさんのお墓やった。馬に乗ってその場所にたどり着いたとき、その前におったのは6人。片方は今回の狂言殺人に関係したヨルコさん、カインズさん、シュミットさん。そして、もう片方は――――忘れもせえへん、≪
「お――――らあッ!!」
先についたキリトさんの横を通り抜けて、千雨ちゃんは乗ってた馬を、全速力でラフコフの三人へ突っ込ませた。直前で避けられてしもうたけど。
「Oh……お前、あの時サクヤとかいう女にくっついてたガキか。意外と元気そうじゃないか?」
「…………ッ!」
その言葉に、千雨ちゃんは持っていた両手剣を背中から抜き放つ。その眼には、ウチにもはっきりとわかるくらいに、憎しみの色が浮かんどった。
「テメエらさえ……テメエらさえいなければ……!」
「Hey,girl……出来るのかい、お前さんに」
「! あああああッ!」
そのPoHの台詞に千雨ちゃんが激昂し、斬りかかる。けど、その攻撃はあっさりと避けられ、再び距離があいた。
「悪いが、今日は忙しくてな。この後攻略組の増援も来るそうだし、長居するわけには――――」
「! ヘッド、ヤバイっすよ!」
PoHの台詞に割り込んできたのは、ジョニーとかいう毒ナイフ使い。その眼は自分の周りに浮かぶウインドウを見とった。
「あ? どうした?」
「ものすごい速さで、近づいてくるプレイヤー反応があります! こりゃおそらく――」
『グ――オオオオオオオオオオッ!』
轟音と絶叫とともに、森の一画から枝と地面を巻き上げた暴風が飛び出したのは、その時やった。
その姿は漆黒。艶消しの黒鉄製の鎧に覆われ、覗くのは、狂気に満ちた赤の瞳だけ。腰に差した片手剣とカタナのうち、片方は見間違えようもない、サクヤさんの形見の≪ヒガンバナ≫。
身体から絶えず漆黒のライトエフェクトを迸らせるソレは、やがてその存在を知らしめるように、吠えた。
「■■――ア■■■■■■ォオ■■■オ■■■■■オお■■お――――ッ!!!」
久しぶりに逢えた水原くんのその姿は、あんまりにも変わり果てとった。その狂気が、叫びが、ウチから一つの言葉を引き出した。
「≪獣騎士≫――」
今目の前におるんは、間違いなくソレやった。
SIDE OUT
というわけで、変わり果てたコウと再会です。周りにはヨルコ、カインズ、シュミットらがいるわけですが、果たしてどうなるやら……
かなり微妙なところで終わってますが、仕事と連日の雪かきで、作者は現在HPがレッドゾーンに入っております……数十キロ車で行ったとこでは、今年の日本最低気温が出ましたが、何か?連日50センチ近く積もってますが、何か?ウフ、ウフフフフ……雪だけで、人って殺せるんですねえ(北日本・日本海側某市在住作者の魂の叫び)……
話は変わりますが、来週土日に仕事が入ってしまいました。従って次回更新は再来週になります。かなりいいところで切ってしまい、申し訳ありません!