魔法先生ネギま!~闇の剣と星の剣   作:路地裏の作者

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謎の魔法で消されてしまったコウたち。今回はその続きです!



091 悪とはなにか

 

「う――――おぉおおおおおお?!」

 

「あンの、ヤロォォォォォォォ!!」

 

「………………………………ッ!!」

 

「おー、落ちる、落ちる~~~~♪」

 

 突如として≪The Skullreaper≫の作り上げた魔法陣に巻き込まれたコウ、チウ、レーカ、キッドの四人は、突然の浮遊感と落下に叫び声を上げた。もっとも声も出ない者や、純粋に楽しんでいる者もいたが。

 

 そうして落ちることしばし、光で覆われていた周囲の空間に変化が生じ、やがて四人は中世のファンタジー色が強い街の上空へと投げ出された。落下していく状況に叫び声を上げ続けていると、不意に、彼らに奇妙な感覚が襲い掛かった。その街並みに、建物に、どことなく既視感を抱いたのだ。

 

 その感覚の正体を探ろうとしばし考えていると、みるみる地面が近づいてくる。落下予想地点である闘技場のような建物の全景が見え始めると、咄嗟にコウが他の三人へと叫んだ。

 

「ッ、チウ、レーカ、翅で落下を和らげよう! キッドは俺が抱える!!」

 

 言うが早いか背中の翅を展開し、一直線にキッドの元へと急ぐ。この中では唯一GGOのアバターで翅を持たない為、彼女の飛行能力はゼロだ。そうして空中でキッドの身体を捕まえたが、落下の勢いが強すぎたのか、そのままもつれるように闘技場へと落下した。

 

「オイ、大丈夫か!?」

 

「コウ、キッド、平気?」

 

 二人の安否を心配したチウとレーカが急いで土煙へと駆け寄ると、そこに見えてきたのは――

 

「……、…………! …………、……、…………!!」

 

「ん、ぁ……」

 

 キッドの胸に顔を埋め、膝を内股の辺りに滑り込ませたコウの姿が目に入った。

 

「「よし、死ね」」

 

 ◇ ◇ ◇

 

「しっかし、何だか、変だな、この景色……(バキバキキ、ベキッ!)」

 

「……どうかしたの、チウ?(ドスドスドスドス)」

 

「いや、どっかで見たことがあるってな(ゴキキ、ゴリュッ!)」

 

「ふーん…………(ガンガンガン、ゴォンゴォン!!)」

 

 チウが周囲の状況確認に想いを馳せ、レーカもまた冷静にそれを分析する中、BGMおよび背景の画像は、とても視聴に絶えないものとなっていた。何故か的確に関節技(サブミッション)を極め、関節を破壊せんとするチウと、あくまで無表情に手に持っていた槍を何度も何度も何度も何度も振り下ろすレーカ。まあ、一応石突きの方で行っているので、死にはしないのが幸いか。いや、苦しみが長く続く分、不幸なのかもしれない。

 

「まあ、そろそろふざけてないで、現状の確認を――――(グリュッ!!)――あ……」

 

 およそ人体からは聞こえないような鈍い音を立てた後、いかにもやっちまったという顔で、チウが掴んでいたコウの首を手放した。そのまま身体は地面へと倒れ、口からぶくぶくと泡が漏れ出た。

 

「やっべー……」

 

「一応、治すね? まだ折檻は続いてるし……」

 

「いやー……レーカ? そろそろやめないと、さすがに死んじゃうんじゃないかにゃー……」

 

 泡を吹いた相手に、回復魔法をかけた上でさらに折檻しようとするレーカに、キッドが少しだけ引いていた。結局すったもんだの後、コウが意識を取り戻したのは、気絶から三十分後のことだった。

 

「――はッ! 俺はドコ?!」

 

「よし、問題ねえな。そろそろ問題点の確認に移るぞ」

 

 コウの妄言を無視し、辺りを見回す。場所は古代か中世の闘技場じみた場所。今いるのはその中心部で、ALO含めてファンタジー系のVRMMOなら珍しくもない風景だ。しかし、やはり既視感がある。

 

「……そもそも、ヒースクリフのヤロウがあの骸骨百足を操作してたなら、行き着く場所なんて、一つしかねえんだけどな……」

 

「あー…………やっぱり? 見覚えあるの、当たり前かぁ……」

 

 チウの呟きにコウが一人結論に至ると、空中から鮮血が流れ落ちるように滴り、空中に巨大なヒトガタを形成した。ちょうどあの日、『SAO事件』の『はじまりの日』と同じように。

 

「やっぱアインクラッドのはじまりの街かよ……相変わらず趣味が(わり)ぃな」

 

『ふ……演出過多なのは認めよう。ようこそ、コウ君、チウ君、レーカ君、キッド君。私の世界へ……』

 

 あのデスゲームのはじまりと全く同じ演出。そして過剰な演出にチウとコウから溜息が漏れる。その横で、レーカが核心を聞いてみた。

 

「あの…………私たち四人は、何でここに呼ばれたんでしょうか……? ここまで大規模な魔法バレとなると、『組織』で対応する案件で、もう私たちの手には負えないと思うんですが……」

 

 まず、彼ら四人が強制的に召喚された理由が見えない。そもそもここ麻帆良での魔法使用や管理については、未だ政府にも管理責任がなく、関東魔法協会が全責任を負う。日本政府の関係機関の、そのまた一構成員に過ぎない彼ら四人には、この事態に対処する責任など一切ない。出来る限り力は尽くしたし、麻帆良に協力もしたのだから、責任を押し付ける気満々だった。

 

『その点は知っている。そもそもこの地での魔法バレは関東魔法協会に全ての責任がある。おまけに今回の浮遊城の召喚には、超鈴音も利用されただけだからね。彼女が罪に問われないようこちらで取り計らっておくつもりだ。君らを呼んだのは、そんな責任の擦り付け合いとは全くの別件だよ』

 

 フードの奥で柔和な笑みを浮かべるが、コウもチウもそんな笑みには騙されない。目の前の相手は、二年もの間自身のギルド団員や他のプレイヤーを騙しきった男だと理解しているから。

 

 ただ、そんな油断なく構えていた二人も、続くヒースクリフの言葉は予想出来なかった。

 

 

『簡単に言えば――――――――君らを呼んだのは、『修行』の為だ』

 

 

「「「「……………………………………………………………………………………はい?」」」」

 

 たっぷり一分近く硬直した後、素っ頓狂な声が四人全員から漏れた。

 

『君らは今後、菊岡氏と共に夏休み中に魔法世界の大国、『ヘラス帝国』へと赴く予定だと聞いている。しかしながら、君らの今の戦力では向こうへ行っても犬死するだけだ。そこで出発までの間、ここで修行すべきだと判断した』

 

「…………まあ、向こうにはラフコフもいるからな。実力に不安があるのは実感してるが」

 

「それで何で、強制召喚になるんだよ?」

 

「……あの、修行場所としてここを利用していいのなら有り難いですが、それならまた日を改めてこちらに来ますから……」

 

「後夜祭もあるし、一回帰ってもいいかな~?」

 

 そう言い募る四人だったが、眼前のヒースクリフから出てきたのは、『拒絶』。

 

『申し訳ないが、修行するにも時間が圧倒的に足りない。君らはこのまま修行が完了するまでの間、このアインクラッドで過ごしてもらう』

 

「「「「ああ?!」」」」

 

 つまり修行が終わるまで、帰れないという事。その事実に、全員が非難の声を上げた。

 

「フザケんな! 明日以降の授業どうすんだよ!!」

 

『問題は無い。今の映像は、向こうにも一方的に送り付けてある。関東魔法協会はこの学園都市の運営母体でもあるのだから、調整くらいは効くだろう』

 

「夏休み前のテストは!? 期末テスト受けないのは、どう考えてもマズイだろ!!」

 

『元々こんな形で生徒を浚われたのは、関東魔法協会の落ち度だ。自らの責任を棚上げして、生徒の未来を閉ざすことは、彼らもしない』

 

「…………あの、私は所属の水泳部の引退試合があるんですが」

 

「あ、それ私も。女子バスケの引退試合に出ないと」

 

『む……流石にそれに出場できないのは、な……それについては、後で日程を教えてくれたまえ。その日に限り、城の外へ送り届けよう。終わり次第、呼び戻すが』

 

 こちらの非難をのらりくらりと躱されて、目の前の人物に、こちらを帰す気が毛頭ないと全員が悟った。

 

『修行のクリア条件は、アインクラッド50層のクオーターポイントのフロアボス。彼を倒すことが出来たなら、ここからの帰還を執り行おう。では――――『――茅場!!』――ん?』

 

 詳細な説明が為されている途中、更に空中にディスプレイが浮かび、そこに焦燥を露わにした高畑先生が映し出された。何時も飄々とした表情は見る影もなく、今は厳しく引き締められている。

 

『……君か、タカミチ。どうかしたかね?』

 

『今すぐ、彼ら四人をこちらに戻すんだ。こんな強制的な修行を彼らに行わせようとするなんて――』

 

 高畑先生のそんな言葉にも、ヒースクリフは軽く肩を竦めるだけだった。

 

『何を言っているんだ。事実、向こうはそれだけ危険が多い世界なのは分かっているだろう。ましてや彼らにしろ、ネギ・スプリングフィールドにしろ、強大な敵が待っていることは決定されている。ならば最大限の備えを行わせるのは、当たり前だろう』

 

『いいから、帰すんだ! その子たちは、僕の『生徒』だ!! 君に自由にする権利なんて!!』

 

 その言葉に、す、と鋭い視線を高畑へと向けた。

 

『……思い上がるなよ、高畑・T・タカミチ。例え『教師』と『生徒』だったとしても、生徒の人生を自由にする権利などない。自分の人生を自由に出来るのは自分自身だけで、他人の人生を自由にしようとするのは、絶対的な『悪』でしかない』

 

『だったら、君が言えたことじゃないだろう! 何千人も殺してきた君には!!』

 

『――――分かっているさ』

 

 あくまで泰然とするヒースクリフと、激昂する高畑。両者の位置も態度も、余りにもかけ離れていた。

 

『例え『悪』に落ちたとしても、私は私の目的を成し遂げる。そのために彼らを鍛えることは絶対的な条件だ。……どうするかね? このまま無力なまま魔法世界へ行くか、それとも新たな力を身に着けるか。判断は君らに委ねよう』

 

「「「「…………」」」」

 

 あえて問いかける形をとるヒースクリフ。しかし、その答えは決まっていた。

 




ヒースクリフにより、『強制修行部屋』へ監禁終了。麻帆良祭の日程考えると、ここから50層クリアはかなりキツイ修行になります。ほとんど一日一層クリアしないと間に合わない計算に……

タカミチ……生徒を想ってるように要所要所で出てはきますが、まずあのクラスを出張で放置したり、ネギとの仮契約黙認したりと、色々ね……原作最後のアスナへの台詞とか、「今さら!?」と見ててキレそうになりましたし。

それと今後の投稿ですが、どうにもこの時間が安定しそうなので、来週以降もこの時間での投稿になります。
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