魔法先生ネギま!~闇の剣と星の剣   作:路地裏の作者

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遅れてしまい申し訳ありませんでした……!師走って、忙しすぎ……!



089 かくして天より降り立ちぬ

 超とネギが天空で最終決戦を行っている頃、コウやチウといったVR組、≪世界の種子(ザ・シード)≫の面々は、世界樹前広場の戦場へと移動していた。

 

『オォオオオオオオオオ!!』

 

「しぶと過ぎんだろ、オイ!?」

 

 コウとチウがそれぞれの≪ソードスキル≫を放つが、目の前の敵は一向に活動を停止しない。それもそのはず、彼らが今相対しているのは、かつて魔法世界での戦争でも投入された鬼神兵と同等で、機械制御で幾分技の威力が落ちていても充分脅威となり得る存在なのだ。おまけにコウとチウのソードスキルは、本来魔法障壁を展開する人間大の存在、つまりは魔法使い相手に優位に立ちまわるための技術であって、こんな巨体を倒すことなど想定していない。おまけに、キッドの武器も所詮はハンドガンで威力に乏しい。仮想世界での経験で補うとしても、半身が削れても向かってこれる生命力の塊相手には、圧倒的に威力不足だった。

 

 彼らの中で唯一圧倒できそうなのは、ALOで純粋な水魔法使い(メイジ)であるレーカくらいなのだが……。

 

「……うう。ゴメンね、皆……」

 

 彼女はここに戻る途中で、遂に魔力が全て空になり、元の服装に戻ってしまっていた。その服装は、コスプレのミニスカナース服にレーカが持っていた槍のみ、とかなりちぐはぐだった。それでも彼女の現在使用できる兵装は、≪神槍ネプチューン≫だけ。元々魔法使いの家系でも無い彼女の保有魔力では、槍が展開できるだけマシと言ったところだろう。

 

 そう言う状況で、純粋に火力不足。MMOで言えば、明らかに大規模連結(レイド)級の巨大ボス相手に、剣とハンドガンでちまちま削っているというのが現状だった。

 

「あー、クソ! こりゃ、もう駄目だ! 今からでも電脳空間にダイブして、ユイの応援行くぞ!!」

 

「そうする、のも、有りだけどな!」

 

「どっかの虎の穴の、魔力切れ耐久バトルみたいになってきたね~?」

 

 それぞれに手持ちの武器で攻撃するが、さすがに疲労困憊。既に攻撃で欠けたアバターの衣服を治す魔力も残っていない。チウに至っては体の金属鎧を全て魔力に回して、青いドレス姿で斬り結んでいた。

 

 そうは言っても、今更ユイに合流したとしても、電脳空間で行われているであろう茶々丸との電脳頂上決戦に介入することも難しい。今彼らに出来ることは、この戦場で全ての力を尽くすことだけだった。

 

 ――しかし、事態は彼らの想像など遥かに超えて、思わぬ方向へと転がり出そうとしていた。

 

『――――――!』

 

 ぴたり、とそれまで激しく世界樹前広場にたどり着こうとしていた鬼神が、動きを止めた。

 

「……………………あ?」

 

 目の前の鬼神の不審な様子に、思わずその場の全員が動きを止める。鬼神は、そのまま目の前の相手には目もくれず、視線は虚空を彷徨っている。そして、そのまましばらく動かなかったかと思うと、不意に、その口から広場の中心に向かって光線を吐き出した。

 

「なんだ!? 進めないと思って、広場を壊す気か!」

 

「ん~? どうやら違うみたいだにゃ~?」

 

 キッドの言葉に、チウもコウも光線の行方を追う。その光線は広場を壊すこともなく、ただその中心に、六芒星の魔法陣を描き出していた。

 

「…………なに、あれ?」

 

 魔法陣の中心に、半透明の輪郭が浮かび上がる。その召喚と反比例するように、鬼神兵はその存在を花びらのように散らしていく。そうして、巨大な鬼神兵が風の中に溶けた時、魔法陣の中心には、白骨で象られた巨大な異形が現れていた。

 

「「な――――」」

 

 その姿を見て、コウとチウが思わず絶句する。それはそうだ。その姿に、その異形に、どうしようもない程見覚えがあったから。全身を形作るのは、死を象徴する鋭利な骨。その両手は蟲のようでもあり、また生命を刈り取るカタチをした巨大な鎌。その長大な胴に生えるのは、大地を抉り取る歪な棘。

 

『Qryrrrrrrrrrrrrrrrr――――!!』

 

 ≪The Skullreaper≫。アインクラッド第75層で数多くの死者を出した、白骨の百足は、今また己が『主』に命を与えられ、彼らの前へと立ちはだかった。

 

 ◇ ◇ ◇

 

「はぁ――――! はぁ――――!」

 

 天空にて、互いの信念を懸けた勝負の決着はついていた。勝者は、ボロボロになった自分の姿に思わず苦笑し、飛行船の天井へ突き刺さるように吹き飛ばされた敗者を見下ろした。

 

 勝ったのは、超。最後の最後、ギリギリで彼女の両手剣の切っ先がネギへと届き、その障壁を粉々に破砕して発生した衝撃で吹き飛ばしたのだ。

 

「……やっぱり、強かったヨ。ご先祖様」

 

 最後に漏れた言葉が限界だったのか、彼女の姿が元の姿へと解ける。先の戦闘でユニットがどこか壊れてしまったのか、ふらふらと覚束ない飛行で飛行船へと戻った。

 

「サアテ、ともあれ勝負は私の勝ちダ。ハカセ、すぐに大規模強制認識魔法を――――」

 

 飛行船の上で待機していた自分の相棒へと声を掛ける。そこでようやく、超も異常に気が付いた。

 

「茶々丸! 茶々丸!! 応答して、お願い!」

 

 手元に発生させたキーボードに一心不乱に打ち込みながら、必死になって電脳空間を抑えていたはずの『娘』を呼ぶ。どこからどう見ても、異常事態だった。

 

「!? どうしたネ、ハカセ!!」

 

「大変です、超さん! 電脳空間で麻帆良結界を落として占拠していた筈の茶々丸と、連絡が取れなくなりました! それだけでなく、各ポイントを占拠していた鬼神兵も、何者かの介入により、別の召喚魔へとその姿を変化! これが現在の下の状況です!!」

 

 そう言って映し出された、地上の様子。その映像に超は更に驚愕した。

 

「馬鹿ナ…………まさか、コイツラ……」

 

 そこには、狼の頭持つ獣人の長がいた。巨大な戦槌持つ牛頭の王がいた。死神が、山羊の頭持つ悪魔が、それぞれのポイントを占拠し、天を仰いでいた。

 

「大規模魔法、中止! 今すぐ詠唱を取り止め、地上部隊に各所の脅威を排除させるネ!」

 

「そ、それが、出来ないんです! 魔法の制御も、地上部隊への命令権も、完全に奪われてしまっているみたいで!!」

 

「――!!」

 

 有り得ない。他の分野ならともかく、情報処理と電子制御において、ハカセや茶々丸に並ぶ者などこの時代にいるはずがない。ましてや、その二人を越えて、完全に手玉に取るなど――――

 

 そこまで考えて、超はこれを為した怪物じみた『天才』の、正体に気付いた。

 

「か――」

 

 各ポイントを抑えられ、同時に詠唱が完了しようとする魔法の気配によって、周囲が満たされる。魔力が大気に充溢し、今にも現実が改変されそうだ。

 

 奪い取られた大規模魔法は、超にも理解不能な魔法式を編まれている。もはや、どういった形で、この魔法が現実に現れるのか、術者以外には分からないだろう。

 

 百万の呪詛を込めて、超はこれを為したであろう最悪の天才の名を口にした。

 

「茅場晶彦――――!!」

 

 ◇ ◇ ◇

 

「…………ん?」

 

 喧騒から離れた建物の屋上にて、キリトは目覚めた。寝覚めではっきりしない頭を周囲に巡らせると、周りにアスナもスグも寝かされていた。リズもシリカもエギルも、少し離れた場所に眠っている。胸が上下していることからも、特に問題はなさそうだ。

 

「負けたかぁ……」

 

 最後の記憶を思い返し、この結果に独り言ちる。もう二度と、アイツ等に仲間を失わせたくなくて立ちはだかったが、少しばかりいらないお世話だったかも知れない。負けた今となって、そんなことも思った。

 

 ふと。軽く息を吐いた時、周囲の喧騒が、まるで嘘のように静まり返っていくのに気が付いた。

 

「なんだ?」

 

 今では、静寂が耳に痛いくらいだ。何か異常でも起こったのかと、急いで傍にいたアスナたちを起こす。

 

「……ん。なに、キリト君……?」

 

「んにゃ……どうしたの、お兄ちゃん……?」

 

 寝ぼけながらも全員が身を起こし、何か異常なことが起こっている旨を伝えると、途端に全員が意識をはっきりさせ、手分けして周囲を探り出した。

 

「――あれ? キリトさん、あれ見てください」

 

 シリカの視線の先を追うと、階下の広場にアバター姿のコウやチウがいた。しかし、その様子が尋常ではない。手に持ったそれぞれの武器を地面に落とし、呆然と天空(そら)を見上げている。

 

 彼らの視線を追い、誰からともなくキリトたちもまた、全員で天空(そら)を見上げる。雲一つない空。既に夕闇に支配され、満月が浮かぶ空。宙に浮かび上がるのは、細長い飛行船の影と――――――――円錐状の黒い影(・・・・・・・)のみ。

 

「え…………」

 

 その影を見た時、驚愕に皆が息を呑んだ。何故なら、その影は皆が知っていた。ある者はがむしゃらに剣を振るい、ある者はひたすらに剣を鍛え、ある者は友に出会い、ある者は離れた家族を想った。

 

 彼らは、覚えていた。忘れる訳が無かった。何故ならそこは、彼らが二年の時を過ごし、忘れられない一部となった場所。

 

 

「――――アインクラッド」

 

 

 仮想世界に君臨した浮遊城アインクラッド。この日、伝説の城郭は、麻帆良の高き空に降臨したのだった。

 




アインクラッド、降臨。原作では超が世界中に強制認識魔法使うのに霊脈の魔力使ってますが、世界樹の発光自体は魔法世界編のリライトでも記述があります。リライト並みの魔力が、世界規模の霊地のシンクロで大量に発生するのであれば、アインクラッドの『召喚』も可能では?と言うのが今回のコンセプト。火星全土の幻想空間消去と城一つの召喚なら、規模はかなり小さいですし。

さて、現実に召喚されたアインクラッド。当然紅玉宮の玉座には、『彼』が座ることになります。

22:45時点追記
書き忘れてましたが、来週正月という事もあり、投稿できません。予定では再来週かその次になります。
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