魔法先生ネギま!~闇の剣と星の剣   作:路地裏の作者

59 / 130
いいぜ。俺の杖と翼――あんたに預けよう(ナギ・スプリングフィールド)



054 騎士の誓い。そして妖精郷へ

 

SIDE:アキラ

 

『――ゲームクリアのアナウンスの後、私たちは、アインクラッドの崩壊を俯瞰で見ることになった』

 

 アナウンスの後、コウとチウ、それにキリトさんやアスナさんは、雲の上に佇み、崩れていく黒鉄の城を眺めていた。

 

「――なかなかの風景だろう?」

 

 そこに現れたのは、茅場晶彦。テレビのニュースで指名手配されていた白衣姿そのままだった。……そっか。コウやチウは、私たちがどう反応するか分からないから、ヒースクリフの正体は語らずにコーチ役を任せたんだ。この人が何をしたか、ニュースでも連日やっていたから、私達でも知っているし。

 

「……なあ、茅場。なんで――こんなことをしたんだ?」

 

 だから、キリトさんのその言葉は、私達全員の疑問だった。天才として名声を欲しいままにしていたこの人が、どうしてこんなことをしたんだろう?

 

「なぜ――か。言っても理解はされんだろうな。私はね、キリト君、フルダイブ環境を作り上げるずっと前から、それこそ天才などという空虚な名声を手に入れるよりも以前、子供のころからあの城を作り上げることだけを欲していたのだよ」

 

「なんで――――?」

 

 その言葉に茅場は崩れ落ちる城へと目を移し、ほんのわずかに感情を込めた。……なんだろう。どこか悲し気なような……?

 

「……昔、本当に昔、私は英雄に憧れ、物語を好む普通の少年だった。いつか自身の知る英雄に追いつきたい、隣に立ちたいと思ってはいたものの、それ以外は語るところもない、本当に普通の少年だったんだよ」

 

「…………」

 

「そんな折、ある機会に一人の少女と私は知り合った。その少女の事情は語れないが、『籠の鳥』という表現が適切なのだろうな。とにかくその少女と知り合い、私は彼女に様々な物語を語った……」

 

 彼の目に宿るのは、本当に懐かしいような色。そして、ほんのわずかに哀しい色。

 

「彼女は育った環境のせいか、感情が表面に現れにくかったが、そうして語ったいくつもの物語の中で、私が幼少の頃夢想した、あの黒鉄の城に興味を持ってくれた。魔法はなく、ただ剣でのぶつかり合い。そんな世界があるのなら、あるいは――」

 

 自分も、自由に生きられただろうか――――――と。

 

「私は、そんな彼女をどうしても放っておけなくてね。物語に出てくるような騎士の誓いを真似て、二つの誓いを立てたのだよ」

 

 自分が、何時か必ず彼女が自由に生きられるようにしてみせる。そして、その時はあの夢想の城へと一緒に行こう――――。

 

「その時、能面のようだった彼女は、ほんのわずかに口元を引っ張って笑みを見せてくれた……『私の騎士だったら、ちゃんと騎士らしくしなくちゃダメ』とダメ出しもされてしまったがね」

 

「……その娘は、こんなことは望んでいなかったんじゃないか?」

 

 子供の頃の約束。それだけのために4000人近い人が死ぬ。普通の娘だったら、そんなこと望むわけはない。

 

「もちろん望んではいないだろうさ……今回の事件は完全な私の独りよがりだよ。破壊的で破滅的な自己満足。彼女のためにではなく、自分の望みを叶えるために行った結果が、これさ」

 

 茅場の語りが続く中、崩壊はいよいよ最後になろうとしていた。たくさんの人が泣き、笑い、そして生きた世界は、空中で少しずつ、少しずつその姿をなくしていく。

 

「この光景も『二度目』だが――私はね、キリト君。今でも信じているのだよ。どこか違う世界には、あの黒鉄の城は本当に存在していて、その世界にいつか人はたどり着ける。そして、その世界なら……」

 

 彼女も、と茅場は言い、そのまま背を向けた。それから一度も振り向くことなく、4000人近い人を死に追いやった、茅場晶彦は去って行った。

 

『――これが、多くの死者を出したSAO事件、その真相だ。そして、私達がこれを語った理由はな、ネギ先生、あんたにある』

 

「え――?」

 

 ネギ先生から戸惑いの声が上がる。でも、分かるよ。彼が、とんでもなく『危うい』ってことも。

 

『アンタは、力を一人で求めようとするところがある。それこそかつてのコウと同じようにな。今回過去の記憶を周りに明かしたのだって、危険に巻き込んでしまうから、ここにいる全員と距離を置こうとしたからだろう?』

 

「う……」

 

『そんで自分は危険の真っただ中に一人で突っ込む……完全にコウと同じだな』

 

『あまり人のことは言えないけど……それでも言わせてもらうよ、ネギ君』

 

 コウの、あの姿。漆黒に包まれた姿が、頭の中でネギ先生に重なる。それが、私たち全員が抱いている危惧だ。

 

 

『その心を変えないと――――いつか君は、オレと同じ『闇』に堕ちるぞ』

 

 

 闇に堕ちれば、戻っては来られない。何とか戻ってきたコウだって、未だに苦しみ続けている。だから私達は、ネギ先生が心配だ。

 

 その言葉にネギ先生は重い沈黙を背負った。すぐには認められないかもしれない。だけど、忘れないでほしい。そんなキミを、心配してくれる人たちがいることを。

 

『……まあ、これからどうするかは、ここからの記憶も見て決めてくれ。これから出てくる奴らは、力を求めすぎて、狂気へと堕ちていった奴らだからな』

 

 その言葉とともに、世界は巡る。その風景は、私にとってもう一つの故郷とも思える、妖精の世界。アルヴヘイムの世界だった。

 

『SAO事件の終了後、私たちは現実へと戻ってきた。だけど何故か一部の人たちは、未だに昏睡中で、一時は茅場の残した呪いか、なんて話も上がったよ』

 

 遠くから音が聞こえてくる。それは、今では慣れ親しんでしまった翅の羽音。

 

『だけどそんな時に、私達はこの世界にかつての仲間、アスナさんの痕跡を確認した。そこで私達は――』

 

『…………、――――――! ちょっと待ってチウ!』

 

 チウの言葉をコウが遮った。一体どうしたんだろう?

 

『あ? なんだよ、コウ』

 

『いや、お願いだから、この場面飛ばしてくれないかな?! 具体的には、世界樹突入時点まで!』

 

『それほとんど終わりの方じゃねえか……いいじゃねえか。この時私はキリトさんと合流してたから、気になってたんだよ』

 

 コウの慌てぶりは相当なものだ。そういえば、この場面は、一体何時のものなんだろう?正直自分の記憶とは合致しないような――。

 

 そこまで考えたところで、遠くから変な音が聞こえてきた。

 

「――――……ぁぁぁ」

 

 ?遠くてわかりづらいけど、これは、叫び声?

 

「わぁぁぁぁあああああ! 誰か止めてぇぇぇぇぇ!!」

 

 その叫びを聞き取ってようやく理解した。声の主はコウだ。それもキャリブレーションをやり直した長身の姿。どうやらALO最大の特徴である飛行を試そうとして、止められなくなったようで――――

 

 そこで、気づいた。

 

 これは……マズイ。これは、コウの記憶。場面はログイン直後。つまりはあのシーンだ!

 

 コウが向かう先に視線を移すと、そこには記憶の中の私が火妖精(サラマンダー)の集団に追いかけられていた。そうだ。私はこの日組んでいた臨時パーティーのメンバーがPKにやられて、私一人何とか逃げ出して、それで――!

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!」

 

「え? きゃああああああ!」

 

 横合いから突っ込んできたコウに、記憶の中の私は衝突し、そのままもつれ合ったままゴロゴロと地面を転がり。

 

 

 私の胸に顔を埋め、両手で揉みしだくコウの図が完成した。

 

 

『………………』

 

『………………』

 

 チウとキッドの沈黙が、私とコウにはとても痛かった。

 

SIDE OUT

 




独自設定の嵐、嵐ッ!
表情乏しくて、籠の鳥な幼女……一体ダレナンダー(棒読み)。このために、茅場をタカミチの元同僚に設定した!そして、二代目紅き翼はタカミチ、ヒースクリフ(茅場)、クルトととんでもないメンバー……何だこのチート具合w

ところで来週ですが、GWだというのに、仕事が入る可能性が……もしかしたら日曜の投稿は一週休むかもしれません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。