――バレンタイン……それは、一年に一度の乙女の戦争。
愛しい人をゲットできるか、はたまた負けて涙に濡れるか……
これは、そんな乙女の戦いを記した物語だ……
◇ ◇ ◇
SIDE:コウ
「――≪ラブラブチョコレート≫だあ?」
「そうなんだよ。なんか料理研究会の女子の間で噂になってるんだよね」
2月のある日、超包子の一角。オレはチウと一緒に放課後のティータイムを楽しんでいた。主な話題は、最近の出来事。
「何でもそれを溶かして相手に食べてもらえば、ラブラブになれるとか――」
「……ほう?」
「まあ、バレンタインに向けたただの噂だろうけどね――」
「…………ほうほう?」
「よく分からないのは、何人か同じ研究会の子が『そんなチョコあったら、食べてみたいですか?』とか聞いてきたことで――」
「………………ほうほうほう?」
「何だったんだろうね、アレ……って、どうしたの、チウ?!」
目の前には、とんでもない殺気を振りまくチウの姿――――なんかしたっけ!?
「……………………別に」
地の底から響くような声に、オレは「うん、なんでもないよな、そうだな!」と首を縦に振ることしか出来なかった。
「ボソッ(いっそ首輪でもつけるか…………)」
…………オレには、何も聞こえない。
SIDE OUT
◇ ◇ ◇
ったく、あの天然タラシは!今度は料理研究会の女子とか、バリエーション豊富にもほどがあるだろが?!
――しかし、≪ラブラブチョコレート≫、ねえ……
「――――効くのかな……ハッ?!」
…………そう、好奇心だ。好奇心だから――――仕方ない。
――≪ラブラブチョコレート≫のご購入、ありがとうございました!
そんな文字が私のパソコンの画面にデカデカと踊っていた……。
そう、デカデカと。
だから気づけなかったんだ。画面の下の方に、ものすごーく小さく、『まほネット
◇ ◇ ◇
で、バレンタイン当日。
「ネギせんせーッ! 今日はバレンタインだよーーーッ!!」
「あのあの、ね、ネギせんせー、ちょ、チョコを――」
「
元気だなあ、オイ。クラスの先生派の連中は、すでに朝からチョコを一番に食べさせようと……オイ、柿崎。なぜチョコを食べさせるのに、先生のベルトに手をかける。
「や、やめてくださーーーいッ!!」
――あ、杖で逃げた。一時間目は先生の英語だろ?いつものことだが、高畑先生が代理するのかねえ……。
「おや、ネギ君はどうしたんだい?」
ちょうどドアの向こうに、高畑先生が来ていた。代理、お疲れさまです。
「ちょうど良かった。君たち、今日の授業は中止だから」
――――は?
「もうすぐ始まるはずだけど……ああ、始まった」
外で色とりどりの花火が上がる。まるで麻帆良祭のような規模で。この時期にイベントはないはずじゃ……?!
『それではーーーーッ! 第一回! バレンタイン・ベストカップル
「――はい…………?」
『ルールは簡単! 意中の相手にチョコを渡し、世界樹前広場に連れてきて下さい! 特設会場で審査を行い、見事審査員がグランプリと認めたカップルには、賞金百万枚の食券と豪華賞品をプレゼントしまーーーす!!』
「アホかああああッ!!」
叫んだ。恥も外聞もなく叫んだ。叫ばずにはいられなかった。
『今年は子供先生含め、注目の男子も多いですからねーっ。どう思いますか、解説の朝倉さん』
『いやー、非常に興味深いわねー。なにせ特設会場でカップルと認められれば、
――途端、背後からとんでもない量の魔力、気、そして戦意が放出した。
「こ、公認カップルアルカ……」
「ね、ネギせんせーと……」
とか言ってる奴らは正直どうでもいい。問題はその横の一部。
「ニヒヒ☆ これはチャンスかにゃ~?」
「……負けないよ!」
「そ~ですな~。ウチも負けまへんえ~」
……ヤバイ。これはヤバイ。
「よーし! 私が一番に、コウに≪ラブラブチョコレート≫渡して公認カップルになっちゃおっかなー!!」
そう言って、明石が懐から赤い箱を取り出す。って、待て。今なんつった?!
「え? ゆーなも買ったの、あのチョコ?」
「ウチも買いましたえ~」
オマエらもかよ!ヤバイ。もしあれが本当に効くんだとしたら、ますます他のチョコを食わせるわけには――――!
『それでは、
「いきなり始めんなぁぁあぁっ!」
そんな私の絶叫も虚しく、次の瞬間にはほとんどのクラスメートが飛び出していく。私は軽く舌打ちして、それを追いかけていった。
◇ ◇ ◇
「――君は、行かないのかい?」
「……ん。……ナギもいないし、あげたい人もいない」
「……そうかい? 僕としては、もう少し興味を持ってもらいたいんだけど」
「今は、ほかに興味がある……カモ」
「(ビクッ)ヘ、ヘイ! 何ですかい、姐さん!」
「貴方……さっきのチョコの名前が出てから、様子が変」
「い、いえ! そんなこ――」
「おしえて」
「い、イエッサー……」
◇ ◇ ◇
「ああ、もう! どこ行きやがったあいつら!!」
出足の差は如何ともしがたく、校舎から出てすぐに全員を見失った。こうなりゃ、コウの方に先回りするか?
そんなところに、いきなり降ってくる影。
「隙ありぃぃぃっ!」
「うおッ!?」
避けたところに、西洋剣が深々と突き刺さる。ウオイ!直接攻撃ありかぁっ?!
「テメエ、ロザリオ! 何の真似だあッ!!」
「――へへっ。ボクも、コウ君の争奪戦に参加するよ♪」
「フザけんなあああああッ!」
チウのアバターを展開し、両手剣で斬りかかる。彼女はそれを軽く避け、空中で翅を広げて静止する。
「えー、いいじゃん。ボク、こういうラブコメみたいなドタバタにも憧れてたんだよねー☆ それにコウ君なら、一生大事にしてくれそうだし♪」
「私はこんなドタバタ楽しくねえよ! いいから、道を――」
「楽しくないなら、さっさとリタイアしてくれるかにゃ~」
「!!」
横から迫る飛来物に、とっさに回転しながら避ける。地面に何発も大威力の弾丸がめり込んでいった。
「キッドも全開かよ……!」
「ニヒヒ☆ 公認カップルのためだからねー?」
目の前にはキッドのアバター、手には≪
「……私もいくよ」
≪
さらにそこにもう一人、影が下りる。
「ウフフ……この、≪ラブラブチョコレート≫に『ウチ由来の成分』、色々混ぜた特製チョコやったら、水原はんかて……ああ、身体が熱ぅなってしまいますわぁ」
ヤンデレ全開だな、オイ。手の妖刀から、とんでもないレベルの瘴気出てるんだが。
「それじゃあ――覚悟ぉっ!」
「いっただき!」
「……!」
「ウフフフフ……!」
全員から一斉攻撃。やば、防ぎきれ――
身を固くした私の目の前で、攻撃はすべて日本刀と西洋剣に叩き落された。
「コ、コウ……?」
「――まったくもう、何のイベントか知らないけど、みんなやりすぎ!」
攻撃を叩き落したコウは、しかしイベントの詳細を知らないみたいだった。……男子校には、あの開催のアナウンス流してないのか?
「ほら、立てる、チウ?」
「あ、うん……」
このときばかりは、素直に手を取る。そして、無意識に左手で、ポケットの中のチョコを探る。
「あ、あのな、コウ――
「コウ! チョコ受け取ってーッ!」
「私もーーッ!」
「……私のも、受け取ってくれる?」
「ウフフ、ウチのチョコもな……☆」
――割り込んでくんじゃねええええッ!」
全員が殺到したため、私も負けじとチョコの包装をはがす。
「オラ! もう、食え!」
「あー、ボクのチョコもー!」
「私もにゃー、コウ☆」
「……私も」
「ウチもです~」
「もごごごごご?!」
あっという間に、全員のチョコが口に押し込まれ、そのままコウは仰向けに倒れ――――……って、待て!?無理やりすぎたんじゃねえか?!
「お、おい、コウ……?」
「動かないね……」
「ん~、保健室連れてこっか」
私達が話し合っていると、中等部の校舎の方から、神楽坂が走ってきた。
「皆、今すぐ離れてぇ!!」
その言葉と、コウから異常な魔力が迸ったのは、同時だった。
「うおっ!?」
「ひゃあっ!」
「……!」
「なになに?」
「ほえ~?」
私たちがその暴風に顔を覆って耐えていると、道の向こう側で、宮崎達に追いつかれていたネギ先生からも同じような魔力が渦を巻いていた。何だよ、こりゃ?!
「神楽坂、こりゃ一体何だ!」
「そ、それがね、みんなが買った≪ラブラブチョコレート≫って、カモの奴が裏で売り捌いてた代物で……」
「あンの、エロガモかあッ!!」
また、ろくでもないことしやがったな!!
「中身は、男性用の強壮薬と媚薬――――具体的には、一定時間『キス魔』になる魔法薬だって」
「「「「「――――――は?」」」」」
「――
「――リンク・スタート ≪狂乱剣≫発動」
その静かな二つの言葉とともに、嵐は収まる。いるのは…………ただ二体の魔物。
「
「キ■ス■■……■■■キス■■■■■オオオ■■■■■ォォォォーーーーーーッ!!!」
とある2月14日、キス・ターミネーターとキス・バーサーカーは降臨した。
ここで、終了!後編は完成し次第投稿します!(まだ出来てません……)
このドタバタ、魔法バトル、ラブコメ!これが、赤松作品!これが、『ネギま!』だあっ!!
最近SAO成分多めなので、思い切り突っ走ってみました♪そのせいで、新キャラも多数登場……まあ、京都弁のキャラは別に新しくありませんが。
後編はなるべく早く上げますが、それ以降の更新は不定期になるかもです。年度変わるまでは……