SIDE:エヴァ
――面白いじゃないか
ALOでの大河内の映像を見て、抱いた印象はソレだった。今の今まで、SAOにいた奴らは現代では数少ない戦場を知る人間としてそれなりに一目置いてはいたものの、ほかのゲームにはあまり期待していなかった。だが、先程の魔法を見て、その考えは少し変わった。
(純粋培養の『魔法使い』タイプ……それも、正しく『固定砲台』となれるだけの威力を秘めているか……)
先程の魔法は、詠唱の時間から考えれば、威力・範囲ともに見事だった。これならば第一線の魔法使いの中でもやっていけるだろう。何より、その身に秘めているのは、現代の魔法技術とは一線を画す未知の魔法だ。いち魔法使いとして、高揚しないはずがない。
(あいつらは確か『虎の穴』とやらで、魔力と魔法技術を学んでいる最中だったな? ならば私も、少々口を挟むのも面白いか)
どんな訓練をしているのか知らんが、魔力の効率的運用と長期的スパンでみた育成となれば、経験がものを言う。この身がたどった600年の経験を持ってすれば、今の麻帆良の魔法使いどもを歯牙にもかけない存在を生み出すことも不可能ではない。
(まずは、ヤツの持つ魔法技術の体系的理解、その後もっとも効率的な運用方法と訓練の確立。固定砲台としての長所はそのままに、近接でも相手を捌き、長所を活かせる距離に持ち込む防衛的体術も必須だな……チャチャゼロに襲わせるか)
自身のもっとも古参の従者にして、その小さな体躯とスピードで相手を翻弄する戦いに長けた古強者、チャチャゼロ。近接でその攻撃を捌き、距離を稼ぐことが出来れば合格。そして、ゆくゆくは……
(――乗り越えたときには、我が眷属として迎え入れてやることも考えるか。くく、くくく……ハーッハッハッハッハーーーーーッ!!)
VR組は、見たところ相当の絆で結ばれている。ならば一人引き込んでしまえば残りもついてくる可能性が高い。今どきの魔法使いの常識だの倫理だのに染まっていない、極上の『苗』が一気に四人。状況次第で今の関東魔法協会と対峙することも可能な戦力。笑いが止まらないとはこのことだった。
「あのー、
「んー? 気にすることじゃないさ、ぼーや♪」
この上、ぼーやまで加われば、くくく……!
『……じゃあ、続き行くね。こうして私は愛槍を手に入れて、アルンにたどり着いて、別行動だったチウたちと合流したの』
視線の先では、ここまで連れ立ってきたレーカの存在に怒りをあらわにした長谷川が、コブラツイストを決めていた。……今どきの子供は、知らないんじゃないのか?その後の四の字固めも、妙にキッチリ極まっているが。次は、おお…………ヘソで投げるバックドロップ……。
『……そういや、あの時の折檻は、ペインアブソーバ―が効いてたせいで、たいして痛くなかったんだよな? 今からもう一回全部喰らわせるか』
『!!?』
『あ、いいね~♪ チウ、私も手伝うよ☆』
外では、未だに私刑執行中か……。まあ、ああいう女を惹きつけるタイプの男は、女から折檻を受けるのが仕事だ。甘んじて受けるんだな。
「あー、チウ? もうその辺にしてやらないか? 正直いつまでたっても話が進まないから」
「(ベキッ、ボキボキ!)あ? ――ああ、そうだな。続きは現実でだな」
そう言ってようやく解放したが、解放された水原の方は動かない。まあ、死刑宣告もあったからな。
「――アスナさんを助けるんだよね? お兄ちゃん」
「ああ……彼女を取り戻さないと、オレの現実は始まらない。何も、終わらないんだ」
そう言ってキリトという小僧が、白亜の門を見据える。フン、面白いな。SAO
――これも、貴様の意図か?茅場……
そして、キリトが門に手をかける。
「それじゃあ……いくぞ、みんな!!」
『オオッ!!』
◇ ◇ ◇
「おおおああああッ!!」
身の丈ほどもある大剣が閃き、顔のない衛兵を一息に屠る。
「せああああああっ!」
素朴ではあるが作りのいい両手剣が、駆け抜けざまに衛兵を細切れにする。
「うおおおおおおッ!!」
作りは素朴だが骨太の、片手剣とカタナが暴風を纏い、衛兵を砕き斬る。
やはりSAO組の近接戦闘能力は脅威で、ほとんど無限の数出てくる衛兵どもをものともしない。キリトというやつの妹と、おかっぱ頭のガキもそれなりに倒しているが、もっぱら回復役に回っている。それほど実力に開きがあった。
……で、もう一人はというと。
「≪アクア・ランス≫――――『
よりにもよって衛兵のど真ん中で詠唱を終え、中空に浮かべたのは、
「穿て!!」
命令とともに突撃槍の群集は突進、眼前の衛兵を数十消し飛ばす。だがその一瞬で背後から衛兵が迫り、二体の衛兵の剣とつばぜり合いの状態になった。
「……悪いけど、――、――――、――……」
……ほお、つばぜり合いの状態から詠唱を始め、その後の攻撃を捌きながらも決して詠唱を途切れさせない、か。あれが出来るのはこの麻帆良でも実戦経験豊富な一部の教師だけだ。魔法生徒ではほとんど不可能だろうな。
「――≪ウォータープルーフ・エスパーダ≫」
詠唱を終えたとき、槍全体に水が巻き付き、穂先からは数十メートルほどの水の刀身が……ははは!これほどのものを作れるか!ますます面白いじゃないか!
「はああああああッ!!」
水で出来た刀身が、一気に衛兵を十数体消し飛ばす。そのまま効果時間でもあるのか、大急ぎで敵の集団に突っ込んでいく。認めよう、大河内アキラ!その威力、その圧倒的戦力!何なら我が後継にしてやるぞ!
「おいおい、すごい娘連れてきたな、コウ!」
「いや、これはさすがに予想外……」
「何者だよ、アイツ……」
SAO組も驚いている。大河内の実力はかなりのもの。だが、ログインして数日のコイツラでは情報などありはしない。情報は古参プレイヤーの妹からもたらされた。
「……ねえ、レコン。あそこで戦ってる娘って、『水の巫女』じゃない?」
「そ、そうだよね、あの『人魚姫』だよね!? ま、まさかウンディーネ最強の水使いと一緒に戦えるなんて……!」
やはり相当な実力者、か。他種族にまで名が知れ渡るとなると、最強の水使いもあながち外れではないか。
「なあ、さっきから聞こえるその二つ名って何だ!? オレにも教えてくれよ、スグ!」
「あ、あのね、お兄ちゃん。ウンディーネは回復魔法に長けているから、そっち方面を育てる目的で選ぶ人は多い種族なの。だけどその一方で、水魔法は水辺では威力を発揮するけど、平地では効果と威力に欠ける不人気魔法で……」
「おい、リーファ。あれでかよ?」
長谷川の視線の先では、今も十数体の衛兵を引き裂く大河内。あれなら本国魔法騎士団でも通用するぞ?
「だからこその称号よ……あの人だけは、装備のほとんどすべてが水魔法のブーストと、水中戦闘の補助に特化している。それに一説には――――」
そうこうしているうちに、大河内の詠唱が完成した。しかし、長かった。あの≪エスパーダ≫とやらを出してからは、一心不乱に唱えていたが、一体――――
その答えは、目の前に浮かぶあまりにも巨大な水球が語っていた。ドーム状の空間を半ば埋め尽くす、圧倒的な水量。
「――――『
その言葉とともに、水球が逆巻く海のように渦を巻く。
「≪スフィア・オブ・ポントス≫――――すべて、飲み込め!!」
大河内の命令とともに、水球から水の触手が伸び、辺り一面の衛兵を文字通り飲み込んでいく。それを追うように彼女も水へと飛び込んだ。
「はああああああっ!!」
まるで魚雷のように突っ込むと、あっという間に飲み込まれていた衛兵が串刺しとなっていく。自身のホームグラウンドを作り上げる魔法……こんなものまであるとはな。
「すごい……サラマンダーが、ウンディーネ領に仕掛けないわけだよ。あんなことされたら、炎魔法が通用しなくなる」
「種族同士の全面戦争になったら、あの戦闘能力は脅威だものね……これならあの二つ名も頷けるわ」
リーファの言葉に二人ともが頷き、声をそろえる。
「「『
……面白い。つくづく面白いやつらだよ、お前らは。
「――さあ! 行って、コウ! この戦場は私たちが引き受ける!」
その言葉にSAO組は頷きあい、全開で空を翔けた。
「「「うおおおおおおおおッ!!!」」」
全員がまるで錐のように武器を構え、文字通り三本の矢となって突き破っていく。矢は折れず、曲がらず、止まることなく……すべてを引き裂いていった……。
SIDE OUT
というわけで、エヴァちゃんにロックオンされました……まあ弟子のはずのネギは魔法戦士タイプだし、ゆえ吉はネギの弟子だし、このかは治癒術士だし、地味に彼女と被る後継者っていないんですよね……
彼女は水魔法特化ゆえにあの強さです……回復については、槍の副次効果で多少効果アップというところ。≪スフィア・オブ・ポントス≫のイメージ映像は、FinalFantasyXのブリッツボール会場を思い浮かべてください……直径だけでサッカーグラウンドくらいはあるだろう水の塊が浮かぶのは、圧巻でした☆
ちなみにアキラは、現実でここまでの魔法行使は、『今のところ』難しいです。もともと魔法使いの家系でもないし、≪心意結晶≫には持続時間があるし、その時間をどこまで伸ばせるかですね♪まあ、それさえ何とかできれば…フフフ……