魔法先生ネギま!~闇の剣と星の剣   作:路地裏の作者

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悪魔編、最終話ですw



067 醜悪なる肖像

 

 翌日、世界樹前広場にて。

 

「ふう……」

 

 昨晩の雨の跡が見当たらない気持ちのいい朝の中、水原光は柱の一本にもたれながら、ぼうっと空を見上げていた。

 

「……なーに、黄昏てんだ?」

 

 そんな水原に近づいてきたのは、長谷川千雨、大河内アキラ、明石裕奈の三人。VR関係の四人が朝早くから揃っていた。

 

「いや……昨日の騒動を思い出しててな……」

 

 ◇ ◇ ◇

 

「アーッハッハッハッハッハッハッ!! 見たか?! 生意気な貴族悪魔様? 僕にかかれば、お前たちバケモノ風情なんてこんなものなんだよ!」

 

 悪魔の男を吸い込んだ結晶を手に、須郷が嗤う。その嗤いに、その場にいる全員が怒りを覚えた。

 

「てめぇっ!」

 

決着(けり)ついとらん相手に、何するんや!」

 

「須郷!」

 

 真っ先に駆け出したのはチウ、犬耳の少年、そしてコウ。だが、須郷が別の結晶を手の中で輝かせると、その三人全員を空中に浮かんでいた巨大な掌が打ち据えた。

 

「どうだい……? 僕が茅場の残した研究を改良して作り上げた『魔結晶(マギクリスタル)』の力は? コイツは、魔物などの召喚物をその中に封じ込め、自由にその能力を使役することができる。茅場の研究なんて及びもつかないくらいに素晴らしいだろう?」

 

 手の中の結晶を転がしながら、狂った笑みを浮かべる。目の前の男は、確かに天才の一種ではあるのだろう。但し、その方向をどこまでも間違えてしまった、狂気の天才。

 

「……待ってください。おかしいです」

 

 だが、その天才の成果に異議を申し立てたのは、同じく天才と言われる子供先生。

 

「今回の悪魔も爵位級の実力者ですが……京都の時の『リョウメンスクナノカミ』は仮にも神格の一柱です。そんな圧倒的な力を制御するなんて、熟練の術者でも困難なはずです」

 

「ほぉ……ガキの癖に少しは分かる奴がいるじゃないか」

 

 ネギ先生の言葉に、須郷はわずかに目を細める。そして、ニヤニヤいやらしい笑いを浮かべたまま、一つの事実を告げた。

 

「確かに神格の鬼神を制御するのは、召喚という第一関門をクリアしても困難だ。だがな、この日本には、そうした神を鎮め、御することに特化した技術者が存在していた」

 

「――――≪関西呪術協会≫の術者ですね」

 

「その通り。ならば――――――――そいつらを『材料(・・)』にして、『制御装置』に組み込んでしまえばいいだろう?」

 

 その言葉に、全員がゾッとした。材料、制御装置。その言葉の意味するところは。

 

「そぉさぁっ! この『魔結晶(マギクリスタル)』は、元々人間の術者を融かして作り上げたものさ! 名家の姫とかいうガキを人質に、熟練の術者十人以上の魂を抽出し生み出した! これさえあれば、面倒な人員なんか必要もない! 僕は神にも等しい力を手に入れたんだよ! ハッ、ハハハハハハハーーーッ!」

 

 笑い声が響き渡る中、全員の決意が固まった。コイツは、ダメだ。例え何があっても、許してはいけない存在だ。特にコウは、この瞬間、何が起ころうとも、目の前の男を殺し尽くすと心に決めた。

 

 しかし。

 

「恭二さん……なんでだ?」

 

 VR組の全員は、そんな狂人に従う彼に、どうしようもない違和感を覚えていた。あの『死銃』事件のときも、そしてその前も、彼は優しさを持った男だった。こんな蛮行を許すとは、到底思えない。

 

「――軽蔑してくれていい。僕は、僕の目的のために、≪笑う棺桶(ラフィン・コフィン)≫にいる。罵倒も受け取る、報いも受ける。それでも、今は留まるわけにいかない」

 

 その瞳には確固たる決意が浮かんでいた。

 

「オイ、目的のものは手に入ったんだ。そろそろ本部に戻り、『計画』の準備に入ろう。計画が終わりさえすれば、僕は晴れて明日奈を迎えに行ける。僕の婚約者を寝取ったあのゴキブリに、この上ない屈辱を味あわせることが出来るんだ。本当に待ちきれないよ……!」

 

 須郷は変わらず狂気を浮かべ、転移魔法符を掲げると、恭二を連れて、姿を消した。

 

 ◇ ◇ ◇

 

「…………」

 

 昨日逃走した二人については、日本も関西呪術協会も、総力を挙げて捜索している。特に呪術協会の怒りはすさまじかった。調べてみると、京都の件で過激派に協力していた平安から続く名家が、京都での騒動の折に全滅していたらしく、焼け跡の屋敷からは、その名家の姫君の『惨殺死体(・・・・)』だけが見つかっていたそうだ。今回の須郷の話から犯人が特定されたため、必ず捕まえると意気込んでいるそうだ。

 

「……負けるわけにはいかねえ、なあ」

 

「ああ…………」

 

「……うん」

 

「そだね……」

 

 敵となった存在の強さ、醜悪さを改めて認識し、仮想世界の戦士たちは、決意(おもい)を新たにした。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 麻帆良から遠く離れた、ある廃墟。そこは現在、≪笑う棺桶(ラフィン・コフィン)≫の仮のアジトとして、各メンバーが身を潜めていた。

 

「お帰りですか~、シュピーゲルはん」

 

「ただいま、月詠さん。……あの、兄は」

 

「まだ、しぶとく生きてます~。傷はつけとらんから、安心してや」

 

「…………」

 

 目の前の少女は、兄を仇として追ってきた存在だ。当然恭二も手放しには、信用していなかった。

 

「……心配せんでも、今は殺さんよ。あの状態なら、あんさんのお兄さんには何時でも勝てるやろけど、あのPoHの奴には勝算が少ない。そっちの勝算が立ってからやからな」

 

「…………すいません」

 

「謝らんといて。あんさんは、ホンマ調子狂うわ」

 

 そう言って月詠は冷たくその場から去っていく。彼女が完全に離れたころ、ようやく恭二は目の前の扉へと足を踏み入れた。

 

「――――ただいま、兄さん」

 

 入り込んだ部屋の中、そこには薄く人間が忌避するものが立ち込めていた。鉄にも似た血の臭い、糞尿の臭い、病みつき腐り果てた人の脂の臭い。――――総じて、『死』の臭い。それが狭い部屋の中に立ち込めていた。床に散らばった薬剤を避けながら移動し、中央の布団へと歩み寄る。

 

「――――帰っ、たか、恭二」

 

 ぜいぜい、という喘鳴を響かせる男、新川昌一。彼は今、死の床にあった。

 




ゲスっぷり、ここに極まる。須郷はこれで、どんな最期を迎えても同情されないキャラになりましたwwコイツの最期は、実は初登場から決まっているもので……

最後の場面で、「え?」となった人もいるかもですが、ザザについてはおかしな話でもありません。原作でもコイツが落ちこぼれたのは『生まれつきの身体の弱さ』ですし、その上あのぶつ切りの喋り方、アレ普段から呼吸器が弱いせいで身に着いた癖の類だと思うんですよ。作者も気管支弱いので、勢いよく喋ろうとすると、よく咳き込みますw

次回からは麻帆良祭編。ですが土日出勤のため、更新は再来週かと……
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