魔法先生ネギま!~闇の剣と星の剣   作:路地裏の作者

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ようやく始まる直接決戦!


073 コウVSチウ

 

SIDE:キリト

 

「もうすぐコウとチウの試合だな……」

 

 俺とアスナ、それにALO仲間の皆は、今麻帆良武道会の観客席にいる。正直この大会はあまり興味も無かったが、予選からかなりハイレベルな戦いが見られたとネットの掲示板でも騒がれていたこと、そして菊岡がコウとチウも大会に出ると言っていたことから見に来ることになった。そして、試合を目の当たりにしたわけだが……。

 

 正直、どうやっているのか、理解が出来なかった。

 

 第一試合からして、小学生くらいの少年がVRゲームで敏捷に特化したキャラ並みの速度で動き、掌底の風圧だけで女子中学生を十メートル近く吹き飛ばすだけでも明らかに異常だ。

 

 そして第二試合に至っては、分身の術を現実で行う忍者に、黒い渦のような『魔法』を使うメイジ系の男。最後こそ殴り合いになったようだが、本来の戦い方が『魔法』中心なのは一目瞭然だった。

 

「キリト君……これ、現実なのかな……?」

 

 隣にいるアスナの呟きは分かる。俺だって自分の目を疑ったくらいだ。

 

「考えられる可能性として……第一に、全員夢を見ている」

 

「いや、有り得ないでしょ、お兄ちゃん」

 

 俺だって有り得ないのは分かってる。こんな状況じゃなきゃ、スグの意見に賛成だ。

 

「第二に……この試合自体、VR環境で作られたもの」

 

「それも有り得ませんよ。私たちアミュスフィアも使ってませんし」

 

 シリカの指摘はもっともだ。あれはVR機器が無いと出来ないからな。

 

「じゃあ、第三に、最新式のAR(拡張現実)技術で作っている」

 

「キリトが大学で研究してるやつだったかしら。現実を拡張するとか……」

 

 シノンの言う通り、現実の感覚に働きかけるコイツなら、会場全体をAR環境にして、観客の五感に直接誤認させればある程度さっきの『魔法』は説明つく。ただ…………。

 

「ちょっと、キリトぉ? そのARだかなら、この濡れてビショビショになった上着やら水でふやけたクッキーも説明できるっての?」

 

 ……リズが持ってるふにゃふにゃのクッキーと、水で薄まって飲めなくなったジュースとか、説明できないことも多いんだよな……。

 

「でも、パパ? 周辺に存在するのは大会運営側が設けたと考えられる記録用のカメラだけですよ?」

 

「やっぱARでもないのか……」

 

 いよいよもって分からない。まさか現実に『魔法』があるわけもないし……。

 

「……チウちゃんたちもまさかこう(・・)なのかしら?」

 

「いや、それは……ないだろ」

 

 数分後、俺は自分の間違いを認めることになる。

 

SIDE OUT

 

 お互いに試合用の衣装を纏い、更衣室から会場武舞台へと向かう。

 

『さあ、盛り上がって参りました! 続いて第三試合の開始です!』

 

 武舞台への通路でお互いの衣装を確認し、少しばかり苦笑した。これは絶対仕組まれたな、と考える。

 

 チウの衣装は、昨日のコスプレイベントでも身に着けていたセイバーの青い衣装。それの金属鎧を省いた、ドレス姿だ。靴も似たような長さの長靴(ブーツ)。流石に刃物禁止の格闘大会で金属鎧もマズイという運営側の判断だろう。

 

 対してオレの衣装は、黒のズボンに各所に革の飾りベルト。そして革の胸当てに、赤の腰布、肩を覆う赤い布……ぶっちゃけアーチャーの衣装だ。ただ、格闘大会用にか、革の胸当ての装甲板がかなり薄い。多分ゲームで判定するなら、「かわのふく」になるくらいに。ちょっとした打撃でも腹まで響きそうだから、装甲はあてにならないな。

 

『それでは第三試合の選手の紹介に――』

 

「でも、良かったのか、チウ?」

 

「あ? 何がだよ?」

 

『まず入場してきましたのは、鷹のような視線がよく鎧に映えます、『水原光』選手――!』

 

「いや、ここで本名明かしたら、昨日のコスプレイベントも、HPでやってるネットアイドル活動も、何もかもバレるんじゃ――」

 

「!!」

 

『そしてぇっ! 続いて入場してきました青いドレスの少女は、『はs――」

 

「待て、朝倉!!」

 

 間一髪、司会の朝倉さんがなにもかもバラす前に口を塞ぐことが出来た。その後、誠意ある交渉にて、何とか選手名を『チウ』に変えて貰っていた。ついでにこっちも選手名を『コウ』に変更する。

 

 なお、どんな誠意を伴ったかはここでは述べない。財布から食券をたくさん出したようにも見えたが、何も見ていない。だから、隣で後で半分払えよと言われたことなんて、何も知らないのだ。

 

『それでは改めまして! 本選第三試合、コウVSチウ! STARTです!!』

 

「さて、それじゃあバレない程度に演出も混ぜるか。――≪風よ(ウエンテ)≫」

 

 チウの無詠唱魔法とともに、チウの周りに風が纏わりつく。確かにこれならキャラの再現だし、風を起こすくらいなら、送風機でもなんでもあるし、説明も出来るか。

 

「この剣にかけて、マスターに勝利を――ってところか」

 

 木刀ではあるが、剣を縦に構え、風を纏うとそれらしくなる、こっちはそういう演出は出来ないが……。

 

「やれやれ、精々期待に応えることにしよう」

 

 口調を変えて、両手の木刀をいつもとは違い順手に持つ。そして構えずに両手をだらりと下げた。いっそ完全にキャラを投影(トレース)してしまった方が、後で誤魔化しやすいだろう。

 

 そうしてお互いの間で徐々に高まる緊張感。それは周囲の空気に熱を孕みはじめ、あるところで爆発した。

 

「はああっ!」

 

「ふっ!」

 

 チウの斬撃は、疾走からつなげる袈裟切り。対してこちらが選んだのは疾走からの横薙ぎと、時間差でもう一本を重ねての十字受け。ちょうど走り込んだ中間で両者の武器が交差した。

 

「はあっ!」

 

 ALO内での普段のチウは、受けに回ることが多い。それは彼女の完成されたキャラクターが感覚特化型で、それを主体にしたカウンターを軸にした方がMPなどの効率が良いからだが、別に彼女は攻撃が不得意なわけではない。

 

 彼女はSAOで俺や師匠と別れた後、ソロでの狩りも経験しているのだから、攻撃も当然出来るのだ。

 

 その彼女の嵐のような攻撃を、アーチャーのように両手の剣でさばく、いなす、かわす。彼の剣は守勢で、努力で為しえた境地だと聞いているが、確かにこれは難しい。普段は暴風のような攻撃ばかりだから余計にそう感じる。

 

「疾ッ!」

 

「おっと!」

 

 隙をついてなんとか攻撃を繰り出してみるが、チウに危なげなく避けられた。普段の自分の剣は攻撃して、合間に攻撃して、オマケに攻撃して、隙を無理矢理作りだしてるから、考えながら攻撃しなきゃならないこの戦い方は、自分に合っていないのかもしれない。

 

(もっとも、体力の温存にはなるな……)

 

 全身を全力で動かす普段と違って、常にフルスロットルなのは、防御と攻撃を考える頭脳だけで、体力的にはそんなに疲れない。今後、長期戦用に覚えていくかとは思えた。

 

「ただ、今は勝たなきゃな……!」

 

 両手の剣を『逆手』に持ち替え、ギアを引き上げる。ここからは本気、チウを倒すことに専念する!

 




コウVSチウ前半戦終了です。二人の衣装については、完全に朝倉の悪ふざけ。ある意味因縁の戦い同士ですし。

最初の方でキリトが考察してますが、まあ一般常識あればバレるわなぁ……これも後のフラグに繋がります。
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