魔法先生ネギま!~闇の剣と星の剣   作:路地裏の作者

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麻帆良祭編、後始末……



092 未来を変えるもの

 

「「おおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」」

 

 咆哮とともに、モンスターの集団へと特攻し、あっという間に血祭りにあげる。敵集団の中心で暴れまわるのはコウとチウ。その身を包むのは、ALOでのアバターであり、SAOの時よりもさらに強くなった姿だ。

 

「ニヒ、二人で独占はズルイよ~?」

 

 そんな軽い言葉と共に、敵の脳天へと次々と弾丸が突き刺さる。二丁の拳銃を携え、眉間を貫くのはキッド。その笑みが、凄惨な笑みへと変わっていく。

 

「……皆、一度下がって!」

 

 その言葉に全員が振り向くと、頭上に巨大な水球を待機させたレーカが槍を高々と掲げる。全員が全速で戦場を離脱すると、同時に槍が振り下ろされた。

 

「『ノアズ・アーク』!!」

 

 怒涛となって押し寄せる水の圧倒的暴力。フィールドに存在したありとあらゆるモンスターたちは、憐れ濁流へと呑まれその姿を消すのだった。

 

 そんな修行風景を、周囲に浮かべたモニターで確認したヒースクリフは、僅かに笑む。そうして今度は、正面に浮かぶモニターへと向き直った。

 

「…………それで、なんだったかな? 近衛翁」

 

 目の前のモニターに映るのは、この関東魔法協会の長、近衛近右衛門。現在ヒースクリフは関東のトップとの対談へと臨んでいた。

 

『……言ったじゃろう。彼ら四人の修行期間による欠席は認めん。学生は学業が本分じゃからな。彼らは全員、即刻こちらに送り返してもらう』

 

 ……もっとも、これは対談とも呼べない代物だったが。近衛翁は先程から同じ要求を繰り返してくるばかり。始まりからずっと平行線のままだ。

 

「正直な話、『学業の一環』である修学旅行中に、担任教師に親書の使いなどと言う魔法使い側の用件を押し付け、あまつさえ生徒を巻き込んだ関東魔法協会にだけは言われたくないのだが」

 

『むう…………』

 

 痛いところを突いても、それとこれとは話が別と言わんばかりに要求だけ突き付けてくる。目の前の老人は、やはり相当のタヌキだった。

 

『ふむ、そうですね。僕もその点については茅場さんの意見に同調しますよ』

 

 ……タヌキと言う点では、目の前の眼鏡の人物も相当だが。菊岡誠二郎。コウ達が所属する『先端技術対策管理室』の室長であり、日本の国防を司る現役自衛官。現在日本政府における魔法やVR技術を含めた先端技術の責任を一手に担っているとかで、関西の術者に頼んで強引にこの会談に割り込んで来た。表面上は穏やかに見えるが、瞳がさっきから一瞬たりとも笑っていない油断ならない人物だ。

 

『まあ、魔法世界は相当に物騒と伺っていますしね。同行者兼護衛になる予定の彼らのレベルが上がるのは嬉しいことですよ。教育機関である麻帆良学園側が、都合が悪いと言うのであれば……どうでしょう? 僕から文部科学省に連絡を取って、本当に彼らを休ませることは出来ないのか、学園側を調査すると言うのは? もちろんそちらの手を煩わせないよう、案内役として関西の術者(・・・・・)を付けさせていただきますよ』

 

『ッ! それには、及ばん………………彼ら四人は、形式上『短期留学』扱いとし、その間の試験を免除とする……これでええじゃろ……』

 

 麻帆良内に政府の人間と関西の術者が入ることを嫌い、ようやくコウ達四人の処遇が決まる。一つの都市を支配するほどの組織だ。相応に後ろ暗い部分も多々ある。それを探られることを恐れた結果となった。

 

『じゃが、今回の騒動の首謀者である超君たちは――――』

 

「彼女らは、私が利用しただけだ。それでも罪として裁くつもりか?」

 

 そのヒースクリフの言葉に、近衛翁は決して視線を逸らすことはしなかった。譲れないのだ。世界規模の強制認識魔法が失敗したとしても、麻帆良の上空には魔法で作られた浮遊城が今も浮かんでしまっている。むしろ後々調べられればドミノ式にばれる以上、アインクラッドの顕現の方が性質が悪い。

 

 麻帆良が強硬に超たちを裁こうとする理由は、恐らく魔法世界本国からも圧力がかかっているからだろう。麻帆良内だけにとどめられる騒動であれば何とかなったかもしれないが、アインクラッドの顕現がなった以上、穏便に済ませることが出来なくなったのだ。

 

 もっとも、そんな麻帆良の思惑に横槍を入れる人物が、この場にはいた。

 

『それには及びませんよ、近衛学園長。超鈴音、葉加瀬聡美、絡繰茶々丸、龍宮真名の四名は、今後『先端技術対策管理室』を窓口として、日本政府が身柄を預かることにしましたから』

 

『な…………?!』

 

 菊岡の言葉に近衛翁が驚愕を顕わにする。そんな様子には一切構わず、彼は続けた。

 

『彼女らの魔法側の背景は、様々のようですが、現在彼女らの社会的身分は日本国の一中学生に過ぎません。そんな彼女らを、現在日本国と国交が正常に成されていない魔法世界へなど送れるはずもありません。成人し分別が付くまでは、当然こちらに身柄を預けていただきます』

 

『い、いや、しかし……』

 

『魔法世界側が彼女らの身柄を求めるのであれば、せめてこちらと対等の立場で交渉の場に立ってからにしていただきたいですね』

 

『ぐぅっ……!』

 

 二人の対談を眺め、ヒースクリフは内心うまい手だと思っていた。今回のような騒動を引き起こした以上、件の四人は是が非でも魔法世界側は自らの法で裁きたいだろう。しかし、日本国と交渉もせず、土着の組織も無視して暗躍してきた関東魔法協会にそんな窓口役は望めない。そして大義名分が相手にある以上、後は戦力を以て無理に奪い返すくらいだが、魔法世界側で言えば一犯罪者のために国家を相手取るのはなんとも馬鹿げている。四人の身柄について、以降の口出しは一切できなくなったと見ていいだろう。

 

 そして、日本政府にとっても、今回の身柄保護は多数のメリットがある。魔法と科学を融合させた茶々丸と、それに次ぐガイノイドやロボットの軍団。応用すれば魔法への対抗手段に充分なり得るだろう。そして、傭兵と言う立場であった龍宮もまた、銃器を使った魔法使いとの戦闘方法に長けている。四人を保護し後ろ盾となることで、その能力を取り込むことは、日本にとっても有益なのだ。

 

『話は終わりですね。では、正式に日本国預かりとなった彼女から、茅場さんに話したいことがあるそうなので、聞いてあげてくれますか?』

 

「む?」

 

 モニターの奥に引っ込んだ菊岡が画面の前に押し出したのは、超。口元などあちこち固まった血がこびりつき、服装もボロボロ。満身創痍というにふさわしい状態だった。

 

「どうかしたかね?」

 

『…………』

 

 ヒースクリフの問い掛けにも一切答えず。無言のまま顔を俯けていた。しばらくの間空間を沈黙が支配したが、やがてぼそりと短い言葉が聞こえてきた。

 

『私は…………間違っていたノカ?』

 

 この計画のために全てを賭けて。準備のために二年以上費やして。自分と戦ったご先祖様も殴り飛ばして。それでも最後に、ヒースクリフに全て持って行かれた。

 

 怒っても当然。嘆いても当然。だけど、だけどもし。この結果でチウの、コウの、レーカにキッドの運命が変わるのだとしたら。当初の計画以上の結果を、もしも呼び込めるのだとしたら。

 

 自分のしたことは、なんだったのか。

 

 超の疑問には答えず、ヒースクリフはしかし画面の中の超から決して目をそらさずに言った。

 

「間違っていたのか、どうか――自分の行いが結果として本当に正しいのかどうかは、自分で判断することは出来ないものだ。それを判断するのは後の歴史を歩む他人だけなのだから、な……私は現在(いま)を歩む者として、出来ることは一つだけだと考えている」

 

『……?』

 

 ヒースクリフの言葉に、僅かに超が顔を上げる。

 

 

「――――よりよい未来を思い描き、その日が来ることを祈り、今出来る最大の努力を行う――それだけが未来を変えていけるものだ」

 

 

 未来を思い描くことは誰でも出来る。その日が来るようにと祈ることも出来る。その上でその日に近づくために、最大の努力を行う。そうすれば必ず未来はよりよい方へと変わっていくものだから。

 

『…………』

 

 ヒースクリフの言葉に、超は自分の歩んだ二年を思う。努力はした。未来を変えようと狂おしい程にも願った。生憎締めは横槍が入ったけれど、この結論には超も確かに貢献した。

 

 ならば、少しだけは自分をほめても良いのかも知れない。

 

「私からは、以上だ……………………それで、君からは何かないのかね、チウ君?」

 

『!?』

 

 その言葉に驚愕すると、画面の右端に小さくチウが映っていた。どうやら戦闘をしながらも、外での対談の結果がどうなるか気になり、音声を流していたようだ。いきなり呼ばれたチウは少しの間躊躇っていたが、やがて意を決して超の方を向いた。

 

『あー、その、な……』

 

『…………』

 

『私たちの未来を変えるために100年先の未来から来たってのはキリトさん達やユイから聞いた……だから、一回しか言わねえぞ』

 

 少しだけ頬を染め、その言葉を口にした。

 

『ありがとな』

 

『――――――!!』

 

『けど! 言っとくけど、この先の未来は絶対そっちみたいにならねえからな! 火星で100年ぼっちなんて死んでもゴメンだ!! 何が何でも変えてやらあ!』

 

 そんな言葉を聞いて、超は内心吹き出しそうになっていた。目の前の少女は、間違いなくあの恩師の過去の姿だ。威勢が良くて、シニカルで、でも本当は人とつながっていたい寂しがり屋なところが。どうしようもないくらい重なって、笑いを堪えるために、涙が溢れた。

 

『けどな…………もし変わった未来でも、100年後にお前に会うことがあったら……』

 

 やっぱり、どうしようもないほど優しい。超の努力は、二年の暗闘は――――

 

『そん時は……仕方ないから、こっちでも弟子か教え子にしてやるよ…………』

 

 ――報われたのかも知れない。

 

 翌日、超に割り当てられた部屋は、既にもぬけの殻となっていた。前日に超に渡されたお別れ会の品々も無くなっており、彼女は未来へと帰ったと見られた。

 

 部屋に残されたものは、余りに少なく、一枚のメッセージカードのみ。

 

「私も私の未来を、変えてみせるヨ」

 

 そう彼女の文字で、記載されていた。

 




超、帰還完了。原作みたいに破れて終わりではなく、彼女には前に進んでほしかったのでこんな風になりました。
そして、超一派が全員日本国預かり、麻帆良上層部は魔法バレの重大な危機に関し、責任を取らされる公算が大きくなります。まあ、ネギだけは逃がすかも知れません。
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