SIDE:朝倉
――これ、勝ち目なくない?
目の前で巻き起こった壮絶な告白に、思わず私は溜息をついた。
師匠の≪鼠≫から、長谷川と水原がSAO時代からの付き合いで、長年コンビを組んでいたことは聞いていたが、まさか殺人鬼に堕ちかけていた水原を強引に引き戻して、告白も結婚も済ませていたとは。そこまでして一人の人間を支える覚悟というのもすごいが、問題は、今もこれを見守る友人たち。
(どうするのかなあ、ゆーなとアキラ……)
目の前で支えあう二人の絆は、あまりに強い。正直、割って入る隙間など無いように思える。
そう思っていると、声が響いた。
『――ふうぅん。つまりコウは、あんな可愛い奥さんいるのに、私に声かけたんだ?』
それは、水泳部でその優し気で静かな物腰から、裏では高い人気を誇る彼女……あれー、アキラさん?声が氷点下に達してますけど、貴女そんなキャラじゃなかったですよね?!
『えっ?! いや、声かけたって言うか、世界樹までの案内を頼んだだけっていうか――』
『私のムネ、揉んだのに?』
『不可抗力だよね、ソレ!?』
…………ほほう。その辺ぜひ詳しく!そう思っていると、さらなる氷点下の声。
『…………そーいや、ALOでどんな風にレーカと知り合ったのか、聞いたことは無かったなあ……。その辺ぜひ詳しく』
『…………そーだね。BoBのときに、私を力強く抱きしめて、耳元で囁いた言葉はウソだったのか、についても詳しく』
『……………………オメエもかよ』
あれー?空気が冷たくなって、しかも酸素も薄くなってきたなあ……。というか、何やってんの、水原!?あっちこっちで女の子を引っかけて耳元で囁くって、いつか刺し殺されるよ!
『……大体、チウはちょっと抜け駆けしすぎなんだよ。この告白だって、コウの窮地に付け込んでるようなものじゃない?』
『あー、それは言えるかもにゃあ?』
『なッ……フザケんな! 別に付け込んでなんかねーよ!』
『だったら、私達にも平等に
『ニヒヒ☆ まだまだ付け入るスキはあると見たよー?』
『ぐっ…………てめえら……』
……おおう。タフですねー、お二人さん。これは、まだまだスクープのネタには困らないかな?
『あの…………オレに発言権は……』
あちこちフラグ立てまくった罪人に、そんなものあるとでも?まあ、一言贈ろうかな?
「モゲロ」
何か、盛大に突っ伏すような音聞こえたけど気にしない!
『……あー、もう! とにかく話戻すぞ! 大変だったのは、この後でな。実はこのときその場にいた≪聖竜連合≫のシュミットってやつが、コウのオレンジタグを見て、牢獄に入れようとしたんだ。キリトさんが止めてくれなかったら、どうなってたことか……』
『……言い訳は、しないよ。牢獄に送られていたら、オレはそれを受け入れただろうね』
『……お前、オレンジになったのは、
『…………でも』
『もういい、終了! とにかく牢獄送りは見送ってもらって、ついでにユニークスキルのことも固く口止めしてな。オレンジカーソルを戻すためにカルマ回復のクエストを受けて――ようやくあの教会に帰ることができた』
場面は、いつの間にかあの暖かな教会へと移っている。そしてようやく帰ってきたコウを、サーシャさんが涙を流しながら迎え入れていた。
(帰る場所、あったんだねえ……)
師匠から、この世界がひどい状況だったのは聞いていたが、やはり実際に見ると聞くとでは大違いだ。どんなにひどくても、どんなに絶望的でも、人間は必ずそこに居場所を作り、生活する。それの実証ともいえる光景が目の前にあった。
『――で、しばらくは教会を
『――その辺りからだっけ。チウに≪銀騎士≫って二つ名がついたのは』
『お前の
……そっか。コウとチウにとって仇だったギルドは、二人の与り知らないところで壊滅したのか。
「二人は、掃討戦に参加しなかったのですか?」
『……実は、その掃討戦の指揮を執ってたのは、さっき出てきた≪聖竜連合≫だったんだが、シュミットが私達の不参加と、作戦完了までの情報の不開示を強硬に主張したらしい。「幼い子供に、これ以上背負わせるな!」って言ってな』
『キリトさんやアスナさん、それにクラインさんも協力したって聞いたね……』
――みんな、これ以上水原に傷ついて欲しくなかったんだろうね。そして、長谷川にも。
『で、それからしばらくは、攻略の毎日が続いてな。ある日、キリトさんに、史上四人目のユニークスキルが発現したんだ』
その名は、≪二刀流≫。SAOを解放へと導いた『勇者』のスキル。
「『俺が二本目の剣を抜けば、立っていられる奴は――いない』だっけ?」
『『SAO事件全記録』の脚色だぞ、ソレ……。流石にジャーナリスト志望。既に読んでたか』
「あー、うん。知り合いに勧められてね……」
読み終わった後、主人公の≪黒の剣士≫について、本を勧めた人物に聞いたら、「あのキー坊が、こんなクッサイ台詞吐くわけないダロ!美少女の前では、これの三割増し位の台詞吐くケドナ☆ぷ、くく、にゃーははははははは!」と大爆笑していたが。
『で、当時唯一のユニークスキル
教会の皆を観客席に残して、訪れた控室。そこでは向かい合って手を握り合う二人の姿。
「……逃げようアスナ。二十層あたりの広い田舎に隠れて畑を耕そう」
『……ちなみに、このときの二人は、付き合うどころか、まだキリトさんは自分の気持ちを自覚していない段階だった』
…………ナチュラルに、口説いてるようにしか見えませんが。
『SAOから出てから、コウはアレに弟子入りするような形になってな……どんどんアレに似てきてるんだ。悪影響の元凶め……』
『……うん。結構コウも、
『確かににゃー?』
……今絶対、三人とも頬染めてるんだろうなあ。
決闘は≪神聖剣≫ヒースクリフが勝利し、長谷川たちはまた教会へと戻っていった。
そんな、ある日。
「すいませーん、どなたかいませんかー?」
「……いや、確かに中にはいるな。扉の奥と、階上に何人か」
アスナさんと、キリトさんが訪ねてきた。ただ、問題はアスナさんがその手に抱えている人物。
「この世界でも、『出産』できるんやなぁ……」
いや、このか、それ違う!確かに目の前には、お二人の娘さんらしき人物がいますけどね!
『彼女はユイ――まあ紆余曲折あってな、今では二人のれっきとした子供だ』
……ちょっとー、紆余曲折って何!?そこら辺詳しく教えてー!!
『で、チウの数少ない親友の一人だよね』
『だ・れ・が! 友達少ないってー!!(ギリギリギリ、ゴキリ)』
――静かになったけど、気にしちゃいけないんだろうなあ。
『まあユイのことはこの際置いとこう。教会に彼女の保護者を探しに来た時に、知り合ったって程度だしな』
『い゛、いや、実際には妹が出来たみたいに喜んで――』
『フンッ!』
やたら大きな音とともに、静かになった。
『とにかくすっ飛ばすぞ。ユイが一時的にこの世界から去って、二人も愛の巣に戻った後――――七十五層のボス部屋が発見されたんだ』
SAOの終幕、それは着々と近づいてきていた。
SIDE OUT
ようやく、よ・う・や・く!ここまでたどり着いた……!後少しでSAO編は終わります。ALOとGGOは、その後少し流すだけになるかと……なにせ外でアップしてる人達がいますので☆
ここでお知らせ。阿修羅の方でも触れましたが、今月から4月まで仕事がとんでもない忙しさとなっており……しばらく不定期の更新とさせていただきます。エタるつもりはないので、ご安心を!
後、次回の更新はもしかしたら14日に移動になるかも……今『あのイベント』のアイデアが渦巻いてますので!ただ、ソレに絶対からんでくる魔法世界編の新キャラはどうしようかな……?どうやったら、正体不明のままで書けるだろうか?