キン、と硬質な音を立てて、空の薬莢が落ちる。その一瞬で、全ての決着がついていた。
「ぐ、あ……」
「う、うう……」
「反則じゃん、ソレ……」
捕まったチウを助けに来たはずのコウ、キッド、レーカの三人は四肢や喉などの急所を撃たれ、無様に地面に転がっていた。魔法障壁で怪我こそないが、それでも衝撃は突き抜け、全員から戦闘能力を奪っていた。
「ひひっ……」
地面に転がる三人に、さっきから冷たい笑いを浴びせていた須郷がにじり寄り、コウの頭を蹴りつけた。
「どうだぁ、ガキども! ちょっとばかり魔法を手に入れたからって、調子に乗りやがって! 少しは大人の怖さが
……全く何もしていない癖に、威張り散らす目の前の小物のおかげで、少しばかり冷静になった。
恭二さん――シュピーゲルのユニークスキル≪抜刀術≫は、動作に≪オーバー・アシスト≫をつけるというもの。確かにこれは『最速』だ。おまけに本来の武器と違って『拳銃』で行うことで、遠距離攻撃まで可能になっている。確かにこれは正面からの攻略は難しいだろう。
――けれど。
「シッ!」
「ひい?!」
ご丁寧に余裕を振りまいていた
「――――正面から戦う必要ないからな」
「……まあ、捕まった皆が優先だよね」
「うん、そだね。う~まだおでこ痛い……」
レーカはすぐ切り替えてくれたが、キッドは相変わらず最初に撃たれた額をさすっている。少し赤くなってるな。
低空で飛んで、ステージ周りの森を抜け、そのまま裏口の前で一度止まる。
「……ここで一度別れた方がいいね。私とコウで飛行しながら主犯に攻撃。その間にキッドが人質を助けるって言うのはどうかな?」
「だな。キッドを抱えながらじゃ戦闘なんて不可能だし、飛行は目立つから、囮役としては充分だ」
「おっけ。さっきネギ先生はステージに攻撃してたし、皆も多分そこだよね?」
まあ、人質いるのに、あんな砲撃かますってことは、あの上空から人質の無事は確認できたんだろうし、人質に危害加えられる前に解決するなら、これがベストだろう。
「じゃあ、早速――――」
そうレーカが締めようとしたとき、ステージ上から大きな衝撃音が響き渡った。
◇ ◇ ◇
SIDE:ネギ
――いつも、思っていた。
いつも悔やんでいた。いつも嫌だった。なんで、なんで僕は……
あの時、もっと強くなかった?
あの時、なんであんなことを願った?ピンチになればお父さんがやってくる?そう願った結果はどうだった?ピンチに本当にやってきてくれて嬉しかったか?いや、違う。違うだろう、僕。
僕は、本当は、悪魔たちも、お父さんも怖かった。
今でもあの日の悪魔は、僕にとって恐怖そのもの。お父さんも、あの圧倒的な力を振るう姿が怖かった。それでも、それでも、僕はお父さんに憧れた。あのどんな恐ろしい敵も消し飛ばせる力に憧れた。そう、本当は……
もう、怖がりたくなかったから、憧れた。
あの圧倒的な力を追いかけて、追いかけて…………今日、あの日の悪魔に再び出会った。でも、大丈夫。僕はあの日より強くなった。だから大丈夫。
僕は、ちゃんと目の前のテキを倒せる。
それが出来たら、お父さんに…………少しは褒めてもらえるだろうか?
SIDE OUT
◇ ◇ ◇
「…………おい、何が起きてるんだ?」
あの衝撃音の後、すぐに上空に上がってきたら、そこには見たこともないほど膨大な魔力を身に纏って、ロングコートの男を殴り続けているネギ先生の姿。圧倒的なのにその瞳はうつろで、明らかに正気じゃない。
「おい、ネギ先生、落ち着け!」
近くに寄りながら大声で呼びかけるが、見向きもしない。駄目だ。オレの≪狂乱剣≫と同じで、意識が完全に飛んでる。
ちっ、と舌打ちし、レーカを人質の方に向かわせ、ネギ先生と並行に飛び、ロングコートへと向かう。
「おや、横槍かね?」
「アンタが主犯みたいだし、さっさと片付けた後、ゆっくり戻した方がよさそうなんでな」
「くくっ、いいね、その合理主義! だが、邪魔をしてほしくないな!」
横合いから片手剣と刀を、捻転しながら振り下ろす。≪二刀流≫重突進技、≪ダブル・サーキュラー≫。渾身のその連撃を、目の前の相手は、魔力を込めた片手で逸らした。有り得ないほどの技量、マズイ、コイツ場数が違う。
「私の相手はネギ君一人だよ!!」
そのままナックルの打ち下ろしで、吹き飛ばされた。
「ぐッ!」
姿勢制御が間に合わず、そのまま地面に叩きつけられる。観客席にクレーターが出来たが、一体誰が直すんだ?と場違いな感想を抱いた。
「≪アクア・ランス≫――――『
『ケケケケケ』
『オシイオシイ!』
『相性最悪ダナ、オジョーチャン』
観客席のすぐ近くでは、レーカが水っぽいスライム三体と戦っている。水の弾丸は効果が薄いらしく、相手はピンピンしている。確かに相性最悪だ。
「素晴らしい力だ、ネギ君! そうだ、それでこそ、あの≪サウザンド・マスター≫の息子だよ!!」
喜びの声を上げながら、殴られ続ける男。だけど、違う。明らかに、声に余裕がある。何か狙っている?
「だが、そんな才能が潰えるのを見るのも――――」
攻撃を喰らいながら、急速に男の姿が変わっていく。現れたのは、蝙蝠に似た翅と、角を生やした悪魔の姿。
「――――私の楽しみの一つだよ!!」
ガパリ、と開けた悪魔の口の中には、危険すぎる光が宿っていた。
長く休んだこの作品、実は今このままやめるか続けるか悩んでたんですけど、とりあえず学園祭まではやろうと思っています。物語上、あそこで一段落つくというのもあって、それが終わった時点で、その後続けるか決めようかな、と……
中途半端でエタらず、何とか区切りがつくまでは頑張ります。皆さま、こんな作者ではありますが、もう少しおつきあいください。