魔法先生ネギま!~闇の剣と星の剣   作:路地裏の作者

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シノン対龍宮!銃撃戦って、これでいいんだろうか?



083 バーサス~狙撃手ふたり

 

(……さて、どうするかしらね)

 

 コウ達から離れた鐘楼の上、シノンは周囲に点在する高層の建物を一つ一つチェックしていた。シノンが今回狙う予定なのは、敵側の狙撃手。龍宮という名の褐色の女狙撃手(スナイパー)だった。

 

 狙撃手は、存在するだけで戦況を有利に運ぶことも出来る重要なポジション。シノンとしてもコウ達につくと決めた以上、相手側でもっとも厄介な相手を逃すつもりは無かった。そう考えて狙撃に適したポイントを一つ一つチェックしていく。

 

 だが、見つからない。あの一見して手練れの狙撃手(スナイパー)が、狙撃にとってもっとも重要なポイントをみすみす逃すとはとても思えなかった。もう一度各ポイントをチェックしようと思い、僅かに身を乗り出すと、超から渡されていた通信機から声が聞こえた。

 

『――正直、貴女がそちらに付くとは、少し意外だな』

 

「……その声、龍宮だったかしら?」

 

 通信に答えつつも、チェックは怠らない。この声の主は明らかにこちらが見えている。ならばどこにいるか、確実に捉えるつもりでいた。

 

『貴女はどちらかと言えば、彼らの中でも現実主義者(リアリスト)だろう? そう考えれば、確定している未来を変えるために無駄な努力などしないと考えていたのだよ』

 

「見解の相違ね。未来が確定しているなんてのは、失敗した時のためのただの言い訳よ」

 

 未来は本当は余りにも不確かなもので、運命なんてただの言い訳に過ぎない。未来を変えることが出来るのは、誰よりも強い意志だけ。そんなこと、本当はキリトもアスナも良く分かっているはず。それでも敵に回ったのは、多分≪笑う棺桶(ラフィンコフィン)≫が、本当に強いから。ここでキリトたちも倒せないなら、魔法世界には死にに行くようなものだから。キリトは師匠として、引導を渡すために、あそこにいる。

 

『……まあ、どう考えるかは個人の自由だ。こちらもまた譲れない想いがあるのでね』

 

「あら、おしゃべりの時間は終わりで――――――?!」

 

 話しながら上に向けていた視界を、不意に下へとずらす。正面。隠れてなどいなかった。対話の相手は、今自分がいる建物の正面玄関のすぐ前で鐘楼を下から見上げていた――!

 

『――じゃあ、さようならだ』

 

「くっ!!」

 

 咄嗟に鐘楼から空中へと身を躍らせる。次の瞬間、鐘楼の一部が丸ごと特殊弾頭の黒い渦に呑み込まれた。

 

(対物ライフルより厄介じゃない!)

 

 相手の武装に舌打ちしつつ、身体全体でバランスを取り、両手に抱えていた相棒を身体の脇に固定する。対物(アンチマテリアル)ライフル≪ヘカートⅡ・ウルティマホラスペシャル≫。超が作り上げた銃器の中でも、大型で威力・貫通力ともにとんでもない逸品をシノンは借り受けていた。大きさも重量バランスも、GGOで使っていた相棒に近づけることで、現実でも自在な取り回しを実現していた。

 

「こン、のォーーーーーッ!!」

 

 超重量の大型ライフルで無理矢理に空中での姿勢制御を行い、銃口が相手に向いた一瞬で照準して引き金を引いた。大威力のライフル弾が、地面から見上げるように狙撃した相手に牙を剥く。

 

「チッ!」

 

 判断は一瞬。下から狙撃し続けることをあきらめ、龍宮がその場から離れる。対するシノンは、発射の反動で回転する視界の中、すぐ横の建物の外壁を思い切り蹴り飛ばした。落下のベクトルが斜め下へと吹き飛ぶようなものに変わり、そのまま転がるようにして衝撃をすべて逃がす。

 

「ハア、ハア……アイツは……?」

 

 今になって少しだけ膝が震えてくる。上手いこと着地出来て良かったが、ここは現実。リセットもコンティニューも出来ない世界なのだ。これからそこで戦うことになる年の離れた後輩たちを思い、少しだけ歯噛みする。

 

「――こっちだ」

 

「?!」

 

 背後から聞こえた声に、背筋を凍らせた。コマのように回転して射線から逃れると、地面にいくつも黒い渦が放たれた。その後も、二丁のハンドガンから嵐のような銃撃が繰り出される。

 

「ぐっ!」

 

 腰に備えていたサブマシンガンで応戦し、とにかく距離をあける。それを予期していたのか、向こうも持っていた二丁のハンドガンを空中の魔法陣の中へと放り投げ、胸の谷間からボルトアクションの狙撃銃を取り出していた。

 

「フッ、狙撃で私と争える者はそうはいない。少し、楽しませてもらうとするか」

 

「……余裕かましてると、頭フッ飛ばすわよ」

 

 狙撃手同士の熾烈な戦いは、麻帆良の街の片隅で今幕を開けた。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 対して、こちらはコウ達四人とキリト達が対峙した路地。互いに譲れぬ思いを抱え、己が武器を手にし厳しい眼差しを向けていた。

 

「コウ、今からでも遅くない。降伏して魔法世界に行かないと誓ってくれないか?」

 

 そう促すのは、黒鉄と白銀の片手剣を構え、黒のロングコート型軍用強化服を纏ったキリト。口では降伏を促しているが、その立ち居振る舞いには少しも隙が無い。まさしくアインクラッド解放の英雄に相応しい佇まいだった。

 

「…………そう言われたところで、オレが頷くわけにいかないってことは分かってますよね、キリトさん」

 

「……あー、まあ、そうだろうな」

 

 お互いの間で、緊張感が一気に高まっていく。お互いの構えは余りに対照的。黒白の片手剣を順手で構えるキリトに対して、黒一色の片手剣とカタナを逆手に構えるコウ。その雰囲気もまた、相手の隙を伺い息を潜める草原の肉食獣と、近づく敵の喉笛を食い千切る手負いの狂犬といった感じで、実に似ていない師弟ではあった。

 

「なんか、リーダー同士の一騎打ちが決まっちゃったみたいだし、こっちはこっちでやろっか、チウちゃん」

 

「…………いや、いい加減ちゃんづけはやめてくんないか」

 

 キリトたちの横で、どこかのほほんとした空気を漂わせて細剣(レイピア)を構えるアスナ。それに対し、チウもまた細身の両手剣を右脚の前辺りに下段で構えるが、その瞳はアスナの全身を余すところなく注視し、決して油断することは無い。目の前のほのぼのした女性が、どれほど恐ろしい剣士なのかは、チウにも嫌と言うほど分かっていた。

 

「ん~? そうなると……」

 

「……私たちが、残り全部だね」

 

 ニイッと口元を歪ませたキッドと、愛槍を両手で構えたレーカが、眼前の相手を見据える。≪ビーストテイマー≫シリカとその相棒ピナ、鍛冶師リズベット、商人エギル、風妖精(シルフ)リーファ。いずれも劣らぬ強敵ばかり。その事実に戦意を昂らせ、腰を落としていつでも飛び出せるように構えた。

 

「それじゃ、まあ……ここからは、言葉も無粋だよな……」

 

「そうですね、尋常に…………」

 

 じり、じりと間合いが少しずつ少しずつ詰まっていき、ある一定の距離に達した時、一気に爆ぜた。

 

「「勝負!!」」

 




次回からは、いよいよ本格バトル!いや、長かった……

シノン対龍宮。接近戦では龍宮、狙撃戦では互角と分析してたので、こんな形になりました。シノンの空中狙撃のイメージは、対べヒモス戦ですね。ニンジャな楓サンが間に合えば、シノンにワンチャンあり……?

戦局で一番キツイのは、キッドとレーカではなく、アスナと戦うチウだったり。あのヒト、単純に強いので……
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