そして、キリトたちに比べれば騒動も少なく……
SIDE:夕映
――修羅場とは、こういうことを言うのですね。
突如として、他の種族から襲われるアキラさんの目の前に現れた水原さんは、その後何の苦も無くアキラさんを助けました。今も目の前で、サラマンダーの方が一人斬り裂かれていきます。
「くそぉっ! 何でこんな初期装備の奴に!?」
「なんつースピードだ! チートでも使ってんのか?!」
口々に疑問を呈し、何とか対応しようとするサラマンダー。だけど、無理です。
「ただの鍛錬の賜物だよ。あえて言うなら、君たちの修行が足りない、だけ、だ!」
口上の途中で、一瞬に数回の斬撃。それだけでアキラさんを追っていたサラマンダーは全滅しました。
…………しかし。別に私は、その一連の状況を見て、『修羅場』と思ったわけではありません。どちらかというと、画像よりも音声というか……。
『○×△□◇!?』
『おい、キッド。顔はやめとけ、
『ニヒヒ☆ 分かってるよ♪』
『~~~~~! …………(ガクリ)』
先程から、副音声のように、長谷川さんと明石さんによる、水原さんへの
「貴方は……?」
場の急激な展開についていけなかった、記憶の中のアキラさんが水原さんに語り掛けます。その言葉に水原さんは、ニヤリといった笑みを浮かべ一言。
「ただの通りすがりだよ……女の子を大勢で囲む奴らを見過ごせなくてね。報酬は、君の笑顔でお願いできるかな?」
……どこのナンパ師ですか。それで頬染めるアキラさんもアキラさんですが。
『……えっと、ここからは、私が解説するね。こんな感じで出会った私は、コウに助けてもらったお礼も兼ねて、世界樹までの道案内を買って出たんだ。その日は近くの町で休んで、装備を取り揃えてから出発したんだよ』
無事でしたか、アキラさん。もっともこれは、解説役を二人とも
「――世界樹までは、やっぱり日数がかかるのか?」
「うん、そうだね。けど急いで≪央都アルン≫に行くには、やっぱり
記憶の中の二人が話しながら向かうのは、高山地帯の中腹に存在した洞穴。水晶がところどころに飛び出て中々綺麗です。
「ウンディーネしか使えないって言うのは……?」
「うーん、実はこれから向かう先にあるのは、このアルヴヘイム全体を通る地下水脈でね。ところどころに地上に上がるための出口が存在するんだけど、水の中にはウンディーネでも苦戦するレベルの海獣とか巨大魚の類が棲みついててね。水中戦闘が得意なウンディーネ以外はほとんど使わないんだ。というか、ウンディーネでも水泳や水中戦闘が不得手な人は使わないかな」
「成程ね。でもその水脈は、確かにアルンに通じてるの?」
「うん。私も噂でしか聞いたことないんだけどね。何でも巨大な根っこが存在する水脈を見た人がいるんだって。……ただその近くには、かなり巨大なボスモンスターが存在したとも聞いているけど」
興味深いですが、危険度が高すぎるのではないでしょうか?その懸念は記憶の中の水原さんも同じようで。
「……陸路と、どっちの方が早く着く?」
「私たちがいた高山地帯には世界樹に通じる陸路が存在しないから……サラマンダー領地近くの≪竜の谷≫を抜けるしかない。でもそうなると、コウがサラマンダーの部隊を全滅させたことは向こうにも知れ渡ってるだろうから……」
「……最悪前回を超える大部隊に囲まれて、あえなく『死に戻り』、か。確かにそれなら水路の方が早そうだね」
「……うん。確実に安全ってわけじゃないけどね。それでも強敵とエンカウントしなければ、確実にアルンにたどり着ける」
そんな会話をしながらも、実はこのダンジョンに生息していた巨大ガエルだの、半魚人だのに襲われているのですが……この二人、会話の合間に敵を全滅させています。特におかしいのはアキラさん。このときは槍を持っていなかったのか、持っているのは宝玉つきの長杖なのですが、それで相手の攻撃をさばき、いなし、会話しながら合間合間で呪文を唱えています……。近接戦闘ではあくまで防御に徹しながら、大威力魔法で消し飛ばす戦闘スタイルですか。おまけに回復もこなすとか、絶対おかしいです。
「ふう……大分深く潜ったね。そろそろ水脈が見えるはずだけど」
「ああ。それにしても、レーカの魔法はすごいな……オレも覚えようかな。
「うーん、主に闇属性――黒い光弾とか、昼夜を短時間反転させる魔法とかだけど……インプって、夜間飛行やダンジョン飛行が限定的に認められてるから、そこまで強力な魔法はないんだよね。唯一多大な
「あちゃぁ……やっぱカラーリングで選んじゃだめだな」
「当然だよ。まあ私も、川や海を思い切り泳いでみたいって理由でウンディーネを選んでるけどね」
そんな会話をしながら歩くこと数十分、ようやく開けた場所に出ました。天井全体が水晶の結晶で覆われ、見るからに神秘的な雰囲気を醸し出しています。正面にあるのは巨大な湖。その湖面も水晶の光を浴びて、幻想的な光景です。
「それじゃ入ろうか。水に入ったら、私がコウに水中で呼吸と戦闘を行うための魔法かけるから」
「よろしくお願いします……やっぱ魔法は便利だなぁ……」
ぼやきながらも水に入った二人。アキラさんの詠唱で、二人の顔に水の泡が纏わりつき、すぐに見えなくなりました。
「ふふっ、さて、それじゃあ…………競争しようか?」
その言葉に水原さんは凶悪そうに、ニヤリと笑みを浮かべます。
「へえ……ついてこれるか?」
「ついてくるのはコウでしょ? 負けないよ」
二人ともやる気満々ですね。水中で準備運動しながらアキラさんがルール説明です。
「ルールは簡単。ここから水脈の流れに沿っていくと、四つ目の出口がアルンの郊外に出る。出口に近づくと地下水脈に光が差し込むから、分かりやすいよ。そこまで先にたどり着いた方が勝ち。なお途中かなりの水中モンスターが出ると思うけど、よっぽどの強敵じゃない限りは、それぞれで対処!こんなところかな?」
「オーケー。まあ水中でボスモンスターとかと戦闘は難しいだろうけど、逃げるだけなら……」
「よーし。それじゃあ、レディ……」
二人ともが水中で岸壁に足をつけ、スタートの準備。こういう生命のかからない勝負事は、SAOではなかったですね。
「「ゴー!!」」
合図とともに、二人が全力で壁を蹴り、スタートダッシュを決めます。まず前に出たのはSAOで筋力の高かった水原さん。もっともその後の泳ぎ方がダメダメです。あっという間にアキラさんに抜かれてしまったではないですか。
「お先、だね」
「くっ……甘い!!」
そう言って、水原さんが横の岸壁を蹴り飛ばし、猛ダッシュ。――これは、水泳勝負ではなかったのですか。
「…! ずるくない?」
「ずるくない!!」
その後も凄まじいですね。直線的にスムーズに泳ぐアキラさんに対し、水原さんは、岸壁は蹴る、床も天井も蹴る、果ては二人に群がってきたモンスターまで足場にしました。泳ぐ気一切ありませんね?ですが、おかげで二人の後方に大量に敵が群がってきてるですよ。これって、『トレイン』とかいう迷惑行為だったはずです。
「第三チェックポイントまでほとんど互角とか……! やるね、コウ!」
「よーし、次の光で地上に出た方が勝者だああああっ!」
見れば成程前方で洞穴がようやく終わり、光が注ぐ場所に出るようです。しかし妙に明るいですね?これまでのチェックポイントは地下ということもあって、そこまで明るくなかったですが……。
「「ゴール!」」
洞穴を出たのはほとんど同着。見ればそこは地下に偶然できた巨大な地底湖のような場所。かなり遠い上部から外の光が差し込んできます。
「まだだよ! 先に地上に出た方が――――……え?」
「? どうかしたか? ――――……ん?」
二人が上を見上げた途端固まりました。私も上を見上げた途端、そこには十数メートルを超える巨大な化け物イカの姿が。大王イカでしょうか? 大きいですねぇ。
次の瞬間、そのイカは横から来た何かに丸呑みされました。
「……………………は?」
最初それを見たとき、私はそれが生物だと認識できませんでした。それは大きく、ただただ大きく、湖面近くを漂っています。大きく膨らんだ胴体や腹びれ、それに二つに分かれた尾びれは、クジラにも似ています。だけどその身体はウミヘビのようにうねり、腹びれも十対はあり、硬そうな鱗に覆われています。一番の特徴は顔。その顔に一番近いのは鰐ですが、鰐の方がもっと可愛げあるです。どこの世界に瞳が三対も並んで、角が十本も生えた鰐がいるですか。何より鰐は三百メートル超えの巨体ではありません。現実逃避気味の私の前で、その巨大トカゲは地下水脈いっぱいに響き渡るように吼えました。
『オオオオオオオオオオギャアアアアアーーーーーッ!!』
≪THE Ketos of Poseidon≫。≪ポセイドンの大海獣≫との邂逅でした。
SIDE OUT
というわけで、オリジナルボス入りました!
≪THE Ketos of Poseidon≫のKetosとは、ギリシア神話のくじら座のことです。神話において、王女アンドロメダを喰らおうとした怪物であり、海神ポセイドンの使いでもあります。ペルセウスがメデューサの首見せなかったら倒せなかったと言うんだから、強さがうかがえます。
前半部の折檻は……まあ、キリトの弟子だしww
ここで、またもお知らせが……来週またもや休日に出勤が入ってしまいました。次回投稿は再来週かその次になります……眠い、身体が重い……