「う――――おぉおおおおおお?!」
「あンの、ヤロォォォォォォォ!!」
「………………………………ッ!!」
「おー、落ちる、落ちる~~~~♪」
突如として≪The Skullreaper≫の作り上げた魔法陣に巻き込まれたコウ、チウ、レーカ、キッドの四人は、突然の浮遊感と落下に叫び声を上げた。もっとも声も出ない者や、純粋に楽しんでいる者もいたが。
そうして落ちることしばし、光で覆われていた周囲の空間に変化が生じ、やがて四人は中世のファンタジー色が強い街の上空へと投げ出された。落下していく状況に叫び声を上げ続けていると、不意に、彼らに奇妙な感覚が襲い掛かった。その街並みに、建物に、どことなく既視感を抱いたのだ。
その感覚の正体を探ろうとしばし考えていると、みるみる地面が近づいてくる。落下予想地点である闘技場のような建物の全景が見え始めると、咄嗟にコウが他の三人へと叫んだ。
「ッ、チウ、レーカ、翅で落下を和らげよう! キッドは俺が抱える!!」
言うが早いか背中の翅を展開し、一直線にキッドの元へと急ぐ。この中では唯一GGOのアバターで翅を持たない為、彼女の飛行能力はゼロだ。そうして空中でキッドの身体を捕まえたが、落下の勢いが強すぎたのか、そのままもつれるように闘技場へと落下した。
「オイ、大丈夫か!?」
「コウ、キッド、平気?」
二人の安否を心配したチウとレーカが急いで土煙へと駆け寄ると、そこに見えてきたのは――
「……、…………! …………、……、…………!!」
「ん、ぁ……」
キッドの胸に顔を埋め、膝を内股の辺りに滑り込ませたコウの姿が目に入った。
「「よし、死ね」」
◇ ◇ ◇
「しっかし、何だか、変だな、この景色……(バキバキキ、ベキッ!)」
「……どうかしたの、チウ?(ドスドスドスドス)」
「いや、どっかで見たことがあるってな(ゴキキ、ゴリュッ!)」
「ふーん…………(ガンガンガン、ゴォンゴォン!!)」
チウが周囲の状況確認に想いを馳せ、レーカもまた冷静にそれを分析する中、BGMおよび背景の画像は、とても視聴に絶えないものとなっていた。何故か的確に
「まあ、そろそろふざけてないで、現状の確認を――――(グリュッ!!)――あ……」
およそ人体からは聞こえないような鈍い音を立てた後、いかにもやっちまったという顔で、チウが掴んでいたコウの首を手放した。そのまま身体は地面へと倒れ、口からぶくぶくと泡が漏れ出た。
「やっべー……」
「一応、治すね? まだ折檻は続いてるし……」
「いやー……レーカ? そろそろやめないと、さすがに死んじゃうんじゃないかにゃー……」
泡を吹いた相手に、回復魔法をかけた上でさらに折檻しようとするレーカに、キッドが少しだけ引いていた。結局すったもんだの後、コウが意識を取り戻したのは、気絶から三十分後のことだった。
「――はッ! 俺はドコ?!」
「よし、問題ねえな。そろそろ問題点の確認に移るぞ」
コウの妄言を無視し、辺りを見回す。場所は古代か中世の闘技場じみた場所。今いるのはその中心部で、ALO含めてファンタジー系のVRMMOなら珍しくもない風景だ。しかし、やはり既視感がある。
「……そもそも、ヒースクリフのヤロウがあの骸骨百足を操作してたなら、行き着く場所なんて、一つしかねえんだけどな……」
「あー…………やっぱり? 見覚えあるの、当たり前かぁ……」
チウの呟きにコウが一人結論に至ると、空中から鮮血が流れ落ちるように滴り、空中に巨大なヒトガタを形成した。ちょうどあの日、『SAO事件』の『はじまりの日』と同じように。
「やっぱアインクラッドのはじまりの街かよ……相変わらず趣味が
『ふ……演出過多なのは認めよう。ようこそ、コウ君、チウ君、レーカ君、キッド君。私の世界へ……』
あのデスゲームのはじまりと全く同じ演出。そして過剰な演出にチウとコウから溜息が漏れる。その横で、レーカが核心を聞いてみた。
「あの…………私たち四人は、何でここに呼ばれたんでしょうか……? ここまで大規模な魔法バレとなると、『組織』で対応する案件で、もう私たちの手には負えないと思うんですが……」
まず、彼ら四人が強制的に召喚された理由が見えない。そもそもここ麻帆良での魔法使用や管理については、未だ政府にも管理責任がなく、関東魔法協会が全責任を負う。日本政府の関係機関の、そのまた一構成員に過ぎない彼ら四人には、この事態に対処する責任など一切ない。出来る限り力は尽くしたし、麻帆良に協力もしたのだから、責任を押し付ける気満々だった。
『その点は知っている。そもそもこの地での魔法バレは関東魔法協会に全ての責任がある。おまけに今回の浮遊城の召喚には、超鈴音も利用されただけだからね。彼女が罪に問われないようこちらで取り計らっておくつもりだ。君らを呼んだのは、そんな責任の擦り付け合いとは全くの別件だよ』
フードの奥で柔和な笑みを浮かべるが、コウもチウもそんな笑みには騙されない。目の前の相手は、二年もの間自身のギルド団員や他のプレイヤーを騙しきった男だと理解しているから。
ただ、そんな油断なく構えていた二人も、続くヒースクリフの言葉は予想出来なかった。
『簡単に言えば――――――――君らを呼んだのは、『修行』の為だ』
「「「「……………………………………………………………………………………はい?」」」」
たっぷり一分近く硬直した後、素っ頓狂な声が四人全員から漏れた。
『君らは今後、菊岡氏と共に夏休み中に魔法世界の大国、『ヘラス帝国』へと赴く予定だと聞いている。しかしながら、君らの今の戦力では向こうへ行っても犬死するだけだ。そこで出発までの間、ここで修行すべきだと判断した』
「…………まあ、向こうにはラフコフもいるからな。実力に不安があるのは実感してるが」
「それで何で、強制召喚になるんだよ?」
「……あの、修行場所としてここを利用していいのなら有り難いですが、それならまた日を改めてこちらに来ますから……」
「後夜祭もあるし、一回帰ってもいいかな~?」
そう言い募る四人だったが、眼前のヒースクリフから出てきたのは、『拒絶』。
『申し訳ないが、修行するにも時間が圧倒的に足りない。君らはこのまま修行が完了するまでの間、このアインクラッドで過ごしてもらう』
「「「「ああ?!」」」」
つまり修行が終わるまで、帰れないという事。その事実に、全員が非難の声を上げた。
「フザケんな! 明日以降の授業どうすんだよ!!」
『問題は無い。今の映像は、向こうにも一方的に送り付けてある。関東魔法協会はこの学園都市の運営母体でもあるのだから、調整くらいは効くだろう』
「夏休み前のテストは!? 期末テスト受けないのは、どう考えてもマズイだろ!!」
『元々こんな形で生徒を浚われたのは、関東魔法協会の落ち度だ。自らの責任を棚上げして、生徒の未来を閉ざすことは、彼らもしない』
「…………あの、私は所属の水泳部の引退試合があるんですが」
「あ、それ私も。女子バスケの引退試合に出ないと」
『む……流石にそれに出場できないのは、な……それについては、後で日程を教えてくれたまえ。その日に限り、城の外へ送り届けよう。終わり次第、呼び戻すが』
こちらの非難をのらりくらりと躱されて、目の前の人物に、こちらを帰す気が毛頭ないと全員が悟った。
『修行のクリア条件は、アインクラッド50層のクオーターポイントのフロアボス。彼を倒すことが出来たなら、ここからの帰還を執り行おう。では――――『――茅場!!』――ん?』
詳細な説明が為されている途中、更に空中にディスプレイが浮かび、そこに焦燥を露わにした高畑先生が映し出された。何時も飄々とした表情は見る影もなく、今は厳しく引き締められている。
『……君か、タカミチ。どうかしたかね?』
『今すぐ、彼ら四人をこちらに戻すんだ。こんな強制的な修行を彼らに行わせようとするなんて――』
高畑先生のそんな言葉にも、ヒースクリフは軽く肩を竦めるだけだった。
『何を言っているんだ。事実、向こうはそれだけ危険が多い世界なのは分かっているだろう。ましてや彼らにしろ、ネギ・スプリングフィールドにしろ、強大な敵が待っていることは決定されている。ならば最大限の備えを行わせるのは、当たり前だろう』
『いいから、帰すんだ! その子たちは、僕の『生徒』だ!! 君に自由にする権利なんて!!』
その言葉に、す、と鋭い視線を高畑へと向けた。
『……思い上がるなよ、高畑・T・タカミチ。例え『教師』と『生徒』だったとしても、生徒の人生を自由にする権利などない。自分の人生を自由に出来るのは自分自身だけで、他人の人生を自由にしようとするのは、絶対的な『悪』でしかない』
『だったら、君が言えたことじゃないだろう! 何千人も殺してきた君には!!』
『――――分かっているさ』
あくまで泰然とするヒースクリフと、激昂する高畑。両者の位置も態度も、余りにもかけ離れていた。
『例え『悪』に落ちたとしても、私は私の目的を成し遂げる。そのために彼らを鍛えることは絶対的な条件だ。……どうするかね? このまま無力なまま魔法世界へ行くか、それとも新たな力を身に着けるか。判断は君らに委ねよう』
「「「「…………」」」」
あえて問いかける形をとるヒースクリフ。しかし、その答えは決まっていた。
ヒースクリフにより、『強制修行部屋』へ監禁終了。麻帆良祭の日程考えると、ここから50層クリアはかなりキツイ修行になります。ほとんど一日一層クリアしないと間に合わない計算に……
タカミチ……生徒を想ってるように要所要所で出てはきますが、まずあのクラスを出張で放置したり、ネギとの仮契約黙認したりと、色々ね……原作最後のアスナへの台詞とか、「今さら!?」と見ててキレそうになりましたし。
それと今後の投稿ですが、どうにもこの時間が安定しそうなので、来週以降もこの時間での投稿になります。